「インハウスデザイナー」という言葉、デザイナーを目指している学生なら一度は聞いたことあるのではないでしょうか。「インハウスデザイナー」とは、実際どんな仕事をしているのか?制作会社のデザイナーとの違いは何なのか?…実はわからないことが多いのではないでしょうか。今回はそんな、意外と知られていない「インハウスデザイナー」について紹介したいと思います。
編集・執筆 / HIRATA, AYUPY GOTO
イラスト / Miyagi Takumi
- インハウスデザイナーとは
- - インハウスデザイナーの仕事内容
- - 制作会社のデザイナーの仕事内容
- インハウスデザイナーのメリット
- インハウスデザイナーのいる会社
- 最後に
1.インハウスデザイナーとは?
デザイナーは、大きく以下の二種類に分けられます。
②制作会社(受託会社)のデザイナー
「インハウス」という言葉をビジネスの場面で使う時は、「企業内の、社内の、組織内で」というような意味合いになり、”ある業務を外注せず、社内で運営すること”も「インハウス」と呼ばれます。
クリエイティブ企業の場合、おもちゃ・化粧品・アプリ・文房具・自動車など、企業内で自社ブランドを開発・運営している企業を“インハウス“、そういった企業で働くデザイナーのことを”インハウスデザイナー”と言います。メーカー、企業によっては新卒のデザイナーを採用している企業もあります。
対する「制作会社」や「デザイン事務所」のデザイナーは、外部から受けた仕事のデザインを行います。
●インハウスデザイナーの仕事内容
★自社ブランドのデザイン
商品のデザインはもちろん、店頭SPツール、自社商品のパッケージ、商品デザイン、広告、イベントのノベルティやイベントの細かなアイテムデザインなど行うこともあります。
★デザイン以外の業務
インハウスデザイナーは、デザイン以外の業務を行うこともあります。例えば、スケジュールの調整、予算管理、運用、マーケティング等が挙げられます。
●制作会社のデザイナーの仕事内容
★デザインに関わる全ての業務
制作会社は「受託会社*」とも呼ばれ、様々な企業からお仕事を依頼されます。デザイナーはロゴ制作や名刺、ポスター・チラシ、キャラクター制作、販売促進製品のデザイン・アイディア立案、パッケージデザイン、WEBデザイン、CM制作、ライティング・取材・撮影など、デザイン制作に関わるほとんどの作業に携わります。
受託会社*……他の企業から依頼されて仕事を請け負う会社のことです。社員規模100人前後以上の大手企業ほど請け負う仕事の数、種類が多い傾向にあります。
2.インハウスデザイナーのメリット
インハウスデザイナーは自社の商品のみをデザインし、デザイン以外の業務もこなすということがわかりました。次に、インハウスデザイナーのメリットをいくつか紹介します。
●企画からデザインまで携われる
自社商品のサービスの企画からデザインまで携わることができます。例えば、グラフィックデザインの分野で自社商品を作り上げる場合は、どんなプロダクトにするのか、どういった広告で売るのか、新商品の企画やブランディングの部分から関わることができます。そもそものコンセプトや売り出し方を踏まえてデザインに取り掛かれるのは、デザイン業務を進める上でのやりがいにもつながります。デザインの仕事以外の、商品に関わるもの全てを見回し、企画から携わりたい人には魅力的に感じる仕事ではないでしょうか。
●いろんな分野について専門的に学べる
インハウスデザイナーは、違う職種の人とも社内で連携がとりやすいです。1つのサービス、商品を作り上げるには、デザイナーの他にエンジニア、プランナーやライターなど、さまざまな専門分野に特化した人と連携して作ります。例えば食品のパッケージデザインの場合、売り場で手にされやすいデザインはどんなものか、どうしたらより美味しそうに見えるか、デザインの相場はいくらなのか等の知識を得られます。デザイン以外の知識も得ることができると、事業やサービスを回すデザイナーとしての成長も期待できます。
●1つの商品・サービスの運用までできる
インハウスデザイナーは、運用にも関わることができます。1つの商品・サービスに長く携わることができるため、自分がつくった商品・サービスへの愛着も強くなるでしょう。UI/UXデザインの場合、1つのサービスを作り上げて終わり、ではなく直接ユーザーの声を聞き、その場で改善し、さらにはサービスをきっかけにイベントを開催するなど、媒体にとらわれずデザインに関わることができます。より深く入りこんだものづくりができます。
●労働時間
デザイン業務ではありますが、他の社員と同じの就業規則で働くため、大幅に労働時間が延長されるということはほとんどありません。そのため、家族を持っているデザイナーさんには働きやすい環境となっています。
3.インハウスデザイナーのいる会社
実際にインハウスデザイナーを雇っている会社は数多く存在します。
例えば、食品のパッケージデザインやプロモーションを行なっている味の素株式会社、化粧品の資生堂、飲料のサントリー、プロダクトデザインのトヨタ自動車、ソニーなどがあります。他にもいくつかご紹介するので、就職活動をする際、参考にしてみてください。
●オイシックスドット大地株式会社
■オイシックスドット大地株式会社の求人
食品配達のサービス事業Oisixを運営する会社です。「子どもに安心して食べさせられる食材」をコンセプトに添加物を極力使わない加工食品を扱っており、オンラインサイトでは食生活に役立つ情報を発信しています。デザイナーの仕事は、オーガニック野菜、生鮮食品を中心に扱うネットスーパーとしてのアプリやウェブ等のUIUXデザイン等。企画段階からプロジェクトに参加し、プロジェクトマネージャーやエンジニアと意見を交わし、技術やマーケティングの面からも関わることができます。食の領域や、UIUXデザインに興味を持っている人におすすめです。
●クックパッド株式会社
■クックパッド株式会社の求人
料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」を運営する会社です。インタビュー記事にもあるように、デザイナーは”サービスを使うことによってユーザーの生活がどう良くなるのか”という想定を大事にしているそうです。美しく画面を構成するだけでなく、ユーザーに寄り添った”ユーザーファースト”なデザインを手がけています。
●有限会社ズーティー
「テンション高めの女子をつくる」をキーワードに、オリジナルのレディース衣料品、雑貨などを企画・販売している神戸の会社です。20~30代女性向けのECサイト「イーザッカマニアストアーズ」「ファブリカ」の運営をしています。WEBデザイナーは、社内スタジオでの商品の撮影やECサイトの商品ページ・バナー制作、コピーライティング、ディレクションを行なっています。洋服、雑貨が好きな人におすすめです。
●いろは出版株式会社
■いろは出版株式会社の求人
雑貨ブランドのAIUEOやLAMPER、SURPRISE FACTORY。似顔絵のオーダーをすることのできるWORLD1。詩人「きむ」の言葉を生かした雑貨と書籍の制作をしているKIM COMPANYなど幅広いものづくり手がけている会社です。雑貨や書籍手がけるグラフィックデザイナー、WEBデザイナーが多く在籍しています。WEBデザイナーは自社のブランドサイトやECサイトなど、様々なWEBサイトのデザインを行います。
4.最後に
インハウスデザイナーの仕事は、制作会社のデザイナーと大きく異なることがわかっていただけたかと思います。デザインだけでなく、ディレクション、ブランディングに興味のある人、企画を考えることが好きな人、デザイン以外の知識をつけたい人、将来フリーランスのデザイナーとして独立したい人にはおすすめの職業かもしれません。求人情報を見る際は、デザイナーの種類にも注目してみてはいかがでしょうか?
(2018.5.7)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア