今回ご紹介するのは、株式会社カプコンで背景デザイナーとして働く、長井さんの就活ポートフォリオです。デザイン専攻に在籍し、イラスト制作やゲーム業界への対策はほぼ独学だったという長井さん。どんなポートフォリオで内定へこぎつけたのでしょうか。さっそくポートフォリオを覗いてみましょう!
編集・執筆 / YOSHIKO INOUE,AYUPY GOTO
長井 惇之介さん
ながい じゅんのすけ
愛知県立芸術大学美術学部デザイン工芸科デザイン専攻卒業
2018年4月より株式会社カプコンにて背景デザイナーとして勤務
PICKUP!
まず、ポートフォリオのなかで特にこだわった部分を教えていただきました。
イラストは大きく見やすく、テキストとのバランスも大事に
長井さん:イラスト作品は、できるだけ大きく表示できるよう工夫しています。大きく見せたい作品と数で見せたい作品を区別し、それぞれに合った見せ方を考えていきました。世界観の設定やテーマなどを伝えるテキスト部分は、絵の邪魔をしないよう配慮しながらテキストもレイアウトしました。
冊子にすることで作品の見え方が損なわれないよう、製本方法に工夫を
長井さん:作成したイラストはモニターサイズ(横長)に合わせて描いたものが多かったのですが、両面いっぱいに掲載しても中央に綴じ目が来ないよう、無線綴じ製本にしました。分厚い紙を使用しているので、180度開くことができ、そうするとA3サイズで見てもらうことができます。
グループワークや課外活動も載せ、アピールポイントに
長井さん:イラストをメインで見せたかったので、【前半に目指している業界に関する作品ページ】、【後半に基礎力を示すデッサンや色彩構成】、【最後に在学中の活動をまとめたページ】という構成にしました。技術面を示すページはもちろん重要だと思いますが、大学でのグループワークや課外での制作活動なども自身をアピールできる要素だと思います。
ポートフォリオ一問一答
●このポートフォリオを提出した業界
ゲーム業界
●コンセプト
シンプルで見やすく、統一感のあるポートフォリオ
▼表紙は”シンプルかつ面白みのあるデザイン”を心がけ、窓から作品が覗いているようなデザインに。
●ポートフォリオの構成
- 表紙
- もくじ
- イラスト作品
- 過去の作品(比較用に)
- デッサン・色彩構成作品
- 大学課題の作品
- 課外活動
- 制作に対する意気込み
- 裏表紙
●制作時期
大学3年生の11月頃~翌4月
●制作プロセス
- 掲載用作品制作
- 過去作品のピックアップ
- Illustratorでデータ制作
- 試作ファイルの作成
- ブラッシュアップ
- 印刷所で出力
- 自宅で製本
●サイズ / ページ数
A4サイズ(見開きでA3サイズ) / 本文34ページ
▼CHECK!説明テキストには何を書いてるの?
このページの説明テキストは、次のとおりです。
「廃棄惑星に着陸した彼は、今は無人の星間通信施設を目指した。
”SF”と”夕暮れ”をコンセプトに、かつての文明の面影を残す廃棄惑星を描きました。施設を目指す人物と対比して、惑星の景観には無機質で人気のない、どこか寂れた風合いを表現できるよう心がけました。(略)」
コンセプトをキャッチコピーやキーワードで端的に説明しています。この作品で表現したかったねらいは何か、そのねらい通りに描けているかを見る側(企業側)で判断できるように、コンセプトや工夫した点を入れるのは重要です。
●制作に使用したソフト
Illustrator、Photoshop
●印刷 / 製本方法
印刷所でA3出力 / 自宅で製本(無線綴じ)
●制作にかかった費用
3000円
●制作するうえで参考にしたもの
先輩のポートフォリオ
●制作中にもらったアドバイス
就職活動で参加したイベントや、企業訪問で訪れた会社の人事の方にアドバイスを頂きました。中には実際に採用された方のポートフォリオを見せて頂ける機会もあったので、自身に足りない要素をピックアップできるよう心がけて見ました。現場の方々から直接アドバイスを頂けることもあったので、これからの自分に必要なことを見極める大きな手がかりになりました。
●これからポートフォリオを制作する人へのアドバイス
手元にある作品だけでも良いので、まずはプロトタイプ(試作)を作ってみることをおすすめします。可能であれば、デザインも考慮してみると良いかもしれません。そこから自身の目指す業界に必要なもの、現状では不必要なものが自ずと見えてくると思います。何度もブラッシュアップを重ね、ポートフォリオを育ててあげて下さい!
はたらくビビビット編集部より
イラストのポートフォリオ制作では、テキストの扱いに迷う方が多いのではないでしょうか。「書いても読んでもらえない」「言葉にせずとも、作品で伝えなきゃ」という考え方もありますが、近年のゲーム業界の採用では「意図をもった画作りが出来るか」という点を重視する企業も増えてきています。作品のクオリティが第一ではありますが、「この人はコンセプト(ねらい)通りの表現ができるのか」という判断をする際に、テキスト部分は重要な材料になるのです。
さらに長井さんの場合、”制作に対する意気込み”の欄を最後に1ページ設け、絵を描く職業に対する意識や熱意を記載しています。イラストだけでは伝えきれない思いや補足情報を載せたい際は、ぜひ長井さんのポートフォリオを参考にしてほしいと思います。
長井さん、ご協力ありがとうございました!
長井さんも活用した!ViViViTでポートフォリオをつくってみる
(2018.8.6)
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア