STARTUP DESIGN vol.03|株式会社BAKE デザイナー 野崎 彩花さん

BAKE

特集

「STARTUP DESIGN」第三弾は、iPhoneアプリで写真ケーキを作る“PICT CAKE”の開発などを行っている、お菓子のスタートアップカンパニー「株式会社BAKE」のデザイナー、野崎彩花さんにお話を伺ってきました。編集・執筆 / AYUPY GOTO

野崎 彩花のざき あやか

株式会社BAKE デザイナー
美術専門の短大で映像メディアを学ぶ

デザインやテクノロジーを活用し、
お菓子業界にわくわくとサプライズをつくる

― 株式会社BAKEさんは、どのような事業をおこなっている会社なのでしょうか。

野崎さん:BAKEは2013年に設立しました。「お菓子にもっと新しい価値を」をコンセプトとして菓子の製造・販売、コマースサービスの運営管理、メディア運営などの事業を行っています。デザインやテクノロジーの力でお菓子をワクワクするものに変えていく「お菓子のスタートアップカンパニー」です。

― 野崎さんはBAKEさんで、どのようなお仕事を担当しているのですか?

野崎さん:基本的には、Webやアプリのデザインを担当しています。他にも、リアル店舗で使うポップの制作や、求人や取材に使う写真撮影、ごくたまにPICTCAKEのカスタマーサポートのお仕事も行っております。

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BAKE CHEESE TART 写真撮影

― デザインだけでなく撮影まで行うんですね!デザインも素敵ですが、BAKEさんの素晴らしいお菓子はどのようにつくられているのでしょうか。なかなか美味しいお菓子をつくるのって難しいと思うのですが、これだけの人気を集めて急成長となった秘密が知りたいです。

野崎さん:お菓子の事業を行う上で、おいしいお菓子をどうやって作るのか、どのようなデザインにしてブランディングするか、大きな課題が二つありました。ですが、BAKEの社長は札幌の『きのとや』というお菓子屋さんの二代目なんですよ。なので味のクオリティや、ビジュアルの重要性をよくわかっていたんです。デザインやアートの部分だと、社長のお姉さんがデザインの仕事をしていて、立ち上げの時から現在も、アートディレクターとして、BAKEのデザインを監修してくれています。そういった点では、ゼロからスタートする方々と比べて強かったと思いますね。

また、BAKEがこだわっているのは、1ブランドで1商品展開の「モノファクトリー」をつくることです。そこから生まれるのが感動のある「美味しさ」です。美味しいと言っていただけるお菓子をつくるには、手間をかけること、フレッシュさを追求すること、良い原材料を使うことの3つが重要だと思っています。焼きたてチーズタルト、クロッカンシューザクザク、写真ケーキと、ひとつひとつの商品に手間と情熱を注いで、できるだけスピーディに焼きたての商品を最高に美味しい状態でお客様に届けていく努力をしています。

― 会社が急成長したタイミングはいつ頃なのでしょうか。

野崎さん:2013年の12月に、写真やイラストを自由にカスタマイズしてオリジナルケーキをつくれるWebサービス『PICTCAKE』をリリースして、そこでオンラインの売り上げが伸びはじめました。次に2014年2月に焼きたてチーズタルト『BAKE』の新宿1号店を出店しまして、ここからBAKEのファンの方が増えてくださり、お店に行列ができたりとメディアの注目を集め、順調に伸びていきました。そこから、PICTCAKEをフルリニューアルしたり、新商品をつくったり、チーズタルトの店舗も自由が丘、大宮、大阪梅田、福岡、香港と増えてきたことで成長を続けています。最近はWebメディアを2つリリースしました。

社員も私が入った頃は3名だったのですが、現在ではオフィスには20名ほど、店舗スタッフも合わせると170名ほどいます。

― すごい勢いですね!また、プロダクトも沢山持たれていて素敵です。新しくできたWebメディアは、一体どのような内容のメディアなのでしょうか。

野崎さん:ひとつめは2015年8月17日にリリースした『rocobee(ロコビー)』というBtoCのオウンドメディアです。rocobeeは「アイデア」「ギフト」「場所」という3つの切り口から、様々なお祝いシーンを提案するWebメディアです。お祝いシーンがちょっと素敵になるような情報を届けていきたいと考えています。

ふたつめは、2015年9月1日にリリースした『cake.tokyo(ケーキドットトーキョー)』というメディアです。「人生でいちばんおいしいお菓子」をコンセプトにかかげ、東京のさまざまなお菓子を紹介しています。誰しもお菓子を食べるときにはちょっとした幸せを感じると思いますが、cake.tokyoはそんなお菓子の魅力を掘り下げて、ワクワクや感動をお伝えします。これまでWebメディアで「お菓子屋さんのこだわり」を紹介しているものは、あまりなかったんですよね。私たちはお菓子のスタートアップとして、お菓子業界全体を盛り上げる取り組みもできたらと思っています。

野崎さんが携わったプロダクト

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野崎さんがメインビジュアルのディレクション及びデザインを担当|PICTCAKE App

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野崎さんがデザインを担当|お祝いやギフト情報を素敵にまとめるメディア『rocobee

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野崎さんがデザインを担当|日本のさまざまなお菓子を紹介するメディア『cake.tokyo

遠回りしたからこそ気づけた、“つくる仕事”に携わる喜び。

― いつからモノづくりに興味を持ち始めたのでしょうか?

野崎さん:幼少期から絵を描くのが好きで、空き時間があればノートに漫画やイラストを描いていました。高校に入学したタイミングでは音楽にハマって、軽音部に入ってベースを弾いたり、ドラムを叩いたりとバンド活動をしていました。その頃ちょうど、Youtubeが流行りはじめていて、アーティストのPVをよく見ていたことから、自分も将来好きなアーティストの動画をつくったり、写真を撮ったりしたいと思うようになり、映像や写真が学べる美術専門の短大に入学しました。

― 学生の時は映像に興味を持たれていたのですね!短大生活はどのようにすごされていましたか。

野崎さん:映像もつくれば、写真を撮ったり、デザインしたり、Webサイトをつくったりといろんなものをつくりました。ですが、思っていたよりも映像の授業が少なくWeb系の授業のほうが多くて、当時の私はWebデザインに興味を持っていなかったこともあり、モチベーションが上がらなかったんですよね。学校が終わればライブハウスに通うような学生生活をおくっていました。今考えると、自分はWebデザインに向いていないという苦手意識を持ちすぎていたのが良くなかったと思っています。

― 短大ですと2年目から就職活動を始めるのでしょうか。就職活動は何を考えて動いていましたか?

野崎さん:正直、就職のことを深く考えていなくて、クリエイティブ職は1社も受けませんでした。学生時代にバイトした接客業は不得意ではないから大丈夫だと思って、短大で学んだこととは関係のない大手百貨店の子供服の販売員として働くことになったんです。販売職に就いても、自分の好きなものづくりは趣味で続ければいいやと思っていたんですよね。

― 大学卒業後、販売職ではどのような仕事を経験されましたか?

野崎さん:とにかく接客がメインで、目の前にいるお客様はもちろん、これから来店されるお客様のことを考えながら仕事をしていました。なので、相手のことを考えて動く力は養われたのではないかと思っています。 そして、販売員の仕事を終えたあとは音楽活動をしている友達のライブ写真を撮りに行ったり、フライヤー・CDジャケット・ホームページのデザインをしていました。

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野崎さんがジャケット・パッケージデザインを担当|deid / album“SECEN”

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野崎さんがジャケット写真を担当|Far Farm / “Far FarmEP” (Digital Album)

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野崎さんがTシャツデザイン・撮影を担当

― お仕事とものづくりの活動を並行して生活されていたのですね。一見その生活も大変そうに思えますが、継続できたのでしょうか。

野崎さん:マイペースにやっていたので、特に大変だとは感じていませんでしたが、ある時から「このまま接客の道を突き進むのも悪くないけど、やっぱりクリエイティブに関する仕事を一度はやってみたいな~」と、漠然と転職について考えるようになり、求人情報をインターネットで調べるようになっていました。そしてある時見つけたのが、ブライダル系映像制作会社の『Webサービスをつかった新規事業メンバー募集』とのことだったので、もともとWebデザインも学んでいたので挑戦してみたいなと思って応募して、内定をいただき入社することになったんです。ですが、入社同時に欠員が出てしまい、新規事業の開拓どころではなくなってしまって、結局もともと会社がやっていた写真撮影や映像制作のスタッフとして配属されてしまったんです。写真や映像はもともと好きだったので苦痛でもなく、続けることも考えましたが、やりたいと思っていた仕事ではなかったので、結局その会社は1年ほど働いて辞めました。

― そしてついにBAKEさんに出会ったわけですね!

野崎さん:そうなんです。Webの求人サイトで、ケーキ宅配サービスブランドに携わる事務職とコーダー募集の記事を発見しました。募集記事に掲載されている写真が、すごくおしゃれに綺麗に撮れているし、なにより美味しそうだと思いました。とりあえず面接してみようって、ポチッとエントリーしちゃいました。

そこから面接をすることになったのですが、入ろうと思った1番の決めては社長でした。面接にスーツで行ったのですが『スーツで来てくれたの!?ありがとうございます!』って言われて(笑)。話しているうちに人柄の良さを感じて、自分と2歳しか違わないのにすごいなって、この人と一緒に仕事できたら楽しそうだと思って、BAKEで働かせていただくことになりました。それが1年半前の出来事で、仕事内容で決めたというよりは、直感的なものが先行していたと思います。

― 社長の魅力にひかれたんですね。実際働きはじめていかがでしたか?

野崎さん:私が入社したときは、会社のメンバーも3名ほどしかいませんでした。最初の3〜4ヶ月はケーキの受注を受けるカスタマーサポートの仕事を担当していたのですが、社長がよく社員の話を聞いてくださる方だったので『今後、BAKEでどんなことがしたい?』と聞いてくださって、カスタマーサポートも悪くないけど本当はデザインの仕事がしたいという気持ちを伝えたら、じゃあやってみようよ!とチャンスをくれて、そこからデザイナーの先輩の指導の元、私のデザインライフがスタートしたのです。

― アプリやウェブデザインの制作スキルはどのタイミングで習得されたのでしょうか。

野崎さん:学生の時から、photoshopやillustratorは使用しておりましたが、実用的なデザイン業務は現職に入ってからになります。

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野崎さんが携わった『PICTCAKE』のこだわりをご紹介

― PICTCAKEはどのようなプロダクトなのですか?

野崎さん:お気に入りの写真やイラストをカスタマイズしたり編集したりスタンプを押したりして、オリジナルケーキを注文できるアプリです。注文してから最短2日間で、全国に美味しい写真ケーキをお届けしています。2014年7月からあったのですが、最近ver.2へとデザインや機能をアップデートしたので、そちらのデザインのこだわりをご紹介できたらと思っています。

― どのような人が関わり、どのくらいの期間でつくられたのでしょうか。

野崎さん:PICTCAKEチームのすべての人が関わっています。オンライン事業部の総括、デザイナー、マーケター、エンジニア、カスタマーサポートのスタッフで運営しています。開発だけですとデザイナー2人に、エンジニア1人が関わっていますね。

開発期間は約4ヶ月です。動作のスピードを上げることと、見た目の印象をもっと良くしようとクリエイティブにもこだわりました。

― PICTCAKEのケーキは、どこで作られているのでしょうか?

野崎さん:ケーキ自体は札幌でつくられています。札幌に製造会社があって、パティシエが沢山いるんです。そこから全国に配達していますね。

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POINT 01:メインビジュアルのディレクション

野崎さん:アプリを起動してトップに出てくるメインビジュアルの写真にこだわりました。ウェブやアプリを通して何かを買うときって、写真が美しいものに目がいきますよね。私自身、写真が好きなこともあり魅力的な演出にしたいと思って力を入れています。撮影現場でのディレクションですと、食卓の上に置いたケーキのイメージに加えて“新しいフォトジェニック”を目指しました。また、アプリにスタンプでデコレーションできる機能があるので、楽しくデコレーションできるポップな雰囲気が出せるよう工夫しましたね。

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POINT 02:ver1より、ワクワクするようなカラーをチョイス。

野崎さん:最初のPICTCAKEはモノクロベースの写真やデザインになっていて、クールな印象があったので、もっとハッピーな雰囲気のカラーテイストにしたいと思い、オレンジやイエローを沢山使いました。

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POINT 03:より使いやすいような動作へ

野崎さん:こちらは私よりもエンジニアが頑張った点ではありますが、写真編集以降の操作がウェブベースだったのを、今回はハイブリットアプリで最新の技術を使いました。より動作も軽くなって、注文までのスピードがぐんと上がって使いやすくなったかと思います。一緒に頑張ってくれたエンジニアには本当に感謝しています。

最後にメッセージ

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― 卒業してすぐ、スタートアップで働くことを学生にすすめたいですか?

野崎さん:もちろんおすすめします。スタートアップは、社長との距離も近くて、社内に対する意見もすぐ通りますし、やる気に満ち溢れている社員が多いです。若ければ若いほど、チャレンジできることがたくさんできます。私もコーディングやデザインの実績はありませんでしたが、今ではアプリのデザインを任せてもらえるようになりました。何かをやりたいと思う意思の強さが生きる環境だと思います。

― BAKEで働く魅力を教えてください。

野崎さん:もちろん、スキルや経験は仕事において重要な要素ではありますが、BAKEのは何よりもやる気を大事にしてくれる会社です。なので、お菓子というツールを通して、これまでにないワクワク感や、新しい価値を創り出せます。およそ40年間を労働に費やすのがことを考えてみたら、楽しくない仕事より、楽しい仕事ができているほうが絶対にいいですよね。BAKEには楽しい仕事ができるチャンスが、毎日飛び交っていると思うんです。

― どういった人と一緒に働きたいと思いますか。

野崎さん:完璧じゃなくてもいいから、常に感謝の気持ちを持てる人ですかね。人があっての環境、環境があっての仕事なので、目の前の人や、スタッフ、お客さんのことを常に考えることのできる人を求めます。

また、クリエイティブ職ですと、明るくて素直で私たちと感覚が合う人がいいですね。技術があって、デザインのクオリティが高くても、感覚が合わないとお互い気持ち良く働けないですし難しいですね。私もまわりの人たちと感覚が合うので、BAKEで働き続けることが出来るのだと思います。

― 最後に学生に向けてメッセージをお願いします。

野崎さん:就職することは大事ですが、それが全てではないと思っています。まずは、目の前のできることから、自分がこうだ!って信じているものに対して、突き進んでトライすることが大事だと思っています。そういうものを大事にできる方が、仕事の人間関係だったり、仕事の楽しさ、喜びなどに繋げることができると思います。固定観念にとらわれないで、楽しいと思う方向へ、積極的にチャレンジしてみてください。

― 野崎さんお話ありがとうございました。

株式会社BAKE

(2015.9.8)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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