表現媒体を絞らない。学生時代から数々のデザイン現場で、独立するための力を磨いた|はたらくフリーランス#01小玉千陽

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“個”で活躍する、若手フリーランスのインタビュー特集「はたらくフリーランス」 第一弾は、Web・アプリ開発の仕事を中心にフリーランスのデザイナーとして活躍する小玉千陽さん(24歳)をご紹介したいと思います。将来、フリーランスのデザイナーとして働くことに興味を持たれている方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。編集・執筆 /AYUPY GOTO

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小玉 千陽

designer

東京工業大学工学部卒。在学中よりデザイン事務所やWeb制作会社などでエディトリアル、グラフィック、Webのデザイン及びフロントエンドエンジニアとしての経験を積み、卒業後は深津貴之氏率いるArt&Mobileへ入社。Webサイトの制作やモバイルアプリのUIデザインに携わる。昨年より独立し、プログラミングとデザインの両側面を活かせる、Webサイトの製作やUI設計・デザインを中心に活動中。
http://chocolu.net

時に個人で、時にチームで仕事を受ける
フリーランスの強みを活かした、現代ならではの働き方

― フリーランスのデザイナーとして働く、小玉さんのお仕事内容について教えてください。

小玉さん:領領域は絞らずにWeb、アプリ、冊子、ロゴ、フライヤー……と、さまざまな媒体のデザイン業務を行っています。具体的なお仕事内容は、アプリのUI設計・開発、Webサイト・ランディングページなどの制作とディレクション、プログラミングでのアニメーション制作、デザインコンサルなど、デザイナーという肩書きで活動はしていますが、フロントエンドのエンジニアリングやコンサルタント、ディレクター職の業務も行っています。
独立する前に、“アートディレクションの仕事ができるようなりたい”という強い思いがあったので、ビジュアルデザインやアートディレクションまで関わらせていただけるお仕事を意識して集めるようにしていたんです。すると、実績が溜まっていくにつれて、今では自然とそういった仕事の相談がくるようになりました。

小玉さんが携わってきたお仕事

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みんなの“メイクの裏技”シェアアプリ「misette」
https://www.misette.tips/

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「apart by lowrys」ブランド公式Webサイト
http://apartbylowrys.com/

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「417」2016SS 特集ページ
http://four-one-seven.jp/feature/2016ss/03/

― 普段はどのような働き方をされているのでしょうか。

小玉さん:フリーランスとして個人で仕事を引き受けることはもちろん、「THE GUILD」という組織にも所属して、そこに所属しているメンバーと一緒にお仕事することもあります。

▶︎「THE GUILD(ギルド)」とは

THE GUILD(ギルド)は、小さな会社やフリーランスの人たちが集まってできた、約20名ほどのクリエイティブ集団。法人企業ではあるが、社員として所属している人はいない。フリーランス個人では受けられないような大きな仕事(サービス全体の開発や、コーポレートサイト立ち上げなど)を、案件ごとにチームを組んで分担して制作・開発する。プログラマー、デザイナーなど、様々なクリエイターが所属している。
過去に手がけたプロダクトは、日経新聞アプリなど大型アプリの監修から、アイコンエディターアプリ「chappie(チャッピー)」など、多岐にわたる。

小玉さん:フリーランスが個人で請ける仕事は、決まった期間で出来ることが限られてしまうためどうしても規模が小さくなってしまいがちです。もし大きな仕事を引き受ければ、長い期間その仕事に縛られてしまい、なかなかアウトプットできず、フリーランスの活動として重要な活動発信ができなくなり、次の仕事をいただくチャンスを逃してしまう可能性があります。
そういった問題を解決するためにできたのが「THE GUILD」で、フリーランスが集い、チームで仕事を請ければ、大きな仕事をすることもできますし、仕事の規模が大きいほどフリーランスにとっても良い実績となるので、良い循環が生まれるのです。

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小玉さん:こちらは大好きなエディトリアルデザインのお仕事です。ファッションブランドのシーズン特集を、編集・写真のスタッフさんとチームを組み、Web・パンフレットなどのデザイン制作をさせていただきました。写真の空気感がとても素敵だったので、最大限写真の良さを引き出し、シーズン中何度見ても飽きないようなレイアウトを意識しました。また、Webでは印象を変えすぎず、どのようにすれば魅力的に見せることができるか、企画から入り制作しました。紙もWebも、トータルで任せられるデザイナーはあまり多くないそうで、クライアントさんにも喜んでいただけました。メンズ・レディースそれぞれ3シーズン分担当させていただきました。

学生時代から多くの現場でデザイン力を試し
独立して働く力を身につけた。

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― 小玉さんはいつからデザインを学びはじめたのですか。

小玉さん:“デザインする”という意識があったわけではありませんが、小学生の頃からパソコンが好きで、AdobeのPhotoshopやIllustratorには、小学2年生の時から触れていました。難しい技術書を一生懸命読んで勉強して、パスツールを使って雲のイラストを描いたり、写真の背景を合成したりと、かなり熱心に制作していたことを覚えています。画像が作れるようになると、次はそれを人に見てもらいたいという気持ちが強くなって、インターネット上に「ホームページ」というものがあることを知って、見様見真似でいろんなサイトのソースを探ってコーディングして、自分のホームページを作り、作品を公開していました。あと、自分で撮った写真を加工して、ホームページ用の背景画像を配布する「素材屋さん」を運営していたこともありましたね(笑)。
パソコンを使って何かを作る仕事が向いてそうだと思い、調べていた時に“デザイナー”という仕事があることを知ったんです。そこから、デザイナーになるためにはどのような学校に通えば良いのか、何を勉強すれば良いのかリサーチして、美大に進学することを目指すようになりました。

― 小学生の時からデザインに触れていたのですね!何故その後、理系の大学に進学することを選択したのでしょうか。

小玉さん:デザイナーになるには美大に行かないといけないと思っていたのですが、両親に反対されて理系の大学を勧められてしまい……美大に行かずデザイナーになる方法を探ったところ、大学と専門学校のふたつの学校に通う“ダブルスクール”という道を見つけました。なので、東工大の社会工学科には進学しましたが、同時に専門学校でデザインも学んでいました。専門学校でデザインの基礎を教えてもらう時間がすごく楽しくて、やっぱり自分はデザインの仕事がしたいんだと確信することが出来ました。
専門学校は1年ほどで卒業したのですが、もっとデザイン制作の実績を積みたいと思い、大学に通いながらもデザイン系の会社で週3〜5回アルバイトするようになりました。美大に通えていないことが自分にとってかなりコンプレックスで、将来デザイナーとして本当に働けるのか?焦る気持ちが私を走らせたんだと思います。

― 早い段階からデザイン会社で働かれていたのですね。学生時代に、どのようなお仕事を経験されたのでしょうか。

小玉さん:エディトリアルデザイン専門の会社、広告代理店、Web制作会社、大手制作会社、クリエイティブ系のサービスを提供するスタートアップなど、6社ほどでデザイナーとして働いていました。
最初は実績がほとんどなかったのですが、見様見真似で作ったポートフォリオを提出したら、デザインだけではなくコーディングも出来る点を評価していただき、採用していただきました。実績が増えてくると作るもの軸で経験が積みたくなり、他の会社も気になってきて、応募して、受かって、働いて……を繰り返していました。
学生のときって無知がゆえに、会社が人を募集しているかどうかなんて考えずにアタックしちゃっていて、でも、企業の方々もその勢いを面白がって買ってくれて、募集枠がなかったのに雇ってもらえることもありました。あまり考えすぎず、勢いで行動することも特に若い時には大事だと思いました。

― 学生時代から様々な会社で働いてこられたと思うのですが、就職活動の時期に入ってからはどのように行動しましたか。

小玉さん:最初は普通に就職しようと思っていたので、就職活動が始まるタイミングで自分もデザイン会社にいくつかエントリーしていました。いろんな会社を受けるなかで大手制作会社に内定をいただくことができたので、最初はそこに入社するつもりでいたんです。
ですがある日、Twitterで「THE GUILD」の代表がアルバイトを募集しているのを見かけて、当時の私は「THE GUILD」がどのような組織なのか、何をやってるのかも理解していなかったのですが、面白そうだと思って勢いで応募しみたんです。そこで初めて代表にあって作品を見せてお話をしたら、働かせていただけることになって、そこから卒業するまでは「THE GUILD」でアルバイトとして働いていました。

― その後、内定を辞退されたと思うのですが、大手制作会社ではなく「THE GUILD」で働くことを考えるようになったのは何故でしょうか。

小玉さん:昔からフリーランスで働くことに憧れていたんですよね。通勤時間や社内環境など会社のルールに縛られることなく、自由に仕事がしたいという思いがありました。
そんなときに「THE GUILD」の方々に出会って、中に入って働いてみたら驚いたんです。得意分野を持つフリーランスが集まって一つのプロダクトを作ると、ひとりひとりのスキルが高いので、とてもクオリティの高いアウトプットができるんです。「THE GUILD」が作るものは明確に良いものばかりだったので、私もここで働く人たちのようになりたい!という思いがだんだんと強くなっていきました。
どうにか「THE GUILD」に就職できないものかと思って、飲み会のたびに『ここで働かせてください』と代表に言い続けていたんです(笑)。
そんな感じでアタックを続けていると、最初は1年後に戻っておいでと言っていたのが、半年後、研修後……と、その期間が短くなってきて、『もういいじゃないですか最初からで!』と言ったら、『本当にくるの?内定先どうするの?』って、「THE GUILD」のメンバーとして働くことを許してもらえました(笑)。 そこから内定をいただいていた大手制作会社には辞退の連絡をして、卒業後も「THE GUILD」で働くことになったんです。
厳密には「THE GUILD」自体はフリーランスの集まった会社なので、代表が別で立ち上げていた「Art and Mobile(アートアンドモバイル)」という会社に社員として入社して、「THE GUILD」の一員としても働けることになりました。

技術と表現を磨くことで解決力を高め
フリーランスから起業家を目指す

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小玉さんの仕事風景。普段はカフェや「THE GUILD」のオフィスでお仕事をしているそうです。

― それだけ望んでいた環境で働けていたのに、何故フリーランスとして独立しようと思ったのでしょうか。

小玉さん:自身のキャリアプランと、次のステップが見えてきたからです。もともとエディトリアルデザインが好きだったこともあって、若くて柔軟で成長できるうちに、媒体にとらわれず幅広くデザインの仕事ができるようになりたいと思ったんですよね。任されていた案件が落ち着いたタイミングで代表に相談し「THE GUILD」のメンバーのまま、独立することにしました。

― 独立してからどのように仕事を集めましたか。コツなどがあれば教えてください。

小玉さん:前職自体が副業しても良いことになっていたので、社会人になったタイミングで個人事業主登録は行っていて、ポートフォリオサイトを作って、それこそ会社員という立場を活かしながら、会社の仕事が終わったあとに個人で受けた仕事もやらせていただいていたので、独立するときも0から仕事を集めることはなく、今までの仕事のつながりや知り合いの紹介があったので、ありがたいことに仕事に困ることはありませんでした。
あとは、発信は大事だと思っていたので、何か新しい仕事をアウトプットすればFacebookやTwitterで「こんなものを作りました」と、投稿するようにしていました。すると、こんなものも作れるんだね!と知人からコメントが集まって、次の仕事に繋がることもありました。
最近だと、Tumbler・Pinterest・Instagram・Twitter……など、作品を発信できるサービスって沢山あるじゃないですか。駆け出しの時は、そういったサービスに全部登録して情報発信して、ネットの力を活用することで仕事をもらえるきっかけがつくれると思います。
また、継続して仕事をもらうために何よりも大事なのは、誠実に案件に向き合うことです。フリーランスは個人の名前で仕事を受けるため、どんなものが出来上がっても自分の名前が出てしまいます。なので、クライアントと向き合って、責任を持って良いものを作る努力をすることを積み重ねることで、より良い案件に繋がっていくのではないかと思います。

― 最近ですと、デザインイベントや交流会なども多く行われていると思うのですが、そういった場に足を運んでお仕事を集めることはないのでしょうか。

小玉さん:たまに顔を出しますが、正直なところ仕事に繋がるというよりもちょっとした情報収集、くらいに思っています。UI/Web業界のコミュニティに集まりすぎると、その界隈の常識やトレンドに流されすぎてしまう気もして、一般的に見るとごく一部の考え方や世界観なので、少し意識的に違う界隈の友達と会うようにしています。デザインのベースとなるような“タイポグラフィ”の講演会や、グラフィックデザインの勉強会などには積極的に行くようしていますね。

― 独立して良かったことと悪かったこと、それぞれ教えていただけますか。

小玉さん:良かったことは、仕事も事務管理も自分で全部やらざるを得ない状況になるので、責任感を持って真剣に仕事と向き合えることです。自分の判断でクライアントさんに提案して、議論して、制作できるので、クリエイターとしてより早く成長できる気がします。
あとは、キャリアプランと自身の本当にやりたい仕事について考える機会が増えました。フリーランスは仕事を自分のキャリアと直結できる立場にあるので、自身がどんな仕事をしたいのか、それを受けてどうなりたいのか、社会をどう動かしていけるのか、常に考えています。

悪かったことは、スケジュール管理を全部一人でやらなきゃいけないことですね。独立したばかりのとき、ある案件のスケジュールの組み方が甘くて、予定がずれ込み、他の案件と予定がかぶってしまって、体調も大幅に崩して……誰も代わりがいないので、その時は大変だと感じました。

あと、仕事をしている時間は増えましたが、それに関しては平日・土日関係なく自分でタイミングを選んで予定が組めるので、むしろメリットだと思っています。仕事したいときは予定を詰め込んで、落ち着いたらまる1日遊びに出かけたり、勢いで沖縄旅行に行ったり(笑)!平日でも、打ち合わせの合間に気になる展示やイベントにフラッと足が運べると、気分転換できますし、フリーランスの良いところだと思いますよ。基本的に働くのが好きな人が向いているとは思います。

― 今後どのように活動を発展させていきたいですか?目標を教えてください。

小玉さん:課題に対して、職種や立場関係なく柔軟に向き合い、解決するために取り組めるところがフリーランスの良さだと思うので、デザインだけでなく、フロントエンドのアニメーションやjsなど、技術や知識を身につけるための努力は今後もしていきたいと思っています。
あと、自分が好きなデザインってなんだろうと考えたときに、手描きのものやハンドレタリングがすごく好きなので、自分らしい表現力も鍛えていきたいです。
今わたしの強みが、UIのガイドラインを理解してデザインすることなので、そこの文脈を引き継ぎながらも、デザインとしての解決力をもっと高めていきたいです。そういった物作りや仕事に共感する人を集めて、いつか会社にできたら良いですね。

― 最後に、そもそも“就職すること”に関してどのようにお考えですか?学生に向けてメッセージをお願いします。

小玉さん:わたしも普通に就職活動はしていたので、就職すること自体は何も悪くないことだと思っています。ただ、就活をしていると、目的が「就職すること」になりすぎてしまい、仕事を通して何をどうしていきたいのか、みたいな本質的なところを見失ってしまいそうになる人がたくさんいる気がしています。
ただ、デザイナー職の場合は、今まで作ってきた作品がある種その人の姿や考え方が現れているものだったりするので、誤魔化せないですし、アピールしたいことをポートフォリオでしっかり表現することが大事ですよね。また、自分が得意なものを載せつつも、相手(応募先の企業)がその技術や表現を求めているかどうかも、考えながらつくる必要があると思います。
今の時代って、一つの企業で働き続けることが必ずしも正解ではないと思うので、変に大人の声を気にして“新卒で企業で働かないと生きていけない”とか“入社したからには2〜3年働き続けなきゃ”とか、そんな意見に縛られる必要はないと思います。同年代の話で多く耳にするのは、毎日ストレスと戦ってへとへとになるまで働いてるのに、行動を起こさないが故に、同じサイクルのままその場に留まってしまう人が沢山いるので、そういった渦にハマってしまったときはどうか勇気を持って、転職や独立など一歩前進してほしいですね。

― 自身の力で働くこと、独立すること、きっとクリエイターの方であれば一度は考えたことがあるのではないでしょうか。小玉さんは若くして独立したクリエイターのひとり、ぜひ今後の活動の参考にしていただけると嬉しいです。小玉さん、素敵なお話ありがとうございました!

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(2016.6.30)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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