滞在して作品制作!アーティスト・イン・レジステンスを知ろう

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みなさんは、『アーティスト・イン・レジステンス』という言葉を聞いたことはありますか?
「アーティストとして海外で留学してみたい。」「集中して制作に没頭する期間が欲しい」と思う人に、ぜひ知っていただきたいプログラムです。今回は、日本と海外の『アーティスト・イン・レジステンス』についてご紹介します。
編集・執筆 /RINA SAITO, AYUPY GOTO

目次

●アーティスト・イン・レジステンスとは?
●日本で参加できるアーティスト・イン・レジステンス
●海外で参加できるアーティスト・イン・レジステンス
・最後に

●アーティスト・イン・レジステンスとは?

アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-Residence)

 
「AIR」とも略され、アーティストが様々な場所で滞在しながら作品制作を行うことのできる制度を指します。

「AIR」は、公募制のもの、滞在者を選定するものなど様々な形式があり、スタジオやアトリエとして利用する施設や宿泊施設は、アーティスト・イン・レジデンス専用として作られたものから、アパートをリノベーションしたものなど、様々です。宿泊施設が用意されているので、制作のみに集中できる期間として、若手のアーティストを育成する役割も果たしており、その土地の異なる文化に触れ、インスピレーションを得ながら制作できるという利点があります。

ビエンナーレ・トリエンナーレとの違い

 
「ビエンナーレ・トリエンナーレ」では、日本で開催されるものは、地域にフォーカスを当てアーティストが開催地に滞在し、地域を取り入れた作品が多い印象ですが、すべてのものが必ずしもそういった条件があるわけではありません。「AIR」とは、一度に同じ場所で、様々な作家の作品を発表できるという点は共通していますが、「ビエンナーレ・トリエンナーレ」は、アーティストは毎回発表されるテーマを意識して作品を制作したり、テーマに沿うような作品を出展したりと、必ずしも滞在して作品制作をする、ということが必須のものではありません。
 
そのほかに、「AIR」では、成果発表としての作品展示が義務付けられていることも多いですが、主に作品制作に重きを置いているのに対し、「ビエンナーレ・トリエンナーレ」は、大規模な作品発表の場としての役割を果たしている、という所に二つの違いが見受けられると思います。
 

 
 

●日本で参加できる、アーティスト・イン・レジステンス

黄金町アーティスト・イン・レジデンス

 
【黄金町アーティスト・イン・レジデンス】は、「NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター」が、2009年から運営している、レジステンスプログラムです。
国内外のアーティストやデザイナー、工芸作家、建築家などクリエイターであれば誰でも応募可能なもので、神奈川県横浜市にある、初音町・黄金町・日ノ出町からなる「黄金町地区」に滞在し、地域住民の方々との交流を通し、「まちづくり」の視点からも、作品制作をすることができます。

対象     作品ジャンル不問
滞在場所   神奈川県、横浜市
応募形式   申請書、ポートフォリオ提出
滞在期間   長期(約9ヶ月間)
施設利用料  20,000円/月 から

中間発表・成果発表としての作品展示、一定数のワークショップ開催などの応募条件があります。

黄金町アーティストインレジデンス の詳細を見る


 

国際芸術センター青森・ACAC


《楽園/境界》2014年、ミクストメディア、サイズ可変、撮影:木奥恵三
<引用 | http://www.acac-aomori.jp/air/2017-3/ >

【国際芸術センター青森・ACAC】は、AIRを中心に運営する施設として、著名な建築家である安藤忠雄氏によって設計され、2001年に開館されました。AIRに参加できるアーティストは、年に2回、推薦と公募に分けて決められており、レジデンスプログラムでありながら、毎年異なったテーマが設けられているのも、大きな特徴となっています。

対象    作品ジャンル不問
滞在場所  青森県、
応募形式  応募用紙、顔写真、ポートフォリオ 提出(※郵送のみ受付)
滞在期間  約3カ月間
助成金   交通費・制作費・生活費 支給

成果発表としての作品展示、アーティストトークやワークショップへの参加、日常会話レベルの英語力などの応募条件があります。

国際芸術センター青森・ACAC
「アーティスト・イン・レジデンス」の詳細を見る


  

 

AIR3331


<引用 | http://residence.3331.jp >

【AIR3331】は、秋葉原にある廃校を再利用され作られたアートセンター「3331 Arts Chiyoda」が、2011年から運営を開始したレジデンスプログラムです。日本のAIRではめずらしく、東京都内の中心地での滞在、制作、そして作品発表することができ、費用がかかるの場合もありますが、作品撮影や通訳、相談などのサポートを受けることもできます。

対象    国内外で活動するアーティスト
滞在場所  東京都、千代田区
応募形式  応募用紙、活動履歴書、ポートフォリオ、説明資料 提出
滞在期間  長期滞在 約3ヶ月まで
      短期滞在 1ヶ月未満
施設利用料 ¥230,000/月 より

滞在費・施設利用費などの支払い能力があること、制作プランについての話し合いなどの応募条件があります。

AIR3331 の詳細を見る


 

●海外で参加できるアーティスト・イン・レジステンス

 
 

Cité Internationale des Arts


<引用 | http://www.transartists.org/air/cite-internationale-arts >

「Cité Internationale des Arts(パリ国際芸術都市)」は、著名な芸術家だけではなく、若手作家も含めた世界中のクリエイターに開かれている、1965年から開始されたレジデンスプログラムです。Hotel de Ville(パリ市庁舎)地区という、パリ市内の中心地にAIRの施設が置かれており、好立地であることが魅力の一つとなっています。フランス文化省とパリ市が設立した財団が運営しており、パリ市内でありながら、安い施設利用料で滞在できることも特徴的です。

対象   世界中のアーティスト
滞在場所  パリ、フランス
   (18, rue de L'Hotel de Ville,75004 Paris,France
   24 rue Norvins,75018 Paris,France)
応募形式  ・日本にある提携大学を通しての申し込み
      ・公益財団法人フランス語教育振興協会
       (APEF)を通しての申し込み
滞在期間  2ヶ月〜1年
施設利用料 410ユーロ(約55,000円)/月
       (※申し込んだ機関によって異なる場合があります)

Cité Internationale des Arts の詳細を見る(フランス語)

Cité Internationale des Arts について
「APEF」のHPで詳細を見る(フランス語)

 


ISCP(The International Studio & Curatorial Program)


<引用 | http://iscp-nyc.org/event/panel-discussion-on-cca-lagos-at-iscp >

「ISCP」は、1994年に設立されたレジデンスプログラムで、今までも日本から多くのアーティストが参加しています。現代美術の中心地である、ニューヨーク市内にスタジオ、宿泊施設を構えているのが特徴で、キュレーター訪問や、作品へのアドバイス、美術館への見学など、充実したプログラムを実施しているのも魅力のひとつとなっています。

対象   世界中のアーティスト、キュレーター
滞在場所 ニューヨーク、アメリカ合衆国
     (040 Metropolitan Avenue, Brooklyn, NY 11211)
応募形式 ・パートナー(政府や団体)を見つけて、応募
     ・助成金(文化庁など)を受給し、直接メールでの応募
     (※助成金などの受給者のみ入居可能)
滞在期間 3〜12ヶ月

ISCP の詳細を見る(英語)

 
 

●最後に

日本と海外の「アーティスト・イン・レジステンス」を比較すると、日本のものは、地方で実施されるものは「まちづくり」などの地域に根ざした活動が大切になっているように感じましたが、海外のものは地域や学生との交流はもちろん、作品制作に対してのサポートや、宿泊施設への配慮など、クリエイター自身にたいしてのケアや、働きがけが多い印象を受けました。ふだん馴染みのない「アーティスト・イン・レジステンス」についての記事でしたが、 「いつかAIRに参加してみたい!」「アーティストの活動について知りたい。」という方の参考になれば嬉しいです。

(2017.9.28)

著者

齊藤梨奈

多摩美術大学 絵画学科 油画専攻を2019年3月に卒業。 古着屋、雑貨店巡り、服やアクセサリー作りをするのが好きです。

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