光を吸い込み透明の中に多彩な色を作り出す、繊細なガラス工芸に一度は魅了されたことがないでしょうか。ガラスの歴史は古く、日本にも江戸切子や琉球ガラスといった日本伝統のガラス工芸が存在します。現在では、日用品だけでなく美術品や現代アートの表現方法としても親しまれているガラス工芸。今回はそんな美しいガラスを作り出すガラス工芸家についてご紹介したいと思います。
編集・執筆 / ARAAKEMAYU, AYUPY GOTO
目次
- 1.ガラス工芸家とは
- 2.ガラス工芸家になるためには
- 3.現在活躍しているガラス工芸家
- 4.最後に
1. ガラス工芸家とは
ガラス工芸家
ガラス工芸家とは、ガラスを使って花瓶やコップ、お皿などの日用品から、小物、アート作品まで、さまざまなものを作り出す工芸家のことを言います。ガラス工芸家の中でも、高温のガラスを成形するホットワークと、成形され固体化したガラスに装飾を加えるコールドワークに分けられます。
【 ホットワーク 】
高温で柔らかい状態のガラスに息を吹き込み、宙吹きや型吹き、鋳造、ガラスの粉末を型の中で溶融し成型する、パート・ド・ヴェールなどの成形技法を用いて、ガラスを自分の思い描く形に変えることができます。
【 コールドワーク 】
ホットワークの工芸家が成形したガラスに、カット、彫刻、サンドブラスト、エナメリングなどの加飾技法をほどこして、作品を制作します。
2. ガラス工芸家になるためには
必要なスキル
ガラス工芸家になるために必要とされる資格は特にありませんが、なるためにはそれ相当の経験や知識が求められます。技法の習得には、個人によりますが5年から10年といった長期にわたる経験が必要とされ、その中で技術力や自分の表現を磨く必要があります。ガラス工芸家として活躍する人たちには、ガラス工芸品メーカーに就職して技術を学びメーカーの作家として活躍する人、メーカーで勤め後に独立し工房を持ち作家活動を行う人、工房に弟子入りして独立を目指し学ぶ人……などさまざまです。
学ぶための環境
ガラス工芸を学ぶために一番必要とされるのが、制作環境です。個人で勝手にガラスを制作していくというのは難しく、制作するためには設備の整ったガラス工房が必要になります。現在では、美術大学や専門学校で、ガラス工芸の諸技法を学べるための設備が揃っている学校もあります。
3. 現在活躍するガラス工芸作家
現在活躍しているガラス工芸作家を紹介していきたいと思います。
・ 高橋禎彦さん ( たかはし よしひこ )
柔らかいガラスを作り出す、高橋禎彦さん。ガラスといったら冷たくて硬いイメージを持ちますが、高橋さんの作り出すガラスは美しい丸みを特徴とし、しなやかで柔らかい印象を与えています。
『 高橋禎彦 | panorama 』 http://panorama-index.jp/takahashi_yoshihiko
・ 吉村桂子さん ( よしむら けいこ )
( http://glassstudiokatsura.com/works.html )まるでテキスタイルデザインのような模様が特徴のガラスを作り出す、吉村桂子さん。ベースの淡い色合いと模様の差し色の組み合わせがとても可愛らしいです。主に、コップやお皿、花瓶などの日用品をテーマに制作しています。つい揃えてしまいたくなるガラス作品です。
『 吉村桂子 | glass studio Katsura 』 http://glassstudiokatsura.com/
・ 竹中悠記さん ( たけなか ゆうき )
光を当てると、まるで宝石のように光る色合いが印象的なガラス作品。上記で紹介した「パート・ド・ヴェール」という技法を用いて、石膏の型から1から作っています。細かい模様と、一色一色綿密に考えられた色の配色が、よりこのガラスを魅力的に見せています。並べるとまるで宝石箱を眺めているようです。
『 竹中悠記 | ukiroosh. - So-net 』 http://www001.upp.so-net.ne.jp/ukiroosh/
・ 石田知史さん ( いしだ さとし )
ガラス表面に刻み込まれた、細かい線や模様、色使いが繊細で美しいガラス作品です。この作品を制作したのは石田知史さんです。石田知史さんの父亘さん、母征希さんもガラス工芸作家として活躍されています。描かれている模様は、まるで着物の柄のように細かく繊細で、華やかです。この作品も「パート・ド・ヴェール」という技法を用いて作られていて、上記の竹中さんの作品とはまた違ったガラスの美しさを魅せています。
『 ガラス工芸作家 石田知史・亘・征希 』 http://www.ishida-glass.com/
・ 荒川尚也さん ( あらかわ なおや )
ガラスの透明な質感がより際立ち、ガラス本来の美しさを表現する、荒川尚也さん。ガラスの中に閉じ込められた気泡がとても美しいです。京都の大自然の工房で作られるガラス作品は、どこか温かみを感じます。荒川さんの工房では、説明会や工房見学などが開催され、研修生やスタッフも募集されています。(※2016年現在の記載にて。また応募資格があるので要チェックです。)
『 荒川尚也 | 晴耕社ガラス工房 』 http://www.seikosha-glass.com/
・ 古川莉恵さん ( ふるかわ りえ )
ガラスに包み込まれた光が印象的なガラスのアクセサリー「matsurica」。このガラスのアクセサリーは、古川莉恵さんの作品です。一般的に光を反射させ魅せるガラス作品ですが、このアクセサリーはガラスの中に光りを閉じ込め、同じガラスとは思えない淡く柔らかな質感を作り出しています。
『 matsurica - glass 』 http://www.matsuricaglass.com/
4. 最後に
多くの人を魅了するガラス作品ですが、その美しいガラスを作り出すためには多くの知識と経験を積まなければなりません。職人になる意気込みでいかなければ、作家として活躍するのは厳しい世界になっています。しかし、現在ではガラスを専門として学ぶことができる、専門学校や美術大学が多くあります。ガラス工芸家を目指すクリエイターはそういったところで技術を学んでみるのも良いかもしれませんね。
(2016.11.5)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア