アナログイラストを支える!様々なツールを使ってみよう

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絵を描くということ。幼稚園児のとき、小学生のとき、中学生のとき、授業のなかでも組み込まれている“絵を描く”という行為は、成長していく上で誰もが一度は行ったことがあると思います。しかしその時、皆さんは一体どんなツールを使って制作していたでしょうか。近年はデジタルイラストが主流になってきていますが、アナログでの表現、ツールの進化も著しいです。そこで今回は、アナログイラストを制作する際に使用する様々な“ツール”に着目して考えてみたいと思います。

編集・執筆 /YAMADA, AYUPY GOTO

●イラストの定義とは

“ルーツ”と“ツール”の違い?

そもそもイラストは、日本画、油彩と何が違うのでしょうか。
分類分けするのは難しいのではないでしょうか。というのも、イラストに定義や概念というものは存在しておらず、日本画や油彩との区別は各々の感覚とイメージによってやわらかく分類されている程度です。
はっきりとした違いを挙げれるとするなら、作画に使用している道具、ツールの誕生と、発展してきたそれぞれの技法の差であるルーツの違いです。日本画は岩絵の具や水干絵の具、油彩は油絵の具。一方イラストと呼ばれるものは多種類あります。分類は難しくとも、カラーインクを使用して描かれた花鳥画は、日本画と呼べないという感覚は理解できる方が多いのではないでしょうか。

●アナログイラストの魅力は何か

アナログによるイラスト、さらに「絵を描く」という根源をたどっていけば、絵画の歴史はとても長いものです。古典的なものから派生したイラスト、そのアナログによる表現の基盤があったからこそ、デジタルイラストというツールが生まれたのだと考えます。
グラデーションひとつ作るにも、アナログでは慎重に丁寧に画材を駆使してグラデーションを作っていく作業が必要ですが、デジタルではボタン1つでパッと綺麗なグラデーションが表現出来てしまいます。私自身、初めてデジタルに触ったとき、あまりのお手軽さにアナログの手間ひまは何だったのか……と唖然としたことがあります。しかし、その手間隙にこそアナログイラストの魅力が詰まっているのです。

肉筆と画材ツール

実際に手を動かし、紙と対峙しながら延々と作業を続けていくアナログ。全てが肉筆であり、選び抜いた筆やペン、絵の具などを使い、失敗の気かない状態で描かれた絵というものは熱量と重厚感が、デジタルとは違ってくるのではないでしょうか。そして何と言ってもデジタルデータでは絶対に表現出来ない金や銀などの特殊な色を使った繊細な表現、触れることの出来るテクスチャ感、そして原画が存在すること、ここにアナログの強みがあるのではないかと考えます。

●アナログイラストの種類

アナログイラストと一言に言っても、その中には様々な種類が含まれています。
例えば、デッサンのようにリアルな描写や、線画がはっきりしているようなアニメ調もの、着彩をメインにしたものなど幅広いです。その際、使用するツールでも雰囲気がガラッと変わります。
色々な作品を挙げながら使われているツールを見ていきましょう。

昔のアニメーション!セル画


引用:http://unpaaou.blog77.fc2.com/blog-entry-18.html
現在では、多くのセル画がデジタルで表現されていますが、昔のアニメは「セル」と呼ばれる透明フィルムに、アニメカラーという絵の具で着彩した絵を使用して制作をしていました。それがデジタル移行後も、名称として使われているセル画というものです。アナログの肉筆で描かれたセル画を映像にする方法は、現在のデジタルよりも手数的に大変でしたが、セル画独特の雰囲気はデジタルではなかなか表現できない領域です。

アメリカンコミックス


引用:https://www.pinterest.ie/pin/827043919045220414/
デジタル作品ももちろんありますが、アナログ作品も多いです。こちらの作品は着彩にコピックというアルコールインクのカラーペンを主要に使用されてます。DCコミックス等のアメコミイラストはアナログでの表現の幅を広げようという姿勢が今もなお強いです。黒のベタ塗り部分はマッキー等の油性インキペンを使うこともあります。プロでも身近な画材を使っていることがあります。特に海外のアメコミ作家は、品質の高い日本製のツールを愛用している方が多いです。

繊細な表現と変わった技法

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引用:https://www.koshmart.com/jp/the-arts-dance-17609
引用:http://blog.goo.ne.jp/toriton17/e/2224fbb2ef55eb7c15736283b1e57e91
アルフォンス・ミュシャの作品の多くはリトグラフと呼ばれる版画の技法が使われています。なので、イラストというよりは版画の類いに近いのかもしれませんが、版画のもととなるイラストは手描きで、習作(左)などは鉛筆や絵の具で描かれたものが存在します。

●よく使われているツール

では次に、一般的によく使われているツールをピックアップして見ようと思います。
イラストに特化したツールということで、線画に使うもの、着彩に使うものと分けました。

※あくまでひとつの意見なので、気になったものは画材店などで実際に試してみてからの購入をオススメします!

★線画編


▼鉛筆

手軽度★★★★★
難易度★★☆☆☆
自由度★★★★☆

用途がなんであれ、使用する機会はなにかとある鉛筆。極端な話、紙と鉛筆さえあれば絵は描けます。しかし身近で手軽な鉛筆、実は様々な種類があり、硬度によって濃さが変わってきます。
硬度が高い順に並べると、
10B~B,F,HB,H=10H となります。
濃度だけではなく、紙への定着感も違ってくるので、使い分けながら描くととてもリアルな作品が描けたりします。
ペン入れをする前の下書きにも◯、水彩絵の具との相性も◯。

メーカーによっても書き心地が違う!定番の鉛筆メーカー

・三菱鉛筆 ハイユニ
※ユニとハイユニは違うので注意。ハイユニには頭に金のラインが入っています。
クリエイティブな作業向けに作られているので、通常のユニよりもタッチが滑らかです。
全体的にステッドラーよりも色が乗るイメージ。特にB系の色乗りが良いです。

・ステッドラー
青いボディが特徴のステッドラー。
製図等のシャープな作業にも向いています。
ユニとはまた違った感覚なのでこれは好みになりますが、ステッドラーファンは多いです。


▼つけペン

手軽度★★★☆☆
難易度★★★★☆
自由度★★★☆☆

漫画を描く際によく使われるペン。ペン先の形がちがうGペン丸ペンなどがあります。
線の強弱が出やすく、上手く使えば表現豊な線を描く事ができます。


▼ミリペン

手軽度★★★★☆
難易度★★★☆☆
自由度★★☆☆☆

線画やペン画を描く際に使用することが多いミリペン。イラストのみならず、製図にも使える高精度のものが多いです。太さが均一な線が引けます。

豊富なメーカーの中からお好みのものを

・コピック マルチライナー
太さは0.03〜1.0mmと幅広く取り扱っています。
黒だけでなく、セピアやオリーブなどのカラー展開が8色も。

・アイシー コミックライナー
極細0.05mmが人気で、耐水性、アルコールインクにもにじまない仕上がりに。
さらにデュアルコアタイプは筆リブとミリペンの2種が上下にセットされているので幅広い表現に使用できます。

・パイロット ドローイングペン
 0.05~0.8mm、4色展開。水性、油性があります。
水性でも乾くと耐水に。インキ濃度、速乾性に優れています。

・サクラ ピグマグラフィック
0.05~0.8mm、くろ・あか・あお・みどりの4色展開。
入手し易さがあり、こちらも耐水、耐光性があります。


▼ボールペン

手軽度★★★★★
難易度★★☆☆☆
自由度★☆☆☆☆

安価で手に入り、馴染み深いものが多いボールペン。しかし、水性が多いので、重ね塗りや着彩をする際は良く考えて使うことをおすすめします。また、線幅の応用が利きづらいです。

お馴染みのものも、多くつかわれています。

・ユニボールシグノ
つるっさらっとした滑らかな書き味が特徴。水性なのですが顔料インクなので耐水性があります。過度な着彩でなければ、にじまず耐えられるかもしれません。
※しかしそれぞれ相性があるので、実際に試してみてから本番に望んでみてください。

・ハイテックC
どちらかというと、ミリペンに近い感触です。イラスト用でなくても、使ったことのある方は多いのではないでしょうか。こちらはカラーバリエーションが豊富で0.25mmからあり、安価で手に入ります。しかし、細くなればなるほどインクの出が気まぐれに悪くなる印象があるので、常にフル稼働というのは難しいかもしれません。

・ジェットストリーム
油性のボールペンで、するするとした書き心地が気持ちがいいです。ボールペン特有のインク溜まりがたまにできてしまいますが、許容範囲。0.38〜1.0mmの展開です。

最先端!身の回りのものから色を吸い取れるペン

なんと、身の回りにあるものから、色を探知し、そのままの色を発色することのできるペン、the scribble penが近々発売されます。RGBセンサーを搭載し、読み取った色をプリンターと同じ原理でペン先から出すことができるという、夢の様なペンですね。再現できる色は16000色にも!

the scribble pen

ぜひ一度試してみたいものです。

★着彩編


▼コピックシリーズ

手軽度★★★☆☆
難易度★★★★☆
自由度★★★★☆
発色 ★★★★★

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引用:http://copic.jp
アナログイラストのカラーマーカーといえばこれ!コピックシリーズです。
アルコールインクを使用しているので速乾性が高く、ムラの無い均一な色塗りができる品。
混色やぼかしもできるので、表現の幅は広がります。色の種類も358色と豊富です。
ただし、慣れを要するので初めは難しく感じるかもしれません。

☆気になる!カメレオンペン


一般的にはまだ浸透していませんが、最近日本でも発売された商品です。このペンの特徴としては、名前の通り、カメレオンのようなグラデーションを簡単に作れるということ。感覚としてはコピックに近いです。
透明インクに接着させる時間によってグラデーションの幅が変わってきます。アートワーク用に作られたペンなので、イラストの着彩に向いています。

chameleon pens


▼透明水彩絵の具

手軽度★★★☆☆
難易度★★★☆☆
自由度★★★☆☆
発色 ★★★☆☆


引用:https://holbein-shop.com/?mode=grp&gid=1397794
お馴染みの水彩絵の具。なんといっても水彩絵の具特有の透明感ある表現が出来るツールとして人気を得ています。
固形タイプとチューブ状の液体タイプがあります。筆先につけたり、水で溶かしたりぼかしたり。アナログならではの効果をふんだんに発揮できるツールです。綺麗な透明感が出せるようになるまでコツを掴む必要がありますが、慣れてくればお好みの色を出す事ができます。

日本の定番メーカー

・ホルベイン
チューブタイプの水彩絵の具。108色とカラーバリエーションに富んでおり、プロアマ関係なく多くの人に愛されています。色んな色を試したい!という場合は低価格でトライアルシートというものがあり、全108色を少量ですが試すことができます。

・ターナー
全54色展開。発色が良く、比較的低コストで購入出来ます。
色の美しさにこだわり、混色をなるべく避けた単一顔料です。

・クサカベ
全90色展開。淡い色味や渋い色味が多い反面、きつめの蛍光色もあります。
乾くとカチカチに固まってしまうので紙との相性やぬりの厚さによっては剥がれることも……。


▼カラーインク

手軽度★★☆☆☆
難易度★★★★☆
自由度★★☆☆☆
発色 ★★★★☆


引用:https://wintwins.exblog.jp/iv/detail/?s=14429232&i=201201%2F15%2F98%2Fa0102098_17354853.jpg

水性のカラーインク。1色から販売していますが、単価が高めなので手を出しにくいかもしれません。使い方は水彩と同じです。発色がとても良く、水彩を使い慣れていればこちらも問題なく使えます。


▼パステル

手軽度★★☆☆☆
難易度★★★☆☆
自由度★★☆☆☆
発色 ★★☆☆☆

スクリーンショット 2016-09-04 0.15.08
引用:http://www.pont-des-arts.jp/item/soft_explain.html

パステルとは、乾燥させた顔料を粉末状にし粘着材で固めた画材のことを指すので、黒板で使うチョーク、クレヨン、クーピー、色鉛筆も含みます。
しかしパステル画と呼ばれるものはソフトパステルというものを使用する場合が多いです。
感覚としてチョークに近く、クレヨンより定着感はありませんが紙に粗めに定着します。指でぼかしたり筆でこすったり、パフに乗せて叩いたり。ふわっとした表現が可能です。
他にも油性の棒状油絵の具のようなオイルパステル、ソフトパステルよりも固めなハードパステルなどがあります。

●自分に合ったツールの使い方

画材と絵柄の相性や、完成をどのような雰囲気に持っていきたいかなど様々な要素に合わせて、上記で紹介したツールを選択して使っていくと、自身の“らしさ”というものが掴めてくるのではないでしょうか。
色での印象はもちろん、素材としての考え方、テクスチャ感もアナログでは存分に生かすことが出来るので、目指す方向性でツールも選択していくと、よりらしくなっていくかと思います。
また、手当たり次第に色々試してみるのも1つの手ですね。自身の作風に合う合わないはもちろん、使い心地やツールとの相性もまた人それぞれですので、自分にあったツールで思い思いの作品を創作できたら良いと思います。

●さいごに

近年はデジタルが主流であり、アナログで絵を描く人の人口は確実に減少しています。もちろん、これが悪いことだというわけではなく、デジタルにはデジタルの良さが、アナログにはアナログの良さが存在します。双方それぞれにいいところがあって、出来ないことがある。その上に、人それぞれのやり方、ツールの使い方によって様々な種類の作品が誕生していきます。自分に最適な方法やさらに発展させる方法を発見するための手段として、まだ使った事のないツールをこの機に一度試してみるのもいいかもしれませんね。その新しい挑戦が何かの発見に繋がれば良いと思います。

(2019.07.19更新)

(2016.9.4)

著者

山田実優

武蔵野美術大学でグラフィックデザインやパッケージデザイン、ブランディングデザインを主に勉強しています。 舞台鑑賞や洋服巡りが好きです。

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