食べれるアート、魅せるスイーツ。アイシングクッキーのデザイン

icing

世の中には美味しく美しいスイーツがたくさん存在しています。フルーツがたっぷり乗った宝石のようなタルトや、深みのある茶色にツヤッとしたフォルムのチョコレートなど、見た目も味も楽しめる工夫が散りばめられたスイーツには心が踊ります。その中でも、ひときわダイレクトにアートの魅力が伝わってくるスイーツ、“アイシングクッキー”をご存知でしょうか。クッキーにカラフルな砂糖で装飾を施したもので、近年話題になりました。今回はアート×スイーツという観点から、アイシングクッキーの世界に注目してみたいと思います。
編集・執筆 /YAMADA, AYUPY GOTO

●アイシングって?

アイシングクッキーに使用されるアイシングとは、砂糖に卵白を混ぜたものです。
ペースト状になっているものが、半日から1日で固まります。

アイシングの発祥

アイシングは18世紀イギリスで誕生しました。芸術が盛んであり砂糖が高級品だった当時、王室でケーキにアイシングでデコレーションしたことから「ロイヤルアイシング」と呼ばれ、王室のスイーツとして親しまれていたようです。
現在“アイシング”は、砂糖の衣がけという意味で使用されていますが、語源は、固まる前のツヤッとした質感が“まるで色のついた氷のようだ”ということから、アイシング(icing)と呼ばれるようになったそうです。
当時、王宮で人物や動物などを表現して人々を楽しませていたアイシングは、芸術として見て楽しむためのスイーツとして誕生したことが伺えますね。

王室発のスイーツが一般にも流行し、現在のアイシングクッキーにまで発展してきたというわけです。
現在におけるアイシングクッキーに求められていることも、昔と変わらず見て楽しめる点だと想います。

●アイシングクッキーは初心者でも作れる?

アイシングクッキーは、初心者でも簡単なデザインであれば作ることができるようです。
インターネットや本で少し調べれば、レシピが沢山出てきます。
しかし、ある程度技法もマスターして作れるようになってからは、その先が難しいと感じるところ。

技術のその先とは……

それは、デザインです。デザイン性がダイレクトに評価を左右するこのスイーツは、いくら仕上げを綺麗にできる技量があっても、表現の中身であるデザイン部分が平凡であれば、他のクッキーに埋もれてしまいます。
思い描いたデザインを表現する高度なテクニックに加え、デザイン知識、センス、オリジナリティが必要で、これはアイシングクッキーに限った話ではなく、デザインをしてモノを生み出す上で共通のことなのではないかと感じます。
普通のスイーツでは、もし味と見た目が天秤に掛けられたとき、(もちろん両方大切で切り捨てられない項目ではありますが)味に傾くことが多いと思います。その反面、アイシングは見た目に比重がかかるのではないかと感じます。それはやはり、ただのクッキーではなく、アイシングクッキーである理由がそこにあるからではないでしょうか。

●日本のアイシングクッキーデザイナー

高い技術とセンスを兼ね備えた日本のアイシングクッキーデザイナーの方々をご紹介したいと思います。
ほんとに食べられるの!?、食べるのが勿体ない!と思う様な、クオリティの高い作品ばかりです。

 

KUNIKAさん

profile
1989年生まれ。マンダリンオリエンタル東京でパティシエとして修行したのち、スイーツアーティストとして独立。撮影・展示用のシュガーケーキや生ケーキ、アイシングクッキー、オブジェや衣装製作、イラスト、ウェディングコーディネート、アパレルブランドやファッションモデルとのコラボレーションなど、多方面にわたり活動中。
自身の感性を通してスイーツをアートに落とし込み、新たなジャンルを広げている。

http://kunimilky.blogspot.jp/p/profile.html

ご自身の世界観を表現し、アートとしてのスイーツを確立しています。KUNIKAさんのフィルターを通して生まれた作品はオリジナリティに溢れ、その夢のような世界に夢中になるファンは世界中に沢山います。アイシングクッキーのみならず多岐にわたりご活躍されおり、個展や書籍発売、ブランドとのコラボレーションも行っており、沢山の活躍で注目されています。

 

KUNIKAさん(@_kunika_)が投稿した写真

KUNIKAさん(@_kunika_)が投稿した写真

KUNIKAさん(@_kunika_)が投稿した写真

 

夏山 孟浩さん (cookieboy)

profile
1984年、京都生まれ。
京都精華大学芸術学部テキスタイルデザインコース卒。
高校時代よりテキスタイルデザイン、大学でシルクスクリーンを学び、上京。
京都で開催したグループ展”La Pomme”にて期間限定のファッションブランドを立ち上げ企画、制作販売する。靴ブランド「VERO TWIQO」、ネクタイ屋「giraffe」のエキシビションやパーティー会場にて、cookieboyとしての活動を始める。恵比寿の天然酵母を主体としたパン屋での修行、酵母に関する研究を重ねる。
現在、様々な企画とコラボレーションを続けながら活動中。

http://cookieboy.net/about/

リアリティとイラスト感をバランスよく取り入れたポップな作品が沢山。大学ではテキスタイルデザインを学び、様々な経験を経てアイシングクッキーデザイナーになられたようです。豊富な知識と経験、洗練されたセンスで美しい作品が並びます。
アイシングクッキーの作品をさらに二次加工としてポーチやバックの柄として扱ったりと、表現の領域がとても広いです。

 

COOKIEBOYさん(@_cookieboy_)が投稿した写真

COOKIEBOYさん(@_cookieboy_)が投稿した写真

 

森 ゆきこさん (ROSEY)

profile
調理/製菓コースで定評のあるロンドンのWESTMINSTER KINGSWAY COLLEGE(ウエストミンスターキングスウェイ・カレッジ)と、シュガークラフトの名門BROOKLANADS COLLEGE(ブルックランズ・カレッジ)にてケーキデコレーションを学ぶ。 英国内外で活躍するケーキデザイナーPEGGY PORSCHEN(ペギー・ポーション)のケーキスタジオで修行。
現在、東京・渋谷にてアイシングクッキー/シュガーケーキ・デコレーションのスクールを主宰。

http://www.roseysugar.com/about/

落ち着いた色合いとキュートなモチーフで柔らかな印象を受けつつ、繊細な装飾で華やかさが加わった素敵な作品たち。女性的な優しさを感じる作風に心ときめく方も多いのではないでしょうか。

 

 

猿渡 由布子さん (Sunbaked Sweets)

profile
飲食業界を経て、現在はアイシングクッキー教室を開講。
講師として活動する傍ら、アパレルブランドのパーティ用クッキー制作・広告素材としてのクッキー提供等を行う。
話題性や拡散力に役立つ、記憶に残るアイテム作りを通してパーソナルブランディングの重要性をお伝えし教室開講を目指す方へのディレクションなども手掛ける。2015年 豊島区にアトリエをオープン。

http://sunbaked-sweets.com/concept.html

まるで子ども部屋のおもちゃ箱をひっくり返したような、ポップでキュートな作品の数々。質感を味方にしたような柔らかな色合いとフォルムで優しい気持ちになります。複雑な構造ではありませんが、高い技術で丁寧に作られています。

 

 

松比良 明奈さん (JILL’s)

profile
Sugar Artist
イギリスBrooklands Collegeにてシュガークラフトを学ぶ
その後再渡英してロンドンにあるPeggy Porschenのケーキスタジオで修行
2011年初夏、帰国

http://www.sugar-collection.com/page3.html

高い技術によって生み出された、かわいさと洗練さを兼ね備えた作品の数々。ガーリーなモチーフはチープになることなくそれぞれが持つ品格の魅力を放っています。
キラキラとしたラメやアラザンを使うことで、アイシングとはまた違った素材感が出て表現の幅が広がり、表情がとても豊かな作品です。

 

Brooch Cookies

 

技術の高さはもちろん、その先であるデザインの部分によって作風が大きく変わってくることが感じ取れたのではないかと思います。それぞれの方それぞれに色合いやモチーフの使い方、アイシングを使っての表現の仕方がありました。
アイシングクッキーのデザイン性の重要さを主張してきましたが、スイーツを作る際にももちろんデザインスケッチや構想などのデザイン業務は行われます。美しいケーキやチョコレートがあるのも、そういった行程を踏んでいるからです。
しかし、そういった美しく美味しいケーキやチョコレートに比べ、アイシングクッキーは、施された装飾そのもので楽しんでもらうことを目的としているので、クッキーそのものがアートと同等であり、その分表現に自由があると感じます。(アイシングのように見た目を重視したスイーツも沢山あります)
今回ご紹介したアーティストの方々は、見ることを楽しむスイーツとしての在り方を存分に生かしていると感じました。
ここにご紹介した作品意外にも、沢山の作品を手がけてらっしゃるので、是非インスタやポートフォリオサイト等をチェックしてみて下さい!

●さいごに

想像以上のアイシングクッキーのアートに圧巻され、食べ物であることを忘れるほど美しい作品の数々でした。食べることの幸せと、美しいアート作品を見る・持つことの幸せが掛け合わさったことにより、多幸感をたくさん感じるアイテム。興味があれば是非、色々なアイシングクッキーを見て、持って、食べて、さらには作ってみるのも良いかもしれませんね。新しい自分の才能が開けるかもしれません。

(2016.12.23)
Yamada Miyu

著者紹介

山田実優Yamada Miyu

武蔵野美術大学でグラフィックデザインやパッケージデザイン、ブランディングデザインを主に勉強しています。 舞台鑑賞や洋服巡りが好きです。
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