今回の記事では、タイトルの通り初心者の為の基本のデッサンについてご紹介します。
「デッサンは出来たほうが良いと思うけれど、チャレンジする機会がなかったのでよくわからない」「絵を描くのは得意だけどデッサンを学んだわけではないから自信がない」「教室に通う時間が無い」「そもそもデッサンってどうやって練習すればいいの?」……そんな方々の疑問を少しでも解決し、お助けできるようなデッサンの「基礎の基礎」についてお伝えしていけたらと思います。編集・執筆 / NISHIDA, AYUPY GOTO
〇デッサンは言語のようなもの
たとえば美術について学ぶとき、まず最初にするのが「デッサン」の授業だと思います。リンゴやワイン瓶、石膏像などを並べて描きます。「デッサンの授業で描き方を学ぶと、個性がなくなるからあえて学びたくない! 」と言う考えを聞くこともありますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
たとえば小説を書きたい! 物語を表現したい! と思った時、そもそもの基本である「言語」「言葉」の使い方や基本ルールを知らないと、自由な創作もなにも「人に思っていることを伝える」ことができませんから、個性も表現できません。
突然「ぼべばういこけさもはむへけかぴほあ……!」と意味不明な文字羅列を見せられても、そこから何も感じとることはできません。
いくら好きに書いたのだと言っても、意味不明な文字の羅列は果たして自由な表現でしょうか?
「○○が○○と○○した」と言語のルールを知って初めて、人はそこから意味を読みとることが出来ます。
それと同じことで、デッサンというのはつまり、表現する上での言語ルールの習得と一緒です。
「言語」を習得して、そこから先は愛を語るも良し、哲学するも良し、架空の物語を創作するも良し、ジョークを言うのも流行語や略語を使うのも自由です。そこが「個性」になり「自由な表現」になります。
その「自由」にたどり着く前に、まず「ルール」という少しの不自由が必要なのです。
小学生の頃、練習帳に「あ・い・う・え・お」とひらがな表を書きうつしたり、漢字ドリルをこなしたり、例文を書きうつしたり……そういう少しずつの「不自由」に耐えたことで、今わたしたちは自由に自分の思うことを書きあらわし、人に伝えることが出来ます。
デッサンとは「絶対に手本そっくりにこう描きなさい!」「美しく描きなさい!」というものではありません。
どんな描き方(荒々しく/繊細に/おおらかに)でも良いので、表現するときの「あ・い・う・え・お」を覚えるという意識で「デッサン」を習得してください。その先で自由な文章をつくること、それが作品をつくるということです。
それが出来るようになるために、ゆっくりしっかり学んでいきましょう!
▼ では、ここからはもう少し具体的な話をしていきます!
目次
1.準備するもの(道具・おすすめのモチーフ)
2.どうやって描けばいいの?
3.実際に描いてみる
4.一番はじめに気にすると良いポイント
1.準備するもの(道具・おすすめのモチーフ)
今回は本当に基礎の基礎をお伝えするということで、「鉛筆デッサン」についてご紹介していきます。
(また別の機会に着彩デッサンなどについてもご紹介できたらと思います)
▼ 下記が基本的な鉛筆デッサンに必要とされるものです。(◎=必要、○=なるべくあると良い、・=あってもよい)
◎画用紙:【M画用紙、ケント紙、クラフト紙、鳥の子紙、白象紙】と沢山の種類がありますが、オススメするのはM画用紙と白象紙です。ある程度厚みがあって、何度も描いたり消したりしても紙が傷まないもの、それから紙の表面がざらざらとして感じられるものが描きやすいと思います。あまりにツルツルした紙はのせた黒鉛が定着していかず、描き重ねていくのに向きません。
◎鉛筆:【B、H、HB、F】など芯の固さに種類があります。
ステッドラー・ユニ・ファーバーカステルなど、画材屋さんには沢山の鉛筆が揃っています。定番はステッドラーのようですが、描いていくうちに自分にあった画材を見つけられると良いでしょう。
ちなみに、好みがとくにわからない初めのうちは「4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H」あたりを揃えておけば問題無いと思います。
◎練り消しゴム:描いたものを消すだけでなく、ふんわりとつきすぎた鉛をとったり、とがらせて細かく消したりハイライトを入れたり、鉛筆で描いた絵の上から、白く描いていくイメージで利用します。個人的にオススメなのは伊研のネリゴムという緑色の練り消しゴムです。少し固い感触の練り消しゴムで、他の種類と比べてべたつきが少なく、使いやすいです。
◎カッター:鉛筆を削ったり、紙の余分な部分をカットするのに使います。
〇消しゴム:練りゴムよりしっかりと、描いた線を消すことが出来ます。基本的にデッサン中に使うのは練り消しゴムですが、手の甲で汚してしまった画用紙の白い部分などは消しゴムでしっかり消しましょう。(あまり強く摩擦させると紙が傷んでしまうので注意しましょう)
〇フィキサチーフ(定着液):完成したデッサンにスプレーします。せっかく描いたデッサンが擦れて消えてしまわないように保存するための定着液です。
〇ガーゼ、ティッシュ:描いた部分をこすって、やわらかくぼかしたりするのに使います。
・擦筆(さっぴつ):ガーゼやティッシュのような擦る表現を細かく行うことが出来ます。
〇木製パネル:描きたいサイズのパネルを平らな土台にして紙をのせてデッサンします。
・クリップ、画鋲:紙を固定するのに使います。紙に穴をあけたくない場合は画鋲のかわりにクリップ(大きめのもの)を使うと良いです。
・イーゼル:紙をセットしたパネルを立てるのに使います。(あれば良いですが、無くても大丈夫です)
・水張りテープ:クリップや画鋲の代わりにこのテープで「水張り」をして、木製パネルに紙を固定します。このやり方をすると、水性の絵具などを使用したとしても、紙が水分でグニャグニャになるのを防げます。
◎モチーフ:デッサンや絵画で描く対象のことをモチーフと呼びます。一番初めに描くなら、あまり形が複雑でなく、大きすぎず小さすぎず、動かないものが良いと思います。果物などがオススメです。
○白い布:白い布があると、それを敷いた上にモチーフを置くことによって、机の模様や傷や色などに惑わされず、描きたいそのモチーフにだけ集中できますし、観察しやすくなります。デッサン初心者であるうちは、あった方が良い道具だと思います。
▼ 鉛筆を削ろう
鉛筆を削る時は芯を長めに出してみましょう。この部分が長いほど、寝かせて描くと広い範囲を綺麗に塗ることができます。
2.どうやって描けばいいの?
さて、実際に画面を用意したら、早速デッサンをはじめましょう。
今回は基礎の基礎、初級レベルです。はじめは知識を入れすぎず、とりあえず描いてみましょう!
みようみまねでOKです!
本当にはじめてデッサンをした時に、まず戸惑ったのは面や陰影で、物の形をとらえるというデッサンのルールがまったくわからなかったことでした。
それまで「絵を描く」といえば、ぴーっと輪郭線を引いて、その中を塗って……という方法で色々なものを描いていました。それでもなんとなくそれっぽいような絵は描けます。ですが、それはデッサンではありません。
(かっこいい線で形を捉えられるということは、とても凄いことなので、その感覚は是非否定せずに大切に持っていてほしいです! ですが、まず基本のデッサンをする際にはいったん忘れてください。)
輪郭線で捉えるのではなく、物体を立体としてとらえてみましょう。
3.実際に描いてみる/面を描くとは?
デッサンをする時には必ず「面で描け」と言われます。が、面で描く、面で捉える、とはどういうことでしょう?
画面の上で線は非常に強い力を持ちます。線の方向に視線は誘導されます。適当な斜線に思えたとしても、デッサンの中には無意味な方向の線は存在しません。全ての線(その集合体が面)が形に添っているように描いていければ、自然とそのものの形があらわれてきます。
なんとなく塗ってみた、なんとなく引いてみた線や面がデッサンを邪魔していることは大いにあります。
初心者のうちは、この面が自在に作れるようになることを目指すと、上達が早い気がします。物体の表面のあらゆる面、大きな面小さな面を見つけて、ピタっピタっと的確におさえていけると良いと思います。鉛筆で綺麗に黒を塗る練習などが役に立ちます。
4.一番はじめに気にすると良いポイント
久々のデッサン、はじめてのデッサン、どちらにしろまず描きあがったら、離れて見てみましょう。
近寄ってずっと見ていると、全体のバランスが自分で想像していたのと全然違うこと、気づくことがあると思います。
これからどんなものを描くにしても、虫めがね的にじっくりモノの細部を観察することと同じくらいに、遠目の印象をあわせることが大事です。遠目でわかる情報というのは、そのものが空間のなかでどれくらいの存在感を持つのか、という情報です。表面の斑点やすじの模様は遠目ではわかりません。
最初はきっとなんでも描くのが楽しいはずです。最初から天才的にうまく描けるなら、その分野はもう勉強する必要がなくなってしまってしまい、つまらないと思います。描けないことは当たり前で、これからいくらでも伸びらることが出来るんだなぁ! とわくわくしながら描けるのは初心者の特権です。是非楽しんでください!
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おわりに
「初心者の為の基本のデッサン:初級編」ということで、自分なりにデッサンの初心者だった時に欲しかった情報をざっくりとまとめてみました。なんとなくデッサンを勉強したいと考えている方の助けになれば幸いです。また、中級や上級ともう少し詳しく突っ込んだ内容の記事・もっと複雑なものを描く時の心得なども書いてみたいと考えているので、その際は是非あわせて参考にしてみてください。
(2017.8.4)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア