「出版不況」と呼ばれる現在ですが、WEBメディアや電子書籍など紙媒体以外にも【編集者】の活躍の場は広がっています。実はアートやデザインを学ぶ美大生も、そのスキルを【編集者】の仕事に活かすことが出来るのです。知っているようで知らない【編集者】の仕事についてご紹介します。
編集・執筆 / Ayako Yamada, AYUPY GOTO
イラスト / Miyagi Takumi
目次
- 1. 編集者って何?
- 2. 編集者の仕事の流れ
- 3. 編集者とライターの違い
- 4. 求められるスキル
- 5. 編集者になるには
- 6. 最後に
1.編集者って何?
1.編集者って何?
【編集者(Editor)】は、雑誌や書籍などの出版物を企画し、出来上がるまでの制作全体を管理する仕事です。近年存在感を強めているWEBメディアやWEBマガジン、電子書籍の企画・編集も編集者の仕事です。編集者というと記事を執筆するイメージが強いかもしれませんが、それは主にライターの役割で、必ずしも編集者が文章を書くわけではありません。誌面づくりに必要な、文章・写真・イラスト・デザインなどをそれぞれ、その企画にあったライター・カメラマン・イラストレーター・デザイナーに依頼し、ディレクションを行うことが編集者の大きな役割です。取材や撮影がある場合は、許可取りや日程調整なども行います。企画がより良いものになるよう、企画全体を俯瞰して見ることが必要とされます。
▼ 出版物のデザインについてはこちらの仕事百科の記事をチェック
エディトリアルデザインって何?|仕事百科
2. 編集者の仕事の流れ
2. 編集者の仕事の流れ
① 企画案を考える
読者のニーズや流行などを敏感に汲み取りながら、企画を考えます。ありきたりな企画は飽きられてしまうので、編集者独自の視点で切り込む新しい企画が求められます。
② 編集会議
編集長や編集者、広告担当やそのほか媒体に関わるスタッフが集まり、編集会議を行います。どの企画を取り上げるか、特集は何にするのか、ページ数や企画の順番はどうするかなどを話し合います。
③ 記事の構成を考える
企画のページ数が決まったら、写真を使うのかイラストを使うのか、取材やロケ先の選定、記事のおおよその構成を考えます。このとき、大事な予算との兼ね合いも考えながら進めていきます。
④ ライター・カメラマンの決定、 打ち合わせ
ライターやカメラマンは人によって得意な分野があるので、企画のコンセプトに合う人に依頼をかけます。決まったら打ち合わせをして、企画内容やコンセプトを共有します。良いコミュニケーションがとれると、ライターやカメラマンからのアイデアで企画がより面白い方向へ発展することもあります。
⑤ 取材・撮影
インタビューやお店への取材などがある場合は、取材依頼を行います。取材のスケジュール調整や、レンタカーや新幹線などの交通手段・宿泊先の手配も編集者の重要な役割です。取材や撮影はやり直しがきかないことがほとんどなので、当日充実した取材・撮影ができるよう、スタッフや取材先と、事前に内容やイメージの共有をしておくことが大切です。
⑥ レイアウト作成
撮影後、カメラマンから届いた写真をセレクトします。写真の大きさ、文章量、タイトルやそれぞれの配置を決め、ラフレイアウトを作成します。ページのどこにインパクトを持たせるかなど、デザインの知識があると誌面の魅せ方を考える際に活かせます。
⑦ デザイン・文章発注
ラフレイアウトをもとに、デザイナーへデザインを発注します。正式なレイアウトができたら、ライターへ文字数を伝え文章を発注します。
⑧ 原稿チェック
文字と写真が入り完成した原稿を確認します。修正があれば、それぞれ赤字を入れてライターやカメラマン、デザイナーに戻します。赤字の修正がされたら、編集長のチェックが入ります。原稿は取材先にも確認を行います。
⑨ 校正
誤字脱字や事実の間違いがないか確認します。この作業は編集者やライター以外に校正者も担当します。印刷会社で印刷し、色校正という写真やデザインの色の調整も行います。印刷物は一度出版してしまうと修正ができないので、校正はとても重要な作業で、何度か繰り返し行われます。
⑩ 印刷会社へ入稿
最終の校正が終わったら、原稿を印刷会社に戻します。ここで編集者の仕事は完了です。その後、印刷・製本された雑誌や書籍は、宣伝部や営業部の協力によって世に出ることになります。
今回は雑誌における編集者の仕事の一般的な流れをご紹介しましたが、漫画や小説といった作家と原稿のやりとりを行う編集者の仕事内容は、これとは少し異なります。漫画や小説では、月刊や季刊などの媒体があり、そこでの連載や単行本化を企画します。
小学館のWEBサイトでは雑誌の編集と漫画の編集について、編集者やその周辺の職業の役割を、それぞれ詳しく紹介しています。
3. 編集者とライターの違い
3. 編集者とライターの違い
はじめに「文章を書くのはライターの役割で、必ずしも編集者が文章を書くわけではない」というお話をしましたが、編集者とライターは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。仕事におけるそれぞれの役割をまとめてみました。
● 編集者
媒体や企画のコンセプトを考え、企画の制作全体を管理する。
コンセプトに合わせて、取材場所の決定やライターやカメラマンへ業務を依頼し、ディレクションを行う。
ライターが書いた文章に修正を入れることや、文字数の少ない簡単な文章を書くこともある。
● ライター
編集者の考えた企画意図をよく把握し、魅力的で伝わりやすい文章を書く。
取材ではライターがインタビューなどを行い、取材対象の言葉を引き出す。
媒体によっては、企画や構成まで任されることもある。
このように、編集者とライターでは仕事内容が異なり、求められるスキルも違ってきます。しかし、実際の現場では両方の役割を兼ねている人も多いようです。どちらの知識も持っていることで、編集者はライターへの依頼や修正をより具体的にできますし、ライターは編集者の意図をより汲み取ることができます。
4. 求められるスキル
4. 求められるスキル
編集者に特別な資格は必要ありません。ライターとは違い、高い文章力が必須でもありません。それでは、編集者にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。
□ 本・文章を読むことが好き
□ 人とは違う視点(切り口)で物事を見ることができる
□ 企画力・構成力がある
□ 好奇心旺盛で新しいものへのアンテナを張っている
□ 取材や交渉を行うコミュニケーション能力がある
□ 締め切りと戦う、タフな精神力と体力がある
このほかに、音楽やファッション、料理など、専門誌ではその分野の専門知識が求められます。自分の好きなことの専門知識が仕事に活かせることも編集者の特徴です。
アートやデザインを学ぶ美大生も、美大で培った知識や経験を編集者の仕事に生かすことができます。アートやデザインの専門誌で編集者として活躍することはもちろん、それ以外の媒体でも、デザインの知識があることで、誌面の魅せ方やレイアウトを考える際に活かすことができます。編集者としてカメラマンやデザイナーに指示をする際も、カメラやデザインの知識があると、より具体的な意思疎通ができるでしょう。
5. 編集者になるには
5. 編集者になるには
編集者になるための方法として、一般的に出版社や編集プロダクションに就職することが考えられます。大手出版社の採用は、大卒・院卒を対象としており、非常に倍率が高く、有名大学の採用者が多いというのが現状です。
採用者の学部は文系が多いようですが、大学で学んでいた専門分野を活かした媒体の編集者として採用されることも多いため、どの学部でも採用される可能性はあります。中小出版社や、出版社の下請けである出版プロダクションでは、短大卒や専門卒でも採用しているところが多いようです。こちらも、その出版社で扱っている分野の専門知識があると有利です。
また、出版社や編集プロダクションでは、アルバイトや学生インターンを募集しているところも多いです。アルバイトとして働き、実務経験を積むことで、編集者としての採用に近づくことができるでしょう。
6. 最後に
6. 最後に
編集者の一番のやりがいは、自分が考え制作した企画が、雑誌や書籍、WEBサイトを通して、世に出て多くの人に届けられることです。締め切りに追われる忙しい仕事ではありますが、完成したときの喜びや読者の反応は次の企画を考える原動力になります。美大・芸大・専門学生のみなさんも、将来の選択肢の一つとして【編集者】という職業を考えてみてはいかがでしょうか。
(2018.7.9)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア