日本の包装はクリエイティブ?“包む”の歴史とラッピングの多様性

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ものを包むという文化。綺麗に折り込まれた包装や風呂敷など、日本で育った方ならごく身近なことだと思います。しかし、この日本の“包む”という文化はその利便性と美しさから世界中から注目されています。そこで今回はこの、“包む”ラッピングについて考えていきたいと思います。

編集・執筆 /YAMADA, AYUPY GOTO

●日本独自の“包む”という文化

ビニール袋やショップバックがまだ存在しなかった時代、日本ではものをまとめるときや運ぶとき、保存する時に、藁、木や紙を使って“包む”ことでその行為を成していました。
伝統パッケージのコレクターであった岡秀行氏(1905-1995)がコレクションしたものの中には、山形県の「卵うつ」という卵を藁で編み持ち運べるようにしたパッケージがあり、包装としての安定感はもちろん、造形的にも大変美しいと国内外で評価されました。

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過去に開催された 「包む―日本の伝統パッケージ展」の宣伝広告にもなっている「卵うつ」。
http://tegamisha.com/812

伝統パッケージには日本の歴史が息づいており、先人の知恵と自然の資源を使用しながら作られた作品の数々はただものを包むだけでなく、冠婚葬祭に使用されるものや、神へ献上する際にも使用されていたようです。日本ならではの細やかな美意識はこういったところにも大きく影響していました。

古くから受け継がれるもの

現代でも馴染み深いぽち袋や風呂敷も日本特有のアイテムです。これらは大変歴史のあるもので、その歴史を辿ると奈良、江戸時代まで遡ります。

風呂敷はなんでもかばん

奈良時代に布が流通するやいなや、布を包むものとして使ってきました。正倉院蔵の宝を包む際にも使われており、形は現在のものとあまり変化がなくほぼ同じのようです。そこに、段々と染色の技術が加わり美しい布へ、包装の技術が加わり包みの方式が増えていった、ということです。
江戸時代には旅行が流行したのですが、当時の様子を移した絵巻に描かれた人々の風呂敷の使い方は人それぞれ違いました。

ぽち袋の誕生にも日本人らしさが隠れていた

ぽち袋の元となったと言われているのは、宴などで演者に渡すおひねり。当初のおひねりは紙にお金を包んだだけのものでした。そして直でお金を渡すことは気が引けるという日本人の心配りによって生まれた文化です。簡単に包んだものではお金がこぼれ出てしまうため、いつしかこれが紙で大雑把に包むだけでなく袋状になったものに入れるようになってきました。これがぽち袋です。現代では、お正月に大人から子どもへお年玉を贈る際にぽち袋に入れることで知られていますね。ぽち袋の語源も、一説によれば小銭を入れていたため、「これっぽっち」という意味からこの名前がつけられたと言われています。

★袋はご祝儀袋や香典袋も……。
結婚式や進学祝い、出産祝い等で何かと登場するご祝儀袋。これは日本独自の伝統で、海外の多くは現金を贈ることはないのだとか。このご祝儀袋も豪華な外装のものが沢山ありますね。一方亡くなった方への香典をお供えする際には香典袋を使います。

●発展した日本スタイルとラッピングの現状

“包む”ということは日本独特の文化として世界に注目されるようになりました。
しかし、日本が全ての発信源という訳ではなく、海外でも包装は存在していました。ではなぜここまで日本の包装技術は世界から珍しいものに見えているのでしょうか。そこには技術の高さが関係していました。

☆日本のラッピングはクリエイティブ?

デパートなどで紙包装を頼むと、担当の方がものすごい早さで包装をしてくれた体験はないでしょうか。
その包装、海外からみると神業のように見えるのだとか。大きな紙一枚で、包みつくしてなおかつ止めるテープをほぼ使わない……。日本ではごく普通のことのように思えますが、海外では“まるで魔法のようだ!” “ラッピングさえもクリエイティブだね”と絶賛の嵐。包む途中の行程も、無駄な動きが無くつい見入ってしまいます。

☆風呂敷の用途が広がりすぎている!

江戸時代でも既に多様性が垣間見えていましたが、現代もその進化は劣らず。どんなものでも包んでしまいます。四角い箱状のものはもちろん、瓶やスイカ、植木鉢、ケーキ箱も。
見た目も風呂敷のデザインによって変わってくるので、色々な雰囲気を出す事ができますね。

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http://www.kyoto-musubi.com

●“包む”日本と、“入れる”海外?

海外には海外の特出した点があると考えます。それは、ものを包むのではなく、入れることです。海外でも包装することはもちろんありますが、どちらかと言えばボックスのようなものに入れることが多いのではないかと感じます。日本は紙を使って美しく仕上げることに対し、海外は箱そのものに施されている装飾デザインの豊富さやグラフィカルな表現でラッピングが仕上がるのではないでしょうか。そしてリボンを使ったラッピングにバリエーションがあり素晴らしいです。

●一風変わった、“包む”プロダクト

包む行為が日本の歴史ある文化であることがわかりましたが、それを生かしながらさらに発展しているプロダクトも数多く存在します。そこで包むことに注目した個性的なプロダクトをいくつか紹介したいと思います。

・Happy Eggs
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https://2015emprendimientos.wordpress.com
藁で出来た卵パッケージ。天然の資源で生みたてを彷彿とさせるようなプロダクトです。伝統パッケージにあったような、紐状で使うのとは対に、面で全体を包む形態です。

・Knot for, Inc. “Envelope”
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http://www.knotfor.co.jp
一枚の紙を折ることによって封筒になるデザイン。折ったときの透け具合や色の重なりが綿密に計算されており、繊細な色の表現がされています。言葉を包む、素敵な作品です。

・FUROSHIKIシューズ
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http://furoshiki-shoes.jp

風呂敷からインスピレーションを得て、足を包むことで靴としての機能を果たしている作品。足袋のような見た目で国内外で人気を博しています。

●さいごに

昔に比べると技術の発達によってより便利なものが出てきていることも確かで、今を生きる私たちは現代の便利な生活に慣れています。しかし、日本の包むという概念から文化を振り返ってみると、日本古来より伝わる、小さなものに見出す美徳や心意気は現代にもなお息づく包装の技術や風呂敷、ぽち袋などから感じることができますね。そして、その美しい特質を生かして、新たなプロダクトに発展しています。今が全てではなく、今日に至るまでの美しい文化、過去の先人たちの知恵と、最先端の技術の双方を今後も大切にしていきたいと感じます。

(2016.11.1)
Yamada Miyu

著者紹介

山田実優Yamada Miyu

武蔵野美術大学でグラフィックデザインやパッケージデザイン、ブランディングデザインを主に勉強しています。 舞台鑑賞や洋服巡りが好きです。
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