レンタルDVDや映像の画質向上、スマホの普及、配信サービスの増加によって、映画を家で見る人が増えたことによる「若者の映画館離れ」が世間で話題になっています。しかしここ数年、映画館の映像技術は急速に進化しています!
映画館はもはや映画を見るだけの場所ではなく、新しい技術体験の場になりつつあります。それにより、同じ映画を何度も見に行く人や映画をアトラクションのように楽しむ人が増えています。
いま体験できる最新のシアターと、今後さらに進化する未来の映画館について今回はご紹介します。
編集・執筆 / SHIONE, AYUPY GOTO
●はじめに
時代は映画+付加価値!
技術の進歩によって、家庭用テレビでも十分なクオリティで映画を見ることができるようになり、映画館で映画を見ないという人も多くいます。
しかし、最近の映画館はただ映画を見るだけの場所ではなくなってきています。家では体験できない、映画を見ることにプラスした特別な体験を得られる上映方法が増えてきているのです。
●さまざまな映画館のカタチ
4D映画
4Dとは、映画のシーンに合わせて座席が上下左右に動いたり、温度や風、香りまで体感できるシアターです。
まるで映画の中にいるような臨場感を味わえるのが魅力です。アトラクション的な要素が強く、映画を見るというよりも、楽しんで映画の世界を全身で感じたい!という人にはぴったりな体験ができるようになっています。
現在、日本で導入されている4Dシアターには4DXとMX4Dの2種類があります。4DXとMX4Dは開発している会社が違うので名称が異なっていますが、システムに大きな違いはありません。
どの場面でどんな演出を行うかは、それぞれの会社が映画製作者側に許可を取ってプログラミングしているので、口コミなどを見て好みで選ぶといいと思います。
4DX
4DXとは、韓国のCJ 4DPLEX社が開発した映画館の環境効果技術です。
日本で現在導入されている映画館は、コロナワールドやシネマサンシャイン、ユナイテッド・シネマ、109シネマズなど全国に増えてきています。
体感できる特殊効果
・シートの可動 ・風 ・水しぶき ・香り ・煙 ・閃光 ・雪 ・泡
こちらは4DXのプロモーションビデオです。
MX4D
MX4DはアメリカのMediaMation社が開発した映画館の環境効果技術です。
感触に関する効果が細やかで、演出が多いところが特徴です。
日本で現在導入されている映画館は全国のTOHOシネマズのみで、4DXよりは少ないです。
体感できる特殊効果
・シートの可動 ・シートの突き上げ ・首元、背中、足元への感触
・香り ・風 ・水しぶき ・地響き ・雪 ・霧 ・閃光
URL:https://www.tohotheater.jp/service/mx4d/
IMAX
IMAXはカナダのアイマックス社が開発した映写システムです。
通常よりも映像を大きなサイズで記録・上映できます。
音響は6つのスピーカーと高度なチューニングシステムによって、とてもクリアなサウンドを体感できます。スクリーンは客席に近く、縦は劇場の床から天井まで、横は大きくアーチ状に広がっている巨大なものです。そのため映像はとても鮮明で、映画を見ているというよりもまるで映画の世界の中に入って眺めているような臨場感を味わえます。
家でDVDやブルーレイを見るのとは全く違う非常に上質な映画体験ができるのがIMAXの最大の魅力です。
URL:http://www.digitaltrends.com/home-theater/imax-looking-punier-days-just/
imm sound
7年もの開発期間を経てスペインで誕生した音響システムです。
劇場の全体に配置されたスピーカーによって、前後上下左右の空間すべてをカバーする立体音響が特徴です。
サウンドデザイナーが劇場の広さや形状に合わせて、14.1ch~23.1chの中から最適なチャンネル数とスピーカーレイアウトを決定し、カスタマイズされています。そのため音に圧倒的なリアリティがあり、かすかな環境音もクリアに耳に心地よく聞くことができるところが魅力的です。
日本では現在シネマサンシャイン平和島でのみ導入されています。
URL:http://www.cinemasunshine.co.jp/ast/about/
爆音上映
立川シネマシティで見ることができる上映方法です。
その名の通り爆音で映画を楽しめます
……しかしそれだけではないんです。この爆音上映、音が大きくてうるさいだけじゃないの?と思うかもしれませんが、スピーカーが特殊で爆音なのに心地いいサウンドを体感できます。6000万円の高級スピーカーにKICリアルサウンドシステムという音を忠実に再現するシステム、重低音専用スピーカーである高性能サブウーファーによるビリビリとくる音圧に大興奮間違いなしの上映方法です。
変わり種!声出しOKの上映
こちらは技術は関係ないのですが、最近増えている上映方法です。
映画は従来静かに見るもの……ですが、この上映方法では声を出してもOKなんです。みんなで一緒に映画内の歌を歌ったり、アイドルのコンサートのように合いの手を入れたり、台詞にツッコミしたり……映画なのにまるでお祭りのように見に来た人たちと作品を通した一体感を楽しめるのが特徴です。
●未来の映画はどうなる?開発が進む技術
VR映画
今までの映画はスクリーンを外側から見るものでしたが、360度見渡せるVRが登場した今、私たちが映画の中に入れる時代がすぐそこにきています!
現在VRを使って観れる映像は短編映画などの短い映像のみですが、世界初のVR長編映画が制作開始されているそうで、期待が高まっています。
VR映画館の誕生
2016年3月にオランダのアムステルダムに世界初の「VR映画館」が誕生しました。
こちらはそのVR映画館の様子です。
見ると雰囲気が分かると思いますが、従来の映画館とは全く異なった形式です。
映画館にスクリーンはなく、VRを付けて回る椅子に座って、みんなが違う方向をくるくる向いています。上映作品は10分程度の短編映画だそうです。
VR THEATER
VR CRUISEによる全国のVR THEATERを導入しているネットカフェで、映像コンテンツを楽しめるサービスです。
VRに対応した映像コンテンツは有料のものから無料のものまで、ジャンルも様々で気軽に試すことができます。
「攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver」ティザー
こちらの動画は左上のボタンで360度回すことができるので気分を味わってみてください
裸眼3D技術
2016年7月、MITCSAILとイスラエルWeizmann研究所の研究者らが劇場用3D技術の開発に成功したと発表しました。
現在3D映画の鑑賞には3D眼鏡を着用していますが、これが実用化されれば眼鏡なしで3D映画を楽しむことができるようになります。ゲーム、ニンテンドー3DSをはじめとし、裸眼での3D技術は一部製品化されていますが、大きなスクリーンでの技術開発は初です。
3D眼鏡による映像の暗さや解像度の問題も解決できるとあり、今後の発展に期待されています。
●最後に
映画は今や見るだけのものではなく、映画にプラスした付加価値、体験がより重要になってきていると感じます。映像やサウンドデザインを学ぶ学生はもちろん、インタラクションや空間デザイン、ユーザーの体験を設計するUXデザインを学ぶ学生も、最新技術を使ったシアターで映画を見ることで自分のクリエイティブに対するヒントが見つかるかもしれません。
(2016.9.1)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア