京都などの古い街並みでよく見かける、色が控えめな看板や建物。景観の統一感を図るために周りの環境に合わせて工夫されたデザインになっています。街の雰囲気を大切しながら配慮されたデザインは美しく、落ち着いた印象を演出しています。今回はそんな「景観デザイン」について詳しくご紹介します。
編集・執筆 / SHIGEMATSU, AYUPY GOTO
いつもとは何かが違う?雰囲気に合わせた街のデザイン
いつも見慣れている景色を思い出してみてください。日常生活を送る中でよく見かけるコンビニエンスストアやスーパーなどの看板のほとんどが、店の位置を分かりやすく示すために比較的はっきりとした色が使われています。
しかし、京都や鎌倉などの古い街並みが残っている場所ではその立地にふさわしい「景観デザイン」に基づき、色や看板が変化しています。一つでも派手なものがあるだけで景観の雰囲気を乱してしまうため、落ち着いた色を上手く使いながら美しい街作りができるように心掛けてデザインが考えられているのです。
どんなことに気をつけてデザインされているのか?
景観条例に基づいて作られている
景観を守るために、定められた景観条例によって街の雰囲気が統一されています。
○景観条例とは
良好な都市景観を形成することを目的としており、各都道府県ごとに細かく条例が定められている。
デザインはもちろん、建物の高さや看板の大きさまで細かく指定されています。高さについては一部の場所では基準が低く設けられており、ビルやマンションも低層階のものが多くなっている所も見られます。
自然に馴染む落ち着いた色合い
色彩基準も細かく決められており、美しい街並みを保つために一般の地区に比べて歴史的な地区にはとても細かいルールがあります。その指定は、先程少し述べたように都道府県や地域によって異なるのですが、比較的落ち着いたトーンの色が使われることによって、よりナチュラルにその街にマッチするものになっているようです。また全国チェーン店やコンビニエンスストアなども対象になっているため、いつもとは違う雰囲気の店を見て、驚く驚く人も少なくないようです。
街の雰囲気を統一するための工夫
さらに街のイメージを統一させるために、「瓦」や「竹」といった日本らしい和の要素が取り入れられています。コンビニエンスストアなどの屋根や店の一部分に下記のような工夫を少し加えることで、街と上手く調和するため違和感なく街に"溶け込む"デザインになっています。
"街に溶け込む"デザインを見てみよう
では、実際の街並むデザインを見ていきましょう。一般的なものと比べてどういう風に変化しているのか使われている色を比較してみると面白いですよ。
ローソン
こちらは京都の店舗で、街に合わせてロゴが茶色に変わっていたり少し木が使われていたり、全体的に和モダンなデザインになっています。周りと上手く調和している所がポイントです。
(https://matome.naver.jp/odai/2142892932324264801/2142893246327081603)
ファミリーマート
こちらの店舗は瓦が使われていたり、建物を活用しながら店舗に変化していることで日本らしいイメージを連想させられます。いつも見慣れているコンビニも、少し外装を工夫することで全く違う見え方になるのが驚きです。
(https://matome.naver.jp/odai/2143571994842562501/2143572033442764203)
セブンイレブン
コンビニエンスストアの新しい雰囲気と和の風情が上手く融合している素敵な店舗です。看板にも一工夫されていて、景観を綺麗に見せるための統一感を演出しています。
(http://www.ryokan-seiryu.co.jp/blog/log/eid159.html)
マクドナルド
日常生活で見慣れている赤いロゴも街に合わせて茶色に変化しています。元のロゴの良さを生かしながら、控えめな色を使ったデザインは自然に馴染んでいます。
(http://news.mynavi.jp/news/2013/09/03/075/)
佐川急便
祇園佐川急便は街に合わせて外観が昔の町家になっていたり、藍色で昔ながらのイメージを連想させる台車が使われていたりします。その場所にふさわしい高いコンセプトに基づいてデザインされた店舗は、外国の観光客の人にも人気が高いようです。
(http://www.gion.or.jp/gion_shop_detail/祇園佐川急便)
ポスト
普段は赤いポストも茶色になることで落ち着いた印象に。地域によって様々なバリエーションがあるので、その場所にちなんだユニークなものに出会えるかもしれません。
(http://5701machikado.seesaa.net/article/373930881.html)
最後に
「景観デザイン」に注目して見てみると、普段とはまた違った視点で街を楽しむことができると思います。ぜひ古い街並みを訪れた際には、どういった所がいつもと違うのか見比べてみると面白いですよ。周りの環境に合わせた環境作りによって、美しく素敵な景観を保つことができているということを今回の記事を通して少しでも知っていただけると嬉しいです。
(2017.3.10)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア