デジタル機器の普及により、イラストレーターの使用ツールはアナログからデジタルへと移行しています。デジタルイラストは、正確さやノイズがでないことが特徴ですが、あえてアナログ風の要素をデジタルイラストに取り入れることで、温かみのあるイラストに仕上げることができます。今回はその手法をご紹介します。
編集・執筆 / SHIONE, AYUPY GOTO
●デジタルらしさとアナログらしさ
デジタルらしさ(左)
はっきりとした輪郭と、ノイズのないつるっとした塗り。
色の境目がぱきっと分かれている。またはなめらかなグラデーションになる。
アナログらしさ(右)
線がざらつき、濃淡がある。
色ににじみやノイズができる。
●デジタルイラストをアナログらしくするには?
「紙」を意識すること
デジタルイラストとアナログイラストの大きな違いは、描く「紙」があるかないかです。
デジタルイラストはイラストソフトを使って描画しますが、アナログイラストだと、紙に画材をのせて描きます。
紙の質感によって思いがけないノイズやにじみなどが生まれます。
デジタルイラストで、アナログならあるはずの紙質を意識すると、よりアナログ風に近づきます。
◇テクスチャを利用しよう
テクスチャとは、物における質感や手触りのことです。デジタルイラストの中では、様々な紙質や布などの素材感を視覚的に表現するために用いられます。
イラストの上に重ねることで、絵の情報量を増やすことができます。デジタルイラストは単調になりがちですが、テクスチャを利用することで、アナログ特有の素材感を簡単に表現することが可能です。
◇ペンをカスタムしよう
紙についての意識とプラスして、使用する画材についても意識するとよりアナログらしさが増します。
多くのイラスト制作用ソフトでは、デフォルトで入っているペン(ブラシ)ツールに"水彩"や "油絵"などのアナログ表現が可能な描画ツールが入っています。
さらに、自分でペン(ブラシ)設定を実際の画材を思い浮かべてカスタムすると、よりアナログの風合いを引き出すことができますので、是非試してみてください。
自分でアナログ風のペンをうまく作るには、アナログの画材について理解を深めると近道です。
<例>
CLIP STUDIO PAINT の場合
デフォルトで入っている「透明水彩」ペンをベースに、設定を変更します。
サブツール詳細パレット表示ボタンをクリックすると、そのペンの設定の詳細が表示されます。設定内容は非常に細かく決められるので、色々と試して自分に合うものを見つけましょう。
上がデフォルトの透明水彩ペン。
下が今回透明水彩ペンをベースにカスタムしたペンです。より水彩のにじみを強調したものになりました。
●アナログ風デジタルイラストを描いてみよう
今回は、簡単にアナログ風デジタルイラストの制作過程をご紹介します。この描き方が“正しい方法”というわけではなく、いろいろなアナログ表現の方法があります。1つの方法として是非参考にしてみてください。
使用ソフト
CLIP STUDIO PAINT
Adobe Photoshop
制作時間
2時間程度
アナログ表現のイメージ
画用紙にミリペンとカラーインクで描画したイメージ
チョコレート作りをするキュピピットと女の子のイラストを描いてみようと思います。
Adobe Photoshopでアナログ感をさらに追加していきます。
●最後に
デジタルイラストにもアナログイラストにも、それぞれに固有の魅力があります。
今回メイキングしたのは画用紙とペンでの描画をイメージしたイラストでしたが、使用するペンやテクスチャによって、水彩画風や油絵風などいろいろな表現が可能です。自分の好きなアナログ表現について考えてみると楽しいです。
完璧にアナログ特有の風合いを出すのは難しいですが、アナログの優しいテイストを少しエッセンスとしてデジタルの画法のひとつとして取り入れてみると、新しい自分のイラストの魅力が見つかるかもしれません。
(2017.2.15)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア