「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」という言葉、もしくは表記を見たことがあるでしょうか?これは、一定の条件を守ることにより、Web上の作品を自由に使ってよいことを示すために提唱されたルールでありツールです。海外では徐々に普及してきている考え方のようですが、日本のサイトでは使われているところをあまり見かけません。そのため詳しく知らない人もまだ多く、「自由に使ってよい」という言葉だけを鵜呑みにしてしまうと、間違った使い方になる危険性があります。インターネットで素材探しをすることも多い今、安心して使ってよい作品の探し方を確認してみませんか?
編集・執筆 / ASAMI KIMURA, AYUPY GOTO
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)とは?
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは「クリエイティブ・コモンズ」というアメリカの非営利団体が提供する、著作権に関する意思表示の国際的なルールです。制作者は著作物にCCライセンスの目印を表示することで、自身の著作権を放棄することなくWeb上に作品を流通させることができます。
例えば自分のWebサイトにイラストを公開していても、そのサイトを訪れた人にしか見てもらうことができません。そこでイラストにCCライセンスを表記しておくことで、「このイラストを他のWebサイトなどで公開していいですよ、ただし著作者の明示などの条件は満たしてください」という意思表示ができるのです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品は「条件を守ることにより自由に使ってよい」と書かれることが多いですが、少し注意が必要です。ここで言う「自由に使ってよい」とは自分の作品を作る際の材料にしてよいということではなく、ほとんどは公開や再配布のことを指しています。
著作権の確認
ここで、基本の著作権について簡単に確認しておきましょう。
人が創作したすべての「著作物」には自動的に「著作権」が発生します。著作権は、作者の許諾なしに著作物を使うことはできないという権利です。著作物とは、著作権法によると「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」そうです。
よく「Copyright ©/(c) 2015 **** All Rights Reserved.」という表記を見かけますよね(これ自体はもっとも簡潔な表記ではありませんが)。Copyrightとは著作権のことで、こう書くことで「この作品の著作権はすべて****が保有しています」という主張をしています。
実はわざわざこのように表記する必要はなく、これを記載することに法的な意味はありません。なぜならば、最初に述べたように著作権はすべての著作物に自動的に発生しているからです。私たちはこの表記が経験的に著作権を主張しているものだと知っているために、混乱する人もいるかもしれません。大事なのは、この表記がないものにも著作権は平等に発生しているということです。Web上にある画像や文章もすべてそうです。
CCライセンスの目印ってこんなもの
"All Rights Reserved"がすべての著作権を保有することを示すならば、CCライセンスで提案されている"Some Rights Reserved"は限定された権利を持つことを示します。
(後述する"No rights reserved"は、著作権が消滅・放棄された状態です。)
何も書かなければ作者はすべての著作権を保有しますが、CCライセンスで意思表示をすることで保有する権利を限定します。それにより、Web上での流通・作品の共有をしやすくしようとするのです。
実際にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを見てみましょう。
CCライセンスには、その条件の強弱によって6種類のボタンがあります。
"Some Rights Reserved” を意味するボタン
(画像は各ライセンスのページ(コモンズ証)へリンクしています。)
これらのボタンは、次の4つの条件を表すマークの組み合わせで構成されています。
表示 (Attribution)
作品のクレジット(作者名やWebページへのリンクなど)を表示すること。この条件はすべてのCCライセンスに含まれています。
継承 (Share Alike)
改変した作品に関しても、元の作品と同じCCライセンスで公開すること。
非営利 (Noncommercial)
営利目的での使用をしないこと。画像はドルマークですが、ユーロマークと円マークのものもあります。
改変禁止 (No Derivative Works)
作品を改変しないこと。例えば画像ならばサイズ変更、トリミング、データの軽量化なども改変に含まれます。
著作者はこのようなライセンスをつけることで、自分の作品の守りつつWeb上で多くの人に見てもらえる機会を持つことができるようになります。以上の条件を守りつつ使用することは、文章や画像といったコンテンツの性質によっても利用しやすさが違うと思います。
引用とは何が違うのか
出典の明記を必ずしなければいけないと聞くと「引用とは何が違うのか?」と思いませんか? こちらも著作者の許可なしに行える行為ですが、厳密にその行為が引用と認められるにはいくつかの条件があるようです。
引用として認められる使用方法には、わかりやすいところだと以下のような条件が入っています。
・引用元が公表された著作物であること
・引用部分よりも引用先がメインであること
・引用部分が他の部分から明確に区別できること
・引用を行う必然性があること
…などが、著作権法で定められています。
なんだかややこしく感じますが、CCライセンスがついていれば、引用の条件を超えた範囲でも作品を使用することができるということです。クレジットの表記は必須なことに注意してください。
では、クレジットなしで使える作品は?
CCライセンスのついている作品は、フリー作品を探す側からすると期待するほど自由に使えるわけではないかもしれません。そこで最後に、安心して自分の作品の「素材」として使ってよい作品はどういうものかを確認しましょう。
クレジットなしで使える作品
- ・著作権の切れた「パブリックドメイン」の作品
- ・CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)の作品
- ・その他、著作者が自由に使ってよいと明言している作品
<著作権の切れた「パブリックドメイン」の作品>
著作権は、作者の死後50年経つと消滅します。ちなみに映画には公表後70年間の保護期間があります。このように著作権が消滅した作品は、誰もが自由に使うことができます。
<CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)のついている作品>
CC0とは、上記のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの"Some Rights Reserved"とは別のもので、著作者が可能な限りの権利を放棄する意思表示をするためのライセンスです。この表記があるものは、作品を作者自らパブリックドメインにしているということになります。
<その他、著作者が自由に使ってよいと明言している作品>
CC0をつけていなくても同様に作者が著作権を放棄している場合があります。ただしこの場合は、作者の提示する注意事項に気をつけなければいけません。Webを活用する人なら一度はフリー素材の力を借りたことがあると思いますが、このフリーという意味、実は定義が曖昧です。
例えば、フリー画像としてWeb上にアップされている写真でもその使用条件は様々で、作者のWebサイトにリンクを貼る必要のあるもの、加工してはいけないもの、好きに使ってよいが作者への報告を求められているもの、許可なしで完全に自由に使えるもの…と、フリーとして認められた範囲はそれぞれ異なります。単純に「フリーとあるから許可なく使用できる作品」と考えないようにしましょう。
最後に
いかがでしたか?
「自由に使ってよい」といっても様々な捉え方がありますね。クレジットなしに自由に使わせてもらいたい作品を探すときは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品からは使えないことを理解しておきましょう。
また、この記事を読んでいる人にはWeb上で作品を公開しているという人も多いのではないでしょうか。そういった方は自分の意思表示のために、これからクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを利用してみることを考えてみても良いかもしれません。
参照元:クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
(2016.11.6)
著者
はたらくビビビット
ポートフォリオとデザインのリファレンスメディア