大切なことも、自慢したいことも、ぜんぶ絵で伝えたい。作品を届けるまでの深いこだわりとは|デザイナー mimomさん

「たくさんの人に見てほしい!知ってほしい!」
多くのクリエイターがもつ感情だと思います。Twitter、Instagram、pixivなど、今は作品を発表する手段はたくさんあります。そんな中で、たくさんの人に自分の作品を見てもらうにはどうしたら良いのでしょうか?
今回は、3Dでポップなグラフィックをつくりだす、mimom(@m_mimom )さんにお話を伺いました。作品を振り返りながら、「たくさんの人に好かれる作品」「人に刺さるものづくりをする方法」とはどういうものなのかを考えます。編集・執筆 / YOSHIKO INOUE , AYUPY GOTO

● 今回の先生はこちら!

mimomみもん

Designer

1990年生まれ。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻修了。
デザイン事務所に所属し、ロゴ・広告・パッケージなどグラフィックデザインを手がける傍、3Dソフトを使い、デフォルメした日常風景や架空の世界を描くデザイナーとして活動。
Twitter:@m_mimom / HP:mimomweb.com

●「空間を描きたい」そんな思いから3Dソフトを触り始めた。
フォロワーが一気に増えたのは、”共感性の高い”作品から……

ビビビット:mimomさん、本日はどうぞよろしくお願いいたします!
今回のテーマは「作品発表をとおしてのセルフブランディング」ですが、mimomさんがSNSで作品を発表し始めたのは2017年の夏頃からですよね。何かきっかけはあったのでしょうか?
mimomさん:もともとは、ただ日常をつぶやくだけの用途でTwitterを使っていたのですが、1年前(2017年)に3Dソフトを触り始めたときに、作品もツイートし始めました。といっても、作品を発表するというより、「こういうのを作ったよ!」「こういうテクスチャも出来るようになったよ!」と、友人に話すような感覚でしたね。当時、フォロワーは60名ほどでした。

実は、今も感覚としては当初と同じなんです。「SNSで発表していこう!」という強い思いがあるというよりも、生活の延長線上に制作があって、日常の出来事とか思い出を、言葉にするのは苦手なので、絵として形にすることで誰かに見てもらいたい、という感覚です。

▼水のマテリアルを使って透明感を試すために描いた作品。
3Dソフト「fusion360」を使いはじめて2〜3ヶ月頃。

ビビビット:始めは身近な人に向けてだったんですね。

そもそも、3Dソフトを触り始めたのはどんなきっかけがあったのでしょうか。
mimomさん:グラフィックデザイナーとしてずっと平面を扱う仕事をしていたので、新しい表現やスキルを身に着けたいと思っていて。
同時に、日常生活で感じたことや、風景を表現したいと考えたときに、「空間を描きたい」という気持ちが出てきました。自分の伝えたいことは、物体だけじゃなく空間まで描かないと、気持ちや空気感が伝わらないと思ったんですね。そこで、3D空間上に物体をつくって、それを写真に撮る感覚で空間を描ける3Dソフトを触り始めました。
ビビビット:自分の表現したいものを最大限かつ近道で表現できる手段が3D表現だったんですね!

2017年から作品を発表し始め、1万人フォロワー獲得まで、スピーディですよね。フォロワーさんが増えたターニングポイントがあれば教えてください。
mimomさん:「こどもの頃の宝物展」というキャプションの作品を投稿して以降、フォロワーさんが増えていくのを実感しました。そんなに反響をもらえると思っていなくて驚いたのですが、それまでの作品に比べ、この絵はモチーフやテーマに共感してくれる人が多かったのかなと思います。RT(リツイート)した方のツイートを見ると、「自分もどんぐり集めてた!」みたいに書いてくれてた人がけっこういたんです。

▼小さい頃集めていたものを「誰かに自慢したい!きれいに展示して見たい!」という思いを込めて描いた作品。RTは2,000を超えた。

ビビビット:多くの人が共感するテーマが伸びやすい……というのは、一つのキーワードになりそうですね。
次からは、「反応が大きかった投稿の共通点」をポイントごとに紹介していきます。

▼ 反応が大きかった投稿の共通点

1. 伝えたい内容・意図に沿って枚数にこだわる

mimomさんが作品投稿の場としているTwitterのユーザーさんは、モバイルで見ている人が多数。モバイルのタイムラインに画像が流れてきた際の”第一印象”には、特にこだわっているそうです。画像を表示する枚数によってトリミングされる比率が変わるため、作品ごとに見え方を意識しながら順番や内容を考えています。

mimomさん:枚数やカット割りは、こういう内容を描きたいな〜という時点で、同時に考え始めます。ツイッター上での表示のバランスが良く、カットによって情報を振り分けやすい”3カット”にすることが多いですね。ただ、1枚に絞った方が伝えたいことが端的に言い切れるなと思うものは1カットにしたり、作品によって変えています。

▼3カット投稿するときのPOINT !
★1枚目は一番伝えたいこと、全体感のビジュアルを
★2枚目は”寄り”の構図、ポイントを伝える
★3枚目は補足、違うアングルを見せて空間全体を

2. 共感性の高いテーマはRTされやすい

フォロワーが増えたターニングポイントの作品は、「多くの人が共感できるテーマ・モチーフの作品だった」と語っていたmimomさん。

mimomさん:Twitterの”いいね!”って、人によっていろんな意味があると思うんです。作者にいいねって伝えたいとか、自分のメモのために押すとか……。そんななかで、自分のフォロワーのタイムラインにも流れることになるRTは、”共感した”の気持ちが強いのかなと考えています。RTした方の、その次のツイートを見に行くことがあるのですが、”こういうところが共感するポイントだったんだな”と思いながら見ていますね。

共感でいうと、タイムリーであることも要素のひとつになるようです。「平成最後の夏」というワードや季節性のあるテーマ、トレンドのタグを使うなども、見る人に”共感”が生まれやすいポイントかもしれません。


▼こちらの作品は、GWが明けたタイミングで投稿したもの。「次の休み、早くこないかなあ」と多くの人が考えるちょうどその時に、絶妙なグラフィック!

3. 画像に添えるキャプションも、第一印象を左右する!

画像と一緒に添えるテキストも、印象を左右する大事なポイントです。

mimomさん:作品を発表し始めた頃に比べ、キャプションにはすごく時間をかけるようになりました。キャプションも絵の情報の一つなので、どんな言葉を添えるか次第で、絵の印象は大きく変わるなと考えています。私は、Twitterで改行しないくらいの短さで、ひと目で読み取れるくらいのボリュームを心掛けています。

作品をつくりながら、しっくりくる言葉選びを何度も検討するそうです。描きあがった後に別のキャプションを思いついたら、別のアングルを撮影し、再度投稿することもあるそう。

▼同じ作品をアングルを変えてツイートしたもの。


▼ ”クリエイターアカウント”として発信するには

ここからは、更に踏み込んだ内容を伺います。投稿したその後、アカウントそのものの見せ方や、SNSの発信から派生してお仕事をもらうために心がけたいポイントを考えてみましょう!


1. フォロワーが知りたいのは作品?自分自身?見極めてツイートを

作品を発信しているクリエイターのフォロワーは、【作品が好きでフォローしている人】 【作品きっかけだったけど作者自身のことも好きになった人】の2パターンあるのでは、と考察するmimomさん。mimomさんのフォロワーは前者の方が多いのではと感じているため、日常的なツイートはほとんどしないようにしているそうです。

▼作品投稿以外のツイートでも、基本的には創作に関する内容。


しかし最近、「制作に関するツイート」「作者の人となりが伝わるようなツイート」の他に、もう一つの手段があると感じているのだとか。

2. 「視点を発信する」という手段もあり!

他のイラストレーターさんの投稿を見て感じたのは、「視点を発信する」という手段。

mimomさん:作家さんが日常的に撮影した写真のツイートを見て、作品でもテキストでもなく、写真で発信する手段も良いなと思いました。日常を切り取った写真って、その人の興味や視点が言葉と同じくらいストレートに感じ取れますよね。
同じ道を歩いても気づかないような場所への目線や、一見何でもないような風景の切り取り方から、その人の魅力的な視点がたくさん伝わってきます。

「視点を発信する」という手段に気付かされた、mimomさん注目のイラストレーターさんをお二方ご紹介いただきました!

イラストレーター・サクタロさん

▼サクタロさんが撮影した写真。
サクタロさん目線の写真を見ると、創作のエッセンスを覗き込んだような気持ちになれる。


イラストレーター・millitsukaさん

▼millitsukaさんが撮影した写真。
作品につながる独特な世界観が垣間見える。

ファンにとっては、”クリエイターが日常を眺める視点”の公開は、作品が創り出される一端を覗けたようで、嬉しいものですよね。mimomさんも、作品のメイキング画像を投稿するなど、試行錯誤しながら自分のアカウントの”らしさ”を表現しているそうです!

▼ SNSを通してお仕事をもらうには

1.SNSアカウントだけでなく、HPの問い合わせフォームを設定しよう!

Twitterで作品を発表し始めたmimomさんですが、いま(2018年現在)ではSNSを通してお仕事の依頼を受けることが多くあるそうです。本格的に仕事を受け始めたのは2018年1月頃からで、WEBサイトで問い合わせフォームをつくったのがきっかけになったのだとか。

mimomさん:Twitter上に作品をまとめたモーメントはありましたが、より作品を高解像度で、アーカイブ一覧できる場所があるのは大事だなと思いました。打ち合わせのときにも、ぱっと見せながらイメージ共有ができます。

ホームページや問い合わせフォームがあると、依頼側も「仕事を受ける体制が整っているんだな」という印象を受け、安心して依頼を送ることができます。mimomさんの場合は、デザイン事務所の方や、代理店からの依頼が多いそうです。

▼mimomさんのHP。mimomweb.com


2.お仕事をもらう間口は広く!複数のサービスを活用しよう

仕事の依頼を受けるとき、必ず「どこで自分を知ったか」を尋ねるというmimomさん。もともとTwitterをフォローしていたデザイン関係者の方の場合もあれば、誰かがPinterestでpinしたものを見て知った……ということも多いそうです。

mimomさん:自分の作品を知ってもらう窓口や、つながるきっかけはたくさんあったほうが良いなと考えています。仕事を受けるようになってからPinterestやInstagramBehanceのアカウントもつくりました。
ビビビット:ちなみに、お仕事を受けるときの料金設定はどのようにしていますか?
mimomさん:まずは工数とそれにかかる時間で見積もりを出しています。
予算が合わない時もありますが、自分が挑戦したいと思える仕事は、積極的に取り組もうと決めています。有り難いことに今は完全フリーランスではないので、自分の挑戦したいことを優先して選んでいます。

クリエイター側が制作の予算感をもっておくと、その後の擦り合せもしやすくなります。問い合わせフォームを設定する際に、予算の見積もりもある程度出しておくとスムーズでしょう。

●ラフ大公開!ViViViTグラフィックの制作裏話

ここで本題とは少しずれますが、特別企画です!
実は、私たちビビビットが運営する「ViViViT」の中途ユーザー向けLPのグラフィックを、以前mimomさんにご依頼させていただきました。なんと今回、ViViViTのグラフィック制作の裏話も教えていただきました。
今後SNSを通して仕事を受けたいと思っている方は、PRグラフィックの制作工程をイメージしながら見てみてくださいね。

①お問い合わせフォームから依頼を受け、打ち合わせ

対面の打ち合わせにて、本案件のコンセプトや完成イメージの共有、スケジュールや金額感の擦り合せ等を行います。

【ビビビットからのリクエスト】
ターゲット:20〜30代のWebデザイナー(男女共に)
色のイメージ:男女どちらにも受け入れられる、可愛すぎない落ち着いた色合い
オブジェクトのイメージ:パソコン、メガネ、スマホ、コーヒーカップなど、デザイナーのオフィスのイメージ
新規制作モデル:ビビビットロゴのV
備考:広告の掲載先によってサイズの変更、文字入れがあるので、余白を多めに取ってください

②ラフを提出

上記のリクエストをもとに、まずはラフを制作します。

▼ラフは2Dのため、3Dのサンプルイメージも送ってくださいました。

ラフを提出後、クライアントから追加の要望があったり、再度ラフの提出を求められる場合もあります。mimomさんの場合は、「Web系のクリエーション」のイメージがぱっと見て伝わる、完成稿が想像しやすいラフになっていたため、そのまま本制作をお願いしました。
グラフィックのコンセプトも記載されており、とてもわかりやすいラフになっています。クリエイターさんによってラフの形式もさまざまですが、ここまで詳しく、整理されたラフをくれる方は少ないです!
mimomさんは、どのような思いを込めて画作りをされたのでしょうか。

mimomさん:
テーマの中で自由に表現できる機会をいただけたので、前々からやりたいと思っていた「平面と立体感をMIXした表現」に挑戦しました。ViViViTの”WEBからリアルにつながる”という特徴を”2次元から3次元”につなげて表現しています。

③完成版を提出

②のラフを経て、このような完成形が提出されました!

ところどころのぷっくり感が、たまりません……。「平面と立体感をMIXした表現」について、もう少し具体的に伺ってみましょう。

mimomさん:左手にある「画像のアイコン」は、真正面なので奥行きがなく、枠やベースは平面ですが、中の太陽と山は回り込むようにぷっくりさせました。パソコンの前に出ているWEBの画面もほぼ平面ですが、文字やボタンを立体にしています。

質感は、これは粘土だからマットに、これは木を切って絵の具を塗ってる感じ……など、その空間にいるモチーフ達がどんな素材なのかを考えて決めます。このグラフィックは樹脂粘土を想定しているので、ぷりっとしているけど光りすぎない、なめらかな質感を意識しました。

ご自身で解説いただくと、より細部までじっくり眺めたくなりますね。サービスの特徴と表現方法がマッチしているのも、嬉しいです!
mimomさんのグラフィックを使用したViViViTのLPは、こちらからご覧いただけます。

●mimomさんのこれからと、フォロワーさんからの影響


ここまで、mimomさんのこれまでの制作活動を振り返りながら「多くの人に自分の作品を見てもらう工夫」について考えてきました。最後に、SNSの醍醐味であるフォロワーさんとの交流や、その反応が制作に影響することはあるのか……という点を伺いました!

ビビビット:フォロワーさんからのリアクションが、制作に影響することはありますか。
mimomさん:スマホケースやポスターのグッズをつくった際、買ってくれたフォロワーさんが、携帯に付けた様子や部屋に貼った様子の写真をツイートしてくれたことがありました。その時に、「誰かの暮らしの中に自分の作品がある」というのがすごく素敵だという気付きがありました。

それまでは、自分の伝えたいことが第一で、どちらかというと自分のために描いていて、作品の色味なども含め、モニター上で見ているのが一番良いと思っていたんです。でも、モニターより大きいサイズで、窓からの光を受けて空間の中に存在しているのを見て、なんだか新鮮な気持ちになりました。
それがきっかけで、話の中に自分の絵があったら素敵だなという思いからLINEスタンプを作ったりと、誰かに使ってもらえるグッズだったりを意識するようになりました。自分の中で、新たな発見と感動があったエピソードです。
ビビビット:自分の手元とは違うところで、誰かの日常を彩っているのは、不思議な感覚になりそうです。

最近(2018年初秋)は、フォロワーさんからリクエストをもらって作品を制作されることもありますよね。

▼上記ツイートの後に、リクエストを受けたパンたちの作品が投稿された。

mimomさん:リクエストを募る前に、以前つくったパンの作品を投稿していたんです。するとRTやいいねをしてくれた人が、「自分はこんなパンが可愛いと思ってる!」「こういうのを食べたい!」と言ってくれたので、今度はそれぞれが想う「かわいいパン」を聞いて描いてみたいなと思いました。
実は”かにぱん”は見たことがなくて、コンビニで実物も見つけられなかったので苦戦しました(笑)。
ビビビット:そんな裏話があったんですね(笑)。フォロワーさんとコラボして作品が生まれるのも、SNSを活用する魅力ではないでしょうか。

それでは、今後、どのような表現を行っていきたいですか。
mimomさん:先日、ハーゲンダッツさんとのお仕事でアニメーションを作ったのが楽しかったので、また3Dを動かす表現をしてみたいです。また、絵本や展示会など、自分の絵で空間を作ってみたいですね。

※ハーゲンダッツさんとのお仕事はこちらから!とってもキュートなサイトです……!

ビビビット:絵本に映像に展示にと、グラフィックの枠を超えて展開されるのですね。mimomさんの作品で構築される空間を楽しみにしています!

mimomさん、ありがとうございました!

●最後に

今回は、約1年間でフォロワーが10,000人以上増え、SNS経由でお仕事の獲得にも成功されているmimomさんに、発信する際の工夫や、制作のこだわりを伺いました。

【まとめ】
・反応の多い投稿の共通点は……
 ①画像は3枚 ②共感できるテーマ ③目を引くキャプション

・アカウントの見せ方は……
 ①フォロワーの求めるツイート ②視点を発信するという切り口

・仕事を受けたいなら……
 ①問い合わせフォームの用意 ②複数サービスを活用

mimomさんは、SNSありきで作品制作をしているわけではないけれど、「伝えたいことがスタートで、作品発表をゴールに考えている」と仰っていました。”自分の考えを絵で伝える”その過程で、投稿方法や発信内容のこだわりを見つけていったそうです。発信方法の正解はひとつではないですが、今回のお話で、皆さんの作品発表にも取り入れられるポイントが見つかっていたら嬉しいです。
「自身の作品をたくさんの人に届けたい!」その思いを根底に、試行錯誤してしっくりくるマイルールを探っていきましょう!

(2018.10.4)

著者

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井上佳子

はたらくビビビット編集長。 株式会社ビビビットの社員です。ポートフォリオづくりに役立つ情報発信を目指します。 Twitter

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