キラッと光を感じる!鉱石・宝石・金属の描き方

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世の中には光を感じる物体が多く存在しています。宝石や金属、ガラスなど、光を反射させたり屈折させたりすることで、質感を感じることができます。それは、立体として存在しているからこそ光の効果を得ることが出来るのですが、平面のイラストでも光を表現することができます。
そこで今回の記事では、光る物質の描き方について考えてみたいと思います。
編集・執筆 /YAMADA, AYUPY GOTO

●光の屈折と反射を、色で表す

光り物の絵を描くにあたって、まずその対象物の構造や質、他の物体に及ぼす効果を理解する必要があります。
例えば、ダイヤモンド。無色透明ですが、カットにより光の屈折面が増え、まばゆいきらめきが生まれます。そして、床に置いた場合は影が落ち、光も反射します。
このように物と物の関係性を理解しておくと、絵に描いたときに存在としての説得力が出て、リアリティが増します。

“透明色”の絵の具は存在しない

では透明な物を絵で表すにはどうすればいいのでしょうか?透明色の絵の具は世の中に存在しませんが、透明に見えるように構築されている色達は存在します。これは透明なものを写真に撮ったときと同じで、立体が2次元の世界に入ると、全ては絵の具として存在する色で構築されます。
光沢もこれと同じであり、絵の中でも光を受けたようにキラッとしたように“見えて”いるのです。

線と面と濃淡で表すデッサン

一方、色彩を使わず、鉛筆や木炭を使用して描くデッサンは、対象物を正確に描写する力で成り立つ画法です。
アートの基礎であるデッサンは、無彩色ですが濃淡と面と線の表現によって凄まじくリアルな描写をすることが出来ます。
先程も少し出ましたが、物と物の関係(落ちる影や光)や、質の作り方、そして光を感じることは無彩色であるからこそ、光の見え方が絵の中に空間を感じさせる大切な要素になってきます。
全体の濃淡を掴んだ後に描き込みを入れていくその過程は、カラーになっても同じです。全体の濃淡とハイライト(一番光が当たる部分)、反射光の感覚を掴めていれば光沢物や反射物も、平面上に表すことが可能であり、感覚が掴みやすいのではないでしょうか。

●具体的な描き方って……?

では早速、鉱石や金属類を描いてみたいと思います。
(CLIP STUDIO PAINTを使用)
こちらが今回使用するイラストの線画です。今回は線画がはっきりとした、デジタル感が強い塗りでご紹介します。
スプーンの金属、先端に付いたツヤッとした宝石、スプーンに掬われそうな鉱石。まだ中身が無いのでイメージしづらいですね。
それぞれ光沢や反射がある物質ですが、“らしく”見せるには、どのような描き分けをしていけばいいのかを考えてみます。

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金属部分

では、スプーンの金属部分を描いていきます。
まず、金属らしさをピックアップすると
・強いキラッと感がある
・明度差がある→映り込みによるもの
です。

●設定と下塗り
まず、光が当たる方向をざっくりと決めます。今回は左上にしました。
そして単色でベースとなる色で下塗りを完了させました。
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●映り込み
次に、金属の映り込みを表現します。
金属は周りのものを鏡のように映し込んでいるのですが、金属そのものの形容に沿って映り込むので、正確に何が映っているのかまで描かなくとも、金属らしさは充分に出ます。今回のスプーンで言えば、先端の丸い部分は湾曲し、柄の部分は縦に長く写り込みます。
この感覚がイマイチ分からない方は、実物を見ながら進めることを繰り返すと掴めてくるかと思います。

ベースの色よりもグッと明度の低い色を乗せていきます。ここで乗せる色は全体で一番暗い色になることを意識すると、金属らしい明度差が生まれます。
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2段階で映り込みをイメージして簡易的に描き込みました。乗算や焼き込みレイヤーに変換するのも◎ 調整は好みです。
このとき、ぼかしたり色同士を少々混色したりするとより自然になります。このときの明度差の幅によっても雰囲気が変わってきます。

●ハイライト
明度差が出たところで、次はキラッと光った一番明るい部分、ハイライトの描き込みです。
白で描き込みました。これも、感覚としてはダイレクトに光を受けている部分と、縁の部分に置いて上げる事でらしくなります。
ただし、ハイライトは描きすぎると他の部分を殺してしまうので、注意が必要です。
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ここまでで一旦金属の大まかな部分は完成です。

鉱石・宝石

次に、スプーンの柄の先の宝石と、鉱石に移ります。

ほぼ金属のときと同じですが、ここで変わってくるのは素材による反射の違いです。
宝石や鉱石は透明感があり、形容も様々で直線的な面の割れ方に特徴があります。
今回のような丸くつるっとしたフォルムの宝石は先程の金属と近く、曲線的で良いのですが、鉱石は天然物ですので直線的にランダムに面が割れたほうが、“らしさ”が出ます。

●明度差を作る
では、その違いを踏まえた上で、暗い色を置いてみます。
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鉱石にはパキパキとしたイメージで、宝石はつるんとしたイメージでランダムに描き込みました。

●光の屈折
暗い部分があっても、鉱石や宝石は透明感があるので、オーバーレイやスクリーン、発光などのレイヤーを用いて、更に層を重ねます。
これによって、光の屈折の重なりが簡易的にではありますが表現出来ます。
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通常レイヤー(左)からオーバーレイレイヤー(右)に変更。

●ハイライト
そしてハイライトです。
鉱石の方は、反射する面として考え、面積を取っていきます。このときに、明るく抜けた部分が多すぎると成り立たないので、バランスを見ての配置が重要です。
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★また、発光レイヤーを使用し、軽くエアブラシをかけました。偏光のような効果と反射光が簡単に出せます。

全体調整

●物と物が関わることによる効果
影や映り込みの描き込みについてです。
鉱石がスプーンに映り込むイメージで色を入れました。そうすることで、スプーンの上、空中に鉱石が存在することの説得力に繋がります。
また、全体の色味に合わせ、スプーンにも青味を加えました。
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●馴染ませる
線画の色を物質の色に馴染むよう、クリッピングマスクを使い調整しました。
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●雰囲気調整、加工
最後の仕上げとして、全体に上からオーバーレイをかけたり、スプレーを噴いたりしました。より光を感じるような効果が得られます。
光り物とオーバーレイの相性は良いので、この雰囲気が好みの方は使ってみて下さい。
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そして、全体の色味の微調整、色収差の効果をかけました。

★効果については、こちらの記事でご紹介していますので興味がある方は是非ご覧になって下さい。
イラスト加工でイメージを変える!様々なイラスト加工方法

完成!

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完成しました。
手数が少なく、かつ“らしさ”が見えるものを目指しました。
もちろん、ここから更に描き込むこともリアリティを求めることも可能ですが、
ポイントを抑えれば、それなりに性質を表現できることをお伝え出来ていれば幸いです。

★その他にも

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ほぼ同じ方法で制作したもの。
ツールや色の使い方、線画のアリなしなどの違いで雰囲気がガラッと変えることが出来ます。

今回詳しくご紹介したのは、ドローイング感やデジタル感が強めのテイストでした。
簡単にポイントをまとめると、

・ハイライトの隣合わせは濃い色を置く
・ざっくりと光の方向を決めたらランダムにハイライトを置く
・反射光、映り込みも意識する
・明るい色の宝石でも、明度の低い色を置く
・感覚になれないうちは、実物模写を練習する(色もスポイトで抜く)

これらを抑えておけば、それなりに“らしさ”が出てくるのではないでしょうか。
この他にも、もっとカットが規則的でパッキリしたものや、幾何学要素で作るものがあったり、色味を変えるだけでも全く違った仕上がりになります。今回ご紹介した描き方は一例ですので、ここから先はそれぞれ好みのテイストを突き詰めて頂ければと思います。

●さいごに

普段生活している中に、光沢を持つものは沢山潜んでいます。見慣れた家のスプーンも、お気に入りのジュエリーも、いざ描こうとすると難しかったりしますよね。今回はデッサン寄りの内容になりましたが、光の反射や映り込みなどを理解していれば、表現の幅が広がることには間違いないので、興味があればぜひチャレンジしてみて下さい。その手法を生かせるときがくるかもしれません。




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(2019/07/31更新)

(2017.3.17)

著者

山田実優

武蔵野美術大学でグラフィックデザインやパッケージデザイン、ブランディングデザインを主に勉強しています。 舞台鑑賞や洋服巡りが好きです。

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