必要なのは「観察力」と「伝える力」。テキスタイルデザイン専攻からデジタル専門のデザイナーへ|はたらくフリーランス#02 高橋貢

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“個”で活躍する、若手フリーランスのインタビュー特集「はたらくフリーランス」。第ニ弾は、WEBデザインなどデジタル分野のお仕事を中心にフリーランスで活躍するデザイナー・高橋貢さんをご紹介します。将来、フリーランスのデザイナーとして働くことに興味を持たれている方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。編集・執筆 /YOSHIKO INOUE,AYUPY GOTO

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高橋 貢

designer

1989年生。デザイナー兼ディベロッパー。
東京造形大学を中退し、制作会社にてキャリアをスタート。
2017年よりデジタル領域以外のプロと組みフリーランスとしても活動を開始。
倫理・哲学・思想をベースに、色気ある表現・価値観を意識して日々励んでいる。
dff.mitsugutakahashi.com

デジタル分野を中心に、
”正しさと楽しさ”が融合したデザインを手がける

― 高橋さんのお仕事内容・働き方について教えてください。

高橋さん:デジタル分野を中心に、WEBデザインやブランディングを専門にしています。デジタルの案件をビジュアルから実装まで一貫して請け負うことが多く、紙の案件をいただいた際はパートナーのグラフィックデザイナーにお願いしています。

個人で受ける仕事と制作会社さんを挟んで受ける仕事があり、割合は1:1くらいです。もともと大学でテキスタイルを専攻していたこともあり、ファッションブランドのお仕事が多めですね。同時並行で進めるのは4.5案件くらいで、週6〜7は仕事をしています。ただ、フリーランスなので1日の稼働時間が短いこともあります。

― 高橋さんの手がけるデザインは、ファッショナブルで洗練されたものという印象があります。デザイナーとして、ご自身の強みは何だと思いますか。

高橋さん:心持ちの問題ですが、技術で応えるというより、エネルギーを提供する意識で取り組んでいます。お客さんとのやりとりの中でこうした方が良いと考えた理想は、隠さずに伝えます。なぜなら、自分が目指しているレベルはここです、と明快に説明すればお客さんもそこにたどり着くために頑張ってくれるからです。
それをベースとし、自分の価値は2つあると思っています。1つ目は、例えば「WEBサイトのナビゲーションはなぜ右上なのか」「なぜここに写真を置くのか」など、デザインを論理的に説明できるところです。そしてもう1つは、情緒的価値と呼ばれる「言葉にする必要はないけどなんか良いよね」と思わせるデザインを作り出す力です。
こうした”正しいもの”と”楽しいもの”のバランスが偏ると、硬い印象になったり、機能性の信頼を得られなかったりします。なので、僕は”正しさ”と”楽しさ”が同じくらいのバランスで表現できるように意識しています。これは、デザインとプログラミング業務を並行している理由にもなりますね。

高橋さんが携わってきたお仕事


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「YASUTOSHI EZUMI」ブランド公式WEBサイト
http://yasutoshiezumi.com/




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「CRAZY WEDDING」ブランド公式WEBサイト
https://www.crazywedding.jp




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「Deuxieme Classe」ブランドWEBサイト

美大のテキスタイルデザイン専攻へ入学するも、2年で退学。
制作会社のデザイナーに。

― 学生時代は、テキスタイルデザイン専攻に所属されていたと伺いました。
どのような学生生活を送っていたのでしょうか。

高橋さん:大学に入る時点で進路を決めつけたくなかったので、テキスタイルに限らず、いろんな表現を試していました。アクリルや日本画の岩絵の具などで絵を描くことが多かったですね。表現していくうえで、自分の出来ることと出来ないことをいつも探っていました。
制作以外の時間は、他学科の授業を受けたり学長と話をしたり、学園祭の実行委員長もしていました。積極的に人と話すようにして、「他の人が何を感じているのか」を知ろうとしていました。
また、大学1年のときから制作会社でアルバイトを始めたのですが、その頃から「早く現場に出て働きたい!」という気持ちが強くなって。大学2年生のときに学園祭の実行委員長をやりきって、退学しました。

― 学園祭の実行委員長をやりきってから退学……!学内で話題になりそうですね。
その後はアルバイト先で働いていたのですか?

高橋さん:はい、コーポレート系のWEBデザインをメインで扱う制作会社で働きました。独学でも学びながら、WEBデザインの知識をつけていきました。
その時からいつかは独立したいと思っていたのですが、当時は自分の社会人としての立ち位置というか、全体像が見えてない状態で。その後何度が転職し、いろんな仕事を経験していくうちに周りのことも見え始めました。同時に、自分の判断で仕事を進めたい思いや、「自分ならこうしたいのにな」というモヤモヤが強まってきたんです。そして、2017年にフリーランスになりました。

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― 退学した後はまず会社へ就職し、その後フリーランスとして独立したのですね。
フリーランスになり、まずはどんなことをしたのですか。

高橋さん:まずは名刺とポートフォリオサイトをつくりました。それから作業場所を確保するために、デスクが余ってる会社に間借りをさせてもらいました。フリーランスになった目的の一つに、関わる人の幅を広げたいという思いがあったんです。なので、いろんな人と知り合える場所を転々とするかたちを選び、場所を借りる代わりに僕からは技術を提供する、という交渉をしていきました。始めは知り合い伝いでしたが、そこから人脈が広がっていきましたね。今(2018年現在)は BEES&HONEYという会社にデスクを借りて、案件によって一緒に仕事をしてます。

▼高橋さんのポートフォリオサイト(dff.mitsugutakahashi.com

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気になるフリーランスのお金事情。
デッサンで身につけた観察力は、仕事に大きく影響を与えている。

― そのようにしてフリーランスのお仕事がスタートした訳ですが、安定した生活が送れるのか……という点も、気になります。

高橋さん:やはりフリーランスを始めた頃は、収入の波がありました。安定するようになったのは、1案件あたりの料金設定の仕方を自分が動く時間単位に変えてからですね。
WEBサイトの場合、お客さんにとってはページ数などの単位で料金設定した方がわかりやすいと思いますが、そうすると案件によって料金に波が出てしまうんですよね。

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― そうなんですね。1案件あたりの料金設定はどのように行っているのでしょうか。

高橋さん:どんな案件も、まずは対面で話を聞きます。いわゆる「電話越しの仕事」はしません。対面し、温度感やその人自身の思考の癖などを読み取るよう努めています。そこで悩みを聞いて、お客さんの困っていることに対して最適な提案を考えます。
ヒアリングの後に工数を出し、この仕事に対し、自分が1日あたりどれくらい動くかを目安で決めます。そこでポイントになるのが、工数と料金を考えるときに技術内容の差は設けないことです。作業の重い・軽いは抜いて、僕がこの時間動けばこの料金……というのを決めてしまいます。お客さんには、なぜこの設定になるのか、きちんと説明するようにしています。

― 設定した料金についてきちんと伝えられる力も大切なのですね。時には依頼を断ることもあると思うのですが、意思決定の軸を教えてください。

高橋さん:まずは「自分のポリシーに反していないか」。例えば僕は動物が好きですが、ペットショップの存在には疑問を持っていて。なので、そういう依頼が来ても受けません。そういった、自分の好き・嫌いからなるポリシーも大切にしています。あとは、自分がやりたいことと予算のバランスです。経験から言うと、「お金はないけど良いものをつくりたい」という考え方は、その仕事に対するリスペクトがないので信頼できる友人でもなければオススメしません。

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― 一緒に仕事をするクライアントを選びぬくのも難しい部分になると思います。
フリーランスのデザイナーが、仕事をする上で気をつけるべき部分はどんなところでしょうか。

高橋さん:「人をよく観察すること」だと思います。観察し、関わる人を見極めるのは大事ですね。世の中にすごく悪い人はそんなにいないけど、悪気がなくてもこちらに被害が被ることってあるんですよね。
なので、仕事を進める前に考え方が合致しているか、その仕事は自分の主義に反しないかなどをよく話し合います。ここをきちんとしないと、後で帳尻が合わなくなったりするんですよ。逆にそれが合っていると、細かい意見の不一致は気になりません。
実は「この観察する力」は、受験期や学生時代のデッサンで鍛えた部分が大きく影響していると思っていて。

― デッサンですか!詳しく伺いたいです。

高橋さん:何かを観察してそれを形にする・絵にするというのは、ものづくりにおいてとても純粋で、汎用性が高い力なんです。僕は過去にイベント運営や雑誌、テキスタイル、プログラミング、グラフィックデザイン、服作りなど、いろんな表現に取り組んできましたが、誰しもデッサンで基本を養えば、作法を理解することに集中できるので、分野を変える負担は想像よりも軽いと思います。

▼今でもご友人の似顔絵を描くなど、スケッチやデッサンに取り組まれているそうです!

― デッサンの力はプログラミングにも影響がありますか。

高橋さん:ありますね。僕の中では、絵を描くこともプログラミングを描くことも、作法は違うけれどプロセスや考え方は同じです。
いま進路を悩んでいる学生さんも、絵を描いて観察する力を養えばどうにでもなると思うので、それは伝えたいです。

― デッサンにしっかり取り組んだ美大生には、心強いお言葉です。
具体的なプログラミングの技術は、独学で学んだと仰っていましたが、勉強方法を教えてください。

高橋さん:本とインターネットで学びました。本は「jQuery 最高の教科書」一冊をぼろぼろになるまで読み込み、鮮度が高い情報はインターネットを使って。何かを学ぶ時は、何冊も読むというよりは、自分に合う一冊を見つけて深掘り・反復していくことが大事だと思います。僕は、この本のおかげでプログラミングが楽しいなと思えました。

― ありがとうございます。それでは逆に、お仕事をしない日はどんな風に過ごしているのでしょうか。

高橋さん:全く仕事をしない日は本を読んだり、情報収集をしたりしています。あとは、本当に何もせずにずっと天井を見ていたり(笑)。本は、デザインに関係ないものを読むことも多いです。自分に足りない分野を補えるものを選んでいますね。「星野リゾートの教科書」という本には、小手先のテクニックではなく基本が大事で、そのためにはこういう風にした……ということが書かれてあり、面白かったです。
何度も繰り返し読んでいるのは、「IBMの思考とデザイン」です。本を選ぶときは、山積みにされている最新の話題のものというよりも、長く書店に置いてあるような、本当の意味でのベストセラーを選んでいます。

コンペは一つの評価軸でしかない。
ただ、新しい出会いにつながるよう利用して

― 今年(2018年)の1月には、2つのコンペを受賞されていましたよね。コンペに出すことを含め、スキルアップのために取り組んでいることはありますか。

高橋さん:「スキルアップのために」と意識しているわけではないですが、仕事に関係なく、自分の足りないものやイメージしたものを実現する術をいつも探しています。僕は今年の4月まで、5年間毎日ずっとプログラミングを書いてたんですが、それも意識していたわけではなく、好きでやってきた結果です。
コンペを受賞して嬉しかったのは、新しい出会いがあったこと。受賞をきっかけに、自分にとって雲の上の存在の方と一緒にお仕事ができる機会がありました。それは、同じ土俵に立てたという意識も持てて、すごく感慨深い気持ちになりました。
一方で、プロが認めるものとクライアントが認めるものは別だと思います。コンペに受賞したから何かが優れている……というよりも、一つの評価軸でしかありません。賞を獲るのを目的にするのではなく、自分の腕試しに利用するのが良いと思います。

▼高橋さんのFacebookページより。
「Awwwards」「CSSDA」の2つのアワードを受賞されています。


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― 独立して良かったことと悪かったこと、それぞれ教えていただけますか。

高橋さん:良かった点は、自分のことを見つめ、整理しながら仕事ができることです。デザイン以外の経理関係やスケジュール管理も自分で行っているのですが、「自分がどのように行動したのか」「どれくらい収益が出たのか」などを振り返るのはもともと好きで、苦ではないんです。そういうことを楽しめる人は、フリーランスに向いてるのかなと思います。
あとは、仕事を自分で選べる立場でいられるところが良いですね。僕の場合は、自分が決めたことに関してはどんな結果になっても納得できるのですが、人の都合で大きな痛手を負ってしまう仕事のやり方には前向きになれないタイプなんです。だから、自分で取捨選択し、行動次第で自ら可能性を広げられるフリーランスが合っていると思います。
悪かったことは特にありませんが、「信頼度」という点では、フリーランスだと少し頼りないのかなと思います。なので、もっとステップアップしていくという意味では、フリーランスは通過点。いずれは法人化したいと思っています。

― 法人化を考えていらっしゃるのですね。その他、今後の展望を教えてください。

高橋さん:今後は自分の思想や主義など、哲学的なところをもっと強固にしていきたいと思っています。実は(2018年)9月からは日本を出て、ヨーロッパを転々として活動していく予定です。グローバルスタンダードな考え方が今の自分には足りない部分だと思うので、海外に身を置いて力をつけたいんですよね。

― すごい行動力ですね!

高橋さん:自分の足りないものや欲しいものがあったらためらわずに行動するタイプです。自分が思い描いているものがあって、それが相手に伝わればもっと良い景色が見えるはずだという気持ちが強いんですよね。
そのためにも、もっと力をつけていきたいと思います。

― 自分の知りたいことや足りないものには貪欲に、それを叶えるための行動は惜しまない高橋さん。お話から伝わってきたのは、自分を俯瞰し整理しながら進行できる、フリーランスという働き方の魅力でした。
高橋さん、素敵なお話をありがとうございました!

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(2018.8.9)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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