皆さんは、デザインの依頼を受けたことがありますか?筆者(くぐつ)は初めてデザインの依頼を受けた時、自分のデザインにお金の価値がついたことが嬉しく、二つ返事で引き受けました。しかし、当時は金額設定の仕方も分からず、クライアントの言われるがままになってしまいモヤモヤした部分もありました。今回は、デザイン案件の受注で起こりがちなトラブルを防ぐため、デザインの依頼を受ける際に気をつけるべきことを考えてみました。これから仕事を受けようとしている方も、過去にうまく取引できなかった方もぜひ参考にしてください。
編集・執筆 / MAYU KUGUTSU, YOSHIKO INOUE
目次
- ● トラブル回避のためにはヒアリングが大事
- ● 金額ってどう決める?デザイン料金の基準
- ● 見やすいラフ案を提出しよう!描き方のポイント
- ● 最後に
● トラブル回避のためにはヒアリングが大事
一般的に、デザインの仕事はこのような流れで進めていきます。
1.依頼を受ける
2.ヒアリングを行う
3.見積もりをもらう(もしくは出す)
4.契約する
5.ラフを提出し確認してもらう
6.制作する
7.初稿提出する
8.修正する
9.納品する
10.請求書を提出する
11.入金を待つ
※案件によって契約や支払いのタイミングなど、順序は変動します。
学校の課題だと、締め切り日までに提出すれば、再提出ということはなかなかないと思います。しかし、仕事となるとそうはいきません。ほとんどの場合、最低一回は修正が入ると思っておきましょう。
10.の請求書作成は、Misocaやfreeeなどの会計ソフトを使うと便利です。
また、後々のトラブルを無くすためには、念入りなヒアリングが必要です。具体的な確認事項はこのようなものがあります。
1.内容・・・具体的に自分がなんの業務を担当するのかはっきりさせる
2.用途・・・ 目的を確認する
3.掲載イメージ・・・ 掲載される規模を把握する
4.スケジュール・・・ラフ提出日、初稿提出日、最終納期を確認する
5.SNSやポートフォリオへの掲載の可否・・・可になることが望ましい
6.金額・・・金額設定の詳細は次の章へ
7.入金日・・・トラブル防止のために前もって確認する
具体的な例を出して考えてみましょう。
4のスケジュールは、ラフ提出日、初稿提出日、最終納期を確認する日程を押さえておくと安心です。5.のSNSやポートフォリオの掲載の有無に関しては、自分の実績になるため載せられるよう交渉できると良いですね。ポートフォリオは製本したり、WEBで公開したりなどさまざまな方法がありますが、ViViViTも作品1つからポートフォリオを作成できるので便利です。学校の課題や自主制作だけでなく、仕事で制作した作品も掲載できると、より充実したポートフォリオになるでしょう。
6の金額については次の章で詳しくお話します。
● 金額ってどう決める?デザイン料金の基準
では、金額の決め方について詳しく考えていきましょう。
金額設定をする際の参考例として、JAGDA制作料金算定基準というものがあります。これは公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会 (JAGDA) が、制作者と発注依頼者が協議して料金を決める際のルールブックとして公開しました。▶デザイン料金表はこちら
先ほど設定した、A4片面フライヤーのデザイン制作の基本料金78,000円はこの基準から算出しています。
内訳は以下の通りです。
【A4基準カラー1ページの場合】
デザイン料 24,000円
コピー料 24,000円
ラフ料 10,000円
カンプ料 10,000円
フィニッシュ料 10,000円
計78,000円
※クリエティブディレクションはクライアントが行うと想定し、この金額には含めていません。
この金額を基準に、クライアントとの関係性や経験数などを踏まえ、基本料金を設定してみましょう。
そこからその金額にどの作業フローまでが含まれるのか、追加料金はどのように発生するかなどを確認します。「基本料金に含まれる作業」と「追加料金が発生する作業」は依頼を受ける前にクライアントとハッキリ共有しておくことをおすすめします。
ラフ案の回数、修正の数、納期のスピード、データ納品方式、納品後のPRの有無、なども金額を決定する上で考えなければいけない項目です。フライヤー制作であれば、素材支給の有無や入稿の有無、片面デザインか両面デザインかどうかもその対象になるでしょう。
こちら(→#フリーランスしくじり話 その1)の記事でもフリーのイラストレーターさんにより語られていますが、使用媒体や範囲、使用期限などによって金額が変動するということも頭に入れておきましょう。
▼金額の設定に関してこちらの記事も参考にしてみてください。
→デザインを依頼されたとき、学生のあなたはどうしてる?デザインの料金について考えよう
● 見やすいラフ案を提出しよう!描き方のポイント
これまで、仕事の金額やスケジュールなど制作以外の部分について触れてきましたが、これからは制作について触れていきます。
みなさんは制作に入る前にラフを描いていますか。
ラフを描くことで自身の制作がスムーズに進みますし、クライアントも完成までのイメージがつきやすいです。修正が発生しても、ラフの段階であれば受注者・発注者ともに大きなストレスがなく進められます。トラブル防止のためにも、ラフはぜひ用意するようにしましょう。
以前Twitterでは、クリエイティブディレクター・グラフィックデザイナーの上司ニシグチさんがラフの書き方のポイントを投稿していました。
【デザイナーは手書きでラフを書こう】
①仕上がりが早い
②思考が整理される
③物事の理解が深まる
④集中して取り組むことができる
⑤見返したときに思い出しやすくなる
⑥ノートとペンがあればどこでも始められる
相手に手書きのラフを見せると「さすがデザイナーさん」となって信頼度も上がる。 href="https://t.co/xiQ5dlrIEO">pic.twitter.com/xiQ5dlrIEO— 上司ニシグチ (@jyoushi_n) 2019年6月22日
筆者(くぐつ)も、これらのポイントを踏まえてラフ案を描くようになってから、完成前のイメージがより伝わりやすくなり、クライアントの満足度も上がったように感じています。
これは上司ニシグチさんのツイート内容を踏まえて筆者が作成したラフ案です。
気をつけたこと
① クライアント名と概要を明記する
② デザインのポイントを端的にまとめる
③ 案に名前をつけ、デザインの展開が分かるようにする
④ 文章でもイメージを伝える
⑤ 提出するラフ案自体も依頼内容に合ったデザインにする
これらのことを意識することで、完成前のイメージがより伝わりやすくなり、クライアントの満足度も上がったように感じています。ラフ案を提出した時に、クライアントに「あっ!いいね!こんな感じ!」などと言ってもらえると、本制作の時にがぜんやる気が出ます。
▼この記事では「ラフ大公開!ViViViTグラフィックの制作裏話」の項目でデザイナーのmimonさんのラフが公開されています。
→大切なことも、自慢したいことも、ぜんぶ絵で伝えたい。作品を届けるまでの深いこだわりとは|デザイナー mimomさん
● 最後に
筆者(くぐつ)は自身の作品に対価が支払われ、「ありがとう」という言葉をいただくことで、自分のデザインスキルに少しずつ自信がついてきました。学生がデザインの仕事を受けると、腕はあっても仕事の流れに関する知識が無いために、トラブルが起こったという話をよく聞きます。クライアントはもちろん自分も笑顔になる仕事を行うために、まずはこの記事を参考にしてくださると嬉しいです。
(2019.8.8)
はたらくビビビット
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