「私たちが作るのは“かわいい”だけじゃない」《サンリオ》ライセンス事業本部で働くクリエイターとは【前編】

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世界中から愛される、人気キャラクターを生み出しつづけている「株式会社サンリオ」ですが、同じサンリオの中でもさまざまな部署が存在し、その部署によって仕事や取り組みが全然違うことをみなさんはご存知でしょうか。今回ご紹介するのは、さまざまな業界・企業とコラボレーションすることで、斬新なプロダクトを生み出し続けている「ライセンス事業本部」のお仕事です。10数名のチームで活動する「ライセンス事業本部」のクリエイターたちは、一体どのような働きをしているのか、今まで明らかになっていなかったお仕事内容を伺いました。編集・執筆 / AYUPY GOTO

ライセンス事業本部のお仕事インタビュー【後編はこちら】

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シュウヘイ

株式会社サンリオ ライセンス事業本部 デザイン部 プランニングディレクター

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ヒキチ

株式会社サンリオ ライセンス事業本部 デザイン部 チーフクリエイター

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リュウ

株式会社サンリオ ライセンス事業本部 デザイン部 クリエイター

フィールドは一般市場。
“かわいい”だけじゃない、ライセンスが生む斬新なものづくり

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― みなさんが働かれている「ライセンス事業本部」とは、どのようなお仕事をしている部署なのでしょうか。

シュウヘイさん:私たちが働いている「ライセンス事業本部」という部署は、サンリオで育てられたキャラクターを、他社のコンテンツとコラボレーションして商品化してくのが主な仕事です。今は数百社の企業さんと取引をしていて、世の中に多くの商品を生み出しています。
「どのような商品をどのようなデザインで作るのか」クライアントさんと一緒に考えていくこともありますし、私たちが商品を考えてクライアントさんに提案する場合もあります。そういった特性上、デザイナーはデザインだけ、営業はセールスだけと明確に業務は分けられていなくて、デザインとセールス業務をセットとして、チーム単位で動くケースが非常に多い部署です。扱うキャラクターに関しても、ハローキティをはじめとしたマイメロディ・キキ&ララ・ポムポムプリン・シナモロールといった長年の人気キャラから、けろけろけろっぴ・おさるのもんきち・タキシードサムといった懐かしキャラ、ぐでたま・SHOW BY ROCK!!といった新しいキャラ、いろんなタイプのキャラクターを一人で扱えないといけない、かなり特徴的な部署だと思います。また、最近は海外のライセンス案件も非常に増えているので、海外子会社とのやりとりの一部もライセンス事業本部の中で行われています。
私は新卒でサンリオに入社して、この部署で働き始めて16年になるのですが、雑貨・文具・アパレル・インテリア・食品・ゲーム・電化製品といった、さまざまな業界の企業さんと取引してきました。いろんな企業さんとお仕事をするので、同じような仕事をすることはほとんどありません。16年働いていても仕事に飽きるということがない、それもまた特徴のひとつではないかと思います。

― 他社さんが販売しているサンリオキャラクターの商品は、ライセンス事業本部の方々が携わったお仕事だったのですね。ライセンス事業本部で働くデザイナーさんは、どのようなお仕事を任されているのでしょうか。

シュウヘイさん:デザイナーには大きく3つ業務があります。1つ目は「監修業務」と呼ばれるもので、商品には商品本体以外にもパッケージ・タグ・webの広告などさまざまな制作物が付随しているのでそのすべてを監修したり、クライアントさんが作った商品デザインのチェックをしたりします。
2つ目は「デザインの制作」です。クライアントさんがサンリオキャラクターを使う際、デザインのおおもとは私たちが制作します。また、商品別で商品のデザインを行ったり、こちらから企業さんに「こういうコラボしませんか」と提案用の資料に、商品イメージのデザインを制作したりします。デザイナーそれぞれ、常に5〜10案件ずつは同時進行で仕事を持っていると思います。
3つ目は「その他」という括りになってしまうのですが、雑務という意味では無くて、例えばアニメーションのPVを作ってほしいとか、音楽を作ってほしいとか、コラボのカフェのメニューを作って欲しいとか……そういった専門外の業務が時々生まれるんですよね。メニューを作って欲しいというのは冊子のデザインだけではなくて、味や料理のプランも含めたものですよ(笑)。
Macに向かってデザイン制作をする仕事以外にも、クリエイターとしての全能力を要求されるような想定外の仕事を任されることが沢山あります。

― 料理のメニューまで考えているのですね(笑)。他の部署とライセンス事業本部で、どのような仕事の違いがあるのでしょうか?

シュウヘイさん:他の部署との違いは、例えば「キャラクター制作部」が作るプロダクトですと、基本「サンリオショップ」などサンリオのファンが集まるお店で販売されるので、決まった世界観を大切にしてデザインするのが重要です。ライセンス事業本部の仕事は一般市場がターゲットとなるので、クライアントさんの市場に合わせて「かわいい」だけじゃない「かっこいい」「クール」と思わせるプロダクトも作らなければいけなかったり、ターゲットがベビー・幼児・中高生・大人と、案件によってバラバラなので、個々で合わせないといけなかったり、それ以外にもいろんなタイプの要望を受けて制作する必要があります。そのため、一人でいろんなタイプのデザインができる人が求められていますし、またいろんなタイプの人材を求めているというのもあります。また、デザイン制作の中でいろんなデザインを作らなければならないという特性上、外部パートナーにも協力してもらっています。それも他の部署と比べて特徴的なところで、外部スタッフとの連絡・進行・ディレクションという業務ができるかどうかが、すごく重要だったりします。

― では実際に携わってきたお仕事について伺いたいのですが、みなさんそれぞれどのようなプロダクトに携わってきたのでしょうか。まずは、シュウヘイさんからご紹介いただけますか。

シュウヘイさん:ライセンス事業本部では企業さんとのコラボレーションだけではなく、クライアントプロジェクトのオリジナルキャラクターを作るというお仕事もあります。2015年に放送されたNHKさんの大河ドラマ「花燃ゆ」のPRキャラクター「もゆるん」は、私が担当して作らせていただきました。こちらのプロジェクトの場合はNHKさんから依頼をいただいて、ライセンスメンバー4名でプロジェクトを進行し、出来上がったキャラクターをいくつかNHKさんに提案して協議をしまして、最終的に絞り込んでいって決まったのが「もゆるん」です。その後「もゆるん」の着ぐるみを作ったり、ホームページで使ったり、グッズを作ったりと、さまざまなプロダクトとして展開されました。

NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のPRキャラクター「もゆるん」|シュウヘイさん担当

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リュウさん:私は、ゲーム会社の「カプコン」さんが開発している「モンスターハンター(以下、モンハン)」との、コラボ案件を担当しました。私がモンハンとコラボを担当する以前に、「ハローキティ」と「マイメロディ」がモンハンキャラクターとコラボをしたことがあったのですが、モンハンシリーズの最新作ゲームをリリースするタイミングで、カプコンさんから再度キャラクターコラボの提案をいただきまして、ユニークで斬新な取り組みができればと思い、サンリオからは最近人気のキャラクター「ぐでたま」と「KIRIMIちゃん.」を提案したんです。「ぐでたま」とのコラボは「ぐでたま」の個性を引き出して、モンスターをぐでっとさせたら面白いんじゃないかという話になって、ぐでぐでしたモンスター達や、「ぐでたま」の武器種などを制作しました。全く違った世界観のコンテンツが交わると、新しいイメージが広がっていくので面白いです。
商品化するデザインに関しては全てサンリオが担当しました。ゲームの中に出てくる「ぐでたま」のコラボ衣装や武器はカプコンさんが制作しており、それらをカプコンさんの監修を受けつつデザインにも追加していきました。結果的にとても良いデザインが出来上がったので、普段からお付き合いのあるメーカーさんにグッズ展開の提案もして、文房具やキーホルダー等、商品展開が広がりました。

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ヒキチさん:私は、サンリオの人気キャラクター「マイメロディ」と、アミューズメント会社の「バンプレスト」さんとのコラボ案件を担当しました。プロジェクトが立ち上がるきっかけは、バンプレストさんとの打ち合わせ中に「最近困り顔フェイスが流行っているし、ゆるい困り顔の新しいキャラクターが見てみたい」という話で盛り上がって、雑談の中のアイデアから生まれた商品です。クライアントさんとのブレストや雑談から商品が生まれることは、実は結構多いんですよね。
「男の子のキャラクターが良い」「困り顔にしたい」「垂れ耳が良い」「マイメロディに似すぎてもダメかも」と、バンプレストさんとブレストを重ねて、キャラクターデザインやキャラクターのストーリーを完成させて、「Littleforestfellow(リトルフォレストフェロォ)」(愛称:めろぉ)というキャラクターを制作しました。キャラクターデザイン決めは、色替え含めてトータルで100パターン以上制作しました。ぬいぐるみやポーチなど、さまざまなグッズとして展開していきます。
また、マイメロディの新しいキャラクターとして自社でも打ち出していきたいので、他のライセンシーさんの方々にも使っていただいて、いろんな商品にしていきたいと思っています。

Littleforestfellow(リトルフォレストフェロォ)|ヒキチさん担当

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― 新キャラクターが生まれるきっかけは一つの企業であっても、結果的にいろんなプロダクトとして展開していく可能性があるのですね。
さまざまなプロジェクトのお話を伺いましたが、こういった仕事の中で、若手社員が活躍できるチャンスはあるのでしょうか。

シュウヘイさん:年齢はほとんど関係なくて、1年目でも良いアイデアやデザインを出すことが出来れば、ノミネートされます。

ヒキチさん:入ってすぐの新人でも、結構重い仕事を任されたりしますよ(笑)。1年目でも会社の代表として活躍しています。ちゃんと先輩のサポートもありますし、やりがいのある仕事だと思います。

新しいキャラクターだからこそ、今までにない挑戦を。
ファン層を拡大するための商品展開とは。

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― ライセンス事業本部ではブランディングのお仕事もされていると伺いました!どのようなコンテンツのブランディングをおこなったのでしょうか。

リュウさん:私が特に関わったのは「SHOW BY ROCK!!」の商品化案件です。SHOW BY ROCK!!はスマホアプリのリニューアル後ユーザー数が増えたこともあり、本格的にキャラクターの商品化がスタートすることとなりました。

「SHOW BY ROCK!!(ショウバイロック!!)」とは

「SHOW BY ROCK!!」は、サンリオによる音楽・バンドがテーマのキャラクタープロジェクト。2015年4月よりサンリオ初深夜TVアニメの放映もスタートし、商品化展開も好調に推移。 テレビ視聴、オリジナル楽曲のカラオケでも音ゲーアプリ内でアイテムがもらえるなど、取り組み同士の相互連携、ユーザーの循環を意識した、新しいプロジェクトとなっている。

― 「SHOW BY ROCK!!」は、どのようなターゲットにしぼって、売り出し方やプランなど工夫されたのでしょうか。

リュウさん:ゲームを作った時とターゲットは変わらず、10〜20代のゲームやアニメ好きな男女向けに商品化を検討していました。
原作の「SHOW BY ROCK!!」に登場していたゲームキャラクターは、ゲームアプリ向けに作ったフォルムでした。そのままでもある程度はゲーム・アニメ流通等に乗れたのですが、さらに商品化の幅を広げるため、新たに商品化用のデザインをライセンス事業本部で制作することになりました。 
サンリオのキャラクターには「キャラクターの商品を通じて他の人とのコミュニケーションを」といったテーマがあり、わかりやすく言い換えると商品化の幅を広げて、より多くの人たちにキャラクターに触れてもらえる機会をつくることを掲げていたので、ゲーム・アニメ好きの人たちはもちろんのこと、他の方々のもとにも届くようなキャラクターデザインになるよう工夫して取り組んでいました。もともとゲーム用につくられていたキャラクターデザインの完成度が高かったので、その魅力を失わないよう、また文具や雑貨にも落とし込みやすいように工夫しました。

ライセンス事業本部がブランディングに関わった商品の一部

「SHOW BY ROCK!!」ぬいぐるみ|リュウさん担当

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「ミスターメン リトルミス」 ぬいぐるみ|ヒキチさん担当

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― 思っていたよりもオシャレな印象で少しびっくりです。ゲーム・アニメ層向けと伺っていましたが、そうでない私もとてもかわいいと思いました!

リュウさん:もともとのファンに喜んでいただけるのはもちろん、一般層にも受け入れられるような、普段使いできる「かわいさ」や「かっこよさ」を念頭に置いて、商品開発しました。

― 実際に販売してみて、ファンの反応はいかがでしたか?

リュウさん:キデイランドさん・ヴィレッジバンガードさん・TSUTAYAさんなどでポップアップショップや売り場を展開していただき、このデザインの商品を販売させていただきました。その効果があったのか、今までのゲーム・アニメ流通だけではなく、ファンシーショップや雑貨ショップなどの流通でもSHOW BY ROCK!!のキャラクターに触れられるようになり、結果的にファン層の拡大にも繋がりました。また、キデイランドさんの期間限定ポップアップショップではオープン前に300人ほどの行列ができていて驚きました。「SHOW BY ROCK!!」の中には男女キャラともにさまざまなキャラクターが存在していて、それぞれ人気が出ています。

― 現在では幅広い層にファンがいらっしゃるのですね!
続いて、ライセンス事業本部がブランディングを担当しているという「Mr. Men Little Miss (ミスターメン リトルミス)」のお仕事についてお話を伺いたいです。ミスターメン リトルミスとは、一体どのようなキャラクターなのでしょうか。

「Mr. Men Little Miss (ミスターメン リトルミス)」とは

ミスターメン リトルミスは、もともとイギリス在住の絵本作家「Roger Hargreaves(ロジャー・ハーグリーブス)」氏が描いた絵本から生まれたキャラクター。そのキャラクターたちは人間の持つさまざまな性格を表現してカタチになっている。キャラクターは現在82種類。絵本は全世界で15カ国語に翻訳され、世界30カ国以上で、累計2億冊以上も販売されている。

― 世界で人気のミスターメン リトルミスを、なぜサンリオがブランディングすることになったのでしょうか。

ヒキチさん:ミスターメン リトルミスの商品化のマスターライセンス(出版を除く)をサンリオが買収したことで、サンリオでミスターメン リトルミスのグッズ展開やブランディングを行うようになりました。最初は全社で取り組もうとしていたのですが、最終的にライセンス事業本部がミスターメン リトルミスの事業を引き受けることになったんです。
最初に、日本でどのくらいミスターメン リトルミスが知られているのか、認知度と好感度を調べるため、年代別に市場アンケートをとりました。結果は、10歳以下の子どもがいる親に一番好感度が高かったんですよね。そこで、そこの層をターゲットとして打ち出していこうという話になって、グッズ開発に取り掛かりました。

― 実際にターゲットに刺さる商品を作るためにどのように工夫しましたか。

ヒキチさん:ミスターメン リトルミスで一番気を付けているのは、ファンシーにならないようにすることです。もともとイギリス生まれのキャラクターということで、海外感のあるおしゃれさや、ミスターメン リトルミスそのものの良さは崩したくないという話はしていました。サンリオの社内に、ターゲット層となるお母さんの方々が多かったので、聞き取り調査をしてみたところ、「マザーバッグとか、実は欲しいものがないんだよね」「こういう仕様が良いよね」と、本当に欲しいリアルな意見をたくさんくださり、それはすごく勉強になりました。

― 具体的にどのような商品をつくられたのでしょうか。

ヒキチさん:カラフルな色味を生かしたポップなデザインが良いという意見が多かったので、メラミンプレート(お皿)をつくって販売したら、それが今人気商品となっています。
また、絵本のキャラクターだったミスターメン リトルミスの映像化も始めています。キャラクターの数だけ紹介用の映像を作っていまして、公式のホームページと、YouTubeから配信しています。それぞれ3分くらいのショートムービーになっていまして、イベントやワークショップの際も使っています。少しでも多く、みなさんの目に触れることができたらと思っています。

シュウヘイさん:ミスターメン リトルミスの絵本はもともと英語を主体としたものになっていて、日本語版が現在4冊ほどしかないんです。日本でキャラクターを知ってもらう機会がなかなか少ないんですよね。なので、キャラクターを知ってもらう活動の一環として映像化する取り組みを行いました。アニメーション会社の方々と、日々やり取りをしながら制作を進めています。

― サンリオは他社とコラボすることで、新しいキャラクターを生み出したりと、幅広くコンテンツ制作を行っているようです。また、クリエイター職の方々が自ら動き、プロジェクト全体を進行している様子が印象的でした。かわいいキャラクターを作ることだけが、サンリオのデザイナーの仕事ではないのですね。
インタビュー【後編】では、シュウヘイさん、リュウさん、ヒキチさんの3名に、「サンリオのお仕事のやりがい」や「求めている若手クリエイター」について伺いたいと思います。

サンリオ ライセンス事業本部のお仕事インタビュー【後編はこちら】
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Ⓒ 2012, 2016 SANRIO SP
Ⓒ 2016 THOIP
Ⓒ NHK・SANRIO 2014
Ⓒ 2015,2016 SANRIO


(2016.3)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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