皆さんは何をきっかけに映画を観に行きますか?映画ポスターから興味がそそられて見に行くことも多いのではないかと思います。一番最初に映画とお客さんをつなぐ広報物である映画ポスターは、ターゲットによって表現を変えていることが顕著に感じられるのでないでしょうか。そこで今回は国によって異なるデザインに展開がされた映画のポスターデザインに注目したいと思います。
編集・執筆 /SUZUKI, AYUPY GOTO
●映画ポスターとは
映画ポスターは、劇場に映画を観にきてもらうために映画配給会社が制作する宣伝物のひとつです。ビジュアルひとつで、どんな内容の映画なのかを伝え、面白そうだと思ってもらう必要があります。映画ポスターには主に、題名・その映画らしさを伝えるキービジュアル・キャッチコピー・上映開始日などの情報が載っています。
●国によって異なるポスター
映画のポスターは、国によってデザイン・コピーなど載っている情報が異なっている場合があります。それは、国によって映画に注目するであろうターゲット層や、好むビジュアル・内容が違うので、人気がでそうなブランディング・宣伝方法を考えて、制作しているからです。
ベイマックス
http://eiga.com/news/20141228/4/1/01/ (C) 2014 Disney. All Rights Reserved.
上段左から日本・アメリカ・ロシア・韓国、下段左からブラジル・フランス・ドイツ・中国の「ベイマックス」ポスターです。
世界各国にて上映されたディズニーの長編アニメーション「ベイマックス」はマーケティングの手法が国によって大きく異なり、話題になりました。
日本版ポスターには夕焼けに照らされるビル群と主人公の少年、そしてベイマックスの二人が描かれ「”優しさ”で世界を救えるか?」とキャッチコピーが入っています。それらの要素から「近未来的な世界観」「主人公」「世界を救うために立ち向かう映画」「感動もの」であることがわかりますね。韓国版ポスターはパステルカラーが使用され、各国の中で唯一主人公の兄がポスターに登場し、「兄弟愛」「絆」に着目しているように感じます。そしてブラジル、ロシア、中国のポスターは躍動感あふれるビジュアルが採用され、「アクション」「ヒーローもの」の印象を強く打ち出しています。同じ映画でも国ごとの国民性に合わせてデザインされていることがよく表れていますね。
借りぐらしのアリエッティ
http://www.karigurashi.jp/index.html (C) 2010 GNDHDDTW (C) 2012 GNDHDDTW
どちらも小人が主人公であることが一目で伝わるポスターですね。ですが、北米版の方が「借りぐらし」、人間に見つかってはいけない「緊張感」が伝わりやすいかもしれません。筆者は日本版ポスターからは登場キャラクターの「意思の強さ」、北米版からは「ファンタジー」要素が感じられてどちらも好きなのですが、皆さんはどちらの方が観てみたいと思いますか?
ファンタスティックビーストと魔法使いの旅
http://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/ (C)2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
原題は「Fantastic Beasts and Where to Find Them(幻の動物とその生息地)」でしたが、日本では「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」と邦題がつけられました。日本と海外ほぼ同じビジュアルで、いくつかのバリエーションのポスターが公開されていますが、日本版ポスターには「ハリーポッター新シリーズ」であることが大きく取り上げられ、主要登場人物の顔がよく見えるものが多く使用されているように思います。そんな中、中国版ポスターでは通常のポスターの他に、劇中に登場する魔法動物を中国絵画のように描いたポスターシリーズが展開されています。中国の人から見れば、魔法動物たちにより親しみが湧いて観に行きたくなってしまいそうですね。
アントマン
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html (C)Marvel 2015
自分の体を1.5センチにすることができるスーツを着た主人公が、小さい体を生かしながら悪に立ち向かうヒーロー映画です。日本版ポスターは周囲のものと比較することで、各国の中でも特に「小さい」主人公が出てくることが強調されていますね。米国版ポスターはカッコイイヒーローものであること、そして誰が出演しているのかが一目でわかるようになっています。
おくりびと
http://www.tbs.co.jp/movie/okuribito/ (C)2008映画「おくりびと」製作委員会
第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した、納棺師に焦点を当てた作品です。日本版ポスターはピンクが多く使用され優しい印象が感じられます。メインビジュアルとして亡くなった方にお化粧を施すシーンが使用され「死」を取り扱った作品だということがわかります。しかし韓国版では登場人物ふたりがピックアップされ「登場人物の関係性」に注目、米国版には雄大な山々の景色を前にチェロを弾く主人公がメインで題名は「DEPARTURES(出発)」に変更され「主人公の人生」に焦点が当てられています。
●さいごに
映画ポスターにはその映画のどこが面白いのかを打ち出したデザインが凝縮しています。海外版と比べてみることで、同じ映画でも魅力の伝え方は多くあることがわかるのではないでしょうか。もし興味があれば、ぜひ好きな作品の海外版ポスターを調べてみてください。面白い発見があるかもしれません。
(2016.12.7)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア