描きづらいキャラを描くときみなさんはどうしますか?「女の子は描けるけど、クリーチャーやおじさんは苦手だなぁ...」など自分が好き・得意なものはスラスラ描けるけど、苦手分野は「上手く描けない・描き方がわからない」と思い込んで避けていませんか?しかし、2Dデザイナーやゲーム系イラストレーターの就活ポートフォリオでは、「絵の幅」も求められます。
今回は、筆者がインターンシップや説明会で学んだイラストを描くときに重要な「資料集め」について紹介していきたいと思います!ゲームクリエイターを目指す方や画力向上を目指す方はぜひ実践してみてください!
編集・執筆 / MAKO WATANABE,YOSHIKO INOUE
イラスト/MAKO WATANABE
もくじ
- 1. あなたのイラスト、手癖に頼っていませんか?
- 2. “資料を見る・見ない”でこんなに変わる!before→after
- 3. 資料はなぜ大事?
- 4. 資料の集め方とコツ
- 5. 最後に
1.あなたのイラスト、手癖に頼っていませんか?
「手癖で描くのやめてみようか」
これは私が大学二年の冬に行ったゲーム会社のインターンシップで言われた言葉です。
それまで私は基本的に女の子のキャラクターしか描いたことがなく、自分の手癖がついてしまっている状態でした。就職活動やイラスト制作を仕事にするプロになることを考えると、「絵柄の幅を広げないと!」と感じていたのですが、普段書かない絵柄をうまく描く方法がわからずにいました。
そんな中参加したインターンシップで教えてもらったのが、「参考資料の重要性」です。参考資料を活用するのとしないとでは、イラストの完成度が目に見えて変わりました。
▼私が得意とする絵柄
今回は、そのbefore・afterをお見せしながら、参考資料集めのポイントをご紹介します!「自分も手癖に頼ってしまってるかも」「ポートフォリオを作りたいけど、絵の幅が狭いなあ……」そんな風に感じている方はぜひ参考にしてみてください!
2.“資料を見る・見ない”でこんなに変わる!before→after
私は実践した方法、それは「資料を見る」ということでした。その重要性やポイントをお話する前に、「資料を見ずに描いた“魔王”のキャラクター」と「資料見て描いた“魔王”のキャラクター」のbefore・afterをご覧ください!
【before】所要時間/ 50分(資料集め無し)
資料無しで描くと想像力のみで描くことになるので、筆者が今までよく描いていた女の子と同じような、華奢な体つきになってしまいました。また魔王を描くための十分な知識がないので、説得力がない絵となってしまいました。
【after】所要時間/ 50分(資料集めあり)
【描いてみた感想】
・まだ拙いものの、beforeの画像よりも「魔王感」がでている
・描き始めの早い段階で体の構造がわかってきたので、構図に動きが出た
・いろんな資料を見ているうちに、魔王の特徴や傾向をつかむことができた
所要時間は同じ50分でも、仕上がりにかなりの差が出たかと思います。今回は、ネットの「魔王」や「魔王 キャラクター」などで画像検索をしたのですが、キャラクターを描き始める前に「体がガッシリしているキャラが多いな」「甲冑を着ている魔王もいるんだな」と、自分の頭の中で特徴を整理できました。そのおかげで、構図や形に迷いながら手を動かす時間が減り、細部に時間をかけることができました。
3. 資料はなぜ大事?
ーーというわけで、「イラストは参考資料をもとに描いたほうが、最終的な仕上がりが格段に良い」ことは、上のイラストを見てわかっていただけたかと思います。
イラスト制作において資料を集めることが重要な理由は、主に2つあります。それは①正しい形をとらえるためと②“らしさ”を表現するためです。
①正しい形を取るために大事
モンスターや異形など、どんなにオリジナルなキャラクターでも、古今東西必ず実在の何かが元になっていますよね。例えば、ファンタジー系のゲームに出てくるキメラなどは、実際にいる動物を組み合わせて描かれています。そのため、骨格や構造に不自然さがあると見る人が違和感を感じてしまいます。
正しい知識を得てから違和感を感じさせるために「あえて崩した絵」と、知識が足りず「ただ描けていない絵」だと同じ違和感でも印象が違いますよね。見る人に余計な違和感を感じさせないためにも資料が大事だと言えます。
②モチーフの“らしさ”を表現するために大事
例えば「元気ハツラツな女子高生」を描きたいとき、あなたは「元気ハツラツさ」と「女子高生さ」の2つを見る人に伝えなければいけません。見る人が「元気だな」と思う表情ってどんな表情?ひと目で分かる「女子高生」って?と考えたときに、「眉毛が上がってる」「服装は制服」などが出てくると思います。黒い服をきた元気ハツラツな少女を描いても、それが女子高校生かどうか判断しづらいですよね。そういった「多くの人がもつイメージ」を絵で再現するときも、正確さが求められます。「制服の“制服らしさ”」をより的確に表現するために、資料集めが必須なのです。
仕事の場面では、自分が知識のないテーマで描く機会も多くあります。そんなとき想像だけで描くと、多くの人がイメージする“らしさ”からかけ離れ、「絵」で人を納得させることが難しくなってしまうのではないでしょうか。特に自分が苦手とするモチーフやキャラクターを描くときは、完成までに気持ちよく制作するためにも、資料集めをしてみましょう。
どんなに絵が上手な人でも知識がなければ描くことはできません。絵が上手な人程インプットに時間をかけていると言われています。
4. 資料の集め方とコツ
まずはPC上にフォルダを作ったり、切り抜きやコピーを集めるクリアファイルを用意するなどして、資料をどんどん入れてみましょう!
【資料の集め方】
・ネットで画像検索する
・Pinterestで検索する
・図鑑を見る
・画集を見る
・写真集を見る など
●出来るだけたくさんの参考画像を集めよう
一つの資料を参考にすると、ほとんどをその一枚に頼って参考にすることになるので、その一枚にそっくりの絵になりかねません。
また「構造を理解する」という意味でもいろんな角度の資料を集めたほうが、自分の描きたい自由な構図で描けるようになります。筆者はafterの絵を描いたとき、30枚ほど資料を集めました。魔王のイラストだけでなく、さまざまな構図や写真の小物など偏りなく集めることを意識しました。
検索の結果うまく画像が集まらなかった場合には、描きたいモチーフからワードを5語程あげて、それに関するものを調べてみるのもおすすめです。
(例/魔王:角、マント、甲冑、骨、剣、を検索するなど)
●イラスト画像だけでなく、写真集や図鑑などの書籍も活用しよう
なぜ書籍も活用したほうが良いかというと、よりリアルな資料を集められるからです。イラストとは現実にあるものをデフォルメする作業と言えますよね。つまりイラストを描くにあたってイラストを参考にするということはデフォルメの行程を2回繰り返すということなので、リアルさに欠けてしまうのです。
そこに実際にある、という雰囲気を出すためにも、詳しく・正しい情報が載っている書籍の活用をぜひ検討してみて下さい。
5.最後に
今回はキャラクターの描き方を主に紹介しましたが、背景や小物を描くときも、資料集めはぜひ行いたいです。キャラクターが身につけているもの1つをとっても、いつ流行ったものなのか、高価なものなのか安物なのか、素材は何か、しっかり考えて・調べて描くとイラストに奥行きが出ると思います。
インプットを繰り返し引き出しを増やすと、「描ける」だけでなくこだわりが出てきて、制作がもっと楽しくなるはずです。参考資料を活用しながら、自分の絵の世界観を広げていきましょう!
▼作品は「ViViViT」のポートフォリオページで発表しよう!クリエイターを採用する企業に発信できます。
(2020.5.8)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア