学生だけで制作・発行しているフリーペーパーがあることを、皆さんはご存知ですか?実は、学生フリーペーパーは、日本全国で作られています。今回は、そんな学生フリーペーパーの面白さとともに、デザインが素敵なフリーペーパーをピックアップしてご紹介します。
編集・執筆 / Ayako Yamada, AYUPY GOTO
目次
- 1. 学生フリーペーパーのここが面白い!
- 2. デザインセンスが光る学生フリーペーパー
- 3. 学生フリーペーパーを比べてみた
- 4. 実際に手にとって読んでみよう
- 5. 最後に
1. 学生フリーペーパーのここが面白い!
フリーペーパーとは、無料で配布されている冊子のことです。駅や書店のマガジンラックに並んでいるものを一度は見たことがあるのではないでしょうか。これらは企業が発行しているものが多いですが、学生フリーペーパーは、学生が企画から取材・制作・発行までを行っています。
学生フリーペーパーの特徴は、その"自由さ"です。書店で販売される一般的な雑誌と違い、学生フリーペーパーは売り上げや批評などのしがらみがないため、編集部が伝えたいことをまっすぐ表現しています。一般誌ではできないような尖った企画やちょっとくだらないような企画も、全力で特集して誌面に載せられることが学生フリーペーパーの面白い点です。学生フリーペーパーは、大学やその専攻ごと、地域ごとなどで制作されています。それぞれに異なる学生たちの個性が誌面にあふれていることも、その魅力のひとつです。
2. デザインセンスが光る、学生フリーペーパー
学生フリーペーパーはどれも個性豊かでユニークなものばかり。今回はその中でも、"デザイン"に注目して、5つの学生フリーペーパーをご紹介したいと思います。
● 「RAW」 …… 多摩美術大学プロダクトデザイン専攻有志 発行
みなさまお久しぶりです
RAW最新号を発行しました!
先日のプロダクト専攻卒業作品展にも置いていただきました!
お手に取ってくださった方、ありがとうございます!
他にも2枚目の画像の場所にて設置・配布しております
まだの方はぜひご覧ください!フリーペーパーRAW18号
「価値と値段」 pic.twitter.com/pKEYtDwijj— フリーペーパーRAW (@RAW_freepaper) 2018年3月19日
多摩美術大学プロダクトデザイン専攻の学生有志が制作している「RAW」。毎号違った切り口から、プロダクトデザインの魅力を発信しています。シンプルで洗練されたレイアウトですが、写真の色みや文字の配色など、色の使い方が絶妙で、可愛らしく親しみやすいデザインとなっています。
RAW (ロウ)
創 刊:2010年
発行部数:2500部
設置場所:多摩美術大学を中心に全国の美術系大学、予備校、都内のギャラリー、ショップなど。
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● 「SHAKE ART!」 …… 関西美大生団体 発行
【最新号SA20.設置情報】
SHAKE ART! 最新号を京都精華大学の対峰館5階スタッフルーム前、食堂横1階に設置しました。ぜひお手にとってご覧ください!残りわずかですが前号のSHAKE ART!も設置しています! pic.twitter.com/EbHmKqW5lT— SHAKE ART! (@SHAKEART) 2017年12月6日
関西で美術を学ぶ学生が集まり制作している「SHAKE ART!」。関西の美大生の交流・発信の場として、学生作家の紹介や芸術に関わる情報を発信しています。毎号個性あふれる学生作家の作品が表紙に使用され、インパクト抜群です。デザインは遊び心があり、ページごとに工夫の凝らされた誌面が魅力です。
SHAKE ART! (シェイクアート!)
創 刊:2009年
発行部数:6000部
設置場所:京都・大阪を中心に、関西の大学、ギャラリー、書店など。
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● 「BACKPACKER」 …… 慶應義塾大学 学生団体S.A.L. 発行
【BACKPACKER 12号✈️】
BACKPACKERの最新12号が発行されました❗️今回のテーマは「商人の道しるべ」。トルコ、インド、中央アジア諸国などを特集しています。
全国のユースホステルや、成田空港の各ターミナルに設置しております。皆様にお手にとって頂ける事を楽しみにしております? pic.twitter.com/rLs13CB9Jc
— BACKPACKER (@BACKPACKER_free) 2018年5月14日
「旅に出たくなる」をコンセプトに、実際に学生たちが旅した様子を冊子として記録している「BACKPACKER」。その特徴は何と言っても、世界各地で撮影された写真の数々です。旅先の空気感がリアルに伝わる写真と文章、それらを最大限に生かしたシンプルなデザインで、フリーペーパーとは思えない上質な雑誌に仕上がっています。
BACKPACKER (バックパッカー)
創 刊:2012年
発行部数:5000部
設置場所:都内を中心に大学やショップ、ギャラリー、空港にも。
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● 「GMODE」 …… 富山大学芸術文化学部有志 発行
新入生のみなさんご入学おめでとうございます!??
フリーペーパーサークルGMODEでは、みなさんに私たちのことをもっと知ってもらうため、新入生号を製作しました?
新入生号の他に今までのバックナンバーも設置したのでぜひ手に取ってください!
数に限りがあるのでエントランスに急げ?♂️? pic.twitter.com/LGBNfqhNUh— GMODE (@GeibunMode) 2018年4月2日
富山大学芸術文化学部 (通称:芸文)の学生有志が制作している「GMODE」。美大ではない芸文らしさを追求し、発信しています。スタイリングにこだわり抜いたポートレートや、個性あふれるイラストなど、学生のこだわりが伝わります。キラキラ感あふれる素敵な表紙が目を引きますが、実は編集後記も毎号力作でユニークなので注目して読んでみてください。
GMODE (ジーモード)
創 刊:2013年
発行部数:1000部
設置場所:富山大学内中心
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● 「GRAPHPRESS」 …… 多摩美術大学グラフィックデザイン学科有志 発行
新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。
「GRAPHPRESS #28_愛 」発行しました!
デザイン棟・東学のマガジンラック、グラフィックデザイン学科研究室前のラックに設置しています。ぜひお手にとってご覧ください。 pic.twitter.com/9gsvoAzOj2— GRAPH PRESS (@GRAPHPRESS) 2018年4月6日
多摩美術大学グラフィックデザイン学科の有志で制作している「GRAPHPRESS」。在学生や卒業生の声を通して、読者である学生の意識を刺激することをコンセプトに活動しています。ページごとに特集した作家の作風に寄り添ったデザインになっていて、デザインする側の柔軟性や技量を感じます。異なるテイストのデザインでありながら、ひとつの冊子としてきちんとまとめられているのも興味深いです。
GRAPHPRESS (グラフプレス)
創 刊:2009年
発行部数:2000部
設置場所:多摩美術大学、都内美術予備校など
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3. 学生フリーペーパーを比べてみた
5つの媒体をご紹介して、学生フリーペーパーには様々な個性があることを知っていただけたのではないでしょうか。ここで、フリーペーパーの顔である表紙とロゴに注目して、その特徴や魅力をもっとわかりやすく掘り下げていきたいと思います!
表紙で比べてみた
● 「RAW」
サイズはA4と少し大きめです。表紙はメインのビジュアルと各号のテーマで、余白をたっぷりとったシンプルな構成。18号はデザインに合わせてロゴも崩してしまっているのが斬新で面白いですね。
● 「SHAKE ART!」
パッと目を惹く鮮やかな色づかいですね。毎号違う学生作品を使用し、雰囲気が異なるのが面白いところです。ロゴにはメインビジュアル内のアクセントカラーを用いているため、きちんとまとまった印象になっています。
● 「BACKPACKER」
こちらも少し大きめのサイズ。表紙は毎号写真が全面に使用されていて、異国の雰囲気が伝わります。表紙には企画内容も記載されています。ロゴの黒色が誌面の印象を引き締める役割をしています。
● 「GMODE」
毎号様々なシーンで撮影されたかわいい女の子が登場して、思わず手に取ってしまうこちらの表紙。最小限の文字情報で、ビジュアルを全面に魅せるすっきりとしたデザインです。
● 「GRAPHPRESS」
こちらも「GMODE」同様、最小限の文字情報のみの表紙。左下のテーマは縦に配置していたり、タイトル下に書かれた雑誌コンセプトの文字がとても小さかったりと、よりビジュアルをメインに魅せる表紙になっています。
ロゴで比べてみた
●「RAW」
かなりデフォルメしてデザインされた特徴的なロゴ。テーマに合わせて手書き風にアレンジしても、失わない"らしさ"があります。曲線と力線の組み合わせが、プロダクトっぽさも感じます。
●「SHAKE ART!」
この5つの中では一番シンプルなロゴ。しかしこのシンプルさこそが、毎号テイストの異なる絵柄でもマッチする、普遍的で優れたデザインと言えます。
●「BACKPACKER」
黒の太字でインパクトのあるロゴ。その名の通りバックパッカーがあしらわれた直球なデザインで、雑誌コンセプトがわかりやすく伝わります。
●「GMODE」
女性らしい細い線のロゴは、表紙の女の子たちと親和性抜群。”M”が少し傾いており、遊び心が感じられます。
●「GRAPHPRESS」
直線で構成された尖った印象のロゴ。学生の制作欲やライバル心を刺激したい、という雑誌コンセプトをとてもよく表しています。
4. 実際に手にとって読んでみよう
ここまで学生フリーペーパーをご紹介して、「実際に読んでみたい!」と思った方もいらっしゃるはず。雑誌の魅力は、実際に手にとって、読んで初めてわかるものです。学生フリーペーパーが集まる場所へ訪れ、誌面に込められた学生たちの熱量を感じてみましょう。
● 各大学のイベント (学園祭・オープンキャンパス)
ほとんどの学生フリーペーパーは、大学のキャンパス内を中心に配布されています。記事の中でもご紹介した媒体のSNSでは、配布場所がお知らせされていますので、ぜひ確認してみてください。さらに、多くのフリーペーパーは大学の学園祭やオープンキャンパスといったイベントに合わせて発行・配布されています。気になる学生フリーペーパーがある方は、その大学のイベントに足を運んで最新号をゲットしましょう!
● ONLY FREE PAPER [ 東京 / 名古屋 ]
※画像は移転前のヒガコプレイス店のもの。
東京と名古屋に店舗を構える、全国でも珍しいフリーペーパー専門店。日本各地のフリーペーパーが並ぶ店内には、学生フリーペーパーも数多くあり、無料で配布されています。ONLY FREE PAPERでは、フリーペーパーの定期購読やセレクトボックスの販売も行っています。
ONLY FREE PAPER TOKYO
住 所:東京都目黒区中目黒3-5-3 Space Utility TOKYO内
営業時間:13:00-21:00, 月曜・火曜定休(日曜・祝日のみ18:00まで)
ONLY FREE PAPER NAGOYA
住 所:愛知県名古屋市中村区椿町12-12 ホリエビル1F
営業時間:11:00-19:00 日曜定休(イベントや喫茶営業に準じて変更あり)
HP / SNS: HP , Twitter , Facebook
● 只本屋 [ 京都 ]
京都の東山五条に月末の2日間だけオープンする只本屋は、関西のフリーペーパーの中心的存在です。関西では「SHAKE ART!」をはじめ、クオリティの高い学生フリーペーパーが盛んに制作されています。只本屋には関西のクリエイティブに興味のある人々が集まり、フリーペーパーを楽しむだけでなく、人々の交流の場としても機能しています。
只本屋 (タダホンヤ)
住 所:京都府京都市東山区慈法院庵町594−1 常松庵
営業時間:11:00-18:00, 毎月末の土日のみ営業
HP / SNS: HP , Twitter , Facebook , Instagram
● Student Freepaper Forum
学生フリーペーパーを語る上で欠かせないのが、このStudent Freepaper Forum (SFF)です。2006年から毎年、「全国学生フリーペーパーの祭典」として、学生主催で開催されています。全国各地の学生フリーペーパーを手に取ることができる機会であるとともに、その制作者同士の交流が行われる貴重な場でもあります。毎年秋頃に開催されているので、ぜひ公式サイトやSNSなどで情報をチェックしてみてください。
Student Freepaper Forum (スチューデント フリーペーパー フォーラム)
開催時期:毎年11月下旬〜12月(予定)
HP / SNS: HP , Twitter
5. 最後に
今回ご紹介したフリーペーパーのほかにも、魅力的な学生フリーペーパーは全国にたくさんあります。筆者自身も学生団体でフリーペーパーを制作していたのですが、ひとつの雑誌を作るにはものすごい熱量と楽しさ、そして苦労が詰まっています。学生フリーペーパーを読むと、その一冊にかける学生たちの思いが伝わってきます。それは創作意欲への刺激や、自身の制作のヒントにもなることでしょう。ぜひ実際に手にとって、誌面にあふれる学生たちの個性やこだわりを感じてみてください。
(2018.12.12 更新)
(2018.5.21)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア