芸術がより多くの人に親しまれるよう、新しい作品が後世に残るように、美術界で重要な役割を果たしている「ギャラリスト」という仕事があります。今回は、ギャラリストについて、そして求められるスキルなどをご紹介していきたいと思います。
編集・執筆/RINA SAITO, AYUPY GOTO
イラスト / Miyagi Takumi
目次
1.ギャラリストとは?
2.ギャラリストになるには
3.求められるスキル
4.日本で活躍するギャラリスト紹介
5.最後に
1.ギャラリストとは
ギャラリストとは、ギャラリーと呼ばれる美術画廊で、コレクターなどの顧客に対して、アーティストの作品の販売を行う美術商(びじゅつしょう)のことを指します。
ギャラリストは、作品を展示する展覧会スペースとしてギャラリーを持ち、そのギャラリーに所属させるアーティストと契約を結びます。作品を販売するとともに、新作の展示会なども行われ、新しい美術作品を発信する場としてアーティストを育てる役割も担っています。
また、日本では百貨店に美術画廊が併設されていたり、飲料メーカーや化粧品会社がギャラリーを持っていたりする場合があります。これは、CSR(企業の社会的責任)の一貫として行われているものが多いのですが、世界的に見ると、企業がギャラリーを運営しているのは珍しいことなのです。
2.ギャラリストになるには
ギャラリストになるには、専用の資格は必要なく『美大などの専門的な学校を出ていないとなれない』ということはありません。自分のギャラリーを持とう!と思えば、誰でも始めることができます。
また、ギャラリーの形態も多様化してきています。
従来では、”展示スペースを持ち、自分がセレクトしたアーティストの作品販売をする”というかたちが一般的でしたが、近年は、雑貨や古美術などを販売したり、カフェが併設されていたりとさまざまな要素が合わさったギャラリーも登場しています。
職種としては「自営業」になるので、個人事業を開始した時には「開業届」や、過去の作品を販売する場合は「古物商許可申請」が必要となります。
自営業でなく既存のギャラリーへ就職したい場合は、ギャラリーごとに採用・求人条件が違っています。採用の時期も通常の企業とは違う場合があるので、気になるギャラリーを見つけたらこまめに情報収集をしておくと良いでしょう。
3.求められるスキル
▼語学力
アーティストが有名になってくると、海外のコレクターへの販売や、海外のアートフェアにも作品を出展することがあります。海外の運営スタッフとメールでやりとりする機会が多くあり、英語など外国語のスキルが求められます。▼美術に関する知識
誰でもギャラリーを始められるからといって、美術や作品に関する知識がなければ、アーティストの作品を見ても良し悪しの判断ができず、ギャラリーとしての主軸がブレてしまいます。自分が興味深い、と感じる基準の制度を高めるためにも、美術史や美術技法、その領域だけでなく、周辺の多岐に渡る分野への興味を持ち、勉強することが大切です。
また、新しい才能を発掘する為に、若い作家に沢山会い、作品を沢山見ることも大事な仕事のひとつです。これを繰り返すことで、トレンドを掴む力や作品を見極める力がついてくると思います。▼コミュニケーション能力
ギャラリストは、多くのアーティストと直接話をして、作品について理解したうえで、ギャラリーに所属してもらうかどうか決めたり、作品をコレクターなどの顧客に直接販売したりする仕事です。そのため、様々な人とのコミュニケーションが必須となります。
4.日本で活躍するギャラリスト紹介
ここで、2018年現在日本で活躍中のギャラリスト、そして運営するギャラリーを紹介していきたいと思います。
● 小山 登美夫 さん ( こやま・とみお )
小山登美夫さんは、六本木にある「小山登美夫ギャラリー」と渋谷ヒカリエにある「8/ART GALLERY/TOMIO KOYAMA GALLERY」のギャラリストです。過去には、村上隆さん、奈良美智さんなどを輩出し、現在でもオノ・ヨーコさん、蜷川実花さん、日高理恵子さん、杉戸洋さん……など有名なアーティストが多く所属しています。六本木にある「小山登美夫ギャラリー」は、タカ・イシイギャラリー、シュウゴアーツなどが入った「complex665」の建物2Fにあります。
「小山登美夫ギャラリー」
<引用 | https://bijutsutecho.com/news/10178/ >「8/ART GALLERY/TOMIO KOYAMA GALLERY」
<引用 | http://www.omote-sando.info/special/33597 >小山登美夫ギャラリー
営業時間 11:00−19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
HP http://tomiokoyamagallery.com
住所 〒106-0032
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
8/ART GALLERY/TOMIO KOYAMA GALLERY
開館時間 11:00−20:00
定休日 不定休(展示替え期間)
HP https://www.hikarie8.com/artgallery
住所 〒108-0022
東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 8F
● 三潴 末雄 さん ( みづま・すえお )
三潴末雄さんは、市ヶ谷にある「ミヅマアートギャラリー」のギャラリストです。取り扱うアーティストは、会田誠さん、鴻池朋子さん、OJUNさん……昨年ペンで描く細密画の作風が話題となった池田学さんも入っており、様々な手法、画風のアーティストを取り扱うギャラリーを運営しています。
ミヅマアートギャラリー
<引用 | http://www.art-it.asia/u/admin_columns/jyu3dpyqwxgsqhixzhlo >
ミヅマアートギャラリー
開館時間 11:00-19:00
定休日 日曜・月曜・祝日
HP http://mizuma-art.co.jp/index.html
住所 〒162-0843
東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F
● 山本 裕子 さん ( やまもと・ゆうこ )
山本裕子さんは、寺田倉庫が運営する、TERRADA Art Complex の建物の3Fに入っている、「山本現代」のギャラリストです。松井えり菜さん、ヤノベケンジさん、今津景さんなどの現在活躍中のアーティストが多く所属しています。
山本現代(やまもとげんだい)
<引用 | https://bijutsutecho.com/interview/297/ >
山本現代
開館時間 11:00-18:00(火/水/木/土)
11:00-20:00(金)
定休日 日曜・月曜・祝日
HP http://www.yamamotogendai.org/japanese/
住所 〒140-0002
東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
5.最後に
ギャラリストは、美術の世界でもビジネスに寄った職種で、新しい美術作品の発見、育成なども同時にできる職業です。
自分が選び、魅力を伝えてきたアーティストの作品が有名になったり、世界的に評価されたりすると、自分(ギャラリスト)への評価にも繋がります。多くのやりがいを感じることができますし、アーティストと実際に会って、話をし、一緒に仕事することのできる面白い仕事です。
そんなお仕事に魅力を感じた方は、ぜひ気になるギャラリストのギャラリーへ足を運び、執筆している本を読んでみてください。
(2018.2.21)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア