年間約200本のイベントを開催し、クリエイターに“FAB”を伝え続ける。|ロフトワーク FABディレクター/デザイナー 相樂園香さん

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学生時代にイベントの企画運営に関わり、誰かのために企画を考えたり、機会を提供することにやり甲斐を感じた人は多いのではないでしょうか。今回お話を伺った相樂さんは、東京渋谷にあるデジタルものづくりカフェで、デジタルファブリケーションに関わるクリエイターをサポートし、1年間で約200本も開催されているFabCafeのイベントの企画運営に携わっています。“FAB”をコンセプトに活動するFabCafeの取り組みとは?ものづくりの仕事、そして場所や機会提供の仕事に興味のある人は必見です。 編集・執筆 / AYUPY GOTO

相樂 園香さがら そのか

FAB Director & Designer

2013年 大阪芸術大学卒業。
株式会社ロフトワーク FABディレクター/デザイナー。

詳しいプロフィール

カフェの商品企画からイベントの企画運営まで行う、クリエイターの集うカフェの働き方

― FabCafeさんはどのようなお仕事をされているのですか?

相樂さん:FabCafeは株式会社ロフトワークが運営する、渋谷のデジタルものづくりカフェです。新しいものづくりのコンセプト「FAB」を楽しく、おいしく、わかりやすく体験できる場所や機会を利用者に提供しています。スペシャリティコーヒーとデジタル工作マシンの両方を楽しめ、クリエイターやファンが集まるクリエイティブ・コミュニティとしても世界中から注目されています。2013年5月に台北店がオープンし、今ではバルセロナ、シッチェス、バンコクなど、世界に拠点を増やしています。

― ものづくりが楽しめるカフェなのですね!相樂さんは、どのようなお仕事を担当しているのでしょうか。

相樂さん:主にFabCafeの運営担当です。
カフェとしてのお仕事ですと、スイーツやドリンクなどお店の商品決めを行ったり、パティシエさんとどのようなスイーツを提供するかするか話合い商品開発を行います。
また、FabCafeにはレーザーカッターや3Dプリンタが設置されていて、お客さんが利用できるようになっているので、機械の操作や作品づくりのサポートを行います。
FabCafeは実は年間200本ほどイベントを開催しているのですが、その企画運営も担当しています。FabCafeで開催して意味のあるもの、クリエイティブ系やその場で何か作品をつくるワークショップなどを考え、企画します。毎月いくつものイベントを開催するのでアイデアを切らさないようにインプットすることに必死です(笑)。ワークショップをする場合は、事前に試作をつくりうまくいくか試してみたり、制作の段取りを全て確認します。
2012年に第一拠点となるFabCafe Tokyoが出来て、現在では海外にも拠点ができました。東京、バンコク、バルセロナ・リゾート地シッチェス、台北の5箇所で、離れていますが通話サービスを使って毎週MTGします。
東京でやったイベントを台北でも開催したり、去年はスペインのバルセロナで開催された第10回世界ファブラボ会議、通称FAB10(ファブテン)いうイベントに参加し東京からFabCafeスピリットを伝えてきました。

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相樂さんが企画運営を担当したイベント“FabCafe x shy flower project”

― 年に200本ものイベントを開催されているのですね、すごい数ですね…!その中で人気だった企画はありますか?

話題になったものですと、バレンタイン企画で自分の顔をスキャンして、自分の顔型のチョコを、3Dプリンタでつくる企画は2年経った今でも世界中からお問い合わせがあります。

― それをもらったら驚きますね(笑)どのようなメンバーでFabCafeを運営されているのでしょうか?

相樂さん:マネジメントメンバー5人と、広報さんで行っています。店舗のオペレーションを行うアルバイトスタッフはバリスタやFABサービスを行うだけでなく、自主的にイベントを開催したりと、FabCafeにとってとても重要な存在です。ロフトワークのお仕事もFabCafeと連携をしながら行っています。

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悔しい、ここで絶対働きたい!条件を覆した熱意、決まった新卒採用

― 学生時代どのように過ごされていたのですか?

相樂さん:大阪芸術大学の芸術計画学科にいました。幼いころからデザインをするのが大好きで、大学の授業以外でも自主制作でグラフィックデザインを勉強していました。大学1〜2年生の頃は、他学科と交流はなくて学科内で引きこもった生活をしていました。しかし、学校の外に出れば、友達とクラブに行き遊びまわっていて、金髪でギャルっぽい雰囲気だったので周りには“ヤンキー”と言われたりしていましたね(笑)
3年生になった頃に、ふと映像学科の友だちが「良い映像ができたんだけど、それに合うBGMがなくて困っている。音楽が作れたらいいのに」と言っているのを聞いて、もったいないと思ったんです。学内には、作曲ができる音楽学科はもちろん、デザイン、美術、放送、工芸など様々な学科があるにも関わらず、それらが交流することなく学科内単独で動いている状態がありました。
そこで、それぞれのスキルを持った学生同士が出会い、協力してともにものを作れるプラットフォームとなる環境ができればいいのではないかと思い、その為の団体を立ち上げました。
その後は、リアルとインターネットの両方の場を通じて出会いの場を作り、ワークショップなどを開催しながら卒業まで活動していました。関西で開催されるおもしろそうなアートイベントには必ず参加し、とにかくたくさんの人に会う事を意識していました。

― ヤンキーと呼ばれる時代があったのですね(笑)就職活動はどのように動いたのでしょうか?

相樂さん:就活は特にしていませんでした。
気になっていたデザイン事務所にポートフォリオを提出し、有り難いことに内定を頂くことができて、卒業して入社できる場所は見つかったのですが、デザイン事務所の内定が出た直後に『FabCafe』の存在を、どこかのメディアの記事を通して知ってしまいました。その記事を見た瞬間に『絶対にここで働きたい!』と思ってしまったんですよね。
学生時代、スターバックスでアルバイトをしていたこともあり、密かに飲食×ものづくりができる仕事に憧れていたので、それができる場所があると知ったら悔しくて、自分がそこにいないのはおかしいって思って(笑)新卒は採用していない企業だったのですが、勢いで応募してしまいました。
そうすると、なんと採用担当の方から返信を頂く事ができ、面接をしていただいてアルバイト採用がきまりました!アルバイトというポジションからのスタートでしたが、その後社員として採用をしてもらうことができました。
新卒は採用されないと思っていましたが、絶対に行きたいと思う会社があれば、一か八かでもアタックをしてみるべきだと思います。
FabCafeの存在を知ってから入社するまで、毎日FabCafeのFacebookページを見ていたので、入社した時には前からいたバイトの子と同じようにFabCafeのことを知っていて、驚かれました。

― 熱意が伝わったのですね、そもそもFabCafeで求められている必須スキルは、どのようなものだったのでしょうか。

相樂さん:デジタルファブリケーションやグラフィックソフトなど、必要なスキルはたくさんありますがそれらは全て、やる気があれば入ってからでも身につけられるものです。そういったものよりは、コミュニティ力やコミュニケーション力、好奇心、何よりもものづくりが好きだという気持ち、そしてそれらを人と共有したいという思いが一番大切だと思います。

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FabCafeにとって意味のある企画づくり、デジタルファブリケーションの文化を伝えていきたい。

― 実際FabCafeに入社してみて、お仕事はいかがでしたか。

相樂さん:まだまだできたばかりの新しい組織ということもあり、入社した時から色々なことに挑戦させてもらえました。自由と責任がしっかり与えられ、いつも新しい刺激がある場所だと感じました。
やるべき仕事は決まっていますが、1日のスケジュールを自分で決めることができますし、MTGが入ったり、イベントの仕事が入る時間以外は、自分でイベント企画を考え進めたり、FabCafeの機材を使って制作の時間にあてたりしています。最近はカフェのブランディングや、デザインの統一作業などに時間を使っています。

― たのしかった経験やつらかった経験があれば教えてください。

相樂さん:辛いと思ったことですと、学生時代は自分が好きなものを好きなだけつくれていましたが、それが仕事になることで、お客さまのサポートや、ワークショップの企画など自分で何かをつくる時間が以前よりも少なくなってしまったので、制作意欲が強い時は時々もどかしくなります。私も参加者になりたい!一緒につくりたい!と思ってしまうんです。
ですが、基本的には良いことばかりで、カフェではいろんな人に出会えますし、イベント企画の仕事が多いので会いたい人や憧れの人がいれば、招待してゲストとして登壇いただき、一緒にお仕事できる機会をつくれます。いろんなイベントを企画して実績を積み上げることでFabCafeの価値も上がってきて、日に日にものづくりをする人が集う場所と認知されるようになってきました。
初期はデジタルファブリケーション体験イベントの企画が多かったですが、いまではそれらと平行しFabCafeとして意味のある催し物の企画を意識しています。いろんな人に喜んでもらえる仕事ができるのは、すごく楽しいですし、やり甲斐を感じます。

― FabCafeのお仕事の魅力を教えていただけますか。

相樂さん:領域が決まっていないので、日々新しい仕事や技術に触れることができるところです。今では最新の情報が入る、様々なものづくりコミュニティとの繋がりもあるので、新しい取り組みや最新のデザインがあれば、自然に企画が生まれていきます。そういった情報が集まり、人も集まる場で働けるので、仕事に飽きることはありません。何よりいろんな企画を通して人と出会えるのが一番大きいです。
自分の憧れていたクリエイターさんにもお会いできる機会があるので、好きなクリエイターさんと一緒にワークショップをしたり、面白いことがいろいろと考えることができて幸せですね。

― 今後どうしたいか、夢や目標はありますか?

この2年間はとにかく「学び」の部分が多く、試行錯誤しアドバイスをもらいながら様々な企画を行い、「数」というものを意識してきましたが、これからはFABとはどういうことなのか本質的なことに向き合い、企画の質を上げていきたいです。
デジタルファブリケーションは、マサチューセッツ工科大学の“ほぼなんでもつくる”という授業の研究の一環としてうまれました。決して裕福とはいえない地域に、物を与えるのでなく道具を与えると何ができるのか、実験的に行う取り組みがあったのですが、機材を渡すと、そこにいる人たちは自然と道具の使い方を習得し、自分たちの生活に必要なものを自分たちでつくれるようになりました。こういった文化から生まれたデジタルファブリケーションの取り組みを、もっと意味のある企画で広めていけたらと思っています。
あと、自分自身の制作も頑張りたいですし、もっともっと面白い人と一緒に働いていきたいです。

― 最後に学生に向けてメッセージをお願いします。

相樂さん:家と学校を往復するだけの生活からは抜け出してほしいです。課題ばかりでなく、いろんな人や場所があることを知ったほうが、自分の将来への視野も広がるような気がしています。
社会人の仕事も、人との繋がりやコミュニティ力が重要だったりするので、視野を広げて今のうちから繋がりをつくってほしいです。
また、自分が好きなことを知っておくことも大事です。そして、それがなぜ好きなのか、どんなところに惹かれるのかを明確に説明できる訓練をしておけば、就職活動においても役に立つことがありそうです。

株式会社ロフトワークFabCafe

(2015.6.2)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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