この想い、届けたい。手書き文字が生きる場面とデザインへの取り入れ方

近年、キャッチコピーが手書きで書かれた広告をよく見かけます。どこか懐かしく温かい感じや、若々しさやポップな雰囲気など、その字体によっても受ける印象はさまざま。
筆者(くぐつ)もよく手書き文字を取り入れたデザインをしますが、思い通りにデザインできるようになるまでには難しさを感じることもありました。この記事では、手書き文字がもたらす効果と、どのようなメッセージのデザインで使うのが効果的なのかを考えてみます。編集・執筆 / MAYU KUGUTSU,YOSHIKO INOUE
写真 / 葵,MAYU KUGUTSU

もくじ

  • ● 手書き文字を取り入れた広告
  • ● 手書き文字がもたらす効果
  • ● 手書き文字をデザインに取り入れる方法
  • ● 筆者の実例紹介
  • ● 最後に

● 手書き文字を取り入れた広告

まず、手書き文字が印象的な広告をいくつか挙げてみます。その文字から受ける印象はどのようなものでしょうか。
 

企業広告『パイロット』

 

・ 手書き文字がもたらす印象
 
優しく力強い文字が印象的で、濃淡や強弱で味が出ている。コピーの内容や写真から、男性が激励している様子が読み取れる。

画像引用 | https://www.pilot.co.jp/ad/corporate/paper25.html

 

映画『愛がなんだ』

 

・ 手書き文字がもたらす印象
 
字間がゆったりしていて、漢字と平仮名で大きさに差がある。恋心の儚さが表現されている。

画像引用 | http://aigananda.com/

 

下着ブランド『bijorie』


・ 手書き文字がもたらす印象
 
細めの字体で丁寧な筆圧。文字を左に流すことで、風を感じることができる。
 

栄養食品『カロリーメイト』

 

・ 手書き文字がもたらす印象
 
丸く優しい文字で愛くるしい。「見守ってる」というコピーやグラフィックとの相性が良い、包み込むような印象の字体。

画像引用 | https://www.otsuka.co.jp/adv/cmt/graphic08.html

 
 

● 手書き文字がもたらす効果

①メッセージ性が高い
手書き=手間がかかっている、丁寧な印象を受けませんか?先ほど出した作例を見ても、メッセージがダイレクトに伝わってきますよね。
手書き文字のパワーについて、アナログの価値について心理科学・脳科学的アプローチで研究を行っている「アナログ価値研究会」は、実証実験をもとに、このような意見を発信しています。

手書きの文字はタイプされた文字に比べて「思いが込められている」というポジティブな印象を読み手に与えうるということがわかった。
引用 https://netshop.impress.co.jp/node/4517

手書き文字は「メッセージ性が高い」ということは、科学的にも説明できるようです。

 
②親しみやすい
ノートに数式を書いて勉強したり、手紙を書いたり・書かれたり。メールや印刷物が一般的な今日ですが、多くの人が「手書きの文字」を使いながら成長してきました。文字を書く機会が減った大人こそ、手書き文字を見て懐かしさや親しみやすさを覚える人も多いようです。
前述した作例でも、「友人への手紙」モチーフや「見守っている」というメッセージの訴求グラフィックなど、見た人に親しみを感じさせるデザインがありましたね。
また、手書き文字を使ったデザインは、よく写真と一緒に組まれています。メッセージを発信している人や物の存在と手書き文字が合わさると、より親しみやすく、イメージしやすい印象になるようです。

 

 
③女性の心にアピールしやすい
化粧品や脱毛の広告、女性誌など、女性向けのコンテンツでは手書き文字を取り入れたデザインをよく見かけます。手紙交換やプリクラの落書き、交換日記など、特に若年層の間では手書き文字を使ったカルチャーが定着しているように思えます。ティーン誌では「かわいい文字の書き方」特集が組まれていることも。
こういった理由から、手書き文字を使ったデザインは女性向けコンテンツで使われやすいのかもしれません。
 
④個性を表現しやすい
既製のフォントと違い、手書き文字は唯一無二の文字です。誰一人として、筆跡が全く一緒になることはありません。そのため、デザインに特別感が生まれ、個性が出ます。
 

手書き文字のグラフィックの特徴を考えると、以上のような特徴が見えてきました。これを踏まえ、デザインで以下のようなメッセージを伝えたいとき、手書き文字を取り入れてみてはどうでしょうか。

・相手の心に訴えかける、強いメッセージを伝えたいとき
・感傷的な雰囲気を出したいとき
・個性的な表現にしたいとき
・女性に向けて訴求したいとき
・家庭的な温もりを出したいとき

● 手書き文字をデザインに取り入れる方法

①紙に書いてスキャンする
紙に直接書くことで、筆圧や筆跡の個性がそのまま残り、もっとも手書きの味が出ます。スキャン後、Photoshopで細かな処理が必要という難点はありますが、本物のペンや鉛筆、筆などで書いた独特の字は、デジタルでは真似しきれません。

 

②Photoshopを使いペンタブで書く

Photoshopのブラシツールを使い、ペンタブで書きます。ペンタブに慣れていれば不自由なく書けるでしょう。Illustratorへのデータ取り込みがどの方法よりも早く、とても楽です。

▼Photoshopのブラシツールの使い方について詳しく知りたい方はこの記事をチェック!
→Photoshopでペン入れできるなめらかな線を描く方法

 

③iPadとApple Pencilで書く
iPadにペーパーライクフィルムを貼れば、まるで本物の紙に書いているかのような描き心地になります。Apple Pencilの滑りがちょうどよくなり、とても書きやすいです。使用しているパソコンがmacならAirdropで転送も楽々。文字を書くアプリは無料のものから有料のものまでさまざまですが、筆者は「Procreate」という有料ソフトを使用しています。

● 筆者の実例紹介

既製フォントによるコピーと手書き文字で書いたコピーでは、どのくらい違いがあるのでしょうか。同じ写真とコピーを使って比較してみます。

 
● 既製フォントver.


● 手書き文字ver.

 
文字の配置は一緒ですが、手書きにするだけで印象がガラリと変わりました。手書きの方がより伝えたいメッセージが伝わったように感じます。先ほど手書き文字が生きる場面の例として、女性に向けて訴求したいときと説明しましたが、男性が主役でも手書き文字を生かすことは可能です。少し力強さを意識し、芯のあるイメージで文字を書くことで、男性の内なる強い気持ちを伝えられるよう意識しました。意図しているメッセージは何かを感じ取り、気持ちを込めて書けば、より印象的な文字を書くことができると思います。

● 最後に

手書き文字の効果はとても大きいです。日常生活においても、丁寧な文字で書かれた手紙をもらったり、コーヒーショップで手書きのメッセージが書かれたカップをもらうととても嬉しくなりますよね。しかしデザインに取り入れるとなると、手書き文字が映えるデザインとそうでないものがあります。まずは街の広告物や商品を観察して、どんなデザインに合うか考えてみましょう。手書き文字を効果的に活用し、人の心を動かすグラフィックデザインを制作したいですね!

▼合わせて読みたい
→美しく文字を魅せる技法「カリグラフィー」とは?

 
 

(2019.8.27)
mayu kugutsu

著者紹介

くぐつまゆmayu kugutsu

東京デザイン専門学校グラフィックデザイン科所属。 お笑いと深夜ラジオが大好き。 毎日大きなトマトを2個ずつ食べています。 Twitter
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