自分の知らない世界に飛び込むことで広がった可能性、役割を超えて働く|グリー クリエイター 宮部遼太朗さん

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“イラストレーターになりたい”“グラフィックデザイナーになりたい”という夢は人それぞれ。挑戦したい仕事が決まっている人もいると思います。しかし、あなたが将来就ける仕事は、今目の前に見えている職業だけなのでしょうか。今回インタビューさせていただいた宮部さんは、学生時代は好きなアニメ作品に憧れ、映像業界を目指していた学生でした。しかし様々な出会いをきっかけに、新たな才能に目覚めていきます。視野を広げることで変わっていった宮部さん、一体どのような経験からゲームクリエイターとして輝き始めたのか、紹介します。編集・執筆 / AYUPY GOTO

宮部 遼太朗みやべ りょうたろう

GameDesigner

京都精華大学 デザイン学部 デジタルクリエイションコース卒業
グリー株式会社 Garageグループ (2015年4月 取材時点)
※現在はWright Flyer StudiosのArtグループに所属

詳しいプロフィール

約2年間で関わったゲームは10本以上!新規ゲーム開発に挑戦できるGarageグループって?

― Garageグループとは、どのような部署なのでしょうか?

宮部さん:Garageグループは、ネイティブゲームの開発人材を育てるための育成機関です。基本的に少人数でチームを組み、短期間でネイティブゲームを開発してリリースします。新しいゲーム企画が頻繁に立ち上がるので、担当するゲームが変わることもあります。

― 宮部さんはGarageグループの中で、どういったお仕事を担当されているのでしょうか?

宮部さん:アソシエイトアートディレクターという役割で、リーダーであるアートディレクターの補助をしています。
例えば、企画側からゲームの企画書があがってくるのですが、そこにはビジュアルやデザインはどういうものにしたいか、全体スケジュール、完成までのタスクの量、方向性といったことが記載されています。その企画内容をアートディレクターやアソシエイトアートディレクターで確認して、もし工数がかかりすぎるのであれば削るよう伝え、提案された仕様よりも使いやすいデザイン案があればこちらからも提案させていただきます。

― 企画側の人と話し合いながら、ゲームの方向性を決めていくのですね。宮部さんは自身の手を動かしてゲームデザインを制作されるのでしょうか?

宮部さん:はい、私自身も手を動かして制作します。リーダーと話し合い、メンバーの適正を見ながら、タスクを各ゲームの制作担当に割りつつ、自分もグラフィッカーとして絵を描いたり、UIを担当したりとゲーム制作に携わっています。

― 宮部さんはイラストも描かれるのですね!

宮部さん:本当にいろんな仕事があって、例えば3Dのゲームを制作する場合は、キャラクターのデザイン、三面図を描いて、3Dモデラーの方にお渡しし、モデリングしてもらいます。ですが、先ほどお話ししたように様々な企画の話がでるので、三面図を描いたと思えば、別の企画でフラットデザインを担当するなど、毎回違うものを要求されるので、いろんな仕事に挑戦できます。

― いろんな仕事を任されている宮部さんですが、現在は入社3年目ですよね。入社1年目の時はどのような仕事をされていたのですか?

宮部さん:1年目の仕事と、今の仕事だとだいぶ内容が違います。入社当初はウェブゲームの部署にいて、初めは「モンプラスマッシュ」という海外展開向けのゲーム制作に関わり、イラストを描いていました。しかし、残念ながらそのゲームはクローズしてしまったので、違う部署に異動することになり、次に「ハコニワ」というガーデニングをする育成ゲームを担当しました。ハコニワは、デザイナーの人数が少なく、上司が多忙な方だったこともあり、必然的にいろいろと任せてもらえる環境でした(笑)。ちょうど担当したタイミングで、ガラケー向けだったハコニワをスマートフォン向けに展開することになったので、もっとスマートフォンでも使いやすいUIにリニューアルしようということになりました。そこで初めてUIデザインを担当することになったんです。最初は不安もありましたが、わからないことがあれば上司や先輩方に相談にのっていただけたので、アドバイスをいただきつつ制作しました。そこからUIだけではなく、バナーやアイテム作成も任され、担当する業務が増えていくうちにアートディレクターとして働かせていただくことになりました。それが入社1年目の時の話です。
それからしばらくハコニワの制作を任せていただいていましたが、会社がネイティブゲームシフトへと大きく舵を切るなかで、社会人2年目の10月頃から、私もネイティブゲームの開発に携わることになりました。ハコニワで担当していた業務の引き継ぎが終わった段階で、今所属しているGarageグループに異動し、現在に至ります。
入社してから今までで、10種類以上のゲーム開発に関わっています。

― 約2年間で沢山のゲームに関わり、様々な業務を担当してこられたのですね。そこまで多くの新規プロジェクトに関われる環境は、珍しいですね。

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宮部さんがアートディレクターとして関わられたゲーム“ハコニワ”

憧れていた映像業界からゲーム業界へ進路をチェンジ!大事にしたのは“キャラクター”と“世界観”が描ける仕事。

― 大学生の頃はどのように過ごされていたのですか?

宮部さん:入学当初は、ふわっと絵を描く仕事がしたいと思っていて、元々アニメや映画が好きだったこともあり、映像系の仕事に関われたら楽しそうだとは思っていました。しかし特にこれになりたいという職業は決まっていなかったです。とにかく必死に使えるツールを増やそうと勉強をして、今自分につくれるものを作ろうと、アウトプットすることを意識していました。映像の仕事に興味を持っていたので、隙間時間でアニメーションを制作していましたね。

― 元々映像のお仕事に興味があったのですね!ですが、現在グリーさんに就職されているということは、どこかで考えが変わったのですよね。どうして映像業界に進まなかったのでしょうか?

宮部さん:元々海外のアニメ作品が好きで、海外のクリエイターに憧れて制作していました。その影響から、3年生になったときにアメリカの美大に短期留学し、そこでアニメの授業を受けました。憧れだったアニメ会社の方の講義を直接受けたこともあります。日本では経験できないことですし、憧れの仕事の話を聞けてとても嬉しかったです。
しかし、留学したことで気付けたこともありました。映像の技法って本当に幅が広いし、アニメーターの方は絵を「動かす」ことに命がけで取り組んでいる人が多くて、その部分にすごい情熱を持って仕事をしている人ばかりです。それを知ったときに自分はアニメだけを極めて生きていくことはできないと思ったんです。どちらかというと、静止画の2Dイラストを極めたいと思いまして、そこで自分が将来どうしたいか整理ができました。

― 留学は自分のキャリアを考えるきっかけにもなったのですね。その後はどういう行動に出たのでしょうか。

宮部さん:帰ってきたのが3年生の12月末で、就職活動が少し始まっている時期でした。帰ってきて早々、親に「就活は大丈夫なの?」と、言われてしまいましたね(笑)そこから急いで就職活動の準備を始めました。ポートフォリオを1ヶ月間で制作し、それから気になる会社があればエントリーしていました。

― 映像業界には進まないと決意した中で、どういった企業を受けたのでしょうか?

宮部さん:ゲーム企業が多かったです。全部で7社ほどエントリーしました。
留学期間に自分のやりたいことってなんだろうと考えたときに、昔からキャラクターを作ることが好きで、それに付随して世界観をつくることにも情熱を持っていたので、そういうことができる仕事はゲーム業界に多いと思ったんです。

― ポートフォリオは、1ヶ月間で作れるものなのでしょうか?そもそも就活前にポートフォリオを作った経験はありましたか?

宮部さん:すごく簡単なものですが、留学前に留学先の学校に提出するための作品集はつくっていました。ですが、就活のポートフォリオとして使うには厳しい内容でした。留学から帰ってきて初めてポートフォリオ制作に取り組んだのですが、作り方もすごく迷いましたし、印刷だけで丸一日かかりました。ずっとプリンターの前にはりついていて(笑)自分は時間がなくて苦労したので、みなさんには早めの制作をおすすめします。

― ポートフォリオ制作は、どこまでもこだわれますし時間がかかりますよね。当時エントリーした7社の中に、現職であるグリーさんも入っていたわけですね。

宮部さん:そうですね。3月下旬に、グリーから内定をいただき、それをきっかけに就活はやめました。クラス内でも決まるのは早いほうだったかと思います。

― 就活は遅れて始めたはずなのにスムーズですね(笑)

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― どうして内定をもらえたのか、どういった部分が評価されたのかわかりますか?

宮部さん:元々コアなゲーマーというわけでもなかったので、ゲーム業界のことは知らないことが多く、最初は苦戦していました。しかし、大学にゲーム業界で働いている先生がいらっしゃったので、ゲーム会社の働き方や仕事内容を聞いたり、相談にのってもらっていました。
また、スケッチブックでゲームキャラクターを描けるよう練習したり、面接前に様々な企業のゲーム媒体について調べて、ゲームのネタを集めて、自分が入社したら何に挑戦したいかなど、話したいことを考えていました。面接で何を聞かれても困らないように自分なりに準備はしていましたよ。
あとクリエイター職は、自分の制作した作品について面接で説明する機会があるので、自分の制作したものに関しては責任を持って、しっかりプレゼンできる状態にしておけば困ることはないと思います。

― なるほど、業界の知識をしっかりつけて、自分の考えも説明できると強いのですね。

宮部さん:自分で言うのもなんですが、しっかり自分の考えや、自分らしい表現を極めていると強いと感じました。ゲーム業界を受ける人ってゲーム好きな人が多いので、すでに存在する漫画やアニメから派生したような絵を描く人が多いように思いました。もちろん、そっちのほうが良い場合もあるのですが、自分は好きなものが海外のアニメやキャラクターだったこともあり、作品にオリジナリティがあって、他の人と比べて異色で、良くも悪くも目立ってしまっていたと思います。そこがグリーでは評価され、採用いただくことにつながったのではと思っています。

― そんな宮部さんですが、なぜ最終的にグリーさんに入社することを選んだのでしょうか。

宮部さん:私がグリーを受けたのが2012年だったのですが、会社の歴史を調べたりニュースを見たりして、数年で急成長した会社というイメージがありました。メガベンチャーと呼ばれる企業がどういった環境なのか気になったのが一つあります。
入社したら会社が急成長する様子を体感できるんだろうなって考えるとワクワクして、自分自身もその勢いにのって成長していきたいと思いました。
あと、アメリカ留学をしている期間に、アメリカのソーシャルゲーム会社の方とお会いする機会があったのですが、そのときに「日本の企業で、最近話題になっている会社はどこでしょうか?」と伺ったら、グリーの名前が出てきたんです。その時から興味を持ち始めて、グローバルなことにも挑戦できそうな会社だと思いました。
そして実際、グリーで働く先輩にお話しを伺ったところ、若いうちからいろんな仕事を任せてもらえる環境だとわかって、自分の成長にもつながると思えたんです。

― 少し気になっていたのですが、ゲーム会社に入社される方って、ゲームの制作実績がある方が多いのでしょうか。宮部さんは学生時代にゲームを作ったことはありましたか?

宮部さん:ゲームを作った経験が必要とは思いませんが、私はあります(笑)大学でゲームを開発する授業を受けていまして、京都にあるプログラミング専門学校の学生と合同で、ゲーム開発を行いました。授業期間内にゲームを完成させることはできなかったのですが、ゲーム用の動かす素材やキャラクター素材の制作経験が積めたのは良かったです。
その経験を通じて、デザイナーとプログラマーでは意識している点が全然違うことにも気づけました。デザイナー側はパッケージやビジュアルを1番大事にしますし意識しますが、プログラマー側は、絵柄よりも動きや機能の部分に重点をおくので、意見のすれ違いやぶつかり合いが多くて、大変だったことを覚えています。なので、社会に出てもこういうことが続くんだろうな、と薄々感じていました。

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宮部さん仕事風景

何でも任せてもらえる環境、責任感が自分を成長させた。

― 実際入社してみて、イメージしていたような会社だったでしょうか。

宮部さん:思った以上にスピード感があって変化も多い会社だと思いました。あと、想像を遥かに超えて自由でした(笑)大きい会社って、大きな仕事を任せてもらえるまで時間がかかるイメージがあったのですが、グリーの場合は全然そんなことなくて。自分は1年目で、先ほどお話ししたハコニワというゲームのアートディレクターを任せていただけたり、ゲームのUI制作をほとんど一人で担当したり、新卒の立場でいろんなお仕事に関われたので、なかなかできない経験をさせてもらえたと思っています。

― 確かに、1年目でアートディレクターはすごいですよね。入りたい部署や、任せてほしい仕事は、会社に相談できるのですか?

宮部さん:面談などで希望を伝える機会があるのですが、私の場合だと絵を描くのは好きだったので、グラフィッカーとして絵を描きたいということは伝えていました。
UIに関しては、やりたいという気持ちが強くあったわけではないのですが、実際やってみたら意外と面白くて、経験のないこともいろいろと挑戦していきたいと思いました。

― 先ほど少しお話しいただきましたが、現職の魅力ってどういったところでしょうか?

宮部さん:先ほどもお話しした、若いうちから何でも任せてもらえる環境は魅力的ですし、あとはデザイナーもゲームの企画から関われる機会があるのは面白いと思っています。グリーのデザイナーの仕事は、デザイン業務に留まりません。今の部署に異動したばかりの時に行ったプロジェクトは、デザイナーだけで集まって、ゼロから企画を考えてゲームをつくろうというものでした。そのプロジェクトをやったことによって、ゲームの仕様をつくる経験が積めて、知識もつきました。ゲームの仕様を理解することによって、デザイナーも今後の開発で提案できることが増えるので、こういった取り組みには魅力を感じています。
あと社内イベントも面白くて、“パワーランチ”という、社内や社外から講師を招いて、ランチを食べながら行う勉強会もあります。有志でチームをつくって、ゲーム開発で1位を競い合う“Mock-1 グランプリ”という社内ゲームコンテストもあります。自分が参加した時は惨敗だったのですが(笑)挑戦できる機会はあるので、自ら動けばいろんなことができる会社です。

― クリエイターで入社しても、それ以外の仕事を体験することができるのですね。

宮部さん:例えば、元々ディレクターだったけど今はデザイナーの仕事をしている人もいます。全ての意見が希望通りに通るわけではありませんが、自ら手をあげれば自分のやりたいことができるチャンスはたくさんあると思います。

― 今までいくつかゲーム開発に関わられていると思いますが、強く思い出に残っているお仕事はありますか?

宮部さん:アートディレクターを任せていただいたハコニワのお仕事です。学生の頃は自分の好きなものを自分のためにつくっていたので、正直、社会人になってお客様のために何かできることはあるのか、自分にそのスキルはあるのかと不安に感じていました。でも過去のデザインを参考にしながら制作したり、ディレクターに相談しながら制作を進めたりして、リリースし、お客さまに受け入れてもらえたとき、こんなに達成感を感じるものなのかと感動しました。とても嬉しかったです。

― 今後の宮部さんの目標を教えてください。

宮部さん:元々ゲーム業界を選んだ動機が、キャラクターをつくり続けたかったからなので、自分のつくったゲームキャラクターが、いつか人気になってグッズなど様々な形でゲーム意外のものに展開して成立するようになることです。それができたら1番幸せだと思っています。

― では最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

宮部さん:自分のために時間をかけて作品をつくることって、学生の時にしかできません。社会人になって、自主制作に割ける時間は限られているので、学生の自由な時間は、自分の可能性を広げる最後のチャンスだと思います。お客様のために何かをつくることも、やりがいや楽しさを感じますが、自分のためにするものづくりとは全く違う楽しさです。ですので、学生の時間を有効活用して、なるべく沢山のインプットとアウトプットをしてほしいです。
私は社会人になってから、学生の頃と比べてすごく視野が広がりました。結局、美大の中ってデザインやアート、つくることが好きな人ばかりで、何かしら共感しあえる人がいますよね。でも社会に出たら全然そんなことなくて、自由表現に一切興味のない人も沢山います。そういう人たちに出会うことで、素直な反応をひろえて、どういったものが世の中でウケるのか気づくことができます。なんのためにデザインするんだろうとか、わからなくなる時期がくる人もいると思うのですが、社会に出て組織に属し、責任を与えてもらい、自分のつくったものでお金が動き、物事や組織が循環していることを感じたとき、これまでにない達成感を得ることができました。ワクワクしたり、意外とやってみたら楽しいことって沢山あります。
今、目の前にあることだけにとらわれず、自分の知らない世界に飛び込んでみてください。きっと新たな出会いがみなさんを成長させ、楽しませてくれるはずです。

(2015.5.29)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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