もし私がデザイン庁デザイン官僚になったら?共創が生み出す新しい解決策

2020年12月某日、ここは霞が関の「経産省未来対話ルーム」。普段はグラフィックや建築を学ぶ美大生が、国の政策や法案をつくる“官僚”の大人達と付箋を手に話し合っています。
行われていたのは「美大生×官僚共創ワークショップ」。"美大生×官僚"という普段出会わない二者が手を取れば、より良い未来が描けるのではないかーーという目的で始まった、チャレンジングな企画です。そんなワークショップの様子を、はたらくビビビット編集部も見学させていただきました!編集・執筆 / YOSHIKO INOUE

● デザインによる課題解決、実践できる場をつくりたい!

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“美大生×官僚 共創デザインラボ”が始まったきっかけは、多摩美術大学4年生・塩谷さんの海外美大(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)への留学経験でした。「市議会議員と街の住みやすさや魅力を高めるデザインを考える」「環境問題に対しての社会ムーブメントをデザインする」など、留学先ではいま起きている社会課題をデザインでどう解決するかを授業で考えることができ、その経験がとても新鮮だったそうです。
帰国後、多摩美術大学でソーシャルデザイン論を教わった田中先生とディスカッションしていると、実は省庁のあり方に課題意識を抱えている日本の官僚の方がいることを知ります。
そこから美大生・塩谷さんの「デザインによる課題解決の実践の場を美大生とつくりたい!」、経産省・海老原さんらの「行政の課題をデザインの力で解決できるはず!」ーー両者の想いが合致し、今回のプロジェクトが歩み始めました。
→詳しくは共創デザインラボのnoteをご覧ください。
 

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● 実現した美大生×官僚 共創デザインラボ

一人の美大生と三人の官僚のめぐりあいから生まれた“共創デザインラボ”。美大生の仲間が加わって2020年夏から活動が始まり、冬から3回にわたり美大生と官僚が一緒に取り組む共創ワークショップを開催しました。第一回の会場は霞が関の「経産省未来対話ルーム」、第二・三回は緊急事態宣言下のためオンラインに。
▼第一回の様子

ワークショップテーマ

第一回:“まだ見ぬ人”との共創を促すコミュニケーションデザイン
第二回:「空とぶクルマのわくわく」を伝えるコミュニケーション
第三回:もし私がデザイン庁のデザイン官僚になったら?

 
ここからは第三回目の様子をお届けします。冒頭に田中先生からのデザインレクチャー(世界のソーシャルデザインに関する豊富な事例紹介)と、美大生から前回の共創ワークショップで出たアイデアの可視化を発表する時間がありました。

▼プレゼン中は、官僚の方達からたくさんのコメントが。


アイデアが可視化されると、実現に向けた解像度が一気に高まります。そしてその可視化のクオリティが高い!普段からアイデアをビジュアライズする訓練をしているといっても、複数人でのブレストを形にするのは難しいはず。参加している美大生のスキルの高さを感じました。

▼アニメーションを制作したチームも!

そしていよいよ共創ワークショップ本編が始まります。第三回のテーマは「もし私がデザイン庁のデザイン官僚になったら?」。イギリスやデンマークの行政によるデザイン活用事例を参考に、日本にデザインの行政機関ができたらどんな変化や課題解決がもたらされるか、アイデアやビジョンを共創するものです。教育・経営・サステナブル・ローカル・グローバルという5つのテーマでグループに分かれ、ブレストが始まりました!

共創デザインラボには「美大生も官僚もフラットな立場で意見を交わす」というルールがあり、その通り年齢や所属はさまざまでも自由にアイデアを出し合います。「こう思うけどどうなんだろう……」「それいいね!」「この案と合わせても良さそう」など、迷いも称賛もリアクションがたくさん起きていて、何より皆さん楽しそうなのが印象的でした!

● 全国にデザイン人材派遣、おしゃれなパスポート……アイデアが続々と!


ワークショップにはオンラインツール(ブレインストーミング)miroが活用され、美大生がデザインした仮想の街にどんどんアイデアが記入されていきました。デザイン性やキャッチーさ・楽しさと、国家施策としての意義や視点が盛り込まれたアイデアは濃厚なものばかり。イラストや参考画像も豊富で、イメージしやすいプレゼンボードになっています。
最後の発表タイムから、2案をピックアップしてご紹介します。

デザイン庁地域デザイン部 日本全国入り込み課


このアイデアは、官僚を主体としたデザイン人材を全国に派遣し、地域で活躍するデザイン人材を増やす仕組みです。派遣されるのはデザイン官僚やデザインを学ぶ学生インターンなど。全国で起こるさまざまな社会課題をデザインで解決し、デザイン力の浸透や地方の視点を中央に持ち帰ることを目指します。
 
<h3自慢したくなるパスポート


こちらは「ノルウェーのパスポートはデザイン性が高い」という話題から生まれたアイデアです。色やスタンプのバリエーションを豊富にし、持ちたくなる・自慢したくなるパスポートを考えています。外務省と連携する想定で、現在24%にとどまっている日本のパスポート取得率の向上もねらいます。
 
他にも「起業家がボツにしたビジネスモデルを集めた“しくじりアイデアバンク”」「街の課題に寄り添ったデザイン解決策を実践的に学べる場“D-OJO”」などがプレゼンされました。国家規模の施策である分、解決できる課題も大きく、美大生と官僚メンバーのコラボレーションならではのアイデアとなりました!
共創ワークショップは発表タイムで終了となりましたが、ここからアイデアが選抜され、美大生メンバーがビジュアライズしていきます。
実はその発表の様子は、2021年3月25日(木)にオンラインで一般公開されるそう!視聴は無料です。気になる方は、ぜひこちらをご確認ください。
オンライン報告会予約ページへ

● 最後に

普段は接点のない“美大生×官僚”のコラボレーション。世代もコミュニティも違う人との共創は、お互いに大きな刺激となったようです!
 
【当日アンケートより、官僚の方のコメント(一部抜粋)】

想像や妄想は、言葉にすることはもちろん大事だが、やはり目で見てわかる形にすることが、いかに強力なメッセージになるかを痛感した。どのアイデアも、それぞれ異なるアプローチで可視化していて、これが美大生チームの実力であり、価値の創出なのだなと思った。
とても楽しく参加できたワークショップでした。多くの職員が持つべき意識、視点だなと感じたので、是非、色々な切り口で展開ができると良いのかなと思いました。
社会課題をデザインで解決する最先端!スペシャリストのたまご。
面白く実際的でもあり週明けから実践に向けて動けるアイデアもあった。

 
このワークショップをきっかけに、美大生は社会課題への関心が高まり、行政の仕事に親しみや興味を持つかも知れません。また官僚の方は将来の“デザイン人材”とのワークを通じ、デザイン人材が行政にもたらす可能性についてさらなる洞察を得るきっかけとなったのではないでしょうか。
ノンデザイナーの、さらに国を動かす立場の方のデザイン理解が進めば、国のデザイン活用が進み、国家課題の解決が加速してゆくでしょう。もしかすると数年後、今回の参加メンバーが仕事仲間となり、新しい政策が創造されるかもしれません!
 

【共創デザインラボ オンライン報告会】

日時:2021年3月25日(木)19:00~20:30
場所:YouTubeライブ配信
参加方法:予約ページで無料チケットを取得すると、YouTube配信リンクを受信できます

3月25日オンライン報告会の詳細はこちら
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(2021.3.17)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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