デザインで暮らしは変わる。身体障がいをもつ人に寄り添うデザイン

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「デザイン」の捉え方は多くありますが、そのひとつに「分かりやすく機能する」ことがあり、さまざまな人が使うことを想定してつくる必要があります。そこで今回は、身体障がいをもつ人に寄り添ったデザインに着目してみたいと思います。
編集・執筆 / SUZUKI, AYUPY GOTO

●障がいをもつ人に寄り添うデザインとは

バリアフリーとユニバーサルデザイン

まず、障がいのデザインの考え方として大きく「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の2つが存在します。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この2つは事業や整備が似ているので混同されてしまいがちですが、思想が大きく異なります。

バリアフリー
生活に障害となる物理的な障壁の削除や、精神的な障壁を取り除くための施策のこと。
対象者:障がい者を含む高齢者等の社会的弱者
具体例:点字、車椅子、音声案内

ユニバーサルデザイン
文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障がい・能力の如何を問わず、できるだけ多くの人が利用することができる施設・製品・情報のデザインのこと。
対象者:全ての人
具体例:ピクトグラム、シャンプーの突起、自動ドア

色覚異常

昔は「色盲」「色弱」などと呼ばれていました。眼の神経細胞の機能が異なることにより生じ、そのために「赤と緑」「紫と青」「オレンジと黄緑」を混同することがあります。人によって見え方の程度はまちまちで、一概に決めることはできません。日本では、男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合でいると言われています。
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分かりやすく伝えるために次のことを意識して配色しましょう。
隣り合った2つの色を区別するためには「暖色と寒色を組み合わせる」「明度差をつけて組み合わせる」ことが有効です。
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以上のような意識を頭において制作できると、とてもいいですね。また、色だけに頼らない表現にすることも大切です。

●注目したいデザイン実例紹介

電動義手 [HACKberry]

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URL|http://www.exiii.jp/hackberry.html

手のない人に残された腕の筋肉を使い、直感的に操作できる電動の義手です。電動義手は技術自体は以前からありましたが、高価格なために国内普及率が2%にとどまっています。そのために、デザインや機能の選択肢が少なく、様々なニーズにこたえられていませんでした。しかし、この電動義手【HACKberry】は、3Dプリンタで制作することで製造コストを抑え、また、設計データをウェブ上に公開し世界中の開発者・デザイナーに無償で提供し、機能やデザインの選択肢を増やすプラットフォームをつくっています。それにより、学生である私たちでも制作に参加することができます。

  • <開発者コメント>
    ”我々の目標は、義手を単に安くするのではなく、義手に対する社会の見方を変えることです。従来の義手は身体機能を補うためのもの、すなわち、マイナスをゼロに近づけるための存在でした。HACKberryはマイナスをプラスに変えます。靴のようにシーンに応じて色や機能を変えたり、指先に電子部品を組み込みサイボーグ化することができます。このように思わず健常者が義手を羨ましいと思ってしまう世界を目指しています。”
    http://www.g-mark.org/award/describe/42160aaより〉

パーソナルモビリティ [WHILL Model A]

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URL|http://www.g-mark.org/award/describe/42566
障害がある人、高齢の人にも使い易いようマウスコントロールがついている、ユニバーサルデザインを基にデザインされた車椅子。「健常者も高齢者、障害者含めて全ての人が乗れる、乗りたいと思えるデザイン」をコンセプトに、「車椅子」ではなく「新しい乗り物”パーソナルモビリティ”」を目指して開発されました。iPhoneのアプリを使って遠隔操作や、速度設定機能などの機能も実装されています。

PLEASE TAG

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スクリーンショット 2016-09-18 20.23.25
URL|http://please-tag.com/

武蔵野美術大学の卒業制作展にて展示された「お願いします」のコミュニケーションを助けてくれるアクセサリーです。障害をもつ人、病気をもつ人、いろいろな人の「たすけてほしい気持ち」を、どのように伝えるべきか考えられています。制作背景も載せられています。

美しい義足

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URL|http://www.design-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/project.php?id=prosthetic_legs
アスリートたちのための運動用の義足です。「本物の足に見せかける」から「義肢それ自体を人工物として美しく、隠すものから見せるものへ」というデザインアプローチのもと開発されました。この美しい義足を見た多くの人が、義足に対するイメージや価値観が変わったそうです。デザインによって使いやすさだけではなく、周囲の人の意識も良い方へ変化させた作品だと思います。

Exo Prosthetic Leg

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URL|https://www.behance.net/gallery/20696469/Exo-Prosthetic-Leg
Behanceにて公開されている、3Dプリンターを使用した義足のプロジェクトです。義足装着部分を3Dスキャナでスキャンし、そのデータをもとにチタンを3Dプリントしています。技術の発達によってこういった斬新なデザインのものが、これから増えていきそうです。

●さいごに

身の回りにも、障がいをもつ人や、身体の弱い人に配慮されたプロダクトがたくさんあると思います。「できるだけ多くの人にわかりやすく」という意識は、ポスターなどの公共に置く物をつくるようになるほど大事になってくるでしょう。今のうちからから意識して課題制作できたらいいですね。
また、紹介したもの以外にもデザインの力で周囲の人のイメージを変えるような作品がたくさんあります。興味のある方はぜひ調べてみてください。新しい発見があるかもしれません。

(2016.9.20)

著者

鈴木那奈

東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科に所属しています。 旅行に行くことがすきです。最近はラーメンの食べ歩きにはまっています。

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