和文フォントにはない、線とかたちの美しさをもつ欧文フォント。皆さんは欧文フォントを目にした時、さっと使われているフォントの名前が頭に浮かびますか?
欧文フォントは、普段使う日本語とは違ったかたちだからこそ、私たちの目にとまりやすく、美しく感じます。今回は、フォントそれぞれの特徴を踏まえつつ、欧文フォントについての知識を深めていきたいと思います。編集・執筆 / ARAAKEMAYU, AYUPY GOTO
● 欧文フォントとは ?
欧文フォントの基本
欧文フォントは、セリフ体・サンセリフ体の二つに分けることができます。
・セリフ体
セリフ体はイギリスの新聞の書体として作られたTimes New Romanに代表されるような、縦線が太く、文字にウロコのある書体です。セリフ体はこの中でも大まかに4つに分けることができます。
○オールドフェイス
セリフ部分がブラケット(三角形)になっているもの。伝統的なセリフ体を指します。○モダンフェイス
セリフ体がヘアライン(細い直線)になっているもの。近代的なセリフ体を指します。○トランディショナル
オールドフェイスとモダンフェイスの中間。○スラブセリフ
セリフが直線で文字のストロークとほぼ同じ幅のセリフ体を指します。
・サンセリフ体
サンセリフ体は線の太さが一様で、ウロコのないフォントをいいます。ちなみに、「セリフ」とは「うろこ」、「サン」とは「ない」を意味しています。
▼ 和文フォントについてはこちら
欧文フォントの種類とそれぞれの特徴
いくつかの欧文フォントをピックアップし、それぞれの特徴を紹介します。
▼ セリフ体
◇ Adobe Garamond(アドビ ガラモン)
オールドロマンス体の代表格といえるAdobe Garamond。線の太さや、かたちに高貴さと柔らかさがある欧文フォントです。AppleやAdobe Systemsのコーポレートフォントとしても利用されていたそうです。(AppleではGaramond、Adobe SystemsではAdobe Garamondを使用していたそうです。)
◇ Times New Roman(タイムズ ニュー ローマン)
イギリスのタイムズ紙が新聞用書体として開発されたフォントです。可読性に優れていて、見出しや本文によく使用されています。新聞で使われていたということもあり、非常に使いやすいフォントだと思います。
◇ Trajan (トレイジャン)
上品さと優雅さが感じられる、欧文フォントです。はらいの部分がとても美しいフォントです。映画タイトルやロゴでも使用されることが多く、映画タイタニックやチョコレートのGODIVAのロゴの基になっています。
◇ Didot (ディド)
セリフの線の細さと縦線の太さの対比が非常に美しい欧文フォントです。優美で、女性的な印象を受けます。女性ファッション誌などに使用され、VOGUEのロゴとしても有名です。
◇ Palatino (パラティノ)
縦横の線の太さがあまり変わらず、セリフが直線的で、美しさの中にもしっかりとした力強いかたちが特徴の欧文フォント。Palatinoはイタリック体も美しく、化粧品や広告などで使用されることがあります。
◇ Rockwell(ロックウェル)
セリフと縦の太さがほぼ同じの欧文フォント。今まで紹介したセリフ体の中と比べると、ポップさを感じるフォントになっています。
▼ サンセリフ体
◇ Helvetica (ヘルベチカ)
デザインを学ぶ人でこの書体を知らない人はいない……!というくらい、世界中でもっとも愛され使用されている、欧文フォントといっても過言ではないのでしょうか。見出しや本文どちらにも対応でき、非常に使いやすいフォントです。Panasonicやevianなど、多くのロゴとしても使われています。
◇ Futura (フーツラ)
サンセリフ体の中でも、幾何学的なかたちが特徴的な欧文フォント。ウェイトを変化させると印象が変化し、どこか愛らしく、かわいい欧文フォントです。ルイ・ヴィトンやフォルクスワーゲンなど、世界的に有名なロゴで使われています。
◇ Gill Sans (ギルサンズ)
デザイナーに人気の衰えない欧文フォント。サンセリフ体といったら堂々と固いイメージを持ちますが、このフォントにはどこか柔らかさを感じます。
◇ Avenir (アベニール)
Futuraと少し似た、幾何学的なかたちをした欧文フォント。しかし、Futuraと比べてみると、文字のかたちには安定感があり、暖かみのある印象を受けます。
◇ Century Gothic (センチュリーゴシック)
丸いかたちや、文字のふちのとんがりの対比が印象的な欧文フォント。aやcなど丸いかたちがかわいいフォントです。このフォントもFuturaと似ていると、よく言われていますが、文字の端などを比べてみると違いがわかります。
● 美大生に聞く!よく使うor好きな欧文フォント
今回はビビビット編集部の美大生に、よく使う好きな欧文フォントを聞いてみました!
Q1.あなたがよく使っているor好きな欧文フォントはなんですか?
Q2.なぜそのフォントを選んだのか、またどういうデザインの時に使っていますか?
上品で、かつお洒落な印象を兼ね備えている所が好きです。メッセージカードやパッケージのロゴを制作する際に使ったり、少し大人っぽいデザインをプラスしたい時にこのフォントを選びます。
Q1.あなたがよく使っているor好きな欧文フォントはなんですか?
Q2.なぜそのフォントを選んだのか、またどういうデザインの時に使っていますか?
授業でHelveticaについての映像を見てから、フォントにも長い歴史と時代に合わせた工夫があると知ってからです。画像に注目して欲しい場合や資料制作の際によく使用します。
Q1.あなたがよく使っているor好きな欧文フォントはなんですか?
Q2.なぜそのフォントを選んだのか、またどういうデザインの時に使っていますか?
とてもバランスのいいフォントなので、とりあえず英字はHelveticaをあててから考えます。ウェイトも豊富なのでイメージをつかむのにぴったりで使い勝手がいいです。
Q1.あなたがよく使っているor好きな欧文フォントはなんですか?
Q2.なぜそのフォントを選んだのか、またどういうデザインの時に使っていますか?
歴史あるフォントなので随所で見覚えのあるフォルムがレトロでもあり、近代的でもあり好きです。太さにも幅があり、使い分けることで印象がガラッと変わるので、色々なシーンで幅広く活用できるような気がします。
● さいごに
普段よく目にする、デザインの中に取り入れる欧文フォントがあったと思います。しかし、フォント一つ一つを比べてみると、似たようなフォントでも全く違う印象を受けます。是非、自分のデザインに落とし込むときは、一文字一文字のかたちにこだわってフォントを選定できると、作品もより魅了的なものになってくるのではないでしょうか。ここで紹介したのは、ほんの一部なので、フォントに興味のある方は、タイポグラフィーなどの知識を、より深めていけるといいですね。
(2017.3.16)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア