今回ご紹介するのは、大手広告代理店に内定したデザイナーさんの就活ポートフォリオです。タイトル「Identity and Graphics」の通り、ポートフォリオをめくっただけでNさんの好きなもの、スタイルが伝わってくるような内容でした。魅力的なコンセプトがありながら、説明的ではない、美しいビジュアルに仕上がった作品の数々。一つ一つをじっくり見たくなるポートフォリオを、さっそく覗いてみましょう!
編集・執筆 /YOSHIKO INOUE
N.N さん
金沢美術工芸大学 美術工芸学部デザイン科 視覚デザイン専攻卒業
2019年4月〜広告代理店アート職
PICK UP!ポートフォリオのこだわり
自分を表している作品や、気に入っている作品は最初に配置
編集部:Nさんの作品は、人々の生活に慣れ親しんだものを、独自の視点で再構築したものが多い印象です。この「書道譜面」という作品では、書道における筆の動きを記号化し、映像作品にしています。
音楽を奏でるのに楽器が必要なように、書道に筆は必要不可欠な存在。本作では、筆を使わない方法で書道を表現するというスタイルを提案し、高度なビジュアライズに成功しています。この手法はリフレーミングといい、常識に対して別の視点で説明を試みるものとして知られています。ポートフォリオにまとめる際は、画像に加え、動画にアクセスできるQRコードを載せていました。
ものの捉え方もまとめ方も、ぜひ参考にしたいポイントです!
なるべく文字を使わずに、作品を伝える3>
編集部:文字を必要最低限にし、ビジュアルメインのNさんのポートフォリオ。「焚火ドコロ」という作品では、火に対するリテラシーを高めるというねらいを、太古行われていた「人と火の生活」という着眼点でイベントの企画・ブランディングに落とし込んでいます。作品コンセプトはインフォグラフィックスのような図を使って説明されており、見やすくまとめられています。
どの作品も同じ規格に収め、初めて見た人でもわかりやすいように
ポートフォリオ一問一答
●このポートフォリオを提出した業界
デザイン事務所・広告代理店・化粧品メーカー
●コンセプト
作品を丁寧に伝える
●ポートフォリオの構成
- 表紙
- 実験作品
- VI
- イラストレーション
- ブランディング
- パッケージデザイン
- 新聞広告
●制作時期
大学3年生の3月頃
●制作プロセス
- 作品をピックアップ
- 構成や写真撮影
- Illustratorでデータ制作
- 印刷会社で印刷・製本
●制作に使用したソフト
Illustrator、Photoshop
●印刷 / 製本方法
キンコーズで印刷 / テープ製本
●サイズ / ページ数
A3 / 76ページ
●制作にかかった費用
約15000円
●制作するうえで参考にしたもの
自分が好きなデザイナーや作家の作品集、ウェブサイト
●ポートフォリオを作る上でアドバイスをもらった人
デザイナーやアートディレクターの方、大学の先生方
●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス
Nさん:就活では、自分が作品の横に立って説明できる場面だけではなく、ポートフォリオが一人歩きする場面も多かったです。自分の作品は伝えづらいものが多かったので、作っては誰かに見せ、直すことを繰り返し、“見ただけで伝わる”を第一に制作しました。
また就活に使うだけのものとは考えず、実際に販売されているデザイナーの作品集などと比較して、見るに耐えうるか検討しました。とりあえず一冊つくってみることが大切だと思います。
はたらくビビビット編集部より
「その昔地球は平面状だった」という説から、現代の動物や人々・自然を“想像上の奇妙な立体”に落とし込んだ不思議なイラストレーション。火に対するリテラシーを高めるというねらいを、太古行われていた「人と火の生活」という着眼点で企画・ブランディングされた焚き火イベント。Nさんの作品はどれも、ものごとを別の角度から観察し、圧倒的クオリティのデザインに落とし込んでいます。
ポートフォリオ内の文章は少なめですが、最初のページには「背景に流れる思いや人々の関わりを形にしたい。つくったものを通し 文化やスタイルへと繋げていきたい。」というコンセプト文が記載されており、制作に対する思いが伝わります。あくまで作品を主役に、良い塩梅で自身がにじみ出ているポートフォリオ。1ページ1ページから、制作にいかせるたくさんのヒントが見つかりそうですね。
Nさん、ありがとうございました!
(2019.8.1)
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア