美大大学院の試験って?合格者に聞く院試対策[絵画学科編]

大学卒業後、さらに自分の研究領域の学びを深めるため、大学院進学という道があります。修士課程へ進学すると、教授との距離が学士のときより近くなり、研究内容を深めたりその分野の人脈や情報を得たりすることができます。美術大学の大学院の場合は、制作スペースが学士のときよりも広く使えるので、自分の制作に集中して制作ができます。今回は大学院に進学する際の「院試験」について深堀りしてみました!院進学の試験内容はどんなものなのでしょうか。一緒に見ていきましょう!編集・執筆 / MAKO WATANABE , YOSHIKO INOUE

もくじ

1.大学卒業後の進路
2.大学院試験の内容
3.大学院進学を決めた3名に話を聞きました!
4.まとめ

 

1.大学卒業後の進路

読者のみなさんは大学院進学についてどんなふうに考えていますか。筆者は美術大学の油画専攻所属なのですが、周りには「卒業後は作家になりたい」「この教授のもとで制作をしたい」という理由で院進学を目指す学生が一定数を占めていました。制作を仕事にしていきたい作家志望の学生や、なりたい職業に向けて自分の研究領域の学びを深めたい方は院進学を考えたことがあるのではないでしょうか。

そんな院進学の試験は一体どのような内容なのでしょうか。今回は美術大学大学院の中でも絵画系分野の修士、博士前期の募集要項、試験内容についてリサーチしました。また、実際に院進するにあたって試験を受けた3人の先輩にお話を伺いました!院試の内容を知り、しっかりと対策をして試験に臨みましょう!

▼院に進むかどうか検討したいときは、ぜひこの記事をチェックしてください。

進学か就職か?美大生の進路、大学院に行くメリットとデメリット


 
▼大学院と別に、別の学校に入り直す、転入するなどの道もあります。

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2.大学院試験の内容

大学院試験の内容とは、どのようなものでしょうか。まずは希望する大学のホームページに載っている修士、博士課程前期の募集要項を調べてみましょう。自分が受験する年の募集要項が出ていない場合は、以前の要項を確認し、どんな準備が必要か調べましょう。(※試験内容は過去問の傾向から変更される可能性もあります。)
今回、筆者は美術系大学大学院の絵画系学科の募集要項や過去問を10校ほど見てみました!すると、基本的に以下の①~⑥の試験内容が共通していました。

①作品提出

作品提出とは、今まで制作した自分の作品を、郵送や直接持ち込みするなどして大学に提出することです。提出点数は2点〜、近作であることを求められることが多いようでした。作品のサイズにも規定があるのでしっかりと確認しておきましょう。
作品は面接をしながら見せることもあるので、自分のこれからやりたいことを説明できる、自分の研究領域に関連するものを選ぶと良いかもしれません。

 

②ポートフォリオやドローイング(素描帳)をファイリングして提出

過去作品の写真をまとめたポートフォリオの提出を求められる学校が多くありました。試験間近になってポートフォリオを作る際、作品の写真がないとつくるのに時間がかかってしまい大変なので、普段から「作品の写真を撮っておく」「データにして残しておく」ことを意識すると良さそうです。また、作品を作ったときのステートメントやメモなどもあれば残すようにすると、ポートフォリオのキャプションが書きやすくなると思います。
また普段のドローイングや素描をまとめたものの提出を求めている大学もあります。院進学を考えている人は、素描やドローイングも残すようにしておきましょう。

 

③小論文

大学、年によってもテーマが違いますがおおよそ1000~2000字くらいで、自分の美術に対する考え方を記述することが多いようです。「大学名+大学院+小論文」などで検索して出てくる過去問も活用してみましょう!

 

④面接

何校かの過去問を見たところ、研究内容や制作について、将来についてなどを聞かれるようでした。大学や学科によるので、行きたい院や研究室をリストアップし、自分で調べてみましょう。

 

⑤研究計画書、志望研究調書など

研究計画書は、「大学院に進み何がしたいか」「どんな作品を制作をしていきたいか」など、自身の院生活の計画をまとめ、提出するものです。願書と一緒に提出する書類として提出が求められることがあります。志望理由書、志望研究調書とも呼ばれることがあります。
また、中には大学院修了後の計画を提出する学校もあります。提出間近になると、他の書類を用意する時間も必要なので、余裕を持って用意しましょう。

 

⑥実技

実技試験が行われる学校もあります。筆者が調べた中では、日本画の学科が多かった印象です。面接日などとは別の一日(4〜6時間)のデッサンの試験日があるようです。
実技のない学校もあるので、自身の志望校はどうなのか確認しておきましょう。

 

3.大学院試験を受けた3名に話を聞きました!

美術大学の大学院試験の対策について、試験を受けた3名に6個の質問をお聞きしました!3名とも絵画学科の油画専攻に所属しており、大学院も絵画・油画系の専攻を受験しています。

【質問内容】
①大学院試験の流れ
②面接で聞かれた質問
③ポートフォリオのまとめ方について
④小論文や研究計画書の対策
⑤事前面談について
⑥その他、やっておいて良かったことや、やれば良かったことなど

 

もりっしー さん

Q.大学院試験の流れを教えてください

【東京藝術大学】は①作品、ポートフォリオ、ドローイングブック提出(大学へ搬入)②実技試験 デッサン2時間 ③面接でした。
【多摩美術大学】 ①小論文のみでした。 (※外部の大学の学生の場合、作品提出と面談もあるので要確認)

 

Q.面接では何を聞かれましたか

自分の作品がドローイングメインだったので、どのようにして作品を展開していくか、またどのようにして展示するかを聞かれました。作家として生活をするために、どのように作品で生計を立てていくかなども質問されました。また、他の研究室では院進学後に制作以外でやりたいことを質問されました。

 

Q.ポートフォリオのまとめ方で気をつけたことはありますか

作品の順番を年代別にするかメディア別にするかで印象が変わると思います。私は年代別にしました。

 

Q.小論文や研究計画書の対策にはどのようにしましたか

前日に自分が美術と向き合う上で何が1番大切かを考え直すと、当日嘘のない言葉でスラスラ書くことができました。また400字くらいでも良いので、文章を書く練習をしておくと楽です。それに加え、アートシーンのトレンドや、情勢を何となく見ておくと良いと思います。(ひとつ上の代の小論文が、コロナ禍におけるアートシーンが云々みたいなやつだったので…その為出ないだろうとは思ってたけどNFT関連はおさらいしました。出ませんでした。)

 

Q.事前面談は利用しましたか

外部の大学の教授とまるで面識が無く、一度喋りたかったので利用しました。

 

Q.その他、やっておいて良かったことや、やれば良かったことなどありますか

出願さえ完了すれば何とかなりますので、健康に気をつけて頑張りましょう。院試は卒制の最中か終わった後で体も心も疲弊しきってるので、息抜きしながら準備に取り組んでください。出願時期が卒制の準備の時期と被っているので、出願を忘れないようにしてください。あと募集要項はきちんと読みましょう。

 
 

ろぐ さん

Q.大学院試験の流れを教えてください

①書類提出 ②小論文試験 2時間くらいでした。

 

Q.面接では何を聞かれましたか

内部生だったため面接は無かったです。

 

Q.ポートフォリオのまとめ方で気をつけたことはありますか

内部生だったためポートフォリオ提出もありませんでした。

 

Q.小論文や研究計画書の対策にはどのようにしましたか

試験対策に美術評論の本を読んでいました。過去問なども参照しました。

 

Q.事前面談は利用しましたか

内部生だったため事前面談は無く、利用していません。

 

Q.その他、やっておいて良かったことや、やれば良かったことなどありますか

読書と文章でのアウトプットの習慣づけが大切だと思います。

 

 

きんたろう さん

Q.大学院試験の流れを教えてください

①作品、ポートフォリオ、書類提出 ②実技試験 デッサン4時間 ③面接の順でした。

 

Q.面接では何を聞かれましたか

持ち込み作品を深堀りする質問や、持ってきた作品以外の質問をされました。
また、院で学びを深めたい研究分野についてや研究室を選んだ理由、卒業後どうするのかなども聞かれました。

 

Q.ポートフォリオのまとめ方で気をつけたことはありますか

一貫性があるように見せることが大事だと思います。自分の作品のコンセプト、テーマがどの様に変化したのか分かりやすくすることに気をつけました。

 

Q.小論文や研究計画書の対策にはどのようにしましたか

他の人のポートフォリオの文章を読んだり、作家が出している本を読んだりして対策をしていました。

 

Q.事前面談は利用しましたか

研究室及び教授との相性、方向性の確認のために利用しました。

 

Q.その他、やっておいて良かったことや、やれば良かったことなどありますか

悔いなく、自分が納得するまで制作を続けることだと思います。周りにどう思われようが、真剣に向き合って続けていればいずれ自信に繋がると思います!

また、私は院進を決める前に就活をしていたのですが、就活での面接と、院試での面接は専攻がファインだったこともありかなり違っていた印象でした。就活はその会社でやりたいこと、出来ることは何かを考えることが必要だったと思います。就活がこちらから歩み寄る感じだったのですが、それに比べて院試はこちらのやりたいことをアピールし、それが面白いと思ってもらえるかだと感じました。

 

4.まとめ

大学院試験のリアルな声を聞いてみると、試験内容もさまざまで、内部生かどうかによっても違うということがわかりました。進学を希望する際は、志望大学院に関する下調べを忘れず行いましょう!
修士・博士前期の試験内容は美大の学部一般受験とは違い、実技だけでなく面接や小論文がある学校が多いので、自分の作品制作に関する考えや美術に対する考えを整理し伝えられることが重要なようです。出願から試験までの期間の大学4年の秋~冬は卒業制作などでとても忙しいですが、院生活での大切な2年間、自分のやりたいことを目一杯やりきるため、準備をしっかりとしていきましょう!

 

(2022.3.25)
watanabe mako

著者紹介

渡邉真湖watanabe mako

2022年3月多摩美術大学絵画学科の油画を卒業・4月からデザイナーです。犬と漫画と辛いラーメンが好きです。
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