舞台美術って何?|仕事百科

舞台美術1-min

舞台美術と聞いて、みなさんはどのような仕事をイメージしますか。
演劇の世界を創り上げるために必要不可欠な舞台美術。今回はその仕事内容を簡単にご紹介したいと思います。
編集・執筆 / YAMADA, AYUPY GOTO

目次

  • 1.舞台美術の仕事とは
    • -演出家と舞台美術家の違い
  • 2.舞台美術家になるには?
    • -資格は必要?
  • 3.やりがいと供給
  • 4.さいごに

1. 舞台美術の仕事とは

舞台をパフォーマンスの場としたエンターテイメントは、演劇、バレエ、ミュージカル、コンサートなど様々な種類のものが存在します。きらびやかなショーステージは、舞台上に立つ役者やシンガー、ダンサーといった、アーティストが持つパワーによるものでももちろんあるのですが、そのステージをみた人をより世界観に引き込むような舞台に仕掛けを施していくのが、空間を演出する“舞台美術家”です。

幅広く携わっている!

舞台美術家というと、舞台の上の装飾や装置などをデザイン、設計する人というイメージがある方が多いかもしれませんが、実はこの「舞台美術」の中にはもっと様々な仕事が含まれています。
舞台上の装飾、装置、大小関わらず道具類の制作はもちろん、衣装のデザイン・制作も含みます。
装置を作る人、衣装を作る人が分かれている場合もありますが、現場によって様々です。
演出家のイメージを汲み取り、世界観を具現化していく。音響や照明が加わることも考え、打ち合わせを重ねながら進めていきます。美術的センスはもちろん、豊富な技術と舞台知識が必要な職業です。
また、舞台だけでなく、美術スタッフとして映画やドラマの制作に携わる場合もあります。

演出家と舞台美術家の違い

良く耳にする演出家と、舞台美術家の仕事内容の差とは、何でしょうか。


・演出家

大小関係なく、どのステージにも存在します。その名の通り、舞台やショーの演出、構成を考え指揮する立場です。
映画なら監督、テレビならディレクターと同じ立ち位置です。ライブなどの場合、アーティストが自ら指揮をとることもあります。


・舞台美術家

舞台美術家は、構成や進行の指揮ではなく、舞台上の目に見える装飾や装置を具現化し制作すること全般を担当します。芸術性に長けた技術とセンスで演出家の意向に沿ったステージを創作する責務があります。
美術関連の監督といったところです。美術スタッフをまとめ、指揮をします。

しかしどの舞台にも演出家と舞台美術家がそろっているわけではなく、小さな作品だと演出家のみ(兼任)の場合もあります。
また、舞台美術の中でも舞台装置と舞台衣装に分かれていることも。スタイルは場合によってそれぞれ違ってきます。

2.舞台美術家になるには?

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では舞台美術家になるには、一体どうしたらいいのでしょうか。
実際にはフリーランスで活動している方が多く、その他にも企業の中で舞台美術家として活躍している方がいます。美術大学や専門学校で知識を養い、就職を目指すことがオーソドックスかと思いますが、どのような経歴であれ、やはりこの世界で重要なのは実力です。舞台知識、技術を身につけてからの話になってきます。実際に現場で経験を積むのが一番成長できるとも言われていますので、一日でも早くこの世界に入りたいという気持ちがあれば、アルバイトでも舞台美術家に弟子入りでも、直接劇団の門を叩くでも、熱意があれば業界に踏み込むことは可能です。(ただし賃金が貰えるとは限りません)
制作会社等の内部構成としては、
美術監督の下に美術スタッフ、更にその中で美術助手、装飾助手に分かれており、どんなに高学歴でもスタートは皆一緒です。その後の自分の実力次第でステップアップしていくことが出来ます。
フリーランスの場合は、直接劇団や演出家から依頼をされるので、その繋がりと実績があることが前提。美術スタッフを自分で集めなくてはならない場合もあるようです。

作品をみてもらうという手も

新人向けのコンクールなどもあるので、自分の実力に自信がある、または試してみたいという方はそういった機会に申し込んでみるのもいいですね。受賞をすると、多かれ少なかれ、業界から注目をされます。そこからの繋がりをつくることもできます。

学校に通うメリットは

美大や専門学校に通わずともその業界に飛び込むことは可能ですし、実際にそうした方もたくさんいるかと思います。
そういった中でも、決して安くはない学費を払い、更には多くの時間を割いてまで学校に通うメリットとは、一体何か。
まず1つに、勉強をする場なので当たり前なのですが、プロからの授業が受けられる。現場を知る人からの講義はやはり何もしらない学生にとっては唯一の情報源でありスーパーバイザーです。
また、舞台関連の勉強をするとなると、空間デザインや簡単な建築デザインも学ぶことになるので、幅広い知識をつけることが出来ます。
そして次に、同級生や講師とのコネクション。これは舞台美術だけに限らず、どの職種でも言えるのですが、将来業界に入ったときに知り合いがいることはとても心強く、有利です。そして、学校に所属していると、就職をする際に力になってもらえる。
これらが学校に通学するメリットです。

資格は必要?

この職業につくにあたって、資格は必要ありません。しかし、復唱になってしまいますが、実力社会ですので、それ相当の知識が必要になってきます。

3.やりがいと供給

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舞台美術家に限ったことではないのですが、この世界では生活に安定性はあまりありません。
また、ハードワークに見合った報酬が受け取れるのは、舞台美術家として名を挙げたような、ごくわずかな方々です。一般美術スタッフの大体の年収は約300万円だと言われています。この金額が高いと感じるか安いと感じるか、それは人それぞれですが、この仕事を好きでやっている方に金額はさして関係ないことなのかもしれません。(とはいえ、生活がかかっているのでそこはシビアになることですが……)どんなに重労働でも形になったときの報酬に勝るやりがいによって続けられる方が多いようです。生半可な気持ちで踏み込んでも、続かないでしょう。
また、監督クラスになると、大体500~1000万円の年収に。いつかは、と昇級を夢見て進む方もいるかもしれませんね。
自身の技術によって演出家の頭の中にある世界が現実になる、より魅力的な舞台が作れるというやりがいは、計り知れません。

4.さいごに

今回は舞台美術について考えてみましたが、この他にも音響、照明、衣装、演出家そしてアーティストが存在して初めて舞台は完成しています。表立って見えている部分以外にも、多くの人の知識と技術が詰まった結晶である舞台。仕事にするにはそれ相当の努力と、舞台が好きな気持ち、そしてやりがいを感じられなければ続けるのはなかなか厳しい世界ではあります。しかし、努力した分が形として残る、自分の力によって作品の世界観に立体感を生み出し、仕事としての成果が目に見えるということは本当に魅力的なお仕事だと思います。

(2016.9.13)

著者

山田実優

武蔵野美術大学でグラフィックデザインやパッケージデザイン、ブランディングデザインを主に勉強しています。 舞台鑑賞や洋服巡りが好きです。

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