仕掛け人は一人の美大生。8専攻、32名のポートフォリオを集めた”カナコレ”に行ってきた

20472392_1095756943859030_589875848_o

2017年7月10日(月)〜23日(日)までの2週間、石川県のアートベース石引にて、金沢美術工芸大学4年生によるポートフォリオの展示会”カナコレ”が開催されました。来場者延べ700名となった展示会の仕掛け人は、一人の美大生。
一体”カナコレ”はどんな展示会だったのか、ビビビットがレポートします!
編集・執筆 / YOSHIKO INOUE, AYUPY GOTO

● 7月上旬、Twitterでこんな情報をキャッチ!


金沢美術工芸大学といえば、アニメ監督の細田守氏やゲームクリエイターの宮本茂氏、映像作家の井上涼氏、漫画家の東村アキコ氏などが卒業した名門の美術大学。石川県に所在する、日本でも数少ない公立美術大学です。ユニークな仮装で盛り上がる卒業式をニュースで見たことがある……という方も多いのでは?

地域や企業と連携した活動も多く、ビビビット社も、「TANGENT.Kanazawa」を始めとした学生団体や学校と、いろんな取り組み*1を一緒させていただいています。
もっと金美生の作品を知りたい!どんな学生がいるのか知りたい!という思いを胸に、”カナコレ”へ行ってきました!

 
*1……学生団体TANGENT.Kanazawaさんとレイアウト講座を実施しました。

 

● 会場に到着!商店街に突如現れるアートギャラリーです

fullsizerender-5
カナコレの会場は、金沢美術工芸大学最寄りのバス停からすぐの ”アートベース石引”。ここは、金沢美術工芸大学が所有するアートギャラリーで、金美生であれば無料でレンタルできるそうです。

● さっそくギャラリーへ!主催者の東郷さんがお出迎え

fullsizerender-17-min
今回の展示会は、環境デザイン専攻4年生の東郷りんさんが一人で企画・主催したもの。この日も、東郷さんが受付で来場者を迎えていました。
”カナコレ”の出展者は各専攻4名ずつの計32名。前期と後期に分かれ、一会期16名の展示となりました。
fullsizerender-9-min
▼会場の真ん中のテーブルには、大きな感想ノートが!
fullsizerender-13-min
会場は専攻ごとに色分けされ、ポートフォリオが置かれていました。パッと会場を見渡すだけでも、どことなく専攻ごとの雰囲気が感じられます。
出展者のお話を聞きながら、展示されたポートフォリオを見ていきました!

● 4名の出展者インタビュー

製品デザイン専攻 時岡翔太郎さん

【PORTFOLIO DATA】
用途:就活用のものを、カナコレ用に再構成
内容:モビリティをテーマとした活動、カーデザイン、学校課題など
サイズ:A4縦構図
こだわり:地域の人などデザイン業界じゃない人でも見やすいよう、ビジュアルメインで、説明的になりすぎないようにした。ぱらぱらっと見ても楽しめることを狙って、手に取りやすいA4サイズを選んだ。

fullsizerender-15-min

<COMMENT>就活用のものは「自分のスキルを最大限に伝える」ことを第一に作成しましたが、今回はもっと自分の作品の世界観を大切に、作品集という意味合いで作りました。ファイン系・工芸系のポートフォリオはデザイン系と雰囲気が違うことはなんとなく知っていましたが、今回実際に比べて見ることができて面白かったです。

▼就活では画力やアイデアの幅を見せるために入れるスケッチ。時岡さんは、川辺などで描くこともあるとか。
fullsizerender-7-min
fullsizerender-10-min

油画専攻 中桐聡美さん

【PORTFOLIO DATA】
用途:大学院進学を見据えた作品集
内容:シルクスクリーン、インスタレーション、油彩など
サイズ:A4横構図
こだわり:平面作品とインスタレーションをうまく合わせられるよう試行錯誤しながら制作活動を続けている。表現方法の変遷が伝わるような構成にしている。

fullsizerender-5-min

<COMMENT>ポートフォリオは留学用や制作展でつくる機会があり、今回のものは3冊目です。学校課題の習作などは省き、一定のクオリティのものを選んで載せています。カナコレは、企画段階で東郷さんから話を聞いていて、実現したら見に行ってみたいなと思っていました。自分も参加することになり、同年代で雰囲気が違う作品の人達と展示ができて嬉しかったです。

▼昨年の一番大きな作品。インスタレーションのため数カ所から撮影している。
fullsizerender-11-min

彫刻専攻 松井一輝さん

【PORTFOLIO DATA】
用途:就活用
内容:オリジナルキャラクターのフィギュア作品など
サイズ:A4縦構図
こだわり:2メートル近い大きな作品もあるため、迫力が伝わるよう、各作品の最初にアップの写真を入れた。

fullsizerender-19-min

<COMMENT>今回は主催の東郷さんから声をかけられたのですが、他の専攻のポートフォリオを見る機会はあまりなかったので刺激を受けました。こんな企画が自分の就活前にもあったら良かったなと思います!この展示で見た他のポートフォリオを参考にしながら、またブラッシュアップしていきたいです。

▼キャラクターそれぞれに細かい設定や、テーマがある。そういった情報は別ページに掲載。
fullsizerender-16-min

視覚デザイン専攻 芦田佳子さん

【PORTFOLIO DATA】
用途:就活用
内容:映像作品、タイポグラフィなど1年生からの作品を選抜
サイズ:正方形のオリジナルサイズ
こだわり:面接で使うことを前提に作ったので、文字は極力少なく、目でさらっと追うだけでも伝わるよう意識した。作品の順番はプレゼン内容に合わせた。

fullsizerender-6-min

<COMMENT>大きめのサイズで見やすく、かわいらしい印象の正方形にしました。中綴じにしたりトレーシングペーパーを差し込んだりして、自分で製本しています。掲載作品は、クオリティはもちろんですが、”自分自身や好きなものが伝わりやすい作品”を選びました。私のことがダイレクトに伝わる作品から始まり、だんだん深いところまで知ってもらえるような構成にしています。

▼大きい作品が映える、ビックサイズのポートフォリオ。
fullsizerender-14-min
fullsizerender-12-min

● 主催の東郷さんにも、お話を聞きました

とても見応えのある展示でした!今回、どうして”カナコレ”を開催しようと思ったのですか?
pxmjhjl_
東郷さん:美大生のポートフォリオって、企業の採用担当の人や展覧会のお客さんなど、限られた人にしか公開されていないなと思ったんです。
でも友達のポートフォリオを見せてもらうと、自分の作品や活動を伝えるために工夫が凝らされていて、すごく面白いんですよね。そんなポートフォリオを自分ももっと見たいし、たくさんの人に見てほしいと思って企画しました。

会期を終え、合計で702人も来場してくれて、いろんな人に楽しかったと言ってもらえてとても嬉しかったです。後輩のモチベーション向上にも繋がったと思うし、オープンキャンパスと被り、受験生・浪人生にも刺激を与えられたようなので(そういった感想をいただきました)、やった甲斐がありました。いま目に見えているよりも更に後々、各専攻や美大の制作・ポートフォリオに影響がじわじわ出て来て、金沢美大全体でレベルが向上していったらいいなあと思っています!
東郷さんは環境デザイン専攻ですが、会場設計のこだわりはありますか?
pxmjhjl_
東郷さん:ポートフォリオだけだとペラっとなってしまうので、パネルを浮かせて奥行きにリズム感を出し、各専攻のカラーパネルを上に貼って、高さにリズムが出るように心がけました。照明はポートフォリオとパネル両方にちょうど当たるように調整しました。
また、ポートフォリオが汚れないようにすると同時に「大切に扱うべきものなんだ」というマインドセットを与えられるよう、鑑賞の時にはロゴ入りの白手袋をつけてもらうようにしました。

▼ロゴ入りの手袋は入り口で手渡された。

カナコレ以外にも、金美生向けのフリマ”カナビバイバイ”などを主催していますよね。卒業までに、「こんなことしてみたい!」という目標があれば教えてください。
pxmjhjl_
東郷さん:「カナビバイバイ」*1を卒業前にもう一度開催したいです。また、卒業制作も環境デザインに多い設計というよりは、場づくりにする予定です。
そして、「カナビバイバイ」も「カナコレ」もずっとやってほしいという声が多いので、私がいなくても続く仕組みを作って卒業しようと思っています。

 
*1カナビバイバイとは……金美生が不用品を持ち寄り売買する、フリーマーケット企画。
Twitter:@KANABIByBy

 

● 最後に

「友人の素敵なポートフォリオをたくさんの人に見てほしい!」という思いをきっかけに、全専攻から出展者を集め開催された”カナコレ”。
ただポートフォリオを集めて展示するだけでなく、空間や展示の細部にもこだわりがいっぱいつまっていました。SNSや地元新聞社など広報活動もこなす東郷さんを見て、「やりたい!」をクオリティ高く実現できる、美大生の力を改めて感じました。取材時は平日にも関わらず来場者が多く、学生だけでなく地域の人も訪れている印象でした。
“カナコレ”をじっくり楽しめば、金沢美術工芸大学で何が学べるのか、どんな先輩がいるのかを十分に知ることができます。東郷さんの思いを引き継ぎ、来年はどんなポートフォリオが集まるのか開催が待ち遠しいです!

東郷さん、出展者のみなさん、ありがとうございました!

▼取材時、会場にいた出展者とパチリ!
fullsizerender-6
 

(2017.7.28)
Yoshiko Inoue

著者紹介

井上佳子Yoshiko Inoue

女子美術大学卒業。 ビビビット社で、全国のデザイン・美術の学校へ行く仕事をしています。青い迷彩柄のPCケースが目印なので、見かけたらお声がけください! 昔の少女漫画とハロプロが好きです。
記事一覧へ