「物語」が人々を納得させる!あなたの制作物に説得力を持たせる方法

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皆さんは「物語」と聞いて何を想像しますか?好きな小説や漫画の物語を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。しかし、それだけではなく、「物語」をつくること、設定することは、クリエイターが制作をする上でかなり重要な要素となっています。今回は「物語」とは一体何なのか、どのように役立つのかをご紹介したいと思います。編集・執筆 /OSARAGI, AYUPY GOTO

目次

  • 1.データより物語を好む人々
  • 2.実際に「物語」を利用して支持を得ているもの
  • 3.「物語」を自分の制作物・プレゼンにも取り入れよう
  • 4.最後に

1.データより物語を好む人々

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『物語』は私たちに共感を呼び、感動をもたらしてくれます。例えば、昔、一世をを風靡した「美少女戦士セーラームーン」は、普段はドジでおバカな中学生である月野うさぎが、ひょんなことから、地球を救うために戦士に変身し、敵を倒すと言うファンタジーアクションストーリーです。

「普段は普通の中学生」という点で、女の子の共感を呼び、「いざとなったら戦士に変身する」という点で女の子の「憧れ」を投影しているのです。

そして、その心に刺さった「物語」は記憶に焼き付き、強い影響をもたらします。セーラームーンで言えば、漫画からアニメになり、それが実写化されたり、グッズ化されたりしました。心を突き動かされた人々は「物語」を求めてモノを欲しがるのです。そこに文脈が感じられなかったら、そのモノの価値は極めて低いといえます。

もう一つ例を挙げると、あなたがとあるお菓子の良さを「データ」か「物語」で伝えられた場合、どのように思いますか。

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データで伝えられた場合、「事実」である事柄はわかるものの、「結局何が言いたかったのだろう」と感じるはずです。データだけでは人々の心にそのモノの良さは届きづらいのです。

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逆に、物語で伝えられた場合、「登場人物」に感情移入し、「それだけの人がこの商品を美味しいと言っている!」とすんなりと受け止めることができます。それは「物語」によって因果関係理解しているからなのです。

つまり、それだけ「物語」は強い力を持っているのです。

では、その「物語」を私たちクリエイターはどのように活かせばいいのでしょうか。実際の企業の事例から学んでみましょう!

2.実際に「物語」を利用して支持を得ているもの

American Girl

#FlashbackFriday, Felicity edition. Did anyone out there grow up with #Felicity? We’d love to hear your story!

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引用:https://www.instagram.com/americangirlbrand/

American Girl(アメリカンガール人形)は1986年に、Preasant Companyから発売された身長46cmの人形です。

アメリカの8歳〜11歳の女の子を対象に人形を作り、販売しています。この人形はバービィー人形に次いで人気を誇っており、アメリカの女の子で知らない子はいないと言っても過言ではないでしょう。なんと人形は一体約90ドル(日本円で約1万円)と高額です。なぜ、こんなにもアメリカンガールは人気を集めているのでしょうか。

人形それぞれに固有のバックグラウンドがある

#ChooseYourCharacter quiz: Which new characters are you most excited about meeting?

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引用:https://www.instagram.com/americangirlbrand/


アメリカンガールは人種、髪の色、肌の色、瞳の色などが異なる人形を揃えています。そして、その人形1体につきバックグラウンドを描いた本が付いています。

その本を通して、この人形(キャラクター)がどのような境遇でどのように生活しているのかを知ることができます。

人形についてくる本の内容はアメリカの歴史に基づいているそうです。開拓時代や現代まで幅広い歴史を人形を通して勉強することができます。

人形と同じ服を着ることができる

Holidays may be over, but Slumber Party Season is just getting started. #TGIF

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引用:https://www.instagram.com/americangirlbrand/


アメリカンガールの店頭では、人形が着ている服を実際に女の子が着ることができます。人形と同じ服を着ることができるおかげで、その人形に対して親近感が湧き、人形とお出かけを楽しむことができます。よりリアルで身近な存在として、自分と重ね、人形を可愛がることができます。

アメリカンガールでは、人形に存在するバックグラウンド、すなわち「物語」に注力してブランドづくりをしています。より女の子個人に近い人形にカスタマイズができることで共感や憧れをよぶ、良い物作りができていますね。子供達に「欲しい!」と思わせるにはこのようなトリックが必要なのです。


【アメリカンガール公式HPはこちら】
AMERICAN GIRL®

たねや

引用:https://taneya.jp/shop/shiga_himure.html

たねやは明治時代から創作和菓子を製造・販売をしている、今や日本を代表するブランドです。数ある和菓子の中で「ふくみ天平」が美味しいということでよく知られています。たねやはどのように「物語」を生かしているのでしょうか。

移りゆく季節を楽しむ

たねやでは通年菓子の他に「季節菓子」があります。たねやでは、その時々に食べる季節のシチュエーションを念入りに思考錯誤したお菓子が作られています。


引用:http://taneya.jp/okashi/kisetsu/kikkamonaka.html
    むかしむかし、都を囲む山々には、冬の氷を蓄えておく氷室がありました。

    夏の足音をきくころに、はるばる宮中へと運ばれた氷室の氷は、
    口にすれば夏やせしないとされた貴重なもの。
    厳しい暑さを前にした6月1日には、
    健やかであるようにと臣下に氷を分け与える、賜氷節(しひょうせつ)もおこなわれました。

    白みそ風味の道明寺を外郎で包み、氷に見立てた赤い羊羹をのせた氷室で、古人が氷に寄せた思いをつたえます。

    たねやHPより引用

例えば、この「たねや氷室(たねやひむろ)」は上記のように、お菓子ごとの物語が明確に決められています。

そして珍しいことに季節菓子は1日限定販売のものもあります。「なぜ、この日にだけなのか」と言う理由がはっきりとわかる「物語」が商品に含まれているのです。例えば、6月1日は「氷室を開け、その氷を食す日」という古代の風習をリスペクトした、たった1日だけの行事であり、その日だけに発売する理由が明らかですよね。また、日に限定をすることで「特別感」を演出しています。

    菓子は腹を満たすものではない。菓子は文化を満たすもんや。

    引用:商いはたねやに訊け―近江商人山本徳次語録

創業者である山本徳次はお菓子という実物そのものの価値の先にある、「人の経験」にすでに目を向けていました。また、お客さんがお菓子を食べるシチュエーションを想像して、おかし作りをしていたそうです。物語をうまく使って「お菓子」の付加価値をつけていますね。


【たねや公式HPはこちら】

たねや

3.「物語」を自分の制作物・プレゼンにも取り入れよう

さて、企業がどのように自分たちの商品(制作物)に説得力を持たしているかお分りいただけましたか?「共感」を踏まえた「物語」は人を惹きつけ、心を掴んで離さない力を持っているのです。

では実際にクリエイターが「物語」を利用するにはどうすればいいのでしょうか。自分の制作物やプレゼンを思い浮かべながら、次の項目を見て実行してみてください。

①誰(ペルソナ)に伝えるのかを設定する

制作物はもちろん、プレゼンをする際も「誰」をターゲットにするのか、「誰」に説明するのかで「伝え方」を変えねばなりません。自分がどんな人に使って欲しい(知って欲しいのか)をまずは設定します。そして、その人の性別や年齢だけでなく、性格や職種や趣味、癖、といった細かい情報を設定し、「個人」を作り出します。

②自分の作品のいいところを書き出す

自分の他に似たような制作物を作っていた人がいたとします。そんな時、自分の作品と差別化できるような「売り込み」アピールポイントを探しましょう。たとえアウトプットが似てしまっていても、全く同じということはないと思うので、自分の強みであると感じたところをメモしましょう。

④その人が「共感」しそうな物語を設定する 

では前の2項目を踏まえて、物語を設定してみましょう。その人が今まで経験したであろう事柄にうまく結びつけ、「共感・憧れ」を呼ぶ物語を考えるのです。数字的なデータはもちろん必要ですが、「課題」→「解決」のように率直にわかる物語が理想的です。

    ポイント
    ・その人の経験に結びつけ、訴えかけられるかどうか
    ・第三者にとってわかりやすいかどうか
    ・その人が「共感・憧れ」できるか

どうでしょうか?今までよりも自分の制作物に説得力が増しましたか?

「物語」は普段の制作に活かせるだけでなく、インターンシップ成果プレゼン、就職活動の自己アピールなど、いろいろな場面で活躍してくれます!

4.最後に

「物語」はモノの利便性や品質が高まるにつれ、重要性を増しています。多くの企業が「物語」を用い、自身のブランドに説得力を持たせ、人々の「共感」を呼んでいます。

ただ、「物語」は「ブランディング」だけに利用されるものではなく、筆者のような美大生やクリエイターが制作物を作る際にも、大いに活躍します。特にプレゼンでは「数字的なデータ」をアピールし、説得力を持たせようとしますが、それだけでは「いいね」という風に納得してもらえません。時に人に「共感」をしてもらえるような要素がないと、せっかくコンセプトを伝えても聞き手にとってはリアルに映らないのです。

人々が「物語」を重要視しているというのは、InstagramやYouTubeからも分かる現象です。Youtobeでは商品のレビューをしている人が多く存在します。私たちは実際の蓄積されたデータよりも「その人の使用感がどうだったのか」という点を重要視し、その動画が見たくなります。今後ますます「個」が発信するメディアは加速していくと思います。それは人々が「共感」しやすい「物語」がそこにあるからではないかと感じています。

ぜひ、自分の制作物やプレゼンに説得力が出るように「物語」を使ってみてはいかがでしょうか?

(2017.9.20)

著者

大佛茉由

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科所属。インタラクションデザインを勉強中です。お笑い芸人のコントをYouTobeで見ることにはまっています。

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