映画を見る際、あなたはどこに注目しますか? ストーリーはもちろんですが、映画の世界観を演出するセットデザインが気になったことはありませんか?コンセプトを元に作ったセットデザインは、映画の世界観を上手く表現しています。今回は映画のセットデザインから、“見る人を惹きつける演出とは何か”詳しく考えていきたいと思います。編集・執筆 / SHIGEMATSU, AYUPY GOTO
セットデザインとは何か?
「セットデザイン」とは、テレビや舞台、映画、プロノーションビデオなどで使われる撮影用の空間デザインを指します。決められたコンセプトを元に使う色、インテリア、照明、飾りなどを決めながら、空間をプロデュースしていきます。設置されている小道具一つにしても、ストーリーや時代、登場人物に合っているものか計算して設置しているのです。セットデザインを考える時には、紙に図面を書き起こしたり、実物よりも縮小したサイズの模型を作ったりして、構成を考えます。実際にカメラを使った時にどういった背景になるのか、ストーリーに合っているかなど細かい確認を積み重ね、様々な過程を通して、空間のイメージをどんどん膨らませていきます。見る人がグッと映画の世界観に引き込まれるような空間を作れるかどうかが、重要な鍵となってくるのです。
コンセプトに合わせて、映画の世界観を作り上げる
セットデザインを作る上で一番大切なのは、コンセプトに合った空間を作ることです。どんなに作り込まれた空間でもコンセプトやイメージとかけ離れていては、映画の世界観のベースとなるセットとしてふさわしくありません。なので、どういったものが合うか、じっくりと検証する必要があります。セットを細かく見てみると、時代背景やその年代のものが使われていたり、登場人物の設定に合った色が使われていたり……普段は何気無く見ているものにも細かい工夫が各所に施されているので、ストーリーと合わせてセットデザインにも注目してみてください。
セットデザインが素敵なおすすめ映画を紹介
ザ グランドブダペストホテル
「グランドブダペストホテル」というホテルを舞台に繰り広げられる、ウェス・アンダーソン監督のミステリー・コメディ映画です。この映画の一番の見所は、美しい色を使い、世界観を上手く表現しているところです。ピンクと水色のホテルはもちろん、登場人物たちの着ている洋服からはそれぞれの個性が感じられ、ケーキが入っている箱などのデザインもとにかく印象的な色使いです。可愛らしい雰囲気なので、女性の人気を集めています。一見大きなホテルのように見える外観は、ミニチュアを使って撮影されたそうです。細かい部分まで精巧に作られたセットにも注目です。
マリー・アントワネット
ソフィア・コッポラ監督が手がけた、悲劇の王妃マリーアントワネットの成長を描いた映画です。華やかで思わず見とれてしまうセットからは、当時マリーアントワネットが過ごした豪華な暮らしぶりを感じることができます。インテリアとして使われている装飾や小物に至るまで、女の子の好き!が詰まったデザインには、きっと誰もが憧れてしまうはずです。特に食事のシーンで出てくるたくさんの食べきれない程のスイーツは、飾っておきたいぐらい可愛いです。色合いも上品で落ち着いた雰囲気を兼ね備えているところが、映画の魅力をさらに引き立たせています。どの場面を切り取っても画になるような、美しい映像美に圧倒されます。
チャーリーとチョコレート工場
不思議だけど、どこかユニークなお菓子の世界を楽しむことができるティム・バートン監督の映画です。キャンディの木にチョコレートの川といった、見ているだけでワクワクするような場面に思わず目が釘付けになってしまいます。セットのデザインも独特で見たことのないような機械や道具がたくさん登場しているため、現実世界にはない面白さを感じることができ、ファンシーな世界観に思わず想像力が掻き立てられます。画面を通して見ていても、甘い香りを感じることができる程、たくさんのカラフルなお菓子が出てくるところもこの映画ならではの魅力です。
ハリーポッター・シリーズ
世界中で愛され続けている、J.K.ローリング原作のハリーポッターシリーズ。ハリーポッターと言えば、魔法の世界を象徴的に表している建物が特徴的です。中でも、ハリーたちの通うホグワーツ魔法学校の中にある大広間で食事をする場面は、誰もが一度は見たことのあるシーンではないでしょうか。机の上にはたくさんの料理が並べられていて、上空にはろうそくが灯っている、見ているだけでファンタジーの世界に自分も入り込んだような気分になれます。どのシーンのセットデザインもダイナミックで、世界観に思わず心が踊ってしまいます。大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハリーポッターコーナーでも、映画に近い演出がされていて、ハリーポッターの世界にいるような体験をすることができるので、気になる方は一度足を運んでみてください。
ヘルタースケルター
漫画の原作を元に、蜷川実花監督が演出を手掛けた、鮮やかな色彩が魅力的な映画です。主人公が住んでいる部屋はファッショナブルで、街中ではなかなか見かけない個性的なインテリアグッズが並べられています。カラフルな演出が好きな女性であれば、釘付けになってしまうかわいさ。部屋以外でも、使われているインパクトのある色使いは、一度見ただけできっと印象に残るはずです。色を巧みに使って、主人公の気持ちの変化や感情を表現しているように感じました。場面ごとのセットで使われている小道具もカラフルでポップなものが多く、この映画でしか感じられない世界観です。
最後に
作られた空間次第で、見る人が感じる印象も大きく変化します。セットデザインを細かく見てみると、ストーリーとの関係性を感じることができると思います。セットデザインの仕事をする予定がない人も、ものづくりをする上でいろいろな観点で物事を見ることができると、デザインの表現幅がきっと広がるはずです。今回の記事を通して気になった作品があれば、セットデザインにも注目しながら映画を楽しんでみてください。
(2017.1.30)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア