“何でも任せられる自分になりたい”という思いが、成長の幅を広げ続ける|サーチフィールド アートディレクター 我妻敬太さん

AZUMA

大学生の就職活動が始まるタイミングで、美術大学の最終課題である卒業制作も始まります。就活と卒制をうまく両立できる 学生もいれば、両立が難しく、どちらかの活動に偏ってしまう学生も少なくありません。 今回お話を伺う我妻さんは、卒業前まで卒業作品制作に全力を注いだ美大生でした。そこからどうやって、ゲームイラストのアートディレクターの仕事に就けたのか、学生時代のお話から現在の働き方まで伺いました。編集・執筆 / AYUPY GOTO

我妻 敬太あづま けいた

ArtDirector & Director

多摩美術大学 情報デザイン科を卒業。
株式会社サーチフィールドのアートディレクター兼ディレクターを担当する。

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2つの仕事を兼任したことで、任せてもらえる自分に成長

― サーチフィールドさんは何を行っている会社ですか?

我妻さん:“作品を世の中に発信したいクリエイター・アーティストを支援し、新たなエンターテイメントの可能性を発掘・発信する事で社会に還元すること”をミッションに掲げて、クリエイターと社会をつなぐ新しいサービスをつくっています。
僕が所属しているギクタス事業部ですと、GiKuTAS(ギクタス)というサービスを運営していて、「描く」を仕事にしたいイラストレーターと、コンテンツを作りたい企業をつなぎ、フィーチャーフォン・スマートフォンアプリ向けイラストの制作代理店業務をおこなっています。
現在、ソーシャルゲーム・ソーシャルアプリのイラスト制作実績は250タイトル以上と、国内ナンバーワンの実績があります。

― クリエイターのためのサービス開発ですか、素晴らしいお仕事ですね!ギクタス事業部で我妻さんは、どのような業務を担当されているのですか?

我妻さん:アートディレクターとして働いています。また、兼任してディレクター業務もおこなっています。

― アートディレクター兼ディレクターですか、一体どのような仕事内容なのでしょうか?

我妻さん:アートディレクター業務ですと、クリエイターさんが提出してくださったイラストをチェックして、赤入れをしたり、クライアントの求められているイラストにテイストを合わせるために手を加えたり、イラストレーターさんに指示を出して、イラストのディレクションを行っています。ディレクションすることが主な業務ではありますが、場合によっては、一からイラストを描くこともあります。
また、ディレクター業務ですと、担当プロジェクト(案件)をいくつか持って、クライアントと直接打ち合わせをして、どういったキャラクターを制作するか設定を決めたり、どのイラストレーターさんに描いてもらうか案件にマッチするイラストレーターさんを選定したり、制作の進行スケジュールを組んだりします。

― クライアントさんとの打ち合わせも任されるのですね。大体入社してどのくらい経ってから、プロジェクトは任せていただけるようになるのでしょうか?

我妻さん:入社してすぐに、クライアントとの打ち合わせに同席していただき、先輩が確認しつつになりますが、最初からプロジェクトも持っていただきます。早く慣れてもらって一人前になってもらいたいので、若いうちからでも責任のある業務は任せています。

― スピード感ありますね!アートディレクターやディレクターは、一人で何案件くらい持たれているのですか?

我妻さん:少ない人で4件、慣れてくると約10件は持っています。仕事自体は絶えることがないため、社内で「手が空いている人はいないですか?」と連絡がきて、空いている人が自主的に手を上げて、担当の案件を持ちます。

― なぜ我妻さんはアートディレクター業とディレクター業を兼任されているのですか?

我妻さん:アートディレクターとして入社したのですが、僕が入社した時は社員が少なかったこともあり「両方できるなら両方やっていただけますか?」という話が出て、引き受けることにしました。2つの役割を行うのは凄く大変でしたが、必要とされる自分になりたくて頑張ろうと思いました。アートディレクターだけでなく、ディレクターも兼任できたことで、全体の仕事の動きが把握できて、結果的に良かったと思っています。

今では人も増えたので、役割は分かれています。グラフィッカーも採用するようになりました。私は当時のまま2つの役職を兼任していますが。笑

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我妻さんのポートフォリオ

一度失敗した就職、そこから持ち直し、好きなことにチャレンジできる環境へ

― 何故、多摩美術大学の情報デザイン学科に進学されたのですか?

我妻さん:高校時代か画を描くのが好きで、らくがき程度ではあったのですがイラストを描いていました。当時は吹奏楽部に入っていて音楽ばかりやっていたのですが、将来は物作りの仕事に就きたいと漠然と考えていて、そんなときに同じ吹奏楽部の先輩が美大に進学したという話を聞いて、相談にのってもらい美大に進学することにしました。
そこから1年間、予備校に通い、デッサンやイラストを描いて勉強して、多摩美術大学に入学することができました。
元々映像作品が好きだったこともあり、映像制作ができる学科を探していたところ、多摩美の情報デザインに出会いました。やりたいことを見つけるための場所でした。
入学してみたら、まわりにはアーティスト志望の子がいたり、DJをしている子がいたり、メディアアート作品を作っている子がいたり、他の学科よりも個性的な子が多かった印象です。

― 大学ではどのような活動をされていたのですか?

我妻さん:大学の課題は幅広くて、とくに大学1年生の時は、デッサン、イラスト、アニメーション、写真、立体物など様々な課題がありました。そして、ただ作品を作るのではなく、写真の課題が出たときは、一眼レフの使い方や仕組みを一から教えてもらいました。また、活躍したいという意識を持ち、自主的に活動しているクラスメイトが多かったため、僕も感化されて手当たり次第何かを作っていました。1年生で培ったものは広くて浅かったのですが、いろいろ作っていくうちに少しずつ自分に見合ったものがわかってきて、人に見せたいと思えるクオリティの作品がつくれるようになってきたのは大学2年生になったくらいです。
2年生になった頃から、仕事として制作を受けることがでてきて、当時入っていた吹奏楽団の映像制作やパンフレット制作も任されていました。
当時は映像制作にハマっていて、自主制作で作品をつくりためていました。アウトプットしたものも、映像作品が1番多かったと思います。
3年生になると専攻(ゼミ)を選択できて、僕は映像空間演出専攻を選びました。そこからは、インスタレーション作品や立体作品の制作、パフォーマンスもやっていました。渋谷で全身タイツのパフォーマーを立たせて、それを撮影して映像作品としてアウトプット、なんらかの形で映像に結びつけて、活動していました。

― お話を聞いていると、映像制作をずっとやっていたように感じますが、いつ現職(イラスト)のスキルを身につけたのでしょうか。

我妻さん:イラストは大学2年生の時に、大学のパンフレットのキャラクターを描いたり、3年生のときには、大学の就職課がイラスト壁画のアルバイトを募集していて、そこに応募して壁画を描いたりしていました。

また、テレビ局の制作会社でイラストを描いている友人がいて、紹介してもらい、同じ会社でイラストレーターのインターンをやっていました。

当時描いていたイラストは、ゲームイラストでは全然なかったです。テレビ局のインターンで学んだイラストは、特に現職では活きていなくて、それよりも大学受験の時に学んだデッサンや色彩構成などの基礎のほうが活きています。ゲームイラストは描けたほうがいいのですが、まずはデッサンなど基礎力をつけることが大事だと思います。基礎力があれば、入社時にゲームイラストを描くスキルがそこまでなくても、身体をとらえたり、顔のバランスをとらえて描いたりする感覚は持っているので、練習するうちに、どんどんゲームイラストのスキルは身についていきます。

― イラストも基礎力が大事なのですね。当時の大学生は、3年生の12月から就職活動が始まっていたかと思いますが、そのとき我妻さんは就活を始めていましたか?

我妻さん:僕の学科は毎年進級制作課題があって、世間で就職活動が始まったタイミングも進級課題に追われていました。進級課題審査は厳しく、通らないと進級できないので、当時は課題で頭がいっぱいでした。笑

そして、4年生に進級できたと思ったら、卒業制作の審査がありますし、就職活動に集中するタイミングはなかなかありませんでした。

ただ、器用な友人は、就職活動のタイミングでしっかり準備をして、エントリーして面接を受けて回っていたので焦りました。笑

― では、就職活動はどのタイミングで始めたのでしょうか?

我妻さん:卒業制作の審査が4年生の12月だったため、審査が終わったタイミングから就職活動を本格的に始めました。受けた企業は全部で6つほど、ゲーム会社やテレビ局、ダメもとで広告会社も受けました。とくに業界などは絞っていなかったです。

― 就職活動をやってみて手応えはありましたか?

我妻さん:僕の就活は苦戦しました。笑
僕の受けた企業は筆記審査がなくて、ポートフォリオを送って、通れば面接する形式だったのですが、ポートフォリオが通過した場合、ポートフォリオは良かったと判断できると思うのですが、面接した後に落とされることが多くて、人が合わなかったのだろうな……と判断していました。笑
面接になると変にあがってしまって、ダメだと感じることが多かったです。
ポートフォリオを見せながらプレゼンするのは得意だったので、作品について説明して、盛り上がった会社は内定をいただきました。
結果、内定をもらって入社することになった会社は、インターンで働いていたテレビ局のイラストを描いていた制作会社でした。

― 新卒入社したのはサーチフィールドさんじゃなかったのですね!いつまで働いていたのでしょうか。

我妻さん:そうです。当時はサーチフィールドを知らなかったのです。
入社した会社がアルバイト契約で、1年間働いたら契約社員になれるという話があったのですが、入社して数ヶ月働いたら契約社員にはなれないと話されて、このままずっとは働けないな…と考え、社会人1年目の12月で退職しました。
そこからクリエイティブ専門の転職サイトで会社を探していたときに、紹介されたのがサーチフィールドで、いくつか会社を受けてはいたのですが、人事の方がすごくフランクで、面接なのにすごく楽しくお話しできたのです。印象が良くて、他にも3社内定をいただいたのですが、この人たちと働けたら楽しいな、と思いました。
3月末に面接を受けて内定をいただき、社会人2年目になる4月末に入社しました。

― 何故、イラストのアートディレクター職を選んだのでしょうか?

我妻さん:ゲーム自体は学生時代も視野に入れていて、当時そこまでイラストをかけていなかったのでゲーム業界で働くのは厳しいかと思っていました。しかし、募集要項を確認したときに「Adobeのイラストレーターとフォトショップを使える人は受けてください」とのことだったので、チャレンジしてみようと思えました。

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イラスト以外で出来ることを増やしたいなら、サーチフィールドでチャレンジしてほしい

― 実際入社してみて、イメージしているようなお仕事だったのでしょうか。

我妻さん:まさかこんなにいろんな仕事を任せていただけるとは思っていませんでした。
イラストを描いて、ディレクションできる人として入社しましたが、実際入社してみたら自社のプロモーション映像を制作したり、自ら手を挙げたら様々な業務を任せてもらえる会社でした。

― サーチフィールドさんの魅力はどのようなところでしょうか?

我妻さん:多くのゲーム会社さんとお仕事しているので、人気ゲームタイトルのイラスト制作や、幅広いジャンルのイラスト制作に関われます。
背景一つ描くにしても、アニメ塗りや美麗系、コンセプトアートのような背景イラストを描くこともあります。キャラクターを描くとなると、さらに幅広い表現力、アイデア、知識、技術が必要となるので、ディレクションする仕事も、描く仕事も学べることが多いです。

― 社内にはどのような人がいますか?また、どういった環境なのでしょうか?

我妻さん:サーチフィールドは、挑戦したいことがあれば、新しい事業を考えて提案できる環境があります。
また、とてもユニークで個性的な社員が多いです。コーポレートサイトの社員紹介ページにもありますが、CGデザインをやっている人、DJ、タイツのデザインをやっていた人など、それぞれ濃い趣味や特技を持った人が集まっています。

― 今後どのようなことに挑戦していきたいですか?

我妻さん:イラストレーターの人たちが、もっと世の中で活躍できる環境をつくりたいと思っているので、まだ隠れて活躍できてないイラストレーターを見つけ出して、様々な企業さんに「こういう作家さんもいますが、どうでしょうか?」と、作家さんの魅力を提案していきたいです。
また、自分が元々現代アートやメディアアートの作家だったということもあり、イラストだけでなく、様々なジャンルのクリエイターの活躍の機会をつくっていきたいです。

― どのような人と一緒に働きたいと思いますか?

我妻さん:学生時代に作った物に対して、責任を持って説明できる人がいいですね。例えばポートフォリオに載せている作品について質問したら、コンセプトや制作のストーリーなど、しっかり伝えようとする姿勢が見える人は、話を聞くほうも気持ちが良いです。好奇心持っていろんな作品づくりに挑戦している人は、一緒に楽しんでものづくり(仕事)ができる人だと思います。

― 最後に、学生にメッセージを御願いします。

我妻さん:美大に入学した人たちは、遊びも形(作品)にできる力がある人が多いと思うのですが、何を作るにしてもしっかり完成させて、記録しておくことが重要だと思います。

遊びでも制作でも仕事でも、チャンスは沢山転がっているので、そういった機会に果敢に取り組んだら、きっと自分の強みが沢山できるはずです。全力で学生生活を楽しんでください。

(2015.6.1)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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