2016年のファッショントレンドとして刺繍への注目が集まっています。華やかだったり、控えめで可愛らしかったり、不思議な存在感を持つことで人気の刺繍ですが、その歴史や刺繍を専門に作品を作る「刺繍作家」についてご存知でしょうか?
この記事では、刺繍作家という仕事と、日本で活躍しているアーティストをご紹介します。
編集・執筆 / SHIONE, AYUPY GOTO
目次
- 1.刺繍作家とは
- 2.刺繍作家になるには
- 3.活躍の場
- 4.日本で活躍する刺繍作家紹介
- 5.最後に
1.刺繍作家とは
刺繍とは
糸や紐、リボンなど、布を中心とした素材の表面に針を用いて刺したり留めたりして構成する作品のことです。
手芸の一種で、日常生活のなかでは服飾雑貨に多く見られます。
刺繍の歴史は非常に長く、刺繍文化が根づいて育った地域によってその技法には違いがあります。
刺繍作家は刺繍を用いて様々な作品を作るアーティストのことです。
アーティストごとに使う技法や素材は変わってきます。刺繍は、裁縫技術の発達によって機械で行われることが多くなりましたが、刺繍作家は手作業で伝統の刺繍や、新しい技法を表現します。機械で行うのとは違った魅力ある作品を生み続けています。
2.刺繍作家になるには
刺繍について学び、作品を作ることが重要になります。
刺繍や手芸の専門学校、服飾を学べる専門学校や大学で技術を培うのが一般的です。その後一度、アパレルブランドや繊維メーカーなどに就職し、そこから手芸作家として独立する方もいます。
しかし日本では刺繍を専門に学べる学校は少なく、刺繍だけを専門的に学びたい!という場合だとなかなか難しいのが現状です。本格的な刺繍の技術を身につけるなら、留学やアーティストに師事してもらう道を考えてみるといいかもしれません。
いかに魅力的なものを作ることができるかが一番大切なので、独学で成功しているアーティストもいます。
フランスの工房"ルサージュ"
刺繍の巨匠「フランソワ・ルサージュ」が立ち上げた工房がフランスにあります。図案作家やレース職人など60名のスタッフが働いており、この工房からシャネルの刺繍の服など、19世紀後半から75000点の刺繍サンプルが誕生しました。
ルサージュは刺繍の専門学校「エコール・ルサージュ」としての側面もあり、クロッシェ・ドゥ・リュネヴィルというオートクチュール刺繍には欠かせない技術を学ぶことができます。日本から留学して学ぶ人も多いそうです。
3.活躍の場
刺繍作家はフリーランスで企業とコラボレーションするなど、依頼を受けて仕事をしている人が多いです。
アーティストとして個展を開いて作品を展示・販売したり、アパレルブランドを立ち上げたり、お店に作品を卸して販売している人もいます。
刺繍でフリーランスの仕事をするには、作品が魅力的かどうかが強く関わってくる、実力の世界です。
SNSの活用
インターネットの普及と、ハンドメイドブームで、SNSを活用して自分の作品を知ってもらう人が増えています。刺繍作品をWEB上にポートフォリオサイトにしてまとめることは、情報発信や交流の場として活用しやすい媒体と言えます。
刺繍作家とは言えないかもしれませんが、趣味の延長で刺繍を楽しみながら仕事にする人も多いようです。
4.日本で活躍する刺繍作家紹介
ここで、今日本で活躍している刺繍作家を紹介していきたいと思います。
●二宮 佐和子さん ( にのみや さわこ )
刺繍アーティスト。絵画、ファッション、インスタレーション、平面、立体、空間など様々なものを刺繍で表現しています。
アートフェスティバルやギャラリーイベントで活躍されています。全面を覆うように行う総刺繍の技法と生命力にあふれた色使いや自由な発想が魅力的です。
●田川 啓二さん ( たがわ けいじ )
オートクチュールビーズ刺繍デザイナー。ビーズ刺繍のカリスマと言われています。1989年にオートクチュールビーズ刺繍を提案する会社、株式会社チリアを設立しました。ひとつひとつが手作りのドレスや服飾雑貨は著名人をはじめとした多くの人に愛されています。
クラウス・ハーパニエミ × 田川啓二
● 佐藤 ちひろさん ( さとう ちひろ )
北欧の児童文学に影響を受け、デンマークに留学し手工芸を学び、そこで刺繍が施された箱「エスカ」と出会い、刺繍とエスカの講師として日本で活躍しています。小さくて優しい雰囲気と、北欧の伝統技法を用いた刺繍が特徴的な作家さんです。
著書に『ちいさな刺しゅう』、『やさしい刺しゅう』(NHK出版刊)等。
【展示予定作品より】窓越しに見えるクリスマスツリー、開くと沢山の引き出しが現れる、物語「マッチ売りの少女」をモチーフにしたエスカ作品。是非この機会にご覧頂ければと思います。展示の詳細 https://t.co/VcDmfbJvNP pic.twitter.com/96QvbGqJLN
— 刺しゅう/小箱◆佐藤ちひろ (@atelier_aesker) February 28, 2016
● 長谷 麻美さん ( ながたに あさみ )
きものブランド“ドゥーブルメゾン”と刺繍でコラボレーションし、話題を呼んだ作家さんです。small worksという名前で活動されているそうで、今までもドゥーブルメゾンと何度かコラボしています。
繊細なレース、その上に上品な花のが幾重にも咲いている刺繍。アンティークのビーズと糸で作られた一点物の着物に込められた物語に引き込まれます。
● emiumigumiさん ( えみうみぐみ )
2013年に京都のアクセサリーSHOP “MUM’S THE WORD”への作品参加をきっかけに、刺繍作家としての活動を始めました。
アクセサリーをはじめ、服飾雑貨やウェディングボードなど幅広く展開しています。
身につけてお出かけしたくなるような、可愛らしい世界観です。
● 青山 悟さん ( あおやま さとる )
刺繍アーティスト。工業用ミシンで丹念に縫われた刺繍表現に、現代人の生活とテクノロジーの批評を宿した作品を制作されています。作り込まれた刺繍作品は異質で不思議な力を持っているように感じます。
● Kanae Entaniさん ( かなえ えんたに )
nikeのプロモーション用の刺繍アートワークや、NHK EテレのCMの刺繍アートワークを担当するなどフリーランスで幅広く活躍されている刺繍アーティストです。ワークショップなども行っています。
伝統的な刺繍の技法を使いながら、現代的でどこか幻想的なかわいらしさのある作品が魅力的です。
著書『1色からはじめる刺繍 花と動物の刺繍と布小物』
5.最後に
様々な素材を使って、いろいろな表現ができる刺繍。非常に奥深い世界です。 同じ図柄でも絵で描いたりプリントしたりするのとは全く違った雰囲気になる刺繍は、まだまだ新しいアートの表現方法やファッションの流行の鍵を握っているように感じます。
(2019.03.18更新)
(2016.11.1)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア