皆さんは自分の名刺を持っていますか?名刺はその名の通り、自分の名前や役職、連絡先を簡単に人に伝えることができます。ビジネスの場において欠かせないビジネスツールですが、これは学生のうちからも、クリエイターとして活動するのならなおさら持っていて損はないアイテムです。
今回はクリエイターならではの、普通の名刺とはひと違うオリジナリティある名刺をつくることに着目して考えてみようと思います。
編集・執筆 /YAMADA, AYUPY GOTO
・名刺を持つことのメリット
名刺を持っているとどんなメリットがあるのでしょうか。
名刺の本来の目的は相手に自分の簡単な情報を伝えること、その後の連絡を取り易くするもの、所属を伝えるもの……等ありますが、オリジナリティのある名刺はそういった通常の使い方以上の効果を発揮する場合があります。
“名刺”としてではなく“作品”として考える
クリエイターの名刺は普通のシンプルな名刺と違い、色々な工夫がされているものが多いです。まず、「オリジナリティある名刺を渡す」これだけで相手に自分を強く印象づけることができ、なおかつ大まかな自分のデザインを伝えることが出来ます。
会社に所属をしていると、会社一律の名刺を使用することが多いと思います。この場合は一目でどの会社の人間なのか、という点がすぐに伝わるという役割を果たしているので、会社の一部の人間として名刺を渡す場合はとても合理的で理にかなっています。しかし、デザインの自由度はなく、個人として自分を売り出す場合には不向きです。その点、クリエイターの方は自分でいちからデザインした名刺を使うことで他との差別化を生みます。
フリーランスの方はもちろん、会社に所属していながらも、会社用の名刺とクリエイターとしての名刺を2種類持っている方もよくいます。
作品を公開する場合に置く
自分の作った作品を展示したり販売する場合、名刺も一緒に持っていくと名前も覚えてもらえたり、ショップカード的な役割を果たしてくれます。実店舗に限らずwebでのやり取りでも一緒に同封するととても効果的です。
ポートフォリオに取り入れるのも◯!
作品として掲載するもよし、自己紹介の際に実物を封入したり貼ったりするもよし。使い方次第でポートフォリオの工夫要素の1つになります。紙ポートフォリオはもちろん、webポートフォリオでも活用できそうですね。
・名刺をつくる際に気をつけたいこと
名刺のデザインにはルールはないですが実際作るときに気をつけた方がいいことを考えてみます。
1.読みづらい構成は避ける
名刺は作品として考える、と先程書きましたが、あくまで名刺としての機能を持つ作品という意味なので、名前やメールアドレス等の文字情報が読みづらくなってしまうとこれは名刺として成り立たなくなってしまいますね。文字構成も重要なデザインです。グラフィックを優先しすぎて読解が難しくなってしまうことは避けましょう。
2.サイズに気をつける
基本的に一般的な名刺は91×55mmですが、変形をすることも名刺に個性を出す1つの方法なので色々な形があって良いと思います。しかし、91×55mmよりも大幅に大きくなってしまうのは避けた方が良いでしょう。名刺はいろんな人のものをまとめて保管する場合が多いと思いますが、一般サイズから大きく離れてしまうと名刺入れに入らず、受け取った人が保管に困る場合があります。印象に残る面ではとても良いと思うのですが、受け取った人のことを考えながら作成を進めましょう。
・作ってみよう〜作成の流れ〜
では実際に作成の流れを追いながら名刺をつくってみます。
1.名刺のコンセプトを決める
まずどういったイメージを持って制作するか、渡した相手に第一印象として何を伝えたいかを考えます。
イラストを描くことをメインとしている場合は自分のイラストを伝えたい、紙が好きだから紙が栄えるデザインをしたい、はたまた猫が好きなら猫をモチーフとした名刺を作成する……など、自分をアピールする上でなんでもいいのでなにか1つでもテーマを決めて作成すると、最後までイメージの軸がぶれずに進め易くなります。名刺そのもののメッセージ性も強まりますね。
2.掲載する文字情報を決める
大体の場合は名前、肩書き、メールアドレス、あればホームページ、電話番号が基本的な情報になります。
ここから自分の状況に合わせて足し引きしながら構成していきます。あまりに多くならないように注意しましょう。
遊びとしてニックネームや座右の銘を載せたりするのもありますね。言葉で興味を惹くというアピールの仕方もあります。
★91×55mmを基準として考えると…
名前は12〜16pt
その他文字情報は5,6pt程度
が程よく無難な大きさです。5pt以下になってしまうと小さく、読みづらい場合があるので注意です。
強調したい部分がある場合は優先順位を決め、太さや色で段階調整して下さい。もちろん必要ない場合は無くても大丈夫です。
3.イメージ案をいくつか考える
ラフスケッチなどをして、いくつか案を出してみます。変形や加工もここで考えておくと後々がスムーズかもしれません。予算等も考慮して、今回はこの程度の加工ならできるなど把握しておくと考え易いです。
4.ひたすらデザインを練る
あとは自身のデザインを最大限、最良に表現できるように、納得のいくものになるまでデザインを練りまくります。
★この際に、1パターンではなく、気に入ったものが複数できた場合は複数作ってもいいかと思います。しかし複数のデザインを同時に配布する場合、なにか共通点があるとよりいいかと思います。自分のロゴマークやワンポイントイラストをもっていると便利ですね。
・加工例を考えてみよう
規格サイズの中で工夫する
工夫したくても実際制作費の都合上大きな加工ができない場合もありますよね。そんなときに決まった規格の中でどう工夫できるのか、考えてみます。
★例としてオーソドックスなスタイルのものを用意しました。
片面はイラスト、もう片面は文字情報です。紙はミランダというきらきらしたものを使用しています。(イメージ例なので紙は薄めです。)
コンセプトは、オフィシャルキャラクターキュピピットを使ってビビビットの印象を相手に記憶させやすくすること です。
1.セルフ角丸
紙の四隅をまるくカットするパンチが市販で売っています。
→http://www.sun-star-st.jp/private_brand/kadomaru.html
こちらを使用して普通サイズで出来上がった名刺を角丸加工していきます。
手作業になるので枚数が多いと骨が折れる作業ですが、制作費を削減したい、だけど加工もしたい!という場合には良いと思います。
2.セルフカット
正方形や縦長にする際にも追加料金がかかることが。この際自分でカットする……!という手もあります。が、あまりオススメはできません。重労働に加え、仕上がりは△です。
しかし、逆に素材を利用して、手でちぎったような質感にしたり、直線でもランダム感を出したい場合はセルフカットはアリです。
こちらは決まりを作らずランダムに切ったもの。
★キリトリ点線を入れるのもいいかも!
点線を簡単に入れることができる便利アイテム、OLFA ミシン目カッター!
デザインによっては有効的なものに。これも業者に頼むと結構な料金がかかってしまいますが、セルフならミシン目カッターさえ手に入れれば可能です。完全にカットするわけではなく、点線を入れるだけなので失敗率は低めです。
3.側面色をつける
側面の部分に色がついているだけでもかなり目立ったものに。蛍光色や彩度の高いビビットカラー、金銀などを使用すると効果的です。紙が厚いとそのぶん側面の面積が大きくなるのでより効果的です。
何枚かを束にして面積が広がった名刺の側面に、ラッカースプレーや絵の具で着色します。
簡単にできるので、業者に頼んで作成した名刺にプラス、自分で一手間加えるのもアリですね。
(料金はかかりますが、業者さんの方で着色してくれるサービスもあります。)
4.ハトメをつける
こちらの作成例は、ハトメ+側面カラー(ピンク)+角丸です。
ハトメをつけるとタグのような雰囲気がでますね。さらに穴にひもを通したりするとまた違ったイメージに。これはすべてのセルフ作業に当てはまりますが厚めの紙だと失敗する確立が上がってしまうのが難点。
5.糸をつかう
DIYならでは!名刺を糸で縫ってしまう加工です。紙に縫い目がはいり、それだけでも個性的な名刺に。
糸の色を変えるだけでいろんな表情が出ると思います。
紙にこだわってみる!
セルフならではの自由度は紙の選択にも。
業者委託でも、最近は申し分のない紙のバリエーションがありますが、とことんこだわりがある方は自分で紙の専門店へ行って、一から選ぶのもいいかもしれません。
こちらの記事で紙について紹介しているので気になった方は是非、読んで見て下さい。
紙選びにこだわって、作品をより魅力的にしよう!
業者に委託して加工を加える
仕上がりの綺麗さ、大量生産、短時間を優先する場合はやはり業者の方にお願いするのがいいと思います。
さらに、特殊な印刷技術や複雑なカットなどはどうしてもDIY等の手作業では限界がありますので、自分の理想の形に仕上げるために業者さんの力が必要なケースは出てきます。
1.変形サイズを使う
少し形を変えるだけでもだいぶ違った印象に。
複雑な加工、は業者さんに頼むのが一番良いと思います。
業者ならダイカットなども可能に。一気にオリジナリティがあがりますね。
切り抜いて透かしを作ったり。
2.しかけを作る
遊び心がプラスされて記憶に残り易いかも。
封筒に入っているタイプや名刺の一部に扉がついていたり。
しかけ絵の原理も活用できますね。
手のひらサイズの紙でも遊び方は無限大です。
3.特殊加工をプラスする
エンボスやグロス加工など。名刺にも使用できます。
お値段は上がりますが、見栄えがぐっと変わりますね。
4.特殊な素材にこだわる
名刺といっても紙素材だけでなく、透明なプラスチック素材や木材を使用するものもあります。
特殊な素材の印刷が自宅で困難な場合は、業者の方の頼むことで可能になります。
イラストを使用する場合
イラストを描く人は名刺にイラストを使用する場合が多いかと思います。
折角の自分のイラスト、できるだけ大きく綺麗に見せたいですよね。その場合、やはり業者委託の方が印刷が綺麗でイラストも栄えます。でもあまりお金を掛けずにもうひとつなにか工夫が欲しい……。そういった場合、DIYで上記のような変わった加工をひと味加えてみるとさらにオリジナリティが出るのではないでしょうか。
まとめ
DIYで作るときのメリット
・個性的な加工の幅が広い
・費用があまりかからない(場合によるが)
デメリット
・たくさんの量を一度に作れない
・時間と手間ひまがかかる
・場合によっては材料費がかさむ
業者に委託するときのメリット
・大量生産に向いている
・作業がデータ作成のみ
デメリット
・加工をすればするほど費用がかかる
自分が作りたい数、デザイン、かけれる費用、時間をすべて考慮してどの作成方法が最適かを考え、選択すればより良いものになると思います。
少し触れましたが、一度業者でつくったものに、プラス自分で加工を加えるハイブリット型も1つの手ですね。
・さいごに
自分の作品を色んな場で発表する機会があるクリエイター。そういった人が持つ名刺は、サラリーマンがビジネスで使う名刺とは役割が違うと考えます。単に名前を伝えるだけでなく、展示会やイベントで自分の作品と一緒に置いておけば、作品とイメージをリンクさせることもできる大切なアイテムです。名刺そのものにも、相手に自分らしさを伝える要素が上手く入っていれば、記憶に残る可能性も普通の名刺と比べるととても高いのではないでしょうか。
今回ご紹介した例はほんの一部です。これら意外にも沢山の方法があるので、自分のこだわりをたくさんつめた名刺を持って、いろんな場面で自分をアピールしましょう!
(2016.8.5)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア