作品解説は「発見・発想・展開」の3段階で!自己表現を追求したポートフォリオ|放送業界デザイナー

今回は、放送業界のデザイナーとして働くHさんのポートフォリオをご紹介します。コンセプトを「とにかく自己表現」とし、好きな色を使い、自分が好きになれるポートフォリオを作っていますが、決して独りよがりな作品集ではありません。お話を聞くと、制作するうえでのこだわりや試行錯誤がたくさん溢れてきました。「就活ツールとして成立させたい。けれど評価だけを意識したものはなんか違う気がする」と感じている方は、ぜひご覧ください!編集・執筆 /YOSHIKO INOUE

H.H さん

2020年3月多摩美術大学卒業
放送業界に就職
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PICK UP!ポートフォリオのこだわり

おもしろく分かりやすい!自己紹介ページ

※顔写真部分は、記事化にあたり隠しています。

Hさん:自己紹介ページは、表紙をめくった時のインパクトと自分らしさを意識しました。自己紹介といえば身分証明だなと思い、免許証モチーフにしてみました。この世で一番面白い証明写真は免許証の写真だと思っているので、写真は本物の免許証写真を使用しています。最初は儚い表情の写真にしてカッコつけていたのですが、自分らしくないのでやめました。ポートフォリオにおける自己紹介ページの立ち位置は、「必須だけど作品よりは重要度が低い」というなんとも難しいところにあります。そこで、面白く分かりやすく簡潔に表わした結果このようなページになりました。
免許証の裏面もうまく活用してコメント欄にしました。郵送で送る場合もあるので、作品に対する自分の思いや、どのような姿勢でポートフォリオを見て欲しいかを書くと丁寧だと思います。

好きな色を使うと、自分のポートフォリオをもっと好きになれる

Hさん:切り返しの色はビビットで派手な色にしました。自分自身がこのポートフォリオを好きになりたいと思っていたので、好きな色を使っています。結果として派手になったのですが、目立った色を使うことで全体のまとまりが出ました。個性も出て良かったと思います。
私はさまざまなジャンルの企業にポートフォリオを送っていたので、毎回中身を組み替えて送っていました。そのため、合計ページ数は68ページですがもくじやノンブルは載せませんでした。

「発見・発想・展開」をベースに冒頭2ページで概要を伝える

Hさん:題名・サブタイトル・プロセスなど、各作品の大切なことは冒頭見開き2ページに載せきるようにしました。最も良い写真とともに掲載し、最悪その2ページしか読まなくても伝わるようにしました。
普通はメインビジュアルと概要を添えるぐらいですが、私の作品はプロセスありきのものしかないので、発見・発想・展開というベースを決めて最初から細かく説明しています。また左閉じにして、最初にメインビジュアル、次に左ページの概要 という視線の流れにしました。紙質にこだわったペーシは実際の紙を切って貼りわかりやすくしています。

読み手のことを考えながら、詳細説明のボリュームを調整

Hさん:ポートフォリオの中でも推している作品は1作品につき10ページ使っており、多いほうだと思います。見開き2ページ以降はさらに読んでくださる人に向けて徐々に詳細を載せていき、プロセスまで載せました。何十人分のポートフォリオを見る採用担当者の中にはじっくり見てくれる人・そうでない人がいると思います。その両方に対応できるように、見出しと本文のテキストにも気を使いました。見出しだけ読んでも内容が理解できるようにしています。読み手の気持ちを考えながら制作することが大切だと思います。

ポートフォリオ一問一答

●このポートフォリオを提出した業界

IT業界・WEBデザイナー/UIデザイナー職 
ゲーム関連・UIデザイナー職
食品、小売業界・パッケージデザイナー職 
放送業界・映像デザイナー職
広告代理店・デザイナー職
印刷業界・デザイナー職

●コンセプト

とにかく自己表現

●ポートフォリオの構成

  • 表紙
  • プロフィール
  • 自己紹介コメント
  • 学校課題:社会デザイン
    (立体物、パッケージデザイン)
  • インターン:UIデザイン
  • 学校課題:インフォグラフィックス
  • 学校課題/自作:タイポグラフィ
  • 自作:デッサン、イラスト
  • 裏表紙

▼表紙は「可愛くしたい」の一心で制作したそう。「イラストはポートフォリオに載せていない作品です。一応説明もできるので、意味のないイラストなどは使用しない方が良いと思います。」とHさん。

●制作時期

3年生の5月頃〜4年生の5月

●制作プロセス

  1. 作品のピックアップ
  2. 仮配置
  3. 仮組み
  4. 自宅印刷
  5. ファイリング
  6. 作品の本ピックアップ
  7. 作品撮影、加工
  8. InDesignで配置
  9. 文字組み
  10. キンコーズで製本

●サイズ / ページ数

A4横 / 68ページ

▼矢印や図を使った「制作過程」のページは、面接のときもプレゼンがしやすそう。

●制作に使用したソフト

Photoshop Illustrator InDesign Lightroom

●印刷 / 製本方法

キンコーズで製本(表紙にはOPPフィルムを使用)

●制作にかかった費用

一冊3,000円〜4,000円

●制作するうえで参考にしたもの

  • ViViViT
  • 書籍
  • サイト
  • Pinterest
  • 友人の助言
  • 各企業先のフィードバック

▼展示の様子の写真が充実しているのも印象的!ユーザーの反応も記載されている。

●制作中にもらったアドバイス

Hさん:このポートフォリオはアドバイスをもらい改善したところしかありません。エディトリアルデザインの知識とセンスが無かったため、友人のアドバイスのおかげで劇的に改善できてものすごく助かりました。同学科の友人だと制作している作品群もほぼ同じなので、ぴったりなアドバイスをもらえます。概要に発見・発想・展開という分け方ができたのも友人のおかげです。
また、説明会などに行った際も積極的にアドバイスをもらうようにしました。しかしそのアドバイスはその社員さんの一意見でしかないので、なるべく多くの意見をいただき、そこで共通して言われているところを重点的に優先的に直しました。

●ViViViTページのこだわり、使い分け

ViViViT(ビビビット)ページは縦スクロールでたくさんの情報が見やすいため、WEBやUI作品をメインに、より細かい解説を載せました。

●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス

Hさん:変にカッコつけたりせず、自分を表現していくことが最も大切だと思います。ポートフォリオは面接までの架け橋でしかありません。面接にたどり着いても、ポートフォリオで感じた印象と違う人が来たら嫌ですよね。とにかく自分を表現して、分かりやすく簡潔に、言いたいところだけを。また自分を表現するためには自分を理解していないといけません。そのためにも早めの自己分析は本当に大切だと思います。
さらに、自分自身が愛せるポートフォリオを作るのも重要です。作りづらい、好きになれないものだとポートフォリオ制作も進まないと思います。私も始めはそうだったのですが、メインカラーをオレンジからビビットピンクに変えた途端サクサク進むようになったので、そんなものだと思います。ポートフォリオ制作に行き詰まったら、自分の好きなものを盛り込んでください。進むと思います。それが自然と自己表現に繋がると考えています。


はたらくビビビット編集部より

Hさんへの取材後にコンセプト「とにかく自己表現」について考えてみると、その中には「自分のことを、相手に伝わるように伝える」という隠れたメッセージが潜んでいるように感じました。冒頭で「作品に対する思い」や「どのような姿勢でポートフォリオを見て欲しいか」を書くことでHさんのメッセージを把握した上で読み進められますし、プロセス〜完成までを「発見・発想・展開」の3パターンで解説することで「その制作で得た学び」が一目でわかるようになっています。さらに“見出しを読むだけで内容が理解できるテキスト”“実物感が伝わる紙選び”など、こだわりは細部にまでわたります。
読み手へ十分に配慮したうえで、あなたがその場にいなくとも、あなたが語りだすようなポートフォリオを作り上げたいですね!そうすればきっと、就職活動も納得の結果を得られるでしょう。ご協力ありがとうございました!


(2020.4.17)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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