美大生の就職率は50%未満?「美大生ラボ」で、美大生と美術大学の今を知ろう!

美大生ラボ

卒業間近になると美大生が必ず通る道「卒業制作」そして「卒業制作展」。そこでは美大生ひとりひとりが学生生活で学んだことを活かして、学生生活最後の作品制作に挑んでいます。そして今回はたらくビビビット編集部が注目したのは、大分県立芸術文化短期大学の卒業制作展で出会ったユニークな作品「美大生ラボ」です。美術大学への入学を考えている方や、現役美大生の方にとってためになる情報がまとまっていますので、今回こちらの記事で詳しくご紹介させていただきたいと思います。編集・執筆 / AYUPY GOTO

今回ご紹介する「美大生ラボ」制作者はこちら!

阿部 真実あべ まさみ

Designer / Front Engineer

2016年大分県立芸術文化短期大学美術科デザイン専攻卒業。
現在Web制作会社で働いています。

阿部さんの卒業制作「美大生ラボ」って何?

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みなさんは全国にどのくらいの美術学校や美大生が存在しているかご存知ですか?美大の生活環境・就職環境・進路情報は見えにくく、将来に不安を抱いている学生は多いようです。今回ご紹介する「美大生ラボ」は、全国の美大生の学生数や進路、就職先の傾向などを統計・研究し、Webやフリーペーパーなどの発信ツールを使って、情報わかりやすく提示しているプロジェクトです。「美大生ラボ」を見ることで、今まで把握しにくかった全国の美大生の傾向などを確認することができます。
※こちらの統計での「美大生」は、美術大学のみでなく、一般大学の美術系学科の学生も含みます。(情報デザイン学科など)

美大生ラボ|公式サイトはこちら

なぜ阿部さんは「美大生ラボ」を制作しようと思ったのでしょうか?
私自身が美大生だったので受験・進学・就職活動など、美術大学や美大生について調べることが日頃から多かったのですが、調べていて気づいたのは、美大受験や美大生の就職活動など、それらの情報をまとめて見ることのできる場所がないことでした。なので卒業制作を機に、大学で学んだwebデザインを活かして「美大生ラボ」を制作しようと思ったんです。
確かに美大生の進学情報や就職情報がまとまっているサイトは多くないですよね。何故、Webとフリーペーパーという形にしたのでしょうか。
もともとはWebのみ制作しようと考えていたのですが、卒業制作展にはPCの操作に慣れていない様々な年代の方が訪れるので、幅広い方に情報を届けるために冊子も制作しました。実際に卒業制作展に立ち寄ってくれた方の多くは年配の方で、Webサイトよりも冊子をじっくり見ていかれる方のほうが多かったです。デジタル媒体の需要が高まってはいますが、やはり紙媒体は欠かせないものだと感じました。
実際、美大生の阿部さんが就職活動してみていかがでしたか?地方の就職活動環境など、どのように感じたか教えてください。
地元にはデザイン系で新卒社員を募集している会社がほとんどありませんでした。募集していたとしても中途採用ばかりで……同級生でデザイン会社に就職する子の多くは、福岡や本州の会社であることが多く、地方でデザイナーとして働くのはなかなか大変なことだと思います。地方の美術職の少なさや門の狭さ、金銭的な面から学生の選択肢が狭まるのはとても難しい問題だと感じています。
都心に就職先があったとしても、就職活動で地方から何度も通うのは金銭的に大変ですよね。地方の美大生の就職活動には、様々なハードルがあるようですね。

「美大生ラボ」で紹介されている、美術学生のリアル

先ほどからお話している「美大生ラボ」では、実際どのような美大生の傾向や情報がまとまっているのでしょうか。掲載内容からいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。

チェック1:日本で美術系学部のある大学の数

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日本にどれだけの美術系大学があるのか、みなさんはご存知ですか?こちらでは「美術系学部のある大学の数」をまとめています。日本各地に分布している美術大学、大学の数だけ美大生も存在しています。知っている方も多いかと思いますが、関東や近畿などの都市圏に美術大学が集中していることが分かります。1番多いのは東京都、次に多いのは京都府です。

チェック2:毎年入学している美大生の数

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少子化となった今、毎年全体の学生数が減っているなかで、年々数が増えている美大生。これは少し不思議な現象ですね。また、昔の美大生は男性のほうが多く、年を重ねるごとに女性の割合が増えています。景気の変化や、業界の変化も大きく関わっているのではないかと思います。

チェック3:卒業後の進路と就職率

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卒業後の進路、職業別就職率ともに年代を重ねるごとに大きく変化しています。20~30年前と比べて、教員職だけでなく様々な職を選択する美大生が増えたこと、そして一般職に就職する美大生が増えてきたことが図を見ると分かります。美術専門で学んできたことを、幅広く活かせる時代に変化しているのだと思います。

ポイント4:就職幅の変化

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20〜30年程前は、卒業後はフリーランス・アーティスト・教員として暮らしていく人がほとんどでしたが、近年はデザイナーなどの専門職希望者が4割〜5割、企画職や総合職などの一般職が4割程、残りの1〜2割がフリーランスや教員志望となっています。景気の変化に伴って、美大生も堅実思考になってきているのかもしれません。

美大生ラボ|もっと詳しく見たい方はこちら

「美術・デザイン専攻って就職できないのかな…」
心配しないで、全ては自分次第です。

「美大生ラボ」を制作する上で、美大生の現状をリサーチしてみてどのように感じましたか?
1番強く感じたのは、日本には美大生が沢山いるということです。地方故県内や近い範囲に美術系の大学が少ないので、他の美大生に関する情報源がほぼネットのみで、全国の美大生の数を知ったときは衝撃でした。
それだけの数の学生が、毎年クリエイター職に就職しようとしていると思うと、就職活動も頑張らなきゃと思いますね。就職先も一般職が増えてきているとありましたが、決して妥協して一般職に就職している人ばかりではなく、美大で学んだスキルを活かせる一般職・総合職が増えているようです。
「美大生ラボ」を作ってみて、まわりの方の反響はいかがでしたか?
「情報が分かりやすい」「ロゴマークやピクトグラムが可愛い」「しっかり情報をまとめていてすごい」というような意見をいただくことが多かったです。私の妹も美術大学を受験する予定なのですが、こういう情報が欲しかったというような意見がもらえたので、知りたかったのは自分だけじゃなく需要はあるんだなと思いました。「美大生ラボ」を制作して気づけたことや、改善点を踏まえつつ、また美術大学や美大生に関する新しいものも作ってみたいと思っています。
今後、美大環境や美大生がどのように行動していくべきだと思いますか?
美大環境や美大生に限らず、何事にも言えるとは思うのですが、社会の中で自分はどういう働きができるか、どういうことが向いてるのかを考えながら流行や新しい物事・技術を取り入れていくのが重要だと思います。
例えば、今はWebで良いものがたくさん見れる時代ですし、インターネットを通してデザインやプログラムなど学べるコンテンツがどんどん増えてきているので、積極性があればどこでも勉強することができます。そういったことを積み重ねることで、自分にとっても社会にとっても良い変化になると考えています。
美術大学や美大生、アートやデザインをとりまく環境はいつどうなるのか分からないので、対応できるものを増やしながら、どんどん自分の糧にしていくことがこの先大事になってくると思っています。
美大生である自身の苦労や経験から、全国の美大生のためになる情報をしっかり研究し、見やすくわかりやしく情報をまとめた阿部さんの制作威力に驚きました。社会人となりどのように活躍されるか楽しみです!貴重なお話ありがとうございました。

美大生の情報集め!参考になるサイト一覧

普段の活動の役に立つ!美大生向けの便利で楽しい情報サイトをご紹介いたします。

1.はたらくビビビット

スクリーンショット 2016-02-15 15.14.04

URL: http://hataraku.vivivit.com/

クリエイティブ業界のお仕事情報、ポートフォリオの作り方、就職活動のノウハウを知りたい方は「はたらくビビビット」をおすすめします。様々な企業の内定者ポートフォリオをチェックできるのが魅力的です。

2.PARTNER

スクリーンショット 2016-02-15 15.27.42

URL: https://partner-web.jp/

美大生ライフをより充実させることの出来る展覧会情報や、有名なクリエイターのインタビュー記事などが掲載されています。国内外の情報がまとまっていて、世界のさまざまなところに住む美大生ライターが書いているのも特徴のひとつです。

3.美大芸大就活ナビ

スクリーンショット 2016-02-12 11.59.07

URL: http://bidai-geidai.jp/

クリエイティブ企業の就職情報や、ポートフォリオの作り方、企業ではたらくクリエイターインタビューなどが掲載されています。

美大生ライフを充実させるためにも情報収集は大切です。

「美大生ラボ」を見た方は、美大生のリアルな進学・就職環境をどのように感じましたか?なかには就職率の低さに驚いた方がいらっしゃるかもしれませんね。ですが、地方に限らなければ、決してクリエイティブ系の就職先が少ないわけではありません。こういった情報を事前に収集して、先を見て行動したり、世の中に求められている需要のある仕事を選定することが何よりも重要です。より充実した美大生ライフをおくるために、阿部さんのように早め早めに行動して、状況を把握できると良いですね!

(2016.2.12)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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