良いものはこれ!という核心に近づいたデザインをチームで作りたい|寺島デザイン制作室 グラフィックデザイナー萓場あすかさん

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他人と比べ自信を無くしてしまった時、一歩踏み出すにはどうしたら良いでしょうか。今回お話を伺った萓場さんは「頑張るチャンスを見逃さない」という大切さに気づき、自分の可能性を見出す言葉をもらった時には、自分を奮い立たせ、成長を続けてきたそうです。美術大学や専門学校に進学したものの夢を諦めかけてしまっている方に、ぜひ読んでいただきたいインタビューです。編集・執筆 / YOSHIKO INOUE, AYUPY GOTO

萓場あすか
かやば あすか

GraphicDesigner

2010年 北海道造形デザイン専門学校卒業。
同年、(有)寺島デザイン制作室入社。
2014年 ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ 入選
2015年 ポスタートリエンナーレトヤマ 入選

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農家生まれの食品から、暖房器具まで
北海道に必要不可欠のデザイン事務所

― 寺島デザイン制作室はどのような会社でしょうか。

萓場さん:さまざまなコトモノのブランディングを手がけるデザイン事務所です。お仕事の依頼をいただく業界は幅広く、社員一人一人がメインで担当する業界やジャンルを持っています。私の場合ですと、暖房等を扱っている会社のブランディングをメインで担当しています。仕事の依頼が来るのは基本的に北海道内ですが、道外からの仕事を取り扱うこともあります。

― 幅広いジャンルのブランディングに携わっているのですね。萓場さんの具体的な仕事内容を教えて下さい。

萓場さん:当社では、アートディレクターとデザイナーが二人ペアになるチーム制でお仕事をしています。現在私は、後輩デザイナーの上でアートディレクターとしてお仕事しています。いただいた仕事によって制作するものも変わりますが、ロゴやエディトリアル、文具、小冊子などの制作に携わります。私が担当している暖房等を扱う会社さんですと、パンフレットを一式制作したり、WEBサイトをつくったりしています。先ほどもお話したように、様々な業界からお仕事の依頼をいただくので、全く詳しくないジャンルや業界のお仕事を担当することもあります。ですが、業界や仕事を理解してからでないとブランディングは出来ないので、新たにお仕事をいただいた時は毎回一から勉強しています。「この暖房の型番は…」など、理解するのは大変ではありますが、業界への知見が深まり新たな発見があるため、新しい仕事にチャレンジできるのは楽しいです。

外箱正面

萱場さんがパッケージデザインを担当したお仕事|hokkaido white love flake

憧れのデザイナーからの言葉が、諦めずに頑張ることを決心させてくれた。

― 学生時代はどのように過ごしていましたか。

萓場さん:札幌市の北海道造形デザイン専門学校のグラフィック学科に在学していました。少人数の学校だったこともあり、クラスメイトとの距離も近くて仲良く楽しく過ごしていました。学生生活は、必死に課題をこなし、学校の行事運営ばかりしていた印象です。当時は、活発にデザイン制作に取り組んでいたわけでもなく、自分の表現力に自信を無くしていたので、自主制作など積極的に行っている周りの友人を見ては「私はデザイナーになんて絶対なれない」と、思っていましたね(笑)

― 就職活動はどのように行っていましたか。

萓場さん:デザインの専門学校に入学したものの、デザイナーには向いてないと思っていたので、漠然とパソコンを使う仕事に就こうと考えていました。自分に自信が持てず、作っているものを人に見せることから逃げてばかりいました。

そんな思いで過ごしていたんですが、2年生の10月頃に初めてデザイン会社でインターンを始めたんです。それまでは、上手につくれないし、同級生との差をすごく感じていたので、自分の殻に閉じこもっていたのですが、インターンで初めて楽しくデザインが出来たんですよね。インターンをしていたら、卒業制作でつくりたいもののアイデアもたくさん出てきました。そういう経緯のもと卒業制作もつくり進めてみたら、中間審査で審査員として参加していた現職の寺島代表に声をかけられたんです。寺島は、1年生の時にも授業の特別講師で参加していたこともあり、学校のみんなが知っている有名な方でした。また、寺島デザイン制作室の仕事は、デザイン系の書籍にもたくさん載っていて、凄いクリエイターたちが集まっている会社だと憧れの気持ちで見ていたので、声をかけてもらった時は動揺しましたが、それによって自信がつき「ただ、声をかけただけかもしれないけど、これはチャンスかもしれない。そのまま頑張ってみよう」と決心できたんです。

その後、寺島デザインに訪問しポートフォリオを見てもらいました。作品についてはボロクソ言われてしまったのですが(笑)卒業制作は良いねと言われました。そこでアルバイトをさせて欲しいという気持ちも伝え、半年間アルバイトとして働くことが決まったんです。卒業間際のことでした。

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寺島デザイン制作室 オフィス風景

― 卒業後まずはアルバイトとして働き始めたんですね。実際に働き始め、どうでしたか。

萓場さん:アルバイト時代は寺島の下で仕事を教わっていました。仕事内容としては、紙面のページデザインを組んだり、地図をデザインに起こしたりしていました。求められるスピード感になかなか追いつけず、当時の私にとってビックリするくらい大変な仕事でした。また、デザインの仕事もですが、社会的な気の利かせ方とかも全然できていなくて、自分を客観視できていなかったんですよね。そんな時寺島に、周りのことが見えてないことを指摘され、変わらなきゃダメだと目が覚めました。

それから「先輩たちが帰る時間まで仕事を手伝う」と、自分の中で決めました。毎日最後までひたすら手伝って、ひたすら働いていると、だんだんコミュニケーションも取れるようになり、先輩にも信頼してもらえるようになりました。あの時、何もできないアルバイトだった私に一言「辞めて」と言うことは簡単だったと思いますが、指摘してくれたので本当にありがたかったなと思います。

その後、正社員になる直前くらいのタイミングで、カレンダーのブランディング案件をまるまる任されました。すごく不安で怖かったですし、最初は全然できなかったんですけど、手取り足取り何回もやり直しさせてくれました。時間がかかっても、最後まで私に仕事を任せてくれたんです。

― 仕事に手応えを感じるようになったのは、いつ頃でしたか。

萓場さん:1年くらい経って、1枚のフライヤーを作った時です。見せた2案に対し「良いね、どっちも使いたいくらいだよ」と言ってもらえたんです。それから徐々にいろんな仕事を任せてもらえるようになりました。そこで初めて安堵感というか、諦めずにやって正解なんだと思いました。

― 今までの仕事の中で、印象に残っているものはありますか。

萓場さん:いっぱいありますが、やっている時に辛い仕事ほど、褒められて終わると嬉しいです。何回もやり直して、もう全然良いものが作れないって時に力を振り絞って出たものを「良い」って言われると、泣けるほど嬉しくなるんですね。なので、楽しかった仕事と辛かった仕事はリンクしています。

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個々が活躍できる、”SMAP”のようなチームで働く

― 寺島デザイン制作室の魅力を教えてください。

萓場さん:個々が立てて、仕事を任せてくれるところです。寺島がいつも「SMAPと一緒で、グループなんだけど、中居くんもいるし草彅くんもいる、そういう会社なんだよ」と言っているのですが、すごく的を得ていると思います。外に向けても、「会社の」仕事というより「会社の誰々の」仕事という風に出しています。多分、個人でバリバリやってくれる人が増えたら良いなという寺島の狙いがあるんだと思います。社員としても、個を認めてもらえるというのはやっぱり嬉しいですよね。良い会社だなと思います。

― 地方で働くことの魅力について教えていただけませんか。

萓場さん:仕事内容は暖房機や野菜など、北海道ならではのものを手がけることが多くなっていると思います。特に北海道だからと、こだわって住んでいるわけではありませんが、住みやすいので外に出ようと思ったこともないです。

― 今後の目標について教えてください。

萓場さん:良いものを作りたいです。やっぱりまだ悩むことは多いのですが、良いものってこれだろ!という核心に近づけて、自信につなげたいです。なおかつ、クライアントさんにも良い影響が出るような、見たことない新しいものを創り出したいです。また、そういう良い仕事を、チームとしてできるようになりたいですね。

― 最後に学生へ向けて、アドバイスをお願いします。

萓場さん:核心にぶれない気持ちを持って、自分が良いと思うものを作り続けてください。消極的だった私がしがみついてまで「バイトさせてください」って言えたのは、自分の中に“デザイナーとして働きたい”という気持ちがあったからだと思うんです。

ポートフォリオも、自信がなくても積極的に見せてみると良いと思います。プロのデザイナーの方であれば、この作品はどんな気持ちで作って作っているのか、ちゃんと読み取ってくれるはずです。私も今、会社でインターン生を見ていますが、積極的にアタックして大人のクリエイターに覚えてもらう活動って、学生にとって大切なことだと常々思います。

寺島デザイン制作室

(2015.8.3)

著者

後藤あゆみ

はたらくビビビット編集長。 フリーランスで“『ツクル』を仕事にしたい未来の子供たちのために。”を、コンセプトとして活動。クリエイター支援、スタートアップ支援を行っています。おばあちゃんになるまでに美術館をつくるのが夢です 。

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