ヤフー特集
「Yahoo! JAPANだから出来る、価値のデザイン- Service Experience Designers -」インタビュー3人目は、ヤフーが運営する日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPANアプリ」に携わっている、デザイナーの平野 彩花さんにお話をお伺いしました。「Yahoo! JAPAN」は検索、オークション、ニュース、天気、スポーツ、メール、ショッピングなど多数のサービスを展開している“課題解決エンジン”です。日本最大級のユーザーを抱える「Yahoo! JAPANアプリ」のビジュアルデザインを手がけている平野さん。美大を卒業後、一体どのような実績を積み重ねて、今の仕事を任せていただけるようになったのでしょうか。活動の裏側に迫ります。編集・執筆 / AYUPY GOTO
平野 彩花
ひらの あやか
Designer
ヤフー株式会社 デザイナー
1989年 東京都出身
幼い頃から物を作るのが好きで、叔母の影響もあり武蔵野美術大学に入学。
同大学でデザインを学びながら、空間や映像、ウェブ、3Dなど、さまざまな分野に手を出す。ウェブ企業でのインターンを機にIT系への就職を決意し、2012年に同大学を卒業後ヤフー株式会社入社。デザイナーとしてウェブやアプリのデザインを担当している。
新人であることは関係なし、
良いアイデアは積極的にカタチにする。
― 本日はインタビューよろしくお願いします!平野さんのお仕事や働き方について伺いたいのですが、現在どのようなお仕事をされているのでしょうか。
平野さん:私はヤフー株式会社のスタートページ制作部で、「Yahoo! JAPANアプリ」のデザイナーとして働いています。インターネットを使われている方でしたら一度は使ったことがあるのではないでしょうか。「Yahoo! JAPAN」は、1996年4月にスタートした日本最大級のポータルサイトで、検索の他、オークション、ニュース、天気、スポーツ、メール、ショッピングなど、100以上のサービスを展開しています。私はその「Yahoo! JAPAN」のスマートフォン向けアプリのビジュアルをメインとした制作と、UI/UXデザインを担当しています。
また、兼務でもう一つお仕事をしていまして、来年ヤフーがオフィスを移転するのですが、その移転プロジェクトの企画部にも所属しています。“働きやすい環境”“コラボレーション”というキーワードをコンセプトに、企画や内装などを考えています。基本的には主務の方々が中心となって動いているのですが、渋谷のシェアオフィスに出向し、働き方を工夫していた経験などから、仕事を任せてもらえるようになりました。どちらもやっていてすごく楽しい仕事です。
― 「Yahoo! JAPANアプリ」の制作とは、一体どの部分から携わっているのでしょうか。
平野さん:「Yahoo! JAPANアプリ」を大規模リニューアルするタイミングで、ビジュアル制作とUI/UXを担当する部署に配属されました。また、リニューアルが終わってからは、サイト全体のデザインを好みのテーマに変えることができる「きせかえ機能」のリリースを担当しました。「きせかえ機能」には、今人気のキャラクターや、季節に合わせたテーマが揃っていて、今ですと特別版が公開されています。今は「きせかえ機能」に専属のデザイナーがついているので、新しいテーマが続々リリースされていく予定です。
平野さんが携わっているお仕事
― 「Yahoo! JAPANアプリ」のリニューアルと、「きせかえ機能」の追加を担当されたということですが、どういった課題があって今のカタチになったのか教えていただけますか。
平野さん:Yahoo! JAPANアプリ」を何故リニューアルする必要があったのかといいますと、PCと比べてスマホなどのスマートデバイスは圧倒的に画面が狭くなっています。PCと同じ考え方でアプリを制作していても、情報が収まりきらないという課題がありました。なので、小さな画面でも沢山の情報を見せるための解決方法としてリニューアルしたのが、現在の 「Yahoo! JAPANアプリ」のデザインです。具体的にどういったこだわりがつまっているかというと、現在の 「Yahoo! JAPANアプリ」のデザインを「タイムライン型UI/UX」と呼んでいるのですが、使っているユーザーのクリックする記事やコンテンツから好みを分析して、ユーザーごとに適すると思われる情報を提供するような仕組みになっています。今までですと、沢山の記事の中から、自分が好きな情報を探すのは大変な作業だったと思うのですが、好まれる記事を表示して、いらなかった記事を省略できれば、掲載する情報がだいぶ整理されます。この機能改善によって、小さくなったスマホの画面でも必要な情報を整理して提供できるようになり、課題解決に一歩つながったと思っています。
― 「きせかえ機能」は何故つくることになったのでしょうか?
平野さん:「Yahoo! JAPAN」は女性ユーザーの利用が多くないので、もっと女性に刺さるような要素を入れる企画を考えようという課題がありました。何ができるかをみんなで考え、そこで出たアイデアが「きせかえ機能」です。きせかえテーマのモックを作り、上司や周囲に見せたら良い反応をもらえたので、実際やってみようかということになりプロジェクト化しました。 その時すでに、ウェブ版の検索画面で「きせかえの機能」をリリースしており、そこで良い成果が出ていたので、その結果を踏まえて「Yahoo! JAPANアプリ」でも「きせかえ機能」をつけたら良い成果が出るのでは、という考えがありました。あと、私自身がキャラクターが大好きなので、毎日「Yahoo! JAPANアプリ」を開いた時に、好きなキャラクターがいたら嬉しいという思いもありました。
― 若い方の意見も取り入れてくれる環境は素晴らしいですね。
平野さん:提案したら絶対話は聞いてくれます。ベテランや若手など年齢は関係ないです。ですが、成果がないと継続されません。「きせかえ機能」を実装してみて、どういう反応があったかは担当の方が常に数字で追っています。
大きな新機能リリースだったのですが、マイナスな意見がほとんど無かったので少し安心しました。また、自分の実力を知るのにいい機会でした。リリースしてからまだそこまで期間がたっていないので成果は伝えにくいですが、若い女性に評価をいただいたり、「きせかえ機能」を使ってくださっているユーザーが予想以上に多かったりと、非常に良い結果が出ています。
― 「きせかえ機能」をつくる上で難しかったことがあれば教えてください。
平野さん:もともと「Yahoo! JAPAN」自体が、情報量が多いサイトなので、「きせかえ機能」のデコレーションを表現できる場所が限られていました。どういった部分にデコレーションすれば通常機能の邪魔をすることなく、素敵な演出ができるのかとても悩みました。スマホで情報を更新する時に、画面を引っ張る操作をするのですが、その更新中のマークにキャラクターが隠れていたり、サイドメニューの下部に装飾が入っていたり、背景色をうっすらとつけたり、どの部分をデコレーションすべきか、提案したデザイン数は数え切れないほどです。
― 新規で何かをつくるというのは、それだけ大変なことなんですね。
“何でもつくれるようになりたい”
という思いから、出来ないことでも引き受けた。
自身の弱さを知ったからこそ、極められた表現力。
― 学生の頃はどのように過ごしていましたか。
平野さん:武蔵野美術大学のデザイン情報学科に通っていました。入学して1年目は課題をやりつつも、他大学のインカレサークルにデザイナーとして入って、フリーペーパーの制作を行いながらデザインを学んでいました。2年生になった頃から広告業界の仕事に興味を持ち出して、デザインコンペに応募するようになったり、何でもつくれるようになりたいという思いから、映像やグラフィックデザインの制作をして、課題がなくても常に何かをつくっているような生活を送っていました。ですが、3年生になったタイミングから授業をきっかけに、映像やグラフィックデザインよりもインターフェースに興味を持ち始めたんです。そこから、インスタレーション作品をつくるようになって、オープンキャンパスの展示会では、“ゴキブリ”のモチーフを使い、人の動きに反応して動くインスタレーション作品を出展したりもしました。
平野さんが学生時代につくったプロダクト
― 興味と表現の幅が広いですね。デザイン情報学科はどういったことを教えてもらえる学科だったのでしょうか。
平野さん:例えば1年の名物授業に「課題発見」と呼ばれる授業があるのですが、その授業は課題のテーマは何も決まってなくて、課題を見つけるところからカリキュラムになっています。世の中の課題を探して自分でテーマを絞って、それが本当にユーザーが必要としていることなのかを吟味します。当時の私は「デザイナーとデザインを欲している人達を結びつける場がない」ということを課題に上げて、そういう困った人たちを繋ぐSNSを開発しました。
― 課題から見つけ出す授業って面白いですね。3年生になった時点でITに興味を持ち始めたと言われていますが、就職先もIT業界がいいとすでに思っていたのですか?
平野さん:3年生になったばかりのころは、IT業界への就職はそこまで考えていなかったのですが、3年生の夏に、とあるウェブ企業の説明会にたまたま参加する機会があり、そこで2週間の学生インターンを募集していると聞いたので、勢いで応募してみたんです。今考えるとあの時の挑戦が、自分の道を決める大きな転換点になりました。2週間のインターンでは、お客様向けのランディングページをグループワークで制作するというもので、課題も講義もすごく面白くて「IT系の仕事、結構楽しいかもしれない!」と思うようになり、結果的に就職活動の方向をIT業界に絞ることにしました。
― では、就職活動はIT業界に絞ってエントリーしたのでしょうか。
平野さん:そうですね、エントリー数自体はすごく少なくて、5社程度です。IT系を中心に受けていましたが、そのうち4社から内定をいただくことができました。
― なぜ、ヤフーに入ろうと思ったのでしょうか。
平野さん:一番大手であったことが決め手だったと思います。規模の大きさや抱えているユーザー数の多さが魅力的でした。幅広くサービスも展開しているので、いろんなことに挑戦させてもらえそうな会社だと思ったんです。
― 学生時代に、自身の能力を成長させるために努力されていたことはありますか?
平野さん:努力というほどではありませんが、なるべく自分の持っているスキル以上の依頼を引き受けることを心がけていました。例えばですが、映像を制作したことがないのに、映像制作の依頼を引き受けてみて、受けたからにはつくらないといけないので勉強する…みたいなことを繰り返してスキルを身につけていました。なので、もともとはウェブサイトも制作できなかったのですが、ウェブサイト制作の依頼を引き受けて、一から勉強をしてつくれるようになりました。
― コーディングなどウェブサイトの制作スキルも、学生時代に身につけていたんですね!
平野さん:そうですね。3年生の時にデザイン会社でアルバイトをしていて、そのデザイン会社のコーポレートサイトをつくってもらえないかと無茶振りされて(笑)とりあえず引き受けてみて、勉強したのが始まりです。クオリティは低かったと思いますが、使えるレベルまでカタチにする、技術と知識は身につけました。
― 就活をして、5社受けて4社も内定いただいたと伺いましたが、就職活動でこの点は良かった・悪かったと思うポイントを教えていただけますか?
平野さん:受ける業界や企業を絞ったことはすごく良かったと思っています。入りたいと思っていたIT企業を4社と、学んできたコンセプトデザインの知識を活かせそうな仏具メーカー1社に絞ったので、それぞれ準備の時間を沢山とることができましたし、業界に合わせたポートフォリオをつくれたので、その点は良かったと思っています。悪かった点としては、無難にまとめようとしていたところですね。人生で一度きりの新卒採用なので、もっと無謀なことにチャレンジしたほうが面白かったのかもしれないと思っています。
- 新卒で入社してから現在の業務に携わるまで、どのようなお仕事を経験されたのでしょうか。
平野さん:入社1年目は、社会貢献を行う「社会貢献ユニット」に所属していました。そこでは、「Yahoo!ボランティア」「Yahoo!防災速報」「Yahoo!ネット募金」「Links for Good」というサービスを運営しており、デザイン制作を担当していました。その時、ちょうど震災の直後だったので、インターネットの力で震災復興の助けになる仕事がしたいと思い、希望して配属させてもらいました。サービスのビジュアルをデザインしたり、UI/UXの改善を行ったり、ボランティアのキャラクターを勝手につくったりしていましたね(笑) ちょうど入社して配属が決まったタイミングで、「Yahoo!ボランティア」をリニューアルしようという話が出ていたので、私がサービスのビジュアルを担当することになったのですが、そもそもボランティアって馴染みがない人が多いので、キャラクターがいたほうが親しみやすくなるんじゃないかと思い、デザインモックにしれっと、勝手につくったキャラクターを忍び込ませていたんです。案の定、先輩方に「このキャラクターなんだ?」とツッコまれましたが(笑)。今ではもう使われていませんが、一時期サービス内でも使われたり、kakaoスタンプになったりしました。
平野さんが入社後に携わったプロダクト
― 自ら必要だと思った物をどんどん制作していく勢いと姿勢、とても素敵ですね。また、それを受け入れてくれる会社の環境も素晴らしいと思います。
平野さん:社会人2年目は、ヤフーの制度としてある「スター育成プログラム」に参加して、新規事業に挑戦していました。「Hack Day」という社内開発イベントで、サービスのプロトタイプを開発し、その時に提案した“女性向けのメモアプリサービス”が審査員から評価されて、新規事業としてチャレンジさせてもらえることになったんです。その後は、渋谷にオフィスを構えて、同期のエンジニア2人と私を合わせた3人のチームで、新規事業に励んでいました。もともとAndroidにはメモアプリが入っていなくて、そのためかシンプルなメモアプリが1億以上ダウンロードされていました。スマートフォンならではの特性を活かした、面白くて使いやすいメモアプリがまだなかったことから、穴場かと思って挑戦した事業でした。ですが、半年間で成果をだすことができず、結局その事業は打ち切りとなってしまい、ヤフー本社に戻ることになりました。残念でしたが、結果を出せなかったので仕方ないですね。
「スター育成プログラム」とは
MOVIDA JAPAN 株式会社協力のもと実現した「ヤフーに在籍しながら起業できる」制度。
社員が個人もしくは有志のチームで通常業務から完全に離れ、新しいアイデアやビジネスプランに取り組めます。
ヤフーに籍を置きながら起業にチャレンジできる、「企業内起業家」を育成する取り組み。
― その後、部署はどちらに異動されたんですか。
平野さん:もともといた「社会貢献ユニット」に戻ろうと思っていたのですが、私がスター育成プログラムに参加している間に部署が解散していたため、どこにいこうか困っていたところ、声をかけてくれたのが現在の部署「Yahoo! JAPAN」のトップページを運営する、スタートページ制作部でした。
トレンドを追うだけでは力はつかない。
ユーザーが使いやすいデザインを
追求する。
― ヤフーに入社してからいろんなことを学んできたと思いますが、デザイナーとして一番身について良かったと思えることはなんですか?
平野さん:ユーザー数が多いサービスの開発に携われたことは、とても良い経験になりました。ここまで多くの日本人が日常的に使うサービス(月間649億PV ※2015年4月〜6月平均)として運営が成り立っている会社は多くないと思います。大きなサービスだからこそ、責任も大きくて失敗はできないので大変ですが、そこで貢献できた時はとても嬉しいですね。経験したくても、なかなかできないことだと思っています。なので、ヤフーでデザイナーとして働けて本当に良かったです。
― 今後「Yahoo! JAPANアプリ」を成長させるために、どのような努力や挑戦がしたいと思いますか。
平野さん:ユーザーが使いやすいと思うようなデザインにこだわっていきたいです。トレンドのデザインを取り入れるとか、今慣れているカタチを使い続けるとかではなくて、どんな人が見ても操作方法がわかりやすい、見た瞬間に感じとってもらえてるような、使いやすいカタチをデザインしていきたいです。「Yahoo! JAPANアプリ」はまだまだ成長途中なので、もっとより良いカタチに改善されていくと思います。ユーザー数を抱えているサービスをここまで大幅にリニューアルするのは、会社としても大きなチャレンジです。使いにくいといって離れていくユーザーがいないように、使いやすい!と言って利用してくれるユーザーが増えるように、しっかりユーザーの声に耳を傾けてカタチにしていきたいです。
― 平野さんの今後の目標があれば教えてください。
平野さん:UI/UXって特にウェブに限った話ではないので、働く環境だったり様々な形式で、体験からデザインできるようなUI/UXデザイナーになりたいです。
― 平野さんは、デザイナーの技術力でプロフェッショナルになりたいですか?それとも、マネジメントをやっていくことも考えてますか?
平野さん:自分が何をしたいのか、正直自分の中でまだ答えは出ていませんが、今はデザインをもっと勉強したいなという気持ちが強いです。一度決めたからといって、絶対決めた通りにしないといけないわけではないですから、いろいろな事をためしていきたいです。
― ヤフーでデザイナーとして働くために必要な能力はどういったものでしょうか。学生のうちに身につけるべきスキルがあれば教えてください。
平野さん:ユーザーにとって使いやすいデザインとは何か、考えられるようになってほしいです。流行りや見た目がカッコイイ物を制作することよりも、本当に使う人のことを考えた、使いやすいデザインを考えて制作する力を身につければ、入社してすぐに活躍できるデザイナーになれると思います。
技術的な部分ですと、IT・ウェブ業界はかなり移り変わりが激しいので、いまの技術がまた数年後も使えるとは限りません。なので、学生時代に無理に技術を身につける必要はないと思っています。勉強するガッツやモチベーションのほうが大切だと思います。
― 最後に、学生の方々にアドバイスをいただけますか。
平野さん:私もそうだったのですが、これを絶対やりたい!という専門分野が決まっていない人は、とにかくいろんなことに手を出してみるのが良いと思います。やってみて向いていたらどんどん深掘りすれば良いと思います!また、就活をするにあたっては、自分の弱点をちゃんと知って、それを克服できるような手段を取る努力をすると良いと思います。私はしゃべるのが苦手だったので、面接の時は毎回紙芝居をつくって持っていき、紙芝居をつかって自分をプレゼンしていました。ヤフーの面接でも使っていたと思います。自分の弱点をちゃんと知って、それを克服できるような手段を取る努力ができると素敵だと思います。
― 自分の弱点を把握しているからこそ、強さに変えることができたのですね。平野さんの前向きな姿勢を、ぜひ学生の皆さんには参考にしていただきたいです。平野さんお話ありがとうございました!
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(2015.11.6)
著者
後藤あゆみ
はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。
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