sanrio特集
ハローキティ、ポムポムプリン、マイメロディ……わたしたちは幼い頃から、さまざまなサンリオキャラクターに触れ、沢山の夢や喜びをもらい育ってきました。世界中の人たちに幸せを与えてきたサンリオ。そこで働くデザイナーの方々が、これらの人気キャラクターを生み出してきました。
今回は株式会社サンリオに入社して2年目のデザイナーN.Kさんに、サンリオのデザイナーの働き方や、キャラクター制作に込めた思いについて伺いました。若手デザイナーだからこそ鮮明に見えているであろう、キャラクター制作の裏側に迫ります。編集・執筆 / AYUPY GOTO
N.K
株式会社サンリオ キャラクター制作部 デザイナー
年齢は関係ない。若手デザイナーのアイデアが
ヒットキャラクターを生み出すことも。
― N.Kさんが働く「キャラクター制作部」は、一体どのようなお仕事をしている部署なのでしょうか。
N.Kさん:「キャラクター制作部」は、主にハローキティ、マイメロディ、リトルツインスターズといった息の長いキャラクターから、KIRIMIちゃん.やハミングミントといった新しいキャラクターまでを扱っている部署です。主な仕事内容は、①新規キャラクターの開発 ②既存キャラクターの育成 ③サンリオショップに並ぶような商品のデザイン制作となります。
― N.Kさんは主にどの仕事をされているのですか。
N.Kさん:私は商品のデザイン制作です。自身のアイデアやデザインが商品に活かされる、自由度の高い仕事環境だと思います。単発的に発売される商品のデザインであれば、入社2年目の私でも、ゼロからデザインを任せてもらえることがあります。ハローキティ、マイメロディといった人気キャラクターは、昔から受け継がれているキャラクターなので、それぞれのルールや世界観を守りつつ、アレンジを加えて新しいデザインの商品を作っています。
商品の仕様などはプランナーさんが決めてくださるので、私たちはミーティングでデザインの方向性を決めます。上司の方にチェックしていただきながらデザインを制作し、入稿後も色や形を何度もチェックします。商品にもよりますが、発売されるまでは大体4~5ヵ月かかっています。
N.Kさんが携わってきたサンリオ商品
― 初めて商品制作に携わった時は、どのようなプロダクトを制作されたのでしょうか。
N.Kさん:入社して1ヵ月目は、デザインしやすい平面寄りの下敷きや、消しゴムのスリーブを担当していました。小学校低学年向けの文房具ですね。そこから段々とカタチが複雑なテープカッターやペンなど、立体物のデザインを担当するようになりました。
― 入社1ヵ月目で、すぐに商品制作に携わるのですね!すごいスピード感ですね。キャラクターデザインやイラスト制作にもすぐに携われるのでしょうか。
N.Kさん:入社1年目の間は、先輩方が制作したデザインをレイアウトしていくのが主な仕事です。メインビジュアルは決まっている状態なので、プロダクトに合わせてどう組み合わせると魅力的になるか、勉強しながら制作していました。
― キャラクターを描く仕事はいつから任せてもらえるのでしょうか。
N.Kさん:個人差はあると思いますが、私は入社して1年経った頃でした。最初は既存の素材の色を変えたりするところから始めて、少しずつ描く仕事も増えていきました。上司の方にチェックしてもらいアドバイスをもらってキャラ毎の世界観をつかみ、徐々に一からの制作も任せてもらえるようになります。
N.Kさんが入社して初めて手がけた商品
― サンリオで開催された、新キャラクターの誕生プロジェクトで、N.Kさんが制作したキャラクターが上位をとったと伺ったのですが、どのようなキャラクターを制作されたのでしょうか。
N.Kさん:入社2年目(2015年9月)に開催された「キャラリーマン総選挙」の際に制作したキャラクターですね。
<サンリオキャラリーマン総選挙とは>
2015年9月4日より実施した、一般人気投票で大人向け新キャラクターの順位を決める「サンリオキャラリーマン総選挙」。得票数の多い人気キャラクターを大人向けキャラクターとして新しいマーケットの開拓をめざし育成していく計画で、サンリオの新キャラクター開発プロジェクトとして開催したもの。上位にランクインしたキャラクターを中心に、LINEクリエイターズスタンプの発売をはじめ、さまざまな商品化をする予定。
N.Kさん:「キャラリーマン総選挙」は、サラリーマン・OLがターゲットであること、今までのサンリオの“かわいい”とは違うテイストであることがテーマでした。いろいろ考えるうち、社会人のあるあるネタとギャグを組み合わせて浮かんできたモチーフは「寿司」。そして生まれたのが「皿リーマンですし。」です。
毎朝寿司詰めの電車に揺られる日本のサラリーマンを「皿リーマン」とかけて、可愛すぎないけれど、愛嬌があって親しみやすいキャラクターにしようと思いました。投票の結果、4位という順位をいただけてとても嬉しかったです。
N.Kさんが制作したキャラクター「皿リーマンですし。」
― 上位に選ばれたキャラクターはどのようにアウトプットされたのでしょうか。
N.Kさん:LINEスタンプになって販売されました。実際に販売されたスタンプを自分で使ってみたときに自分が作ったサンリオキャラクターが、世の中に出たことを実感できて、とても嬉しかったです。自身の手がけた物が商品化されたことは何度もありましたが、全て既存のキャラクターをアレンジした商品だったので、純粋に自分で作ったキャラクターが、サンリオとして世の中に出たときは、今までと違った嬉しさがありましたね。
数はまだ多くないですが、「皿リーマンですし。」を見てくださった方の「かわいい!」といった声を聞くこともできました。今後の展開はまだ決まっていませんが、お寿司屋さんなどで使ってもらえないかな……と期待しています(笑)。
― 初めてゼロからキャラクターを制作してみていかがでしたか。今後チャレンジしたいことはありますか?
N.Kさん:いわゆるサンリオらしい可愛いキャラクターも作ってみたいですし、「皿リーマンですし。」みたいなサンリオのイメージと違う、意外性のあるオリジナルキャラクターもまた作ってみたいです。今までのサンリオファンの方々の期待にも応えながら、斬新なキャラクターを誕生させて、新しいファンも増えていってほしいと思います。
苦手だからこそ、積極的に鍛える努力をする。
ファンを意識した作品づくりが
デザイナーデビューの第一歩に。
― N.Kさんは美大出身だと伺いましたが、学生時代はどのように過ごされていたのでしょうか?
N.Kさん:私は武蔵野美術大学の基礎デザイン学科出身です。
大学の授業では、本の制作、写真技術、シルクスクリーンなど幅広い表現を学んでいました。また、授業外でも積極的にものづくりを行っていて、シルクスクリーン専門のサークルに入部し、シルクスクリーンの技術を使ってTシャツやバックを作って展示したり、自身でフリーペーパーを作って、フリーペーパーイベントに出店したりしていましたね。
今仕事にしているようなイラストやキャラクターの制作は、大学の授業では習っていなかったのですが、小さい頃から絵を描くのが好きだったので、学生時代も継続して、思い浮かんだらどこでもイラストやキャラクターを描いていました。
実は、入学前はグラフィックデザイナーになりたいと思っていたのですが、大学の授業を通して広告業界の勉強をしていくうちに、広告よりもキャラクター・イラスト制作の仕事のほうがあっていると思うようになりました。
― 学生時代に意識して努力していたことはありましたか。
N.Kさん:私は人とコミュニケーションをとることに、苦手意識を持っていました。なので、作品作りを通して人と上手くコミュニケーションがとれないかということを、いつも考えてすごしていました。イベントに出店して人と話す機会をつくったり、他の人を巻き込んで作品制作ができるワークショップを行ったりと、コミュニケーションが多くとれそうな機会があれば、積極的に参加していました。
― 就職活動の際は何を考え、どのように行動していましたか。
N.Kさん:就職活動を始めたばかりの頃は、働きたい業界や仕事がはっきりと決まっていなかったので、キャラクターに絞らず、雑貨、おもちゃ、食品のパッケージなどいろんな企業にエントリーしていました。ポートフォリオは3年生の終わりから作り始め、特にジャンルは絞らず4年間つくってきたものを幅広く載せました。
― どのタイミングでサンリオを受けようと思ったのでしょうか。
N.Kさん:イラストやキャラクターを描くことは好きだったので、就活が始まったタイミングでサンリオを受けることは決めていました。ですが、私自身がサンリオキャラクターを愛用していたのが小学生の頃だったので、あらためて今現在のファンの気持ちを理解しようと思い、サンリオの企業研究やファンリサーチに力を入れました。ファンの人のブログからグッズに対する要望を探ったり、サンリオショップやピューロランドへ足を運んで、お客さんの様子を観察したりしていました。
― すごい行動力ですね!情熱がないとなかなか出来ることではないと思います!
N.Kさん:サンリオの選考で新商品や新キャラクターを作る課題が出ていたので、ファンの方は今どういうものが欲しいと思っているのか、お店では何を買ったのかなどもチェックしていました。そういったリサーチで得たフィードバックを、反映させて、サンリオの選考課題を提出しました。
最初は内定をもらえる自信が全くなかったのですが、作品審査を通過することができたので勢いがついて、面接ではリサーチに基づいて作品制作をしたことなどを積極的に面接担当者に伝えました。面接やプレゼンは苦手だったのですが、だからこそ強化しないといけないと思い、友達に面接官の役をやってもらいプレゼンの練習をしたり、プレゼンの授業をとってみたりしました。そういった取り組みのおかげか、内定をいただくことができました。
― 苦手意識を克服するために、さまざまな努力をされていたのですね。学生時代に描いていたイラストはどのような作風だったのでしょうか。
N.Kさん:動物のキャラクターや、ゆるキャラが多かったと思います。今作っているような可愛いキャラクターは、そこまで多く作っていませんでした。
人に喜びを与えることのできる、誇れる仕事
思いやりのある人が活躍できる。
― サンリオでデザイナーとして働いてみていかがでしたか。
N.Kさん:幅広く仕事を任せてもらえる環境に驚きました。文房具から立体の雑貨まで、約2年間でさまざまなジャンルの商品に携わらせてもらいました。平面のデザインを描くだけでなく、立体物のデザインまで携わるとは思っていなかったです。立体作品を作った経験はなかったので、初めて携わった時はその都度先輩に相談して進めていました。
社員の方々は穏やかな方が多いのですが、ものづくりに対する熱意やプライドはしっかり持っているので、仕事となると熱く意見を交わしています。先輩は丁寧に仕事を教えてくれますし、ランチに誘ってくれたりもしますね。また、同期は個性的な人が多くて、プライベートでも遊びに出かけたりと仲が良いです。
― お仕事の中で大変だと感じたことはありますか?
N.Kさん:意味やコンセプトを持ってデザインすること、そしてその意味やコンセプトを、他の人にしっかり伝えることが難しいです。私は商品のデザイン制作をしていますが、そのデザインをカタチにする際、製品化してくれるメーカーさんにしっかり内容を伝えなければ、理想の商品を作り出すことができません。その情報をメーカーさんに共有するときに、毎回伝え方に悩んでしまっています。「こうして欲しい」という思いを的確に伝えるためにコミュニケーション力だったり、伝えたい情報を正しく整理することだったり、もっと頑張らなくてはいけないと思います。
― では、今までで1番うれしかったお仕事はなんでしょうか?
N.Kさん:サンリオのお仕事で、クリスマスブーツ型のお菓子セットを作ったことがあったのですが、それをキティが大好きな女の子に人づてでプレゼントしたら「このブーツに、サンタさんのプレゼント入れてもらう!」って、すごく喜んでくれたという話を聞いて、サンリオの仕事をやってよかったな……と改めて思いました。お客さんの喜ぶ声を聞けるのが1番嬉しいです。
― サンリオでデザイナーとして働く魅力を教えてください。
N.Kさん:サンリオという会社、そしてサンリオのキャラクターを知っている方がすごく多く、いろんな方に見ていただける仕事なので、やり甲斐があります。海外の方、両親、親戚、友達なども見てくれるので、いろんな方から反応がもらえるのは嬉しいです。
― サンリオで働く上で、必要だと思うスキルはありますか。
N.Kさん:スキル面では「ぐでたま」のような個性的なキャラクターも作れる人も魅力的だと思います。自身の力を発揮できる突発的なコンペなども行われているので、オリジナルキャラクターを商品化できるチャンスはあります。
私が就職活動を通して感じたのは、イラストやキャラクターなど絵を描くだけでなく、商品展開されるイメージを持って、立体的なものづくりにも挑戦できていればよかったということです。また、コミュニケーション力とプレゼンテーション力はとても大事です。社内に入ると、自分がどういうイメージでデザインしたいのか、伝える力は持っていたほうが活躍できると思います。
― 最後に、サンリオで働くことに憧れる学生さんたちにメッセージをお願いします。
N.Kさん:サンリオは、ソーシャルコミュニケーションビジネスというメッセージを掲げている会社なので、人と関わることが好きな人やギフトを大切にしているような、思いやりのある人がサンリオ社員には多いです。そういった、人と人とのつながりを大切にしている人に入ってもらいたいです。キャラクターを作ることが好きな人、自分の作ったもので人を幸せにしたい人は、ぜひサンリオのクリエイター職に挑戦してみてください。
― N.Kさんのお話を聞いて、サンリオのデザイナーのお仕事がさらに魅力的に感じました。人に幸せや夢を与え続けるサンリオ、これからどのようなキャラクターやグッズが展開されるのか、N.Kさんや他のデザイナーさんのご活躍がたのしみです!サンリオでものづくりに挑戦したい学生さんは、ぜひエントリーしてみてはいかがでしょうか。
株式会社サンリオ 採用情報 株式会社サンリオ コーポレートサイト
(2016.3)
著者
後藤あゆみ
はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。
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