みなさんは「CMF」という言葉を知っていますか?「CMF」とは、モノの表面を構成する、大切な3つの要素のこと。今回は、美大生である筆者(津田)の、芸術祭での作品販売のエピソードも交えながら「CMF」について詳しくご紹介したいと思います。
プロダクトデザインや雑貨デザイン、ブランディング等が好きな方には、特に注目していただきたいです!これらを意識すると、作品のクオリティがぐっと上がりますよ。編集・執筆/AYUMI TSUDA , YOSHIKO INOUE
イラスト / Miyagi Takumi
目次
- 1.CMFとは?
- 2.CMFの重要性
- 3.CMFは作品作りに活かせる
- 4.最後に
1.CMFとは?
「CMF」とは、モノの表面を構成する、以下の3つの要素のことです。
C……COLOR(色)
M……MATERIAL(素材)
F ……FINISH(加工方法)
椅子や車、パッケージや雑貨など”触れるもの”を制作する際は、より良いプロダクトを消費者に提供できるよう、色や形状・素材といった「表面」のデザインをしっかり検討する必要があります。モノの表面を構成する「CMF」を意識すると、美しさや機能性が向上し、よりクオリティの高い作品を生み出すことができます。
この考え方は欧米のデザイン業界では一般的で、「CMFデザイナー」という職種があるほどです。
2.視覚による情報量は80%以上?CMFの重要性
制作物の色や素材……。これらのことは、普段制作をするときに、何気なく考えている方も多いと思います。専門の職種があるほど重要とされるのは、どうしてでしょうか。
みなさんは店頭でお買い物をするとき、どのようにして商品を選びますか。まずは色や形に惹きつけられ、それから手に触れてじっくり考える方が多いのではないでしょうか。そんなとき、色合いに一目惚れしたり、持ったときの心地良さが決め手になったりして購入することもあると思います。反対に、見た目や機能性は良さそうだったけど、質感や手触りがイマイチだったので買うのをやめた……なんて経験もあるかもしれません。例えば、「このイヤリングの形は好きだけど、好みの色が無い」とか「このポーチの機能性や柄は好きだけど、素材の感触が気に入らない」といったようなことです。
五感の中で、視覚による情報量は80%以上とも言われています。そのなかでも、この「CMF」(色・素材・加工方法)から受ける心理的影響は強く、商品を買うか買わないかを決める大きな要因になり得ます。
つまり、表面のデザイン次第でモノの価値が決まるといっても過言ではなく、手触りのあるモノをデザインする際は「CMF」をしっかり考えることが重要なのです。
参考 http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000181979
3.CMFは作品作りに活かせる
ここまででご紹介した「CMF」の考え方を実際のデザインに取り入れる時は、以下のような流れとなります。
CMFデザイン作成の流れ
①ペルソナ設定
まず買い手のターゲットを明確に据えることが重要です。「ペルソナ」とは、ターゲットユーザーの中から1例としてユーザー像を作る手法です。性別、年齢、職業、家族構成、趣味までとことん設定します。
②トレンド分析やマーケット情報、商品に近いジャンルのリサーチ
設定したペルソナを元に、より商品のイメージを固め、デザインの方向性を検証し、インスパイヤーできる画像を収集します。
③デザインの提案
収集した情報を元にデザインを作成します。スケッチなどでイメージを検証していく作業です。
④デザイン案のブラッシュアップ
初回デザイン提案を元にデザインの方向性を確定し、より具体的にしていきます。
⑤試作・作成
例えばブランディングデザインを行う際に、このCMFデザイン作成の流れを取り入れると、きちんとターゲットが設定された説得力のある作品を生み出すことができます。また、プロダクト作品を制作する際は、新たな素材を使ってみることで今までに無かったような製品を生み出すことができるかもしれません。
特に①と②の考え方はあらゆる作品制作の際に使えるので、アイディアの出し方やまとめ方に悩んでいる方はぜひ取り入れてみてください。
筆者の経験
筆者(津田)は、芸術祭のフリーマーケットにてオリジナルアクセサリーを販売した経験があります。その際に、「CMF」を意識した考え方が役に立ちました。
まず始めに、購入してくれる人を10代後半から20代後半の女性と想定し、その人達の間で流行っているアクセサリーのデザインや素材を調べました。それを元に「別の場所では売られていない、ここでしか買えないオリジナリティのあるデザイン」を生み出そうと試行錯誤しました。展示方法も、ターゲットの若い女性が好みそうな飾りを置くなどとこだわり、いろいろと工夫しました。
▼実際に制作したアクセサリー
そうしてしっかりとターゲット設定・リサーチを行って出店した結果、多くの人に自分が作ったアクセサリーを買っていただくことができました。「こういうデザインのアクセサリーを探していた」と声をかけられた時は、大きな達成感があり、とても嬉しかったです。CMFデザインの流れに沿って制作したことで、どんな素材を使うべきかが分かり、その結果多くの方に満足してもらえるデザインを作り出すことができました。
4.最後に
2019年現在、日本では玉井美由紀さんという方が唯一のCMFデザイナーとして活躍されています。「CMF」に力を入れたデザインは、見る人に驚きや”触りたい!”という感情を与えます。人の素直な感情を引き出したり、行動をうながしたりすることができるのです。さまざまな商品が溢れている現代、手にした人の感情や体験に大きく影響を与えるデザインが必要とされていくのではないでしょうか。
みなさんがデザインを行う際も、トレンド分析や顧客のニーズを調べ、新たなCMFデザインを提案してみてください。もしかすると、今までの常識を打ち破るような、新たな作品が生み出されるかもしれません。
(2019.2.4)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア