いま全国各地で、地域の課題をデザインの力で解決しようとしている取り組みが多くあることをご存知ですか?地域とデザインの取り組みは面白く、またこれからの時代デザイナーが関わっていくことがより増えると思います。今回は過去行われてきた事例と合わせて、地域デザインの重要性をご紹介していきたいと思います。
編集・執筆 /SUZUKI, AYUPY GOTO
● 地域デザインとは
「地域デザイン」といっても広義でつかわれており、「地域デザインとは◯◯」というようなはっきりした定義はまだ確立していないようです。ですが共通していることは、その地域の文化的資源をよりよく捉え、課題に対し広い視野で解決を試みることです。デザインという言葉が入っていると、魅力的な広告であったりパッケージであったり、外側だけのグラフィックをイメージするかもしれませんが、決してそれだけではなく、地域デザインのデザインには仕組みをつくったり、人やものをつなげる意味も含まれます。
【地域×デザイン】あなたのデザインが今求められている!?地域課題に対してデザインで何が出来るのか
● 地域デザインっていつからはじまった……?
地域の魅力を発信する動きは昔からありますが、2000年代からが顕著に感じられます。その要因として想像されるのが、1995年阪神淡路大震災です。その他にもその後の人口減少や高年齢化社会が予想され、人々がハードよりソフトを求める時代になってきました。そして2011年には東日本大震災があり、2014年には地方創生政策が掲げられたことからより加速しつつあります。最近では「地域デザイン」の言葉を掲げた新設学科を設ける大学が増えており、今後のさらなる発展が予想されます。
● すてきな地域×デザイン紹介
食べ物付き情報誌「食べる通信」
http://www.g-mark.org/award/describe/41840
地方の生産者と消費者に「継続的なつながり」をもたらすために創刊された世界で初めての”食べる月刊情報誌”。生産者インタビューなどの紙面と掲載された生産物をセットで購読者に届きます。2014年にグッドデザイン金賞を受賞しています。
秋田のフリーマガジン「のんびり」
http://non-biri.net/about/index.html
秋田の普段の生活に焦点をあてたフリーマガジン。秋田の日々の生活が宝物のように思えます。Webでバックナンバーも含めて掲載されているのでぜひ見てみてください。
写真集「南予写真 NANYO」
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000006402.html
「養殖」という分野に興味をもってもらうため、養殖にアートを組み合わせてつくられた写真集。両面表紙の形態をとっています。全く異なるテイストの写真家2人の写真が南予の魅力を引き出しています。
フリーペーパー「鶴と亀」
http://www.fp-tsurutokame.com/
地方にいるイケてるおじいちゃんおばあちゃんのファッションを取り上げたフリーペーパー。写真からおじいちゃんおばあちゃんの住んでいる土地の雰囲気が伝わります。
大きなインパクトを残した香川県「うどんだけじゃないよ、『うどん県』」
2011年うどんだけじゃないよ、『うどん県』
http://www.my-kagawa.jp/udon-ken/
ある日突然「香川県はうどん県に改名します」という宣言動画を公開し、一気に話題になりました。このプロモーションの成功から、他県も似たようなプロモーションを取り入れていったように思えます。
2016年( )カッコつけます。うどん県
http://www.my-kagawa.jp/udon-ken/
現在では継続的にうどん県としてPRしつつも、ART県、島旅も前面的に取り上げています。ついつい見てしまうよ、短い動画コンテンツを展開しています。
「すごい!鳥取市」
https://www.city.tottori.lg.jp/sugo/
市民から鳥取市の「ここがすごい!」を提供してもらいキャンペーン展開しています。最近ではポストやタクシーがキャンペーンキャラクター「イーくん」仕様になり、目を引きます。
広島県の一連のプロモーション
2012年「おしい!広島\(T T)/県」
全国1の生産量をほこるレモンやわざわざ広島"風"お好み焼きに対して「おしい!広島レモン」「おしい!広島風お好み焼き」などと、自虐よりともいえるキャッチコピーを前面に出してポスター展開しました。
筆者はかなりの数のおしいを見て、いやいや十分すごいでしょ!という気持ちになったので、プロモーションの効果はバッチリです。
Perfumeをはじめ広島出身の著名人や地元の人々の情報をもとに、美しい景色、おいしい食べ物、人情あふれる人々に感動して"泣ける"旅を紹介。
ガイドブックもホームページも可愛くてずっと見ていたいクオリティです。
2016年「カンパイ!広島県\( ‾\(‾ ‾)/‾ )/」
https://hiroshima-welcome.jp/
「泣ける!広島\(T T)/県」につづくガイドブックが制作されました。おもわずカンパイしたくなる広島県のグルメや景色を紹介しています。
「日本一のおんせん県おおいた」
http://onsenkenoita.com/
日本一の源泉数と湧出量を誇る大分県のプロモーションです。温泉でシンクロをするシンフロの映像は一度は見たことがあるかもしれないですね。
佐賀県「あさご藩」
http://www.asago-han.jp/
朝ごはんを切り口に、佐賀県の県産品の知名度向上につとめています。クオリティの高い美味しそうな映像にお腹がすくことまちがいなし!
宮崎県小林市「ンダモシタン小林」
まずは動画を見てみてください。
宮崎県小林市(ホームページはこちら)移住促進PRムービーなのですが、インパクトが大きくて、最初のつかみはバッチリですね。
イベントで人をあつめる!新潟県燕三条「工場の祭典」
http://daidoco.net/kokajiya/3343/
新潟県燕三条地域の名だたる工場が、一斉に工場を開放し、訪れた工場でのものづくりを体験できるイベント。工場がメインなため作り込み過ぎないボーダーを中心としたデザイン展開がなされました。
市民と一緒に育てたお祭り!山形県「みちのおく芸術祭 山形ビエンナーレ」
https://biennale.tuad.ac.jp/
『「道の奥は、未知の奧―」。古くてあたらしい東北を、みんなでつくる芸術の祭。』を掲げるアートイベント。東北芸術工科大学が主催し、アーティストと子どもたち、学生、そして地域の人々を繋いでいます。アーティストと市民がともに学び・創造する、コミュニティスクールを最初から開催したのも大きな特徴です。
瀬戸内エリア7県が協力してブランド化「瀬戸内スティーレ」
http://setouchitourism.or.jp/
瀬戸内エリア特有の「自然(島や内海)」、「食」、「歴史」といった魅力をもとに、瀬戸内ブランドのアイデンティティを現れている商品及びサービスを、共通のロゴで展開していきます。瀬戸内ブランドを象徴するブランドマークは、モチーフに瀬戸内の多島美、温暖な気候、穏やかな海をつかい、ひと目で瀬戸内の強みが表されています。
”いえしまの暮らしを体験する”「家島コンセルジュ」
http://ieshimacon.com/index.html
かつて採掘場があり栄華を極めた家島。しかし採石産業が衰退した今、家島の歴史や文化、産業とそれらを基に培ってきた生活を武器に観光客を集めています。
島根県隠岐郡海士町「ないものはない」
http://www.town.ama.shimane.jp/topics/3000-1/post-72.html
「ないものはない、なくてよい」「ないものはない、大事なことは全てがここにある」の二つの意味を海士町らしさとして、キーワード「ないものはない」を掲げています。そのキーワードに至るまでの取り組みとして、あまりコミュニケーションがとれていなかったIターン者とUターン者、そして地元継続居住者の混合チームをつくり島のまちづくりについて意見を出し合ったそうです。島の魅力発信と住民のコミュニテイづくり、どちらの課題も解決したいい例ですね。
● 最後に
いかがだったでしょうか。地域の課題を解決するにも、その地域の数だけ様々な視点からの取り組みがありましたね。地域デザインの動きはより活発になり、学生の立場からも取り組めることがあると思うので、この記事をきっかけに注目してみてくださるとうれしいです。
(2016.8.6)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア