『紙ポートフォリオとWebポートフォリオ、どっちで魅せる?』芸者東京エンターテイメント

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今回は、芸者東京エンターテインメント株式会社からデザイナーの能登さんと須田さんにお話を伺いました。能登さんからは紙ポートフォリオ、須田さんからはWebポートフォリオを見せていただいて、それぞれの魅力を語っていただきました。
デザイナー・クリエイターを目指す全ての学生に是非一度読んでいいただきたい“ビビビッ”とくるインタビューです。
編集・執筆 Yuki Watanabe

能登 翔平のと しょうへい

デザイナー

武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科 2010年卒業

須田 加奈子すだ かなこ

デザイナー

東北芸術工科大学 メディアコンテンツデザイン学科 2011年卒業

御社の事業内容を教えてください!

能登さん:
弊社では、主にスマートフォンアプリの企画・開発・運用を行っています。
部署というものはなく、『脳トレクエスト2』『おみせやさん』など、プロジェクトでチームがあり、各チーム内にデザイナーやプログラマーなどがいるような組織体制になっています。

入社後から今に至るまでどのようなステップを踏んできましたか?

能登さん:
入社して1年間くらいは、『おみせやさん』というゲームアプリのプロジェクトチームにいました。仕事の内容は、商品やアバター服のデザインなどです。
僕は学生時代もずっとイラストを描いていたのですが、弊社ではイラストを描いている人があまりいなかったので、その後に新規プロジェクトが立ち上がる際、デザイナーとして起用されて、2年目はモンスター系の2Dグラフィックを描いていました。残念ながら、その新規プロジェクトは翌年になくなってしまったのですが、そのプロジェクトチームがそのまま『脳トレクエスト』のチームに参入することになり、引き続きデザイナーとして、今もグラフィックを制作しています。
また、『脳トレクエスト』は、ゲームのシステムにもっと深みを出すために『脳トレクエスト2』として新たにつくり直すことになって、それからは、デザイナーとしてグラフィックを制作するだけでなく、企画について考えたり、徐々にディレクターのようなこともするようになりました。

能登さん:
僕たちとは別にもう一人デザイナーがいて、その方に演出面は全部任せていたんですけど、何かあったときに代わりになる人が欲しくて、須田さんにはチームに入ったタイミングで演出のスキルも覚えてもらうことにしました。弊社はCocosBuilderというもので演出をつくっていて、これはデザイナーがよく使っているAdobe系のツールとは勝手が違うので、いまから少しずつ勉強してもらっています。ちなみに僕は使えません(笑)。僕は演出以外のアバターの装備やUI部分を担当しているので。演出とは分業でやっています。

学生時代に学んだことで、今の仕事に影響していることはありますか?

能登さん:
卒業制作でエンターテイメントに関する論文と実制作を友人と共同でやったのですが、僕はビジュアル面を担当していて、そのときに、「文脈に基づくキャラクターデザイン」をしていました。
例えば、「オードリー・ヘプバーン」を見たら『ローマの休日』が思い浮かぶみたいな。そういった連想ゲームができるパーツを、髪・目・服装などのパーツにわけて、それぞれ連想されるものから組み合わせていくと、意図したキャラクターになる。そういったビジュアルのつくり方をしていました。
文脈に基づいたデザインというのは、どの分野においてもビジュアルをつくる過程においては必須なんじゃないかな?と思うので、今でも変わらず、制作のベースになっている考え方ですね。

須田さん:
私が学生時代に学んでいたことは、メディアコンテンツという広いジャンルでした。コンシューマー系のゲームをつくりたくて3Dの勉強をしていたのですが、卒業間近になってスマートフォンが主流化してきたので、3Dよりも2Dをやる方が楽しそうと思い始めました。それからは、スマートフォンアプリを意識して独学で2Dグラフィックを制作するようになったのですが、3Dで学んだ「ものを立体的に捉える」ということは今でも大切にしています。2Dにおいても、ものの裏側を意識するのとしないのとでは“らしさ”が全然違うんです。

一日の流れを教えてください!

11:00 出社、ラジオ体操 (1)
13:00 お昼
16:00 チームのミーティング
18:00 週1で全体会、ラジオ体操 (2)
20:00 退社

出社時間が11:00と割と遅めなんですね!

能登さん:
そうなんです。ちなみに、退社時間の定時は20:00で、僕は定時で帰ってます。

須田さん:
私は夜型なので嬉しいですね。通勤ラッシュを避けられるのがありがたいです。

ラジオ体操が1日2回、健康的ですね!この習慣はずっとあるんですか?

能登さん:
僕が入社した当時はまだその習慣はありませんでした。一時期、社内で肩こりが問題になって、社長がマッサージ機を大量購入したんですけど、そのマッサージ機の音が割と大きくて、勤務中に使用するには問題がありまして……みんな、そのうち使わなくなってしまったんですよ。なので、別の方法で体をほぐそうということで、ラジオ体操が始まったんだと思います。

他に面白い習慣はありますか?

須田さん:
習慣ではないんですけど、面白いことと言えば、社長の突発的な行動ですね。
クリスマスイブに、唐突に生きているカニを買ってきてカニ鍋をやるとか。あと、社長はハンティングの免許を持っているので、北海道からシカを狩ってきて、それを社内で料理してみんなで食べるとか。シカ肉を食べる機会は他の会社ではないんじゃないでしょうか。しかも自前ですからね(笑)。あと、レアなスイーツとかも突然配られたりして、美味しいものも色々と食べられますね。

どんな人と一緒に働きたいですか?

能登さん:
ちゃんとモノを考えてつくってる人が良いですね。デッサンが上手いとかイラストが得意とかそういうスキルはあった方が良いですけど、そういうこととは別に、理論的に考える力がある人は強いと思います。あとは、お客さんにコンテンツを提供している意識を早いうちから持ってつくれる人なら第一線で活躍できるんじゃないでしょうか。

須田さん:
人に見られること、見せることを躊躇しない人。意見を聞いたり逆に言える人。つまり、コミュニケーションをちゃんととれる人ですね。あとは、コミュニケーションの中で「ここは直した方が良いんじゃない?」と指摘されたときに、心が折れないというメンタルの強さがあると良いと思います。

お二人が就職活動で実際に使用していたポートフォリオを見せてください!

能登さん:
掲載しているのはイラストレーション作品がほとんどです。
ポートフォリオのつくりは、後からページの差し替えができるリングタイプなのですが、表紙や帯をつけることで、外から見たときに本屋で売っているようなイラストレーションブックっぽく見えるようにしました。企業に送るときも、エアーパッキンにラベルを付けて、デザイナーズトイっぽさを意識したり、見た目にはこだわりました。ページの構成は、基本的には、左のページにラフや制作過程、使用したソフトや概要。右に完成作品を載せています。
ところどころ、見開きで作品一枚を載せたり、折り込みを入れたりして、飽きないように見せ方を工夫しました。

須田さん:
私は、紙のポートフォリオと、もうひとつ、Webのポートフォリオをつくりました。今回は、Webのポートフォリオを紹介します。

何故Webのポートフォリオを制作したのですか?

須田さん:
企業とのやりとりで、一通目のメールを送るときに「ポートフォリオを見ていただけますでしょうか?」という確認のメールの流れを取っ払って、とりあえず見てもらうということをしたかったんです。そのときに、Webならすぐに見てもらえますよね。そして、その後に実際にお会いすることになれば紙のポートフォリオを見せるというようにしていました。私は地方出身なので、企業に出向くのも少し大変だったりします。なので、出向く前に判断してもらうことで、効率的な就活をしていました。
また、3Dやデジタルグラフィックのイラストが多かったので、Webなら描いたものがそのままのクオリティで見せることができるというのも良いところです。

デザイナー・クリエイターを目指す学生に向けてメッセージをお願いします!

須田さん:
客観的に自分の作品を見ることをおすすめします。私がやっていたのは、色んなコンペに応募することです。学生のうちは、自分のデザインを見てもらう機会はほとんどないので。趣味でイラストをSNSなどに投稿するだけではなく、ちゃんとコンペに応募して、自分が社会に出たときにどう評価されるか、どれくらいの実力があるのかを早いうちから知っておくと良いと思います。また、コンペに出すには、ちゃんと完成させるところまで確実に持っていかないといけないので、必然的にクオリティの高いものができますし、そこで評価されて実績になればラッキー。評価されなくてもポートフォリオには載せられるので無駄がないですね。

能登さん:
僕がおすすめしたいのは、学生のうちに本を沢山読んでくださいということです。本を読み続けていると、自分のコンプレックスを打開してくれる本に出会えることがあります。
美大生はアニメやゲーム系のイラストにコンプレックスを抱えやすいと思っています。僕もその一人で、昔からイラストを描いていますが、デザインの世界ではイラストは評価されづらかったり、本当にやりたいゲーム系のイラストとと大学で出題される課題とのギャップに悩まされたり……。そんなときに、アニメ・ゲームを社会的にどう捉えたら良いかということが書いてある本に出会って、自分のコンプレックスを肯定的に迎えてくれているような気がしたんですよね。それからは以前よりも自由にイラストを表現できるようになりました。
学生の頃からプロとして活躍している人を見ていると、振り切れている人が多かったと思います。なので、悩みを抱えながら制作するより、良い本だったり良い言葉に出会って、悩みを断ち切って自由に制作できる心の持ち方を、社会人になる前に準備しておくと良いんじゃないでしょうか。そして、どこに就職しても伸び伸びとした制作ができるクリエイターを目指してください。


芸者東京エンターテイメント

(2015.6.11)
Daichi Komiya

著者紹介

小宮大地Daichi Komiya

ビビビットの社長。 早稲田大学卒業後、株式会社セプテーニ・ホールディングスでは一貫して人事畑を歩んできた。のちに事業プランコンテストを勝ち抜き、2013年の年の瀬にViViViTプロジェクト始動。
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