「あの頃に戻りたい」大人の“子どもゴコロ”をくすぐる、グッズデザインの秘訣

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「あの頃に戻りたい」誰もが一度は思ったことがあると思います。もう大人になってしまった以上、子供の頃に戻ることはできません。切ないですが……事実です。しかし、大人は昔馴染みがあったものを見たり、使ったりすることでその欲求を満たしています。今回はそんな複雑な「大人のこどもゴコロ」を解消してくれるグッズと、そのデザインの工夫などに注目して、ご紹介します。編集・執筆 /OSARAGI, AYUPY GOTO

目次

  • 1.退行欲求とは
  • 2.従来の「退行欲求」を満たすもの
  • 3.今の「退行欲求」解消グッズ
  • 4.ただアニメをあしらっているだけでない
  • 5.最後に

1.退行欲求とは

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退行欲求(たいこうよっきゅう)とは、「昔に戻りたい」と思うことです。今回の記事内では『大人が子供の頃に戻りたいと思うこと』として、お話できればと思います。

普段、仕事をしている大人たちは「仕事」「人間関係」「SNS」などの様々な「ストレス」と共に生きています。
「明日までに会議の資料を作らなければならない」「上司に叱られた」「友人からのLINEの返信を早く返さなきゃ」など、様々なプレッシャー・怒り・悲しみなどがストレスになるのです。
そして、そんなしがらみから解放してくれるのが「あの頃に戻りたい」という気持ちです。

「あの時はあんなに無邪気だったなあ。子供の頃に戻りたいな」と思うことで、日々の生活の疲れから逃れます。

例えば、クレヨンしんちゃんのお父さんである「野原ひろし」は会社では頼れるいい上司ですが、家ではゴロゴロしていてだらしのないお父さんです。これも一種の「退行欲求」が生じ、せめて家では自分のしたいようにしたいと言う心の表れではないでしょうか。

私たちも学業や仕事に区切りがつくと、漫画を読んだり、ゲームをしたりしてリラックスをしていると思います。ここでは一時的に子供のような気持ちでいられるのです。

つまり、「退行欲求」は誰もが持っているものであり、それを満たしながら、大人として生きています。

2.従来の「退行欲求」を満たすもの

大人たちはどのようにして「子供の頃」に戻っているのでしょうか。

ガンプラ

引用:https://bandai-hobby.net/item/2012/


ガンプラとは株式会社バンダイが発売している、機動戦士ガンダムのプラモデルのことです。40代〜50代の男性が主に虜になっています。

1979年に「機動戦士ガンダム」のアニメが放映されました。戦争などの重たいテーマを扱っているロボットアニメです。

ガンプラは、いくつかグレードというものが存在しており、グレードによって大きさやパーツの数が異なります。昔のガンプラよりも今のガンプラのほうが大人をターゲットにしていることもあり、作った際の完成度も高くなっています。

ミニ四駆

引用:http://www.tamiya.com/japan/products/95336/index.htm


ミニ四駆とは、株式会社タミヤが発売している小型の動力付き自動車模型のことです。30~40代の男性が虜になっています。自分で組み立てた車がコースを走るのは快感ですよね!

ミニ四駆は1980年代〜1990年代の間で2回のブームが巻き起こり、今もなお高い人気を誇っています。ミニ四駆を題材にしたTVアニメ「爆走兄弟レッツゴー!!」も強く影響しています。最近では親子でミニ四駆に釘付けになっていることが多いです。

大人になり、工作スキルも上がり、「自分だけのマシン」を作れるのがポイントです。

Nゲージ

引用:http://www.tomytec.co.jp/tomix/nyumon/layout.html


Nゲージとは、株式会社トミーテックが発売している 縮尺1/148-1/160の鉄道模型規格の総称です。30代〜50代の男性に人気があります。

昔、「プラレール」などの鉄道模型で遊んだ経験のある人は多いのではないでしょうか。Nゲージは、それをより本物らしく、精密に作られたものです。蒸気機関車、路面電車、新幹線などの豊富な鉄道模型がウリです。そして、鉄道模型だけでなく、鉄道が走る町や風景も作ることができるキットがあります。

懐かしい風景を再現できたり、自分なりの創意工夫ができて楽しむことができたりします。

このように、いずれの「退行欲求」解消グッズは男性向けのものが大半でした。しかし、これらのグッズはある程度作る知識も必要なため、手を出しにくいのも事実です。

ところが、近年バリエーション豊富な「退行欲求」解消グッズが登場しています!

3.今の「退行欲求」解消グッズ

近年では女性に向けた商品が数多く販売されています。その理由の一つとして、「女性の社会進出」があります。女性で働く人が増え、金銭的な余裕が出てきたことや、現代を生きる中で多くのストレスがかかっていることで、購入する人が増えているようです。

また、男性はアニメの世界観が濃く、創作するようなものを欲する傾向にありますが、女性は「普段使えるかどうか」という点を重視しています。

では、早速どんなものがあるのか見てみましょう!

美少女戦士セーラームーン コスメ

美少女戦士セーラームーンは、1990年代に大ヒットした少女漫画・アニメです。少女漫画雑誌「なかよし」からアニメ化しました。そして、戦闘美少女・魔法少女の先駆けです。普段は「普通の中学生」なのに変身すると勇敢に敵に立ち向かう美少女戦士に大変身!子供ながらに憧れましたよね。

2017年、美少女戦士セーラームーンは誕生25周年を迎えました。それを皮切りに、様々な商品などとコラボレーションをし、再び脚光を浴びています。

引用:http://tamashii.jp/special/proplica/moon_stick/


引用:http://p-bandai.jp/item/item-1000114700/

主人公であるセーラームーンは、スティックやロッドを用いて敵と戦っていました。色や形がとても可愛く、これを手にするのが当時の少女たちの憧れだったと思います。筆者(Mayu Osaragi)もこの玩具を持っていました。

そんなセーラームーンが持っているムーンスティックとスパイラルハートムーンロッドが、チークブラシとして再登場。キュンとするフォルムで、持っているだけでウキウキしてしまいそうです。モチーフ部分はアニメに登場したアイテムのデザインを細部まで再現し、取り外しも可能です。

引用:http://p-bandai.jp/item/item-1000114690/


また、「美少女戦士セーラームーンS」に登場するセーラームーンの変身アイテム「コズミックハートコンパクト」が、チークカラーに生まれ変わりました。高級感のある作り、さりげない輝きが大人の女性でも使えるポイントです。

夢のクレヨン王国 香水びん バッグチャーム

夢のクレヨン王国は、福永令三原作による児童文学「クレヨン王国」シリーズの1997年に放送されたTVアニメです。クレヨン王国の王女であるシルバー王女が、石にされた両親をもとに戻すため、クレヨン王国各地を旅するという物語です。

引用:http://www.suruga-ya.jp/product/detail/607904513001


上の写真はアニメが放送中だった頃の玩具です。占いができる仕様になっていて、キラキラした見た目も子供達から人気がありました。

引用:http://p-bandai.jp/item/item-1000098872/


主人公のシルバー王女が12人の野菜の妖精を呼び出すのに、おまじない香水びんを使っていました。なんとその香水びんがバッグチャームに変身!おもちゃと比べると、ぱっと見ではアニメコラボグッズとはわからないくらい重厚な作りです。普段の服装などにも溶け込みそうですね。

カードキャプターさくら ヘアドライヤー

カードキャプターさくらは、1998~2000年に放映されたTVアニメです。美少女戦士セーラームーンと同様、少女漫画雑誌「なかよし」からアニメ化されました。封印が解かれるとこの世に災いが訪れるという「魔法のカード」を回収するため、カードキャプターとなった少女が戦う姿を描いています。

なんと、2018年1月から新アニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」が始まります。今後ますます大人のファンを増やしていきそうです。

引用:http://takaratomymall.jp/shop/g/g4904810864240/


主人公であるさくらは、上の「封印の杖」を劇中で使っています。

引用:https://www.super-groupies.com/products/detail.php?product_model_id=1365


なんと「封印の杖」が家電であるドライヤーに大変身!普段のドライヤーを使うよりも、ワクワクして、いつもより可愛くなれそうな気がします。

4.ただアニメをあしらっているだけでない

これらの商品は、ただ「アニメ」がモチーフになったグッズではなく「いかに大人に手に取ってもらえるか」という工夫が詰め込まれています。
 
次に、こういったグッズのデザインに注目して、流行る理由を大きく3つにまとめました。

実用向き

「もう大人だし、いくらなんでも玩具を買うのは拒まれる」と言う人に手に取ってもらいやすいのが、実用品です。やはり、大人ともなればごっこ遊びや玩具を鑑賞をする人はそう多くないでしょう。子供の出生率の低下に目を付けた玩具メーカーは、新たな市場へと「大人」にターゲットを広げ、近年、仕事場や普段の日常で使うことができるアニメグッズを販売しています。

例えば、先ほど紹介したコスメやドライヤー、目薬、シェーバー、などが挙げられます。

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▲RPGゲームの王道「ドラゴンクエスト」がコラボした「ロート製薬」の目薬

筆者も「普段使うことができるし、可愛いし、買っちゃおう!」と思い、衝動買いをしてしまいました(笑)。このスライム型目薬は大ヒットし、今もなお品薄状態が続いています。

浮かない

次に大切なのは大人が持っていても「浮かない」デザインであるということです。

例えば、昔売っていた魔法少女系の変身コンパクトを、コスメとしてそのままデザインに落とし込むと、玩具の「安っぽさ」「子供っぽさ」が目立ってしまいます。それは使われている材質(メッキなど)、大きさなどによってそのように見えてしまうのですが、そのようなものを大人が持つことに、抵抗がある人は多いでしょう。

また、あまりに精巧な作りでピカピカしていると日常で使っているものとのギャップが激しく、普段使いには適しません。実際に、セーラームーンコスメは日用化粧品のパッケージを参考にし、「ぱっと見はアニメグッズとは分からない……かといってアニメの世界観を壊さないデザイン」を心がけているそうです。

このことから多くのアニメグッズは実用品に溶け込みながらも、アニメ独自の世界観がわかるようなバランスのとれた商品を開発しています。

参考…少女アニメの世界観をファションに“変身”する20代後半から30代前半の女性たち

手軽さ

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駅や空港でも多く設置されているガシャポン、皆さんも一度は利用したことがあると思います。現在、アニメ関連のガシャポンが増えており、内容はキーホルダー、イヤホンジャック、シュシュ、ポーチ、チャームなどがあります。

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▲変身コンパクトを開けると小物入れになる

1回200〜400円という安さなので、比較的お金に余裕がある大人は「懐かしい!可愛い!400円なら回してみようかな」という心理になります。

また、カプセルサイズということもあり、ほとんど場所を取らないのも手軽にアニメグッズを買ってみよう!と思わせる秘訣でしょう。

5.最後に

退行欲求とは大人が「子供の頃」を思い出し、「あの頃に戻りたい……」と思うことです。昔は男性向けのグッズが多く、大掛かりでなかなか手をつけにくいものが多い印象でした。しかし、近年では女性向けのグッズも多く存在し、気軽に日常生活で使うことができるグッズが多く登場しています。そして、大人が「買ってもいいな!」と思えるデザインにするには秘訣があるのです。子供の頃に憧れたアニメグッズそのものを実用品に落とし込むのではなく、あくまでターゲットは「大人」であるという前提で、リデザインをする必要がありそうですね。

そのようなメーカーの工夫を読み取って、普段の創作活動に活かしてみましょう!

(2017.8.14)

著者

大佛茉由

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科所属。インタラクションデザインを勉強中です。お笑い芸人のコントをYouTobeで見ることにはまっています。

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