大手の道も一歩から。地道なブラッシュアップで自分の"魅せ方"を追求した、大手ゲーム会社背景デザイナーのポートフォリオ

大手ゲーム会社の背景デザイナーとして内定を得た永田さんのポートフォリオは、シンプルながらも自分自身を“魅せる”構成。制作の裏には地道なブラッシュアップの過程がありました。文字の大きさや文章量、レイアウトの違和感、その人の長所や魅力……ポートフォリオを客観視し、周囲のアドバイスを積極的に取り入れた永田さん。この記事は、ポートフォリオ制作に一人で取り組み悩んでいる方にこそ見てほしいです!
編集・執筆 / AYAKA SHIMOYAMA , YOSHIKO INOUE

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ここを見て!ポートフォリオの注目ポイント

■評価してもらいたい箇所を明確に。読み手の視線をコントロールする作品キャプション

編集部:永田さんの作品キャプションには、この作品の"どこを"評価してほしいのかが記載されています。これにより、どこに注目しながら見れば良いのかが明確になりますよね。企業の採用担当者がポートフォリオを見る時間には限りがあります。視線を予めコントロールできれば、見てほしい情報を確実に伝えることができます。皆さんはご自身の作品のどこを注目・評価してほしいですか?整理してみましょう。


■未知のデザインは周囲の意見を取り入れる!未経験から突破したエディトリアルデザイン

編集部:永田さんは、ポートフォリオのエディトリアルデザインについて「先輩や友人、大学のキャリアセンターの方や企業の方にアドバイスを頂きました。はじめは適正な文字サイズすら分からず、その点多くの人に助けられたと思っています。」と回答しています。誰にとっても未経験のジャンルのデザインはわからないことだらけですが、その突破口として「一度形にして、周囲(専門家)にアドバイスをもらう」という方法があります。文字の大きさやジャンプ率、余白の取り方など、一度形になっていると具体的な改善策を得られますよね。
▼フォント、行間、文字組みを押さえることで破綻のないエディトリアルデザインに

PROFILE

永田 さん

武蔵野美術大学 造形学部 デザイン情報学科(2023年卒業)

PICK UP!ポートフォリオのこだわり

第一印象は迫力が大事。作品の扉ページには大きなキービジュアルを




永田さん:作品の切り替わりごとに、それぞれのキービジュアルを大きく見せる黒地の扉ページをつけることで、第一印象で作品の迫力を感じてもらえるような構成にしています。特に背景やコンセプトアートのジャンルは可能な限り大きな画面で見せることで魅力が伝わると思うので、後に続く解説ページの前に一度強く印象付けて「更に知りたい!」と思わせてからページをめくってもらえるような構成にしました。これによってポートフォリオ全体に緩急が生まれ、読みやすい冊子になったと思います。

短時間で作品の概要と魅力を把握してもらうための見出しの工夫



永田さん:読み手のストレスを軽減するため、作品の見出しは「この作品は一言で言うと○○!」というものを大きな文字で配置しています。これによりページ内の全ての文字を読まずに、パラパラとめくっただけでも概要を掴んでもらえるような構成にしました。また、3DCG作品に関してはモデリングやライティングなど全ての要素をハイエンドゲームのCGに比べられてしまうとクオリティの粗が見えてしまうため、「ここを工夫しました!」「こういったことに挑戦しています!」といった明確に評価してもらいたいポイントを見出しで示すことで見逃されないように工夫しました。

作品は自己PRの大事な材料!自分の“Can”が最大限伝わる作品選抜




永田さん:冒頭に置かれた「ASTRO SAMURAI」という作品は、一つのキャラクターデザインから発展して、CGや映像、グラフィックデザインなど様々なアプローチで制作した作品です。はじめのイラスト→3DCGモデルという見せ方が一番分かりやすいですが「実はこういうこともできます!」というアピールを二転三転して行っているため、私という人材をアピールするにはもってこいの作品だと考えています。またポートフォリオ全体としても、和風の硬派な作品群→かわいい系の人物キャラデザイン→二次創作→絵本チックなイラスト……と並べることで、仕事の幅広さとギャップによる驚きを演出できるように工夫しました。提出先の企業によってポートフォリオに載せる作品の順番を変えるという話をよく聞きますが、私の場合はどの企業に対してもこの構成で勝負していました。

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ポートフォリオ一問一答

●このポートフォリオを提出した業界

ゲーム業界

●コンセプト

イラストをかっこよく描けるだけじゃない!総合的な美術の視点を魅せるポートフォリオ

永田さん:私は背景デザイナー志望で就活をしていました。ポートフォリオではイラストやCG映像、写真などいくつかのジャンルで制作していますが、共通して構図の取り方や画面の迫力を褒めて頂けることが多いです。大学では主にデジタル平面表現としてのイラストレーションに興味があったのですが、所属する学科はそれをメインに扱う専攻ではなかったため、間接的に役立ちそうなアニメーションや写真、解剖学や3DCGなど幅広く履修していました。そうして様々な分野から技法や考え方を取り入れつつ自主制作のイラストに落とし込むことを続けてきたため、ポートフォリオでは単にイラストをかっこよく描けるだけではない、「総合的な美術の視点をもってイラストに取り組んでいます!」ということを特にアピールしています。それが伝わったのか、就活でお話しした企業の方からも「画づくりだけではなくデジタルツール全般に期待できる」といった評価をいただくことがありました。

●ポートフォリオの構成

  • 表紙
  • 自己紹介・目次
  • イラストレーション(約20点)
  • 3DCG映像(1点)
  • 3DCGモデリング(12点)
  • 写真(11点)
  • グループ制作映像(3点)
  • 絵画・ドローイング(55点)
  • 受験デッサン・平面構成(5点)
  • 裏表紙

●表紙をつくるときに工夫した点

永田さん:表紙のタイトル「POLAR(極地)」は、ポートフォリオの名前が「PORTFOLIO」ではつまらないと思っていたことから命名しました。シロクマ(polar bear)が好きで初期のポートフォリオはこのポートフォリオには載せていないシロクマの作品が表紙だったことからその名残で使用していましたが、背景デザイナー志望として「誰も見たことがない土地を描く」という意味ではかなり良いタイトルだったのではないかと思っています。

●制作時期

大学3年生の6月ごろ〜大学4年生の3月

●制作プロセス

(1)作品のピックアップ
(2)Illustratorで編集
(3)先輩・同期・企業の方・大学のキャリアセンターの方に見せて添削
(4)修正
(5)(1)〜(4)を可能な限り繰り返し

●サイズ / ページ数

A3横 / 49ページ

●ポートフォリオ制作に使ったソフト

Illustrator

●印刷 / 製本方法

なし(データ提出のみ)

●制作にかかった費用

約5000円(ファイル代)
永田さん:企業が提出データを紙で印刷する場合に備え、自分でも印刷して文字サイズ等を確認していました。(印刷は大学で行ったので無料)

●制作するうえで参考にしたもの

ViViViTの先輩ポートフォリオやポートフォリオメイキングの書籍、絵画の画集、資料集など

●ポートフォリオを使ったプレゼンで工夫したこと

永田さん:これはポートフォリオプレゼンに限った話ではありませんが、質問されない限り自分の作品のダメな点の話はしないように意識していました。「客観的に自分の弱点を理解している」という点で見れば言うべきタイミングもあるかもしれませんが、先に言ってしまうことでクオリティに保険をかけているようなニュアンスを感じてしまいますし、企業の方に対しても妥協してつくった作品を見せることは失礼だと考えています。

●制作中にもらったアドバイス

永田さん:先輩や友人、大学のキャリアセンターの方や企業の方にアドバイスを頂きました。私はエディトリアルデザインに対して全く理解がなかったので、はじめは適正な文字サイズすら分からず、その点多くの人に助けられたと思っています。実際、今回の記事中でお話している扉絵の案と見出しの案はアドバイスをもとに追加しました。

●ViViViTページと紙ポートフォリオの使い分け

永田さん:基本的にポートフォリオを見てもらいたい時にはViViViTのURLを相手に共有していました。紙ポートフォリオも用意していましたが、文字サイズやページ量を一度印刷することで客観的に確認する使い方がメインでした。

●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス

永田さん:ポートフォリオはとにかく人に見せてブラッシュアップすることが大切だと思います。それは単純にポートフォリオのクオリティが上がっていくということもありますが、ポートフォリオを通した客観的な意見をもらうことで自分の強みや武器にできる要素を知ることができるからです。私はデザイン科としては珍しく背景デザイナーを目指していたため、ファイン系の人に引け目を感じることが多々ありました。しかしポートフォリオのフィードバックを通してデザイン科なりの勝負の仕方があると気付き、限られた時間の中でも最善を尽くすことができたと考えています。

編集部:シンプルなレイアウトで作品がより際立って見える素敵なポートフォリオでした!永田さん、ありがとうございました!

永田さんも使った!ViViViTでポートフォリオをつくってみる

(2023.5.9)

著者

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下山絢香

株式会社ビビビットの社員です。大学時代に学んだサービスデザインやUXデザインの知識を活かし、地域や学校に関係なく、すべてのクリエイターが納得のできる居場所を見つけられる世界を目指してViViViTの広報活動に取り組んでいます。

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