「障害があることは、新しい可能性を持つこと」義足ダンサーたちが表現した東京パフォーマンス。リオ・パラリンピックの閉会式

パラ

先日行われた「2016リオパラリンピック閉会式」 その中で2020年の東京パラリンピックのプレゼンテーションパフォーマンスが行われました。 
企画・演出のメッセージ性の高さ、障害というひとつの「個性」を生かした各アーティストにしかできない芸術的なパフォーマンスに、2020年への期待が高まります。
まだ見ていない人も、美しく力強いパフォーマンスの魅力を感じて頂けたらと思います。
編集・執筆 / SHIONE, AYUPY GOTO

●パラリンピックとは

国際パラリンピック委員会が主催する、障害者スポーツ最高峰の大会です。「パラリンピック」という名前はもう1つのオリンピックという意味を表すparallelとolympicを合わせた造語。オリンピックと同時期に執り行われます。


そしてつい先日、2016年リオデジャネイロパラリンピックが幕を閉じました。
次のパラリンピックは2020年に東京で開催!閉会式の中でリオから東京への引継ぎ式と、東京大会のプレゼンテーションが行われました。

●「ポジティブスイッチを押そう」東京プレゼンテーション

コンセプトは「TOKYO 2020 POSITIVE SWITCH」

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「TOKYO 2020 POSITIVE SWITCH」
コンセプトは「ポジティブ(前向きな)スイッチ」
東京2020年大会が「史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会」を目指すことから着想されたコンセプトです。

障害をポジティブにとらえる、2つのスイッチとメッセージ

1度目のポジティブスイッチは、1964年の東京パラリンピックでのこと。当時金メダルをとった卓球選手、渡部さんと猪狩さんは、海外から東京にやって来たアスリートたちが仕事を持ち、買い物に行き、お酒を楽しむ様子に衝撃を受け、彼らの価値観は変わりました。「障害を持つことは、新たな可能性をもたらすこと」 1964年の東京パラリンピックでこのスイッチが押されました。


2度目は、東京2020パラリンピックでのポジティブスイッチです。それは「障害をより魅力的に変えよう」というスイッチです。


東京プレゼンテーションの全体を通して、この2つのメッセージが強く伝わってくるものとなっています。


メッセージ性、芸術性の高いパフォーマンスの数々

東京パラリンピックプレゼンテーションのパフォーマンスには、障害を持ちながらもそれを自分の最大の個性として活動されている方々がパフォーマーとして選ばれています。

義足だから、人ができないことができる

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● GIMICOさん ( ギミコ )

2009年から義足モデルとして活躍しています。
写真家のレスリー・キーさんや蜷川実花さんの作品に出演したほか、ミュージックビデオや映画、イベントなど様々な場で表現をしています。新しい価値観を生み出し続けている、今注目のモデルさんです。



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ダンスユニットAyaBambiさんとコラボレーションして行ったダンスパフォーマンスがとても格好良く、魅力的です。
冒頭映像の様々なファッションにも注目です!

短い足があったからこそ生まれた、世界唯一のダンス 

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● 大前 光市さん ( おおまえ こういち )

大前光市さんは事故で膝から下を切断したプロダンサーです。自らを「かかしのダンサー」と称し、この体だからこそ伝えられるダンス表現を追求し、講師・振付師としても活躍しています。


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パフォーマンスでは、きらきらと光る義足とともに、なめらかで美しいダンスを表現しています。失った左足があるからこそのダンス表現は、とても力強く印象的です。

目で見えないから感じる東京の姿

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● 檜山 晃さん ( ひやま あきら )

檜山晃さんは生まれつき目の見えない視覚障害者の方です。
暗闇を体感するワークショップ「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というイベントで案内人として活動しています。


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檜山さんの、視覚ではない心で感じる東京の夜の姿を詩やダンス、音と光で表現したパフォーマンスです。私たちの感じ取れていなかった東京の目で見える部分ではない不思議な魅力に気づかせてくれます。

「東京は夜の七時〜リオは朝の七時〜」 

終盤の曲は、ピチカート・ファイヴ(PIZZICATO FIVE)の楽曲をアレンジした「東京は夜の七時〜リオは朝の七時〜」
「はやくあなたに会いたい」という歌詞が、2020年の東京パラリンピックへの期待をより一層高めてくれます。

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ここでのパフォーマンスは、曲に合わせてすべてのダンサー・アーティストが一緒に踊りました。車椅子で踊るダンサー、ダウン症のヒップホップダンサー、健常者のダンサー。障害のある人もない人も互いに支え合う社会が表現されています。


閉会式の様子をまだご覧になってない方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。
紹介したパフォーマンスの他にも映像や、先日行われたオリンピックでの東京プレゼンテーションとの違いなど見所が盛りだくさんです。

●パフォーマンスに携わったクリエイターは誰?

オリンピック閉会式での東京プレゼンテーションと同じチームが作っています。

クリエイティブチーム

クリエイティブ スーパーバイザー

● 佐々木宏さん ( ささき ひろし )

企業イメージや商品イメージのブランディングをはじめ、数多くの広告作品を手掛けているクリエイティブディレクター。今回のパラリンピック東京プレゼンテーションではクリエイティブスーパーバイザーとして、全体をプロデュースしています。

▼ 過去に手がけた作品
・東海旅客鉄道
「そうだ、京都 行こう」シリーズとしておなじみの東海旅客鉄道のCMを手がけました。京都の荘厳で美しい情景がすっと伝わってくる、気持ちの良いCMです。
・サントリー「BOSS」

俳優トミー・リー・ジョーンズさんが演じる宇宙人ジョーンズシリーズとして人気のCMです。風刺が効いたメッセージ、思わずクスリと笑ってしまう演出で2006年から親しまれています。


他にも多くの広告・CM・キャンペーンを手がけ、数多くの賞を受賞されています。

クリエイティブ スーパーバイザー+音楽監督

● 椎名林檎さん ( しいな りんご )

「東京事変」というバンドでも注目され、多くの有名な楽曲を残している日本のシンガーソングライター。
今回の東京プレゼンテーションでは、クリエイティブスーパーバイザー、音楽監督として参加しています。

総合演出+演舞振付

● MIKIKOさん ( mikiko )

日本のダンサー、振付師、そして演出家でもあり、肩書きとしては「演出振付家」のMIKIKOさん。
今回の東京プレゼンテーションでは総合演出、演舞振付を担当しており、ステージ全体の演出をしています。

▼ 過去に手がけた作品
・Perfume
テクノポップユニットでも有名なPerfumeの振付をほとんどおこなっています。
他にもBABYMETAL、SEKAI NO OWARI、椎名林檎など多くのアーティストの振付を手がけています。

クリエイティブ ディレクター

● 菅野薫さん ( すがの かおる )

データ解析技術の研究開発、国内外のクライアントの商品サービス開発、広告キャンペーン企画制作など、テクノロジーと表現を専門にしています。

▼ 過去に手がけた作品
・太田雄貴 Fencing Visualized
東京オリンピック招致最終プレゼンで紹介されたフェンシングの競技ルール映像の企画演出を手がけています。2分間と短い映像ですが、分かりやすく、そして格好いい。フェンシングの魅力が伝わってくるものとなっています。

他にも国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で多くの受賞をしています。

制作チーム

コンセプトアドバイザー

● 澤邊芳明さん ( さわべ よしあき )

デザイン事務所、株式会社ワン・トゥー・テン・ホールディングスの代表取締役社長。クリエイティブディレクターとして、数々の国内外広告賞を受賞しています。
パラリンピックサポートセンター顧問の肩書きを持ち、今回のパラリンピック東京プレゼンテーションではコンセプターとして参加しています。
18歳のときにバイク事故に遭い、車いす使用者となりながらも、クリエイティブの実力一本で勝負してきた方です。今回の「ポジティブスイッチ」のコンセプトをそのまま体現しているかのような生き方・考え方だと感じます。

ステージアドバイザー

● 栗栖良依さん ( くりす よしえ )

市民参加型ものづくりプロジェクトを行っているSLOW LABEL(スローレーベル)のディレクター。障害者支援という考えではなく、障害者の方々の突出した才能や新しい価値観を借りて質の良いものづくりをしていく、障害者とアーティストのコラボによる展示会などを行っています。
オリンピック・パラリンピックを見据えて活動をされてきた方で、2020年東京パラリンピックでのご活躍が楽しみな一人です。今回の東京プレゼンテーションではステージアドバイザーとして参加しています。

チーフ映像ディレクター

● 児玉裕一さん ( こだま ゆういち )

ミュージックビデオやCMなどの演出を手がける日本の映像ディレクター。

▼ 過去に手がけた作品
・UNIQLOCK

株式会社UNIQLOが提供している現在の時刻を表示するアニメーションを交互に繰り返すWEBコンテンツ。
カンヌ国際広告祭、クリオ賞、ワン・ショーの世界三大広告賞すべてのインターネット部門でグランプリを受賞しています。


他にも東京事変、サカナクション、SMAP、Perfume、YUKIなど有名アーティストのPVやCMなどを手がけています。

チーフテクニカルディレクター メディアアーティスト

● 真鍋大度さん ( まなべ だいと )

日本のメディアアーティストであり、プログラマー、デザイナー、映像作家、DJ、VJも行っています。
今回の東京プレゼンテーションでは、チーフテクニカルディレクター、メディアアーティストとして参加しています。
インタラクティブアートを主として、多くの賞を受賞しているクリエイターです。

●最後に

「障害を持つことは新しい可能性を持つこと」「障害はその人だけの強い魅力となる」そんなメッセージがこの東京プレゼンテーションに強く込められています。
出演されたアーティストの美しく力強いパフォーマンスは、2020年の東京パラリンピックへの期待をよりいっそう高めてくれました。東京パラリンピックが私たちが当たり前だと思っている価値観や未来像をどんどん超えて、世界中を驚かせ、幸せや喜びを届けるそんなステージになることを祈っています。

(2016.9.25)

著者

汐音

武蔵野美術大学所属。 グラフィックデザインやパッケージデザインなどの制作を主にしています。 イラストを描くことと舞台観劇、それから海が好きです。 最近は香水収集にはまっています。

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